「香魚」「渓流の女王」と称されるアユは、日本の夏を代表する魚です。浜松・天竜川では毎年6月の解禁とともにアユ釣りが始まり、地元アングラーが川へと繰り出します。しかし、釣ったアユをどう料理するか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
このページでは、天竜川・都田川で釣れるアユを最高においしく食べるための下処理から本格レシピまで、料理之進が徹底解説します。
浜松・浜名湖エリアのアユ事情
天竜川のアユ:全国屈指の清流が育てる
天竜川は長野県の諏訪湖を源流とし、南アルプスを縫うように流れて浜松市内で遠州灘に注ぎます。全長213km、水質清澄な天竜川は全国でも有数のアユ釣り河川として有名です。
天竜川のアユは水温が低い清流で育つため、身が締まっていて脂の乗りが良く、特有の清涼感ある「香り」が強いのが特徴です。アユの香りは「スイカのような」または「キュウリのような」と表現されることが多く、この独特の清涼感が「香魚」と呼ばれる理由です。
都田川のアユ
浜名湖に注ぐ都田川でもアユが遡上し、浜名湖周辺のアングラーに親しまれています。天竜川よりやや小ぶりですが、浜名湖の栄養豊富な汽水を経て川を遡上するアユは独特の風味があります。解禁時期は例年6月1日。
アユ解禁の時期と漁期
- 天竜川:6月1日解禁(友釣り・ルアー・毛針釣り)、10月31日まで
- 都田川:6月1日解禁(友釣り)、9月末まで
- 浜名湖産養殖アユ:通年入手可能(浜名湖水産振興センター等)
アユの下処理:料理前に必ずやること
うるか(内臓)を取るかどうか判断する
アユは内臓(うるか)ごと食べるのが美食家のスタイルです。苦みのある内臓が香りと一体になって、アユの最大の魅力である「苦香」を生み出します。ただし、大型のアユ(20cm以上)や食べ残しになりそうな場合は内臓を取り除いた方が食べやすいです。
うろこ・ぬめりの取り方
- アユを流水で洗いながら、指でぬめりを取る(ゴム手袋が便利)
- 塩を手に取り、アユ全体を軽くこすってぬめりを取る
- うろこはアユのうろこは非常に細かいので、スプーンの背でこそぎ落とす
- 再び流水で洗い、キッチンペーパーで水気を取る
内臓を取り除く場合
エラ下の部分に小さな切り込みを入れ、エラと内臓を一緒に引き出します。または肛門(尾に近い腹底)に竹串を刺し、回転させながら抜くと内臓だけを取り出せます(この方法は塩焼きの際に見た目を損なわない)。
アユ料理レシピ①:塩焼き(最高の食べ方)
アユといえば塩焼きです。炭火で丁寧に焼いたアユの塩焼きは、日本の夏の最高のごちそうの一つ。浜松の天竜川沿いの鮎料理店でも、シンプルな塩焼きが一番人気です。
プロが教える塩焼きのコツ
化粧塩(かざり塩):焼く前に尾びれと背びれに塩をたっぷりつける(ひれを立てた形に固める)。これにより見た目が美しくなり、焦げを防ぐことができます。
本体にも塩をまぶす:アユ全体に薄く塩をまぶす。塩を振りすぎると塩辛くなるので薄めが基本。
串の刺し方:「踊り串」と呼ばれる独特の刺し方が美しい。尾から口に向かって波を描くようにS字型に刺す。これによりアユが「泳いでいる」ように見え、均一に熱が通ります。
家庭での焼き方
- グリル焼き:グリルを十分に予熱してから強火で10〜12分焼く(途中で一度ひっくり返す)
- フライパン焼き:テフロンのフライパンを中火で熱し、蓋をしてじっくり15分。蓋をすることで蒸し焼き効果が出て身がふっくら
- 七輪・炭火:最高の仕上がり。強火で皮をカリッと焼き、弱火でじっくり火を通す
たで酢(タデの葉+酢+塩)を添えると本格的な食べ方になります。タデは川辺に自生することが多く、アユ釣り師はアユとともに持ち帰ることがあります。
アユ料理レシピ②:甘露煮(保存食にもなる定番)
甘露煮はアユを骨まで柔らかく煮た保存食です。冷蔵庫で1週間、冷凍なら3ヶ月保存できます。一度に大量に釣れた時に重宝します。
甘露煮の作り方
材料(アユ10〜15尾)
- アユ:10〜15尾
- 酒:100ml
- みりん:100ml
- 醤油:80ml
- 砂糖:大さじ4
- 水:200ml
- 生姜スライス:3〜4枚
作り方
- アユは下処理して水気を取る。内臓は取り除く
- フライパンや鍋にアユを並べ、酒・みりん・水を加えて中火で煮立てる
- アクを取り除き、砂糖・醤油・生姜を加える
- 落し蓋をして弱火で1時間以上煮る
- 煮汁が少なくなってきたら火を強めて照りを出す
- 骨まで柔らかくなったら完成(圧力鍋を使えば30分程度で完成)
アユ料理レシピ③:うるか(塩辛)
アユの内臓から作る「うるか」は、日本三大珍味の一つとして数えられる高級食材です。浜松の天竜川産アユで作るうるかは格別の風味があります。
うるかの種類
- 苦うるか:内臓(胆嚢含む)で作る。苦みが強く、日本酒に最高に合う
- 子うるか:卵巣・精巣で作る。まろやかな旨み
- 身うるか:身を混ぜる。食べやすい
うるかの作り方(基本)
- アユの内臓を取り出し、塩(内臓重量の10〜15%)をまぶす
- 清潔な容器に入れて冷蔵庫で7〜10日間熟成させる
- 毎日かき混ぜて、発酵が進んだら完成
完成したうるかは少量を白ごはんに乗せたり、日本酒の肴として少しずつ楽しみます。
アユ料理レシピ④:アユの刺身・薄造り
生きたアユ、または釣りたて直後のアユを活け造り・薄造りで食べるのは、天竜川沿いの料理店ならではの楽しみです。家庭でもスーパーや漁協直売所で活アユが手に入れば試せます。
三枚おろしにして皮を引き、薄く斜めに切ります。ポン酢または酢味噌で食べるのが定番で、アユ独特の清涼感ある香りが刺身では最も強く感じられます。
アユ料理レシピ⑤:アユの唐揚げ
小型のアユ(10〜15cm)が多く釣れた時は、片栗粉をまぶして揚げる唐揚げが最高です。骨まで食べられるよう低温(160℃)で10〜12分じっくり揚げます。レモンと塩で食べればビールが止まりません。
アユの保存方法と処理タイム
| 状態 | 保存方法 | 保存期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 活アユ(生きている) | 水温12℃以下の容器で活かす | 数時間〜1日 | 酸素補給が必要 |
| 鮮アユ(直後) | 内臓付きのまま冷蔵 | 当日〜翌日 | 必ず氷で冷やす |
| 下処理済み | ラップ包みで冷蔵 | 2〜3日 | 内臓を取り除く |
| 冷凍 | 真空またはラップ密封 | 2〜3ヶ月 | 解凍は冷蔵庫でゆっくり |
| 甘露煮 | 冷蔵庫保存 | 1週間 | 煮汁ごと保存 |
天竜川・浜名湖周辺のアユ料理店情報
自分で料理する前に、地元の名店でプロの味を体験してみるのもおすすめです。天竜川沿いには鮎料理を専門とする料理店が点在しており、塩焼き・うるか・天ぷら・フルコースを楽しめます。
また、天竜川漁業協同組合では漁期中にアユの直売も行っています。釣りが苦手な方でも新鮮なアユを入手できます。
まとめ:アユは「釣って食べて」こそ本物の価値がある
天竜川で友釣りして釣り上げたアユを、その日のうちに炭火で塩焼きにして食べる——これは浜松に住む釣り人だけが体験できる最高の贅沢です。市販のアユとは一味も二味も違う、清流の香りを纏った天竜川産アユの塩焼きは、一度食べたら忘れられない味です。
今年の6月解禁に向けて、アユタックルと料理道具の両方を準備しておきましょう。「釣って食べる」の充実感こそが、釣り人にとっての最高の報酬です。



