天竜川下流域は「中流でも河口でもない」独自のフィールド
天竜川の釣りといえば、上流の渓流域や船明ダム〜鹿島橋の中流域、あるいは掛塚港周辺の河口域がよく知られている。しかし、その間に挟まれた鹿島橋〜掛塚橋の約8kmの下流域は、意外にも情報が少ないエリアだ。
このエリアは中流域のような急流ではなく、河口域ほど潮の影響も強くない。川幅は200〜400mに広がり、ワンド状の地形や中洲、テトラ帯、消波ブロック護岸が点在する。流れの変化に富んだ地形が多彩な魚種を育んでおり、シーバス・コイ・ナマズ・テナガエビ・ウナギ・ニゴイなど、淡水と汽水が交わる独特の魚影を楽しめるフィールドだ。
何より嬉しいのは、上流や河口に比べて釣り人が圧倒的に少ないこと。週末でもプレッシャーが低く、のんびりと竿を出せる。この記事では、地元アングラーの視点から下流域の主要ポイントを5つに分け、季節別の狙い方・エントリールート・駐車場情報まで徹底的に解説する。
天竜川下流域の全体像とアクセス
エリア概要と地理的特徴
天竜川下流域は、浜松市東区(天竜川東岸)と磐田市(西岸)の境界を流れる区間だ。上流の鹿島橋(国道150号)から下流の掛塚橋(県道261号)まで、河川敷は広大な草地やグラウンドとして整備されている場所も多い。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 区間 | 鹿島橋(国道150号)〜掛塚橋(県道261号)約8km |
| 川幅 | 約200〜400m(増水時はさらに拡大) |
| 水質 | 中流域より濁りやすい。雨後は上流からの泥水が2〜3日残る |
| 潮汐影響 | 掛塚橋付近では大潮時に約30cm程度の水位変動あり |
| 河川敷利用 | サッカー場・野球場・ゲートボール場が点在。駐車場を兼ねる |
| 管轄 | 国土交通省浜松河川国道事務所(遊漁券不要区間) |
車でのアクセス
- 東名高速・磐田ICから:国道1号バイパスを西へ → 天竜川橋を渡らず側道から河川敷へ(約15分)
- 東名高速・浜松ICから:国道152号を南下 → 天竜川左岸堤防道路を下流へ(約20分)
- 国道150号(鹿島橋)から:橋の東西両岸に河川敷への降り口あり
堤防道路は普通車がすれ違える幅員だが、河川敷内のダート道は雨後にぬかるむことがある。SUVや軽トラでなくても入れるが、轍に注意してほしい。
電車でのアクセス
JR東海道本線・磐田駅から天竜川西岸まで約4km(自転車20分、タクシー10分)。東岸は天竜川駅が最寄りで堤防まで約2km。いずれも徒歩ではやや遠いため、折りたたみ自転車か車でのアクセスが現実的だ。
周辺施設
- トイレ:河川敷グラウンド横に仮設トイレあり(豊田町側・竜洋側)。ただし常時使用可能とは限らないため、コンビニでの事前利用を推奨
- コンビニ:鹿島橋東詰にセブンイレブン磐田鹿島店、掛塚橋西詰にファミリーマート磐田掛塚店
- 釣具店:イシグロ磐田店(鹿島橋から車10分)、フィッシングショップ天竜(磐田市内)
ポイント①:鹿島橋直下〜天竜川緑地(上流部)
ポイントの特徴
鹿島橋の橋脚周辺は、天竜川下流域の最上流に位置するポイントだ。橋脚が流れを分けることで複雑な反転流が発生し、シーバスとナマズの好ポイントになっている。
東岸側(浜松市側)は天竜川緑地として整備されており、サッカー場やグラウンドの駐車場(無料・約50台)からエントリーできる。護岸はコンクリートスロープで足場が良く、ファミリーでのコイ釣りにも適している。
西岸側(磐田市側)は河川敷のダート道を200mほど入った場所にテトラ帯があり、テトラの隙間を狙ったウナギのぶっこみ釣りが地元民に人気だ。
狙える魚種と時期
| 魚種 | 最盛期 | おすすめ釣法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シーバス | 4〜6月、9〜11月 | ルアー(ミノー・バイブレーション) | 橋脚の明暗部を狙う。夜釣りが有利 |
| ナマズ | 5〜9月 | トップウォーター(ジッターバグ・ノイジー系) | 日没後1時間がゴールデンタイム |
| コイ | 通年(4〜10月が活性高い) | ぶっこみ釣り(練りエサ・ボイリー) | 80cm超の大物実績あり |
| ウナギ | 6〜9月 | ぶっこみ釣り(ミミズ・アケミ貝) | テトラ際の夜釣り。日没〜22時 |
攻略のコツ
シーバス狙いなら、橋の街灯が水面に落とす明暗の境目がキモだ。明るい側から暗い側へルアーを通すのが基本で、アップクロスにキャストして流れに乗せるドリフトが効く。ルアーはシマノ・サイレントアサシン99Fやダイワ・モアザンスイッチヒッター85Sが実績が高い。
ナマズ釣りは、流心よりも岸際3m以内の浅瀬やテトラ際を重点的に探る。スミス・キャタピーやメガバス・シグレットといったノイジー系ルアーを着水後2〜3秒ポーズ、その後ゆっくり巻くと「ボフッ!」と出ることが多い。
ポイント②:豊田町河川敷〜中洲周辺(中央部・西岸)
ポイントの特徴
鹿島橋から約2km下流、磐田市豊田町エリアの河川敷は、大規模な中洲が発達している区間だ。本流と中洲の間に形成されるワンド状の流れは、流速が穏やかでテナガエビとハゼの一大生息地になっている。
西岸の堤防道路から河川敷へ降りると、草地の先にゴロタ石が敷き詰められた河原に出る。このゴロタ石の隙間がテナガエビの絶好の隠れ家で、5月下旬〜8月にかけて数釣りが楽しめる。
テナガエビ釣りの攻略法
天竜川下流域のテナガエビ釣りは、浜名湖のそれとはやや勝手が違う。流れがあるため、仕掛けを流されにくくする工夫が必要だ。
- タックル:のべ竿2.1〜2.7m。短めが操作しやすい
- 仕掛け:ウキなし脈釣り仕掛け。ガン玉B〜2Bを2個打ちして底を取る
- エサ:アカムシ(赤虫)が定番。ミミズの小さめでもOK
- 釣り方:ゴロタ石の隙間や、石の下流側にできるヨレにエサを送り込む。アタリは「ツンツン」と小さく穂先を引く感触。すぐに合わせず、3〜5秒待ってからゆっくり聞き合わせるのがコツ
- 時間帯:早朝5〜8時、夕方16〜18時が活性高い。真夏の日中は石の奥に隠れて反応が鈍る
1時間で20〜30尾は現実的な数字だ。持ち帰るならエアーポンプ付きバケツで泥抜きしてから素揚げや唐揚げにすると絶品。天竜川のテナガエビは浜名湖産に比べてやや小ぶりだが、身が締まっていて味は抜群だ。
コイ・ニゴイ釣り
中洲周辺のワンド部はコイの産卵場にもなっており、4〜5月の「乗っ込み」シーズンには80cm級がワンドに入り込む。ぶっこみ仕掛けに丸セイゴ12〜14号、ハリス4〜5号、練りエサ(マルキュー・鯉パワー等)で狙うのが定番。
ニゴイも多く、ルアーで外道として掛かることが多い。引きは強いがリリースが基本だ。ただし、ニゴイが反応するレンジ(ボトム付近)を把握しておくと、同じレンジでシーバスが食うこともあるので侮れない。
ポイント③:天竜川運動公園前〜新幹線鉄橋下(中央部・東岸)
ポイントの特徴
東岸の天竜川運動公園は、広い駐車場(無料・100台以上)とトイレを備えた好エントリーポイントだ。公園から堤防を越えると河川敷に出られ、護岸沿いを上下流に歩いてポイントを探せる。
特に注目は東海道新幹線の鉄橋下。巨大な橋脚が流れを複雑に変化させ、橋脚周りにはベイトフィッシュ(オイカワ・カワムツ)が群れている。このベイトを追ってシーバスが遡上してくるルート上にあたるため、4〜6月と9〜11月のシーバスシーズンには特に実績が高い。
リバーシーバスの狙い方
天竜川下流域のシーバスは、河口から潮に乗って遡上してくる個体が中心だ。鹿島橋付近まで上がってくることも珍しくなく、大潮〜中潮の上げ潮タイミングで活性が上がる。
| 条件 | 詳細 |
|---|---|
| ベストシーズン | 春(4〜6月):バチ抜け+稚アユ遡上パターン 秋(9〜11月):落ちアユパターン |
| 潮回り | 大潮〜中潮の上げ3分〜満潮前後 |
| 時間帯 | 夕マズメ〜夜間がメイン。朝マズメも可 |
| 推奨タックル | ロッド:9〜9.6ftシーバスロッド(ML〜M) リール:3000〜4000番スピニング ライン:PE1〜1.2号+フロロリーダー20lb |
| 実績ルアー | 春:にょろにょろ125(バチパターン)、スーサン(表層系) 秋:サスケ120裂波、コモモSF-125(ドリフト) 通年:VJ-16、VJ-22(バイブレーションジグヘッド) |
攻略の具体的な手順
- 到着したらまず水位と流速を確認。水面にゴミや泡が溜まるラインが「流れのヨレ」で、そこが第一級ポイント
- 橋脚のアップストリーム側(上流面)にキャストし、流れに乗せて橋脚の裏側をルアーが通過するようにドリフトさせる
- 反応がなければダウンストリーム側へ移動し、橋脚から20〜30m下流の反転流をクロスで攻める
- ボトム付近も忘れずに。VJ-16をボトムまで沈めてリフト&フォールで探ると、コイ科魚類を食っている居着きシーバスが反応することがある
70cm前後のレギュラーサイズが多いが、秋の落ちアユパターンでは80cmオーバーのランカーも混じる。ランディングネットは必携だ。
ポイント④:竜洋公園裏〜磐田市野球場周辺(下流部・西岸)
ポイントの特徴
掛塚橋の約2km上流、磐田市の竜洋エリアに位置するこのポイントは、河川敷が最も広くなる区間だ。西岸の竜洋スポーツ公園から堤防を越えてエントリーでき、駐車場(無料・80台以上)・トイレ・自販機と設備が充実している。
河原はゴロタ石と砂礫が混在し、ところどころにコンクリートの消波ブロックが入っている。この消波ブロック周りはウナギとナマズの好ポイントで、夜釣りでは竿を3〜4本並べて待つスタイルの釣り人をよく見かける。
ウナギ釣りの攻略法
天竜川下流域は静岡県内でも有数の天然ウナギ生息河川だ。浜名湖ほどの知名度はないが、良型のニホンウナギがコンスタントに釣れる。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| シーズン | 6月〜9月(水温20℃以上がベスト) |
| 時間帯 | 日没後〜23時。闇夜(新月前後)が有利 |
| タックル | 投げ竿2.7〜3.6m、スピニングリール3000番、ナイロン5号 |
| 仕掛け | 中通しオモリ10〜15号、ハリス3号30cm、ウナギ針13〜14号 |
| エサ | 太めのドバミミズ(自掘り推奨)が最強。市販のキジ(赤虫の塊)も可 |
| ポイント選び | 消波ブロックの際、テトラの切れ目、石畳と砂地の境目 |
コツはエサを投げたらひたすら待つこと。鈴をつけて穂先のアタリを待ち、「リンリン……リンリンリン!」と鈴が連続して鳴ったらゆっくりロッドを立てて合わせる。早合わせは禁物で、ウナギがエサを飲み込むまで10〜15秒は待つのが鉄則だ。
なお、静岡県内水面漁業調整規則により、全長25cm以下のウナギはリリースが義務づけられている。また、12月〜翌3月は禁漁期間なので注意してほしい。
ナマズトップウォーターゲーム
このエリアは浜松・磐田エリア屈指のナマズフィールドでもある。特に梅雨時期の増水後、水位が落ち始めるタイミングで岸際の浅瀬にナマズが差してくる。
使用ルアーはノイジー系がメインで、アーボガスト・ジッターバグ(3/8oz)のゴポゴポという独特のサウンドが効く。カラーはブラックや暗色系が夜間に視認性が高い(ナマズは水面のシルエットで獲物を判断するため、ルアーの色よりシルエットが重要)。
キャスト後は超デッドスローで巻く。リール1回転に2〜3秒かけるイメージだ。バイトは「バシャッ!」と派手に出るが、空振りも多い。ミスバイト後は3〜5秒ポーズ、その後またゆっくり巻き始めると再バイトしてくることが非常に多いのがナマズの面白いところだ。60cm級がアベレージで、最大70cm超も狙える。
ポイント⑤:掛塚橋上流〜汽水域移行帯(最下流部)
ポイントの特徴
掛塚橋の約500m〜1km上流は、淡水域と汽水域の境界にあたるエリアだ。大潮時には海水の影響がここまで及び、ボラの群れやクロダイの姿を確認できることもある。
東岸の堤防道路沿いに車を停められるスペース(5〜6台)があり、そこから河原へ降りられる。足場は砂泥底で、ウェーダーがあるとより広範囲を攻められるが、深みにはまらないよう注意が必要だ。特に上げ潮時は水位が急に上昇するため、常にエスケープルートを確認しておくこと。
汽水域ならではのターゲット
- シーバス:下流域で最も遡上個体が多いエリア。河口から直接入ってくるフレッシュな魚が多く、コンディションが良い。70〜80cm級の銀ピカ個体が期待できる
- クロダイ・キビレ:大潮の上げ潮時に河口から差してくる。6〜9月の高水温期にチャンスあり。ワームのボトムバンプで探る
- ハゼ:9〜11月にマハゼが溜まる。ちょい投げ仕掛け(天秤5〜8号+ハゼ針7号+アオイソメ)で手軽に狙える。15〜20cm級の良型が出る
- ボラ:通年大量にいる。狙って釣るなら吸い込み仕掛け(パン粉ダンゴ+サシアミ)。40〜50cm級は引き味抜群
濁りと水位の読み方
このエリアで釣果を分ける最大の要素は「濁り」と「水位」だ。天竜川は上流域のダム放流や降雨の影響を受けやすく、濁りが入ると一気に食いが渋くなる。
- ささ濁り(底が薄く見える程度):最高のコンディション。魚の警戒心が下がりつつ、ルアーやエサを見つけられる透明度。積極的に狙いたい
- カフェオレ濁り:厳しい。ルアーはチャート系やゴールド系のアピールカラーに変え、エサ釣りなら匂いの強いエサ(キビナゴ・サンマの切り身)にチェンジ
- 水位上昇中:増水が止まるまで入川しない。天竜川は水量が多く、一度流されたらまず助からない
国土交通省の「川の防災情報」サイトで天竜川・掛塚観測所のリアルタイム水位を確認してからエントリーする習慣をつけよう。
季節別カレンダーと年間攻略プラン
| 月 | 主要ターゲット | おすすめポイント | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1〜2月 | コイ(低活性) | ①鹿島橋直下の深場 | オフシーズン。防寒対策必須 |
| 3月 | コイ・ニゴイ | ②中洲周辺ワンド | 水温上昇で活性回復 |
| 4月 | シーバス(バチパターン)・コイ | ③新幹線鉄橋下・⑤汽水域 | 稚アユ遡上開始 |
| 5月 | シーバス・ナマズ・テナガエビ開幕 | ①〜⑤全域 | ベストシーズン突入 |
| 6〜7月 | テナガエビ最盛期・ウナギ・ナマズ | ②テナガ・④ウナギ&ナマズ | 梅雨の増水に注意 |
| 8月 | ウナギ・ナマズ・テナガエビ | ④竜洋公園裏 | 日中は暑さ対策必須。夜釣りメイン |
| 9〜10月 | シーバス(落ちアユ)・ハゼ | ③⑤シーバス・⑤ハゼ | 年間最大のシーバスチャンス |
| 11月 | シーバス終盤・ハゼ | ⑤汽水域 | 水温低下で魚が下流に集中 |
| 12月 | コイ(越冬準備の荒食い) | ①深場 | ウナギ禁漁期に入る |
安全対策と注意事項
増水・鉄砲水への備え
天竜川下流域で最も注意すべきは急な増水だ。上流の佐久間ダム・秋葉ダムからの放流や、遠方での集中豪雨により、晴れている下流域でも突如水位が上がることがある。
- 入川前に必ず水位情報を確認(川の防災情報サイト・天竜川ダム統合管理事務所の放流情報)
- 河原に降りたら常にエスケープルートを確認。中洲には絶対に渡らない
- サイレンが聞こえたら直ちに河原から退避。ダム放流の警報の場合がある
- ウェーダー着用時はベルトを必ず締める。水が入ると浮力で体が反転し溺れる原因になる
その他の注意点
- ゴミの持ち帰り:河川敷のゴミ問題は深刻。自分のゴミは当然として、余裕があれば周辺のゴミも拾って帰ろう
- 火気の使用:河川敷での焚き火・BBQは原則禁止。カセットコンロも芝生上では使用不可
- 駐車マナー:堤防道路上への駐車は厳禁。必ず河川敷内の駐車スペースか公園駐車場を利用する
- ヘビに注意:草むらにマムシが潜んでいることがある。特に夏場は長靴かブーツを履き、草むらに不用意に手を入れない
- 日焼け・熱中症対策:河原は日陰がほぼゼロ。夏場は帽子・日焼け止め・十分な飲料水を必ず持参する
まとめ:天竜川下流域は「通い込むほど面白い」フィールド
天竜川下流域・鹿島橋〜掛塚橋の区間は、中流域の渓相とも河口域の汽水域とも異なる独自のポテンシャルを秘めたフィールドだ。シーバスのリバーゲーム、ナマズのトップウォーター、テナガエビの数釣り、ウナギの夜釣り、コイの大物狙いと、一年を通じて多彩な釣りが楽しめる。
何より魅力的なのは、釣り人の少なさだ。浜名湖や河口域のように場所取りで苦労することはほとんどなく、広大な河川敷で思い思いのポイントに入れる。週末でもプレッシャーが低いぶん、魚のスレも少なく、素直にルアーやエサに反応してくれる。
まずは設備の整った天竜川運動公園(ポイント③)か竜洋スポーツ公園(ポイント④)からエントリーしてみてほしい。駐車場・トイレ完備で、初めてでも安心して釣りを始められる。通い込むうちに自分だけのポイントが見つかるはずだ。
安全に気をつけて、天竜川下流域の懐の深さを味わってほしい。



