高級魚の概念が壊れそうな「スシロー」の戦略

2016830tp191

9/2から”スシロー”で期間限定販売される「北海道の時しらず鮭」と「青森県産天然ひらめの昆布〆」。

数量限定ながら、一皿100円と破格の値段です。……高級魚って何だっけ?

これは影で血が滲むより過酷な戦略の上で実現する”商売”といえます。

スポンサーリンク

大衆に名が知られるのはいいことだが、水産業界にとって悪手

今年は特に「大衆魚の水揚げ量が減少している」というニュースを耳にします。

某国の船団のせい、気候のせい──管理しているのが国ということもあり、自国のせいにはしたくないようですが、不漁の原因はそもそも獲り過ぎなだけです。

現在はマグロの資源保護をどうするかの会議もしていますが、それはまた後日ということで……。

水産業のあべこべなところは、「資源量が著しく減少しているのに安売りしなければ売れない」という問題がある。

魚の値段自体も、過去に比べれば全体的に上昇傾向です。物価高うんぬんではなく、単純に流通量が減少しているだけ。

市場の商品量が少なくなりつつも、需要さえあれば価格を上げても売れるわけです。これは”転売で稼ぐ”という形で実現している人もいますし、経済としても至極当然な流れ。

「若者の魚離れ(笑)」とかもあり、魚介類の需要は減少傾向にある。……けど、それは”家庭内”の話であって、外食での需要はそれほど落ちていないと思う。

魚を捌く必要を感じられない時代なので、そもそも販売戦略を間違えているともいえる。

回転寿司をはじめとする、家庭では難しい寿司を安価で販売するという戦略は、ニーズにあった完璧な戦略だと思います。

回転寿司市場の推移は堅調

日本のソウルフードといえば寿司で、和食ブームもあり世界でもスシは人気になりました。

人口減少と魚介類の高騰は、多くの寿司店にとって痛手となる。──しかしながら、大衆食として誰でも知っているクラスの”食”なので、需要は失われることもなく、堅く成長し続けています。

日本企業の得意技は、コスト削減による利益の増額です。

回転寿司をはじめとする外食産業は、普通に考えれば”作ってもらう”ので人件費がかかるから高額になり、「自炊するほうがいいや」となります。でも、国際的に見ても日本の外食は安いんですよ。

500円もあれば、店次第でなんとでもなるでしょう?

それでどこのサービスもぞんざいではなく適当(いい意味で)なのだから、対価として不十分なくらいに安いです。

一般的な外食店の原価率は約30%ですが、回転寿司が提供する寿司の原価率は40~50%といわれます。回転寿司はもともと原価率が高いうえに、近年では漁獲量の減少や円安で調達価格が高騰していることが収益を圧迫しています。たとえば、人気のネタの1つであるサーモン(大西洋さけ)の平均価格は、2010年は1キログラム当たり773円でしたが、2014年には974円(対2010年比126.0%)に上昇しています(財務省「貿易統計」)。

そのため、回転寿司業界では原価率の削減が課題となっており、寿司以外のサイドメニューの開発や食品ロスの削減に注力する企業が見られます。

ようするに、「仕入れ値はどうしようもないから、それ以外を削ろう!」という話。

となると従業員をなるべく減らしても営業可能にするか、1人当たりの生産力を上げつつ回転率を上げるかすればいいわけで、安価で成長できる店はこの戦略が抜群に上手いです。

寿司職人が1貫を数秒で握るのなら、機械を使ってその数秒で数貫作ればいい。

魚が高ければ、魚を使わずとも人を惹けるメニューを作ればいい。

……執念とも呼べるべきカイゼンなくして、現在も一皿100円を実現することはできなかったでしょう。

まあこれ以上稼ぐ(業績を伸ばす)のなら、IoT導入して店長以外全部ロボットで営業するくらいしかないでしょうね。

ここで本題に入りますが、希少とも呼ばれる鮭の「時しらず」ですけど──

先の引用で普通のサーモンは1kg当たり773円とありますが、時しらずはおよそ3倍の値段になります。

鮭の中でも2番目に希少な”時しらず”とは

鮭の漁獲量が増えるのは、産卵期である秋から冬にかけて。産卵期であるこの時期は、捕れやすいが卵に栄養をとられていて身が豊かではないため、市場価格としては安くなる。

対して”時しらず”の時期は産卵期前の6~9月頃にかけて。産卵のために栄養をたっぷりとるため、魚体は丸くふっくらと、脂の乗りも抜群になります。

簡単にいうと、全体が「トロサーモン」の味になるのが”時しらず”です。

全国に1皿100円の高級魚を使った寿司を提供する怖さ

これを実現する企業力は半端ないので賞賛に値しますけど、業界に対しての宣戦布告みたいに感じられる。

日本人はシャイだけどワガママ。バブル以降は節約術がパワーワードとなって、「いかに物を安く買うか」が浸透して、お互いに潰し合って業界全体が負けてしまったのが家電業界。

通販商品の展示と試供先として提供して、リベートをもらう道もあったろうに……。

一部店舗が安売りをすると、他はそれと同等か以上のサービスを求められる。

スシローでようやく一皿100円を実現したのであれば、他にどこを削ればいいのだろうか?

”うなぎ”でもありましたけど、最も簡単な方法が「産地偽装」ですね。

1kg700円のサーモンを、1kg2000円の時しらずとして提供すればボロ儲けです。もしバレれば詐欺として立件されて、逆に高い金を支払う可能性がありますけど、商売としては賢いです。

巡り巡って価値を失い壊れていくブランド

高級ブランドをそうさせているのは、需要のコントロールの上手さにあると思います。

服も車も、本当に”特別”な物って数量限定が多いじゃないですか。市場にそれだけしか流通していないことで、本当に欲しいと感じた人が金額を吊り上げてまで購入する──したくなるのが高級ブランドかと。

それをそうしているのは、”持ちがいい”という点もあります。

対して魚は水揚げした瞬間から、市場価値が常に下がる生物です。ゆえに高級ブランドとしての扱いはデリケートになります。

高級魚と大衆魚の境界が薄れているのは、代替品の浸透もあると思います。

「CHANEL」より「CHANNEL」の商品がより良いと浸透してしまえば、本家の価値は下がってしまいます。

魚の市場価値って、わりとこんな感じで幅が薄れている感じもする。安くて美味ければ正義、みたいな。

高級魚とされているのはそれなりに理由があり、「そもそも少ない」「漁が難しい」「鮮度が命」などの要因があり、漁師の労働に対する対価です。

農業も該当しますが、それを安売りし、浸透してしまうと、割を食うのは生産者になります。

誰も好き好んで赤字を続けるわけもないし、離業していく方が多くなっていくのも事実。

安くて美味い寿司は結構なことですが、一皿100円がどれほどの犠牲の元で成り立っているかを、考えてみてください。

つーか産地を限定して販売すると、年平均700tの青森県から県魚が居なくなるくらいの販売力があると思うんですが……。

スポンサーリンク

にほんブログ村 釣りブログ 東海釣行記へ

高級魚の概念が壊れそうな「スシロー」の戦略
この記事の他にも
「とある浜松アングラーの一生」の情報は、
いいねしてチェック!
スポンサーリンク