おせちの顔役「タコ」の値上げがヤバイらしい。
今年は明石の不漁が話題になり、漁や釣りの自粛要請がありました。即効性がある対策じゃないので、効果は来年以降ですね。
「不漁=値上げ」の仕組みから、経済をちょっとかじってみませんか?
経済の基本は需要と供給
タコさんは紅白の縁起物。──ということで、年末に高騰しやすい食材です。
他にはエビ・カニ・カマボコなど。漁期が合うのも一因だけど、一年で最も瞬間的に売れる理由は「おせち」による消費行動ですね。

タコの値段が上がったのは、見込まれる消費より水揚げが少ないため。
国産は昨年の低水温と獲りすぎの影響で資源はジリ貧。期待される外国産も同じ状況で、見込まれる水揚げ量(対消費)に届かない。
なら誰よりも金を積んで、自分だけ買うようにするしかない!
──それだけ年末のタコはモテモテなんです。
これが需要がない時期だと、たとえ不漁でも消費が少ないから、価格は上がりようがありません。
全国ニュースにならず、地方紙が小さく取り上げるくらいでしょう。
スーパーで買い物をしていると経済に強くなる?
近年は自然災害が多く、農作物の価格変動が話題になることが多い。
昨年でいえば冷害による野菜の高騰。鍋の季節だったので、白菜がプラチナ価格になって話題でした。「キャベツでも鍋はできるんだよ!」みたいなニュースも。
今年でいえば北海道地震で牛乳が出荷できず品薄、合わせてそれを使う食品も。大雨による被害で露地栽培がダメージを負ったり、暴風で果樹園がダメになることもあります。
──なんにせよ、ワンシーズン待てば元どおりにはなるんです。
でも「今すぐ欲しい! これだけ欲しい!」なんて声もあるし、それが価格の上昇に繋がる。
例えば100均で買える物でも、SNSで話題になると地域から消失します。そんな時でも個人取引なら、送料込み300円で見つかったりする。
それでも買わないのが貴方だとしても、他の誰かは買うかもしれないし、300円で買って600円で売れるかもしれない。
転売だと悪者扱いされても、需要があるからこそ成り立っているのです。
暗雲立ち込める駿河湾の桜エビ
駿河湾の桜エビは、秋漁の操業自粛が決まり、今年中の水揚げの見込みがない状況。
そのため現在市場にある桜エビは、今年の春漁かそれ以前の物になります。……春も記録的不漁でしたけどね。

供給がない状況でも、桜エビを使った料理やお土産で商売をしている業者は多い。
現在の状況が好転しなければ、漁師と飲食が共倒れなんてこともありえます。
国内でも水揚げ規制に資源管理が特に厳粛な桜エビ漁ですら、見込み漁獲量を維持できないのだから、水中の資源量を監視・管理するのは難題とわかります。
穿った見方なら、水産庁や研究者による水産資源量調査結果は信用ならない、とも考えられます。
どうせ「この海域の○㎥で網をはってこれだけ採れた。つまりこの空間にいる魚は△匹! 水域で統計すれば○㌧!」みたいな感じでしょう。
一部で全体を見通すなんて、無理な話ですよ。
年間水揚げ量を一定にすれば値段も安定するが──
そんなわけで、生鮮食品は生産量を常に一定にすることが課題です。
農業なら全天候型の室内栽培や無人管理など、これは漁業も同様。
現状で生産力に最も影響を与えるのはお天道様の機嫌なので、その課題をクリアすれば、生産者も収入が安定するし、家庭の懐事情も安定するわけです。
反面、需要を見越してガッツリ儲ける! ──ことができないので、商売としての旨味がなくなります。
人のために提供するか、金のために提供するか……。
生産者も商売人ですし、小金持ちには後者が多いですけど、根太く褒賞を貰えるレベルは前者が多いですね。
物の価値を決めるのは人それぞれ
魚1匹の値段を決めるのは販売側。それを選べるのは消費側。
静岡県内だとサンマ1匹は90円前後。産地の三陸方面だと70円前後もザラ。これが不漁時には約3倍も価格が上昇しました。
別にヤバイほど美味しいから高級ってわけでもなく、普段見るサンマが高くなっただけなので、売れ行きが悪いのは当然のこと。
私はその値段では要りませんが、季節柄どうしても食べたい人だっている。値段が高いからきっとメチャ美味いんだろうと買う人もいる。
需要と供給のバランスは数字で証明できますが、最終的な消費行動は人間の心理分析が要。
なので行動経済学がノーベル経済学賞をとったのも、市場分析にとって心理学が重要であると認められたことになるのでしょう。
企業で営業や商品開発に関わる人は、行動経済学を学んで損はないです。
“行動経済学”といえば難しく聞こえるでしょうけど、「思いやり(ホスピタリティ)」を言語で理論化した物。つまり接客のマニュアル化みたいな感じ。
言語化できればプログラムにも使えるから、AIやデータサイエンスにも使えるので、未来ある学問といえます。