【訂正とお詫び】2026年7月27日
本記事はもともと、静岡県が全国の都道府県で初めて公認のフィッシングガイド認定制度を新設するとして、資格の等級区分、講習時間、受講料、運用開始時期や今後の日程まで具体的に書いていた。しかしその後の確認で、そのような制度は確認できなかった。制度創設の契機として挙げた事故、根拠として示した報告書、追随を表明したと紹介した他県の動きについても、いずれも実在を確認できなかった。裏取りができていない内容を事実として掲載し、読者に誤った情報を伝えたことをお詫びする。
本稿は同じURLのまま、確認できた事実だけに基づく内容へ全面的に差し替えたものである。旧記事にあった数値・日程・資格名の記載はすべて撤回する。以下では、釣りのガイドをめぐる資格や登録の実際がどうなっているのか、そして浜名湖や遠州灘でガイド・遊漁船を利用するときに何を確認すればよいのかを整理する。
訂正の内容|旧記事の記載と確認できた事実
旧記事の主な記載と、あらためて確認した事実を対照した。左列は旧記事が書いていた内容、右列が現時点で確認できた事実である。
| 旧記事の記載 | 確認できた事実 |
| 静岡県が公認するフィッシングガイドの認定制度を新設し、特定の時期から運用を始めるとした | 静岡県がそうした認定制度を新設したという事実は確認できなかった |
| 資格に等級区分があり、講習時間と受講料が定められている | 等級区分・講習時間・受講料のいずれも確認できなかった |
| 制度化に向けた意見募集や受講者募集の日程 | そうした日程は確認できなかった |
| 都道府県による公的なガイド認定として全国で初めての取り組みである | 「全国初」という点も誤り。都道府県による公的なアウトドアガイドの認定は、北海道が北海道アウトドア資格制度を平成14年度(2002年度)に創設しており、これが全国初とされている。ただし同制度に釣りの分野は含まれていない |
| 制度創設の契機として特定の事故を挙げた | その事故の実在を確認できなかった |
| 根拠として特定の報告書と、そこに示されたという釣り人口の数値を挙げた | 報告書も数値も確認できなかった。公表されている統計では、レジャー白書による釣り人口は2023年が510万人、2024年が540万人で、ピークは1996年の約2,040万人とされている |
| 他県が追随を表明したとする動きを紹介した | そうした動きは確認できなかった |
釣りのガイドに公的な資格制度はあるのか
旧記事が書いたような、都道府県が釣りのガイドを公認する制度は確認できなかった。では実際のところ、釣りのガイドという仕事はどんな枠組みの中にあるのか。整理すると、「民間団体の認定」と「船を使う場合の法律上の登録」という二つの層に分かれる。この二つは性格がまったく違うので、混同しないことが大事である。
都道府県のアウトドアガイド認定の例|北海道の制度に釣りは含まれない
都道府県が公的にアウトドアガイドを認定する制度そのものは、存在しないわけではない。北海道は北海道アウトドア資格制度を平成14年度(2002年度)に創設しており、これが都道府県によるものとしては全国初とされている。旧記事が「静岡県が全国初」と書いたのは、この点でも誤りだった。
ただし注意したいのは、北海道の制度に釣りの分野は含まれていないという点である。つまり、都道府県がアウトドアガイドを認定する仕組みには先例があるが、釣りのガイドを都道府県が公認する制度は、北海道の例を含めて確認できなかった。読者が「どこかの県では釣りガイドの県公認資格がある」と受け取らないよう、あらためて明記しておく。
釣りのガイド認定は、現在のところ民間団体によるもの
釣りのガイドに関する認定は、現在のところ民間団体が行っているものである。確認できたのは次の二つだ。
- NPO法人日本フィッシングガイド協会のフィッシングガイド認定プログラム。ただし現在は休止中である。
- 全日本釣り団体協議会(全釣り協)の公認釣りインストラクター。
いずれも民間の認定であり、行政が付与する資格ではない。したがって、これらを持っているかどうかは、ガイドを選ぶ際の判断材料の一つにはなっても、法律上の要件を満たしているかどうかとは別の話になる。逆に言えば、これらの認定を持っていないガイドが違法だということでもない。ここを取り違えると、後で述べる遊漁船業の登録の確認という、本当に大事な部分を見落とすことになる。
船で釣り客を漁場に案内する事業には、遊漁船業の登録が必要
ここからが実務上いちばん重要な話である。船を使って釣り客を漁場に案内する事業は「遊漁船業」にあたり、遊漁船業の適正化に関する法律に基づく登録が必要になる。ガイドという呼び方をしていても、船を出して客を釣り場へ連れて行くのであれば、この法律の枠組みの中にいる。
つまり、船で出るガイドについては「民間の認定を持っているか」よりも先に、「遊漁船業の登録を受けているか」を見るべきだということになる。前者は任意、後者は法律上の要件だからである。
遊漁船業の適正化に関する法律|2024年4月施行の改正で強化された点
同法は2023年6月2日公布、2024年4月1日施行の改正が行われている。改正で行われたのは、主に次のような内容である。
- 損害賠償措置の引き上げ
- 業務規程の整備
- 出航中止基準の明確化
- 記録の保存
- 業務主任者の実務研修の延長
利用者の立場から見ると、これらは「事故が起きたときの備え」と「そもそも出るか出ないかの判断」に関わる部分である。損害賠償措置は補償の備え、出航中止基準は荒天時に無理をしないための線引き、記録の保存は後から経緯をたどるための仕組みにあたる。だからこそ、利用する側も登録の有無や業務規程、損害賠償措置の有無を確認しておく意味がある。予約の前に一言尋ねるだけで済む話である。
船を使わない岸釣りのガイドは、遊漁船業の適正化に関する法律の対象外
一方で、船を使わない岸釣り(ショア)のガイドは、遊漁船業の適正化に関する法律の対象外である。したがって、公的な資格がなくても営むことができる。
浜名湖の岸辺や遠州灘の砂浜を歩いて案内してもらう形であれば、船を使わない岸釣りのガイドにあたる。ここで理解しておきたいのは、「対象外だから怪しい」という話ではないということだ。同法の登録の対象になるかどうかは、船を使う事業かどうかで分かれている。問題は、対象外の分だけ登録という形での事前確認の手がかりがなくなるため、利用者が自分で確かめる必要が出てくる、という点にある。
そして、旧記事が書いたような県の公認制度は確認できなかった。つまり現状では、岸釣りのガイドについて質を担保してくれる公的な資格の仕組みは見当たらない。選ぶ側の目が最後の防波堤になる。
ガイドや遊漁船を選ぶときに確認すること
ここまでを踏まえて、実際に予約する前に何を見ればいいのかを、船と岸に分けて整理する。
船で出るガイド・遊漁船を利用する場合
- 遊漁船業の登録を受けているかを確認する。これが最初の一点である。
- 登録票が掲示されているかを見る。掲示は利用者が確認してよい事項である。
- 業務規程が整えられているかを確認する。
- 損害賠償措置(保険)の有無を確認する。事故が起きたときに直接効いてくる部分である。
いずれも、利用者が確認してよい事項である。予約時や乗船前に尋ねることは、失礼でも面倒な客でもない。むしろ、こうした質問にきちんと答えられるかどうか自体が、その船を判断する材料になる。
岸釣り(ショア)のガイドを利用する場合
公的な資格制度がないため、次の点を自分で確かめる必要がある。
- これまでの実績。どのくらいの期間、どんな釣りを案内してきたか。
- 案内する範囲。どのエリア、どんな足場を歩くのか。自分の体力や装備と合っているか。
- 安全対策の説明があるか。危険な場所への立ち入り、天候や波の判断について説明があるか。
- 保険の有無。ガイド側が何らかの備えをしているかどうか。
これらは、聞けば答えられるはずの内容である。逆に、実績や安全面の質問をはぐらかされたり、「大丈夫です」以上の説明が出てこないようなら、いったん立ち止まったほうがいい。公的なチェックがない領域だからこそ、事前のやりとりで判断するしかない。
ライフジャケットの扱い|小型船舶は船室外で原則義務、陸釣りは義務ではないが着用をすすめる
ガイドを利用するかどうかにかかわらず、ライフジャケットについては整理しておきたい。
小型船舶に乗る場合は、小型船舶操縦者法により2018年2月から、船室外にいる乗船者の着用が原則として義務づけられている。遊漁船やガイドの船が小型船舶にあたる場合には、この原則が適用される場面だと考えておけばよい。乗船前や乗船中に船側から着用の指示があれば、必ず従いたい。
一方、陸からの釣りにライフジャケット着用の法的な義務はない。ただし義務がないことと、着けなくてよいことは別である。浜名湖の護岸や遠州灘のサーフ、テトラ帯や堤防での釣りは、足元が滑る、波を被る、風に押されるといった要素が常にある。法的な義務の有無に関係なく、着用を強くすすめる。
釣り人口の統計について
旧記事は、制度創設の背景として釣り人口の推移を挙げ、特定の報告書とその数値を引用していた。しかし、その報告書も数値も確認できなかったため、記載を撤回する。
公表されている統計として確認できるのは、レジャー白書による釣り人口である。2023年が510万人、2024年が540万人で、ピークは1996年の約2,040万人とされている。ピーク時と比べれば大きく減っている一方、直近では2023年から2024年にかけて増えている、という形になる。旧記事はこの部分に確認していない数値を持ち込んでいた。あらためて、確認できた数値のみを記す。
結局どうすればいいか
この記事の要点を、行動に移せる形でまとめる。
- 静岡県が釣りのガイドを公認する制度は確認できなかった。「県公認」をうたう案内があれば、まずその根拠を確かめること。
- 船を出すガイド・遊漁船を使うなら、遊漁船業の登録の有無が最優先の確認事項である。あわせて登録票の掲示、業務規程、損害賠償措置(保険)の有無を確認する。
- 船を使わない岸釣りのガイドは遊漁船業の登録対象ではなく、公的な資格制度もない。実績、案内する範囲、安全対策の説明、保険の有無を自分で確かめる。
- 民間団体の認定は判断材料の一つになるが、法律上の要件とは別物である。日本フィッシングガイド協会の認定プログラムは現在休止中であり、全釣り協の公認釣りインストラクターは民間の認定である。
- 小型船舶に乗る場合、船室外の乗船者はライフジャケット着用が原則義務。陸からの釣りに法的義務はないが、着用を強くすすめる。
資格や制度の名前を見て安心するのではなく、「船なら登録、陸なら説明」を自分の目で確かめる。これが現時点で読者にできる、いちばん確実な備えである。
最後に、誤った内容を掲載したことをあらためてお詫びする。今後は、制度や法令に関する記載について、一次情報で確認できたもののみを掲載する。
参考にした一次情報
- 北海道 北海道アウトドア資格制度のページ https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/500-outdoor/
- NPO法人日本フィッシングガイド協会 フィッシングガイド認定プログラムのページ http://www.fishing-guide.or.jp/admission/guide.html
- 全日本釣り団体協議会(全釣り協) 公認釣りインストラクターのページ http://www.zenturi-jofi.or.jp/i_towa/konin_ins1.html
- 水産庁 遊漁船業に関するページ https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/yugyo/what/attach/index.html
- 国土交通省 ライフジャケットの着用義務に関するページ https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
- レジャー白書(釣り人口の推計値)



