天竜川下流域は「中流」と「河口」に挟まれた穴場フィールド
天竜川の釣りといえば、アユやオイカワが狙える中流域(秋葉ダム〜鹿島橋)か、シーバスやヒラメの実績が光る河口域が注目されがちだ。しかし、その間に位置する下流域——鹿島橋から掛塚橋にかけての約8kmの区間は、地元アングラーだけが通い詰める隠れた好フィールドである。
この区間の最大の魅力は、汽水域と淡水域の境界ゾーンであること。潮の干満の影響が鹿島橋付近まで遡上し、シーバスやハゼといった汽水魚が季節によって広範囲に分布する。一方で、コイやナマズ、テナガエビといった純淡水の魚種も健在で、一つの川で多彩なターゲットを楽しめる。
さらに、河口域のような爆風や高波のリスクが少なく、中流域のような渓流装備も不要。護岸からの気軽なアクセスで本格的な釣りができるのが下流域の大きなアドバンテージだ。この記事では、鹿島橋〜掛塚橋エリアの主要ポイントを護岸ごとに分解し、季節別の攻略法・駐車場・安全対策まで徹底的に解説する。
天竜川下流域の全体像とアクセス
エリアの地理的特徴
天竜川下流域は、浜松市天竜区と磐田市の市境を南北に貫くエリアだ。上流の鹿島橋(国道150号)から下流の掛塚橋(県道343号)まで、川幅は約300〜500mと広大。中洲が点在し、流れが複数の筋に分かれる区間がある。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 区間 | 鹿島橋(国道150号)〜掛塚橋(県道343号)約8km |
| 川幅 | 約300〜500m(中洲を含む) |
| 水質 | 上流側は淡水優勢、掛塚橋以南は汽水域 |
| 潮汐影響 | 大潮時は鹿島橋付近まで遡上 |
| 底質 | 砂利底主体、護岸際は捨て石・テトラ |
| 所在地 | 浜松市東区〜磐田市(両岸) |
車でのアクセス
- 東名高速・浜松ICから:国道152号を南下→国道150号を東へ→鹿島橋手前を右折(約25分)
- 東名高速・磐田ICから:国道1号バイパスを西へ→県道343号を南下→掛塚橋方面(約20分)
- 浜松市街から:国道150号を東へ直進(約30分で鹿島橋エリア)
電車でのアクセス
JR東海道線・磐田駅から遠鉄バス「掛塚」方面行きで約25分。ただし、バス停から釣り場まで徒歩10〜20分かかるため、車でのアクセスが圧倒的に便利だ。
駐車場情報
| ポイント名 | 駐車スペース | 台数目安 | トイレ |
|---|---|---|---|
| 鹿島橋西岸(浜松側) | 河川敷の未舗装スペース | 10〜15台 | なし |
| 鹿島橋東岸(磐田側) | 堤防沿い空き地 | 5〜8台 | なし |
| 竜洋すこやか公園周辺 | 公園駐車場(舗装) | 30台以上 | あり |
| 掛塚橋西岸 | 河川敷広場 | 15〜20台 | なし |
| 掛塚橋東岸 | 堤防下スペース | 8〜10台 | なし(コンビニ徒歩5分) |
主要ポイント① 鹿島橋周辺(上流側)
鹿島橋西岸(浜松側)の護岸
鹿島橋の浜松側橋脚下は、天竜川下流域で最もシーバスの実績が高いポイントの一つ。橋脚が生み出す明暗部にシーバスが着くのは川のセオリー通りだが、ここは橋脚の数が多く、流れの変化が複雑に絡むため、魚の着き場が豊富だ。
- ベストシーズン:4月〜11月(特に秋の落ちアユパターンが秀逸)
- 狙い目の時間帯:夜間のダウンクロスが基本。日没後1〜2時間と深夜2〜4時が時合い
- おすすめルアー:シンキングミノー9〜12cm(アイマ コモモSF-125、ジャクソン アスリート9S)、バイブレーション(コアマン IP-26)
- 足場:コンクリート護岸で足場は良好。ただし護岸上から水面まで約2mの落差あり
鹿島橋東岸(磐田側)のテトラ帯
磐田側は護岸際にテトラポッドが入っており、根魚やウナギの穴場となっている。テトラの隙間にブッコミ仕掛けを落とし込むと、ウナギやナマズがヒットする。
- ウナギ狙い:ミミズの房掛け、ブッコミ仕掛け(オモリ10〜15号)。日没直後から22時が勝負
- ナマズ狙い:トップウォーター系(スミス キャタピー、ジッターバグ)で護岸沿いをトレース
- 注意点:テトラ上での釣りは滑落リスクが高い。フェルトスパイクシューズ必須。単独釣行は避けたい
主要ポイント② 中間域・竜洋すこやか公園前
公園前の護岸(磐田側)
竜洋すこやか公園の南側を流れる天竜川沿いに、約500mにわたって整備された護岸がある。駐車場・トイレ完備でファミリー釣りに最適なポイントだ。
この護岸の特徴は、足元から水際までスロープ状に傾斜しており、子どもでも安全に水辺にアクセスできる点。ただし、増水時はスロープが水没するため、水位情報の事前確認は必須だ(国土交通省「川の防災情報」で天竜川・掛塚観測所のデータをチェック)。
| ターゲット | 時期 | 仕掛け・ルアー | ポイント |
|---|---|---|---|
| ハゼ | 7月〜11月 | ちょい投げ(ジャリメ・青イソメ) | 護岸から10〜20m沖の砂利底 |
| テナガエビ | 5月〜9月 | 玉ウキ仕掛け(赤虫・キジ) | 護岸際のゴロタ石周り |
| コイ | 4月〜10月 | 吸い込み仕掛け(練り餌) | 流心手前のヨレ |
| シーバス | 5月〜11月 | ミノー・バイブレーション | 護岸先端の流れ込み |
テナガエビ釣りの聖地——ゴロタ石エリア
竜洋公園前の護岸際に点在するゴロタ石帯は、浜松〜磐田エリア屈指のテナガエビポイントだ。6月〜8月の梅雨明け前後がピークで、2時間で30〜50匹の爆釣も珍しくない。
- 仕掛け:のべ竿1.5〜2.1m+玉ウキ仕掛け。ハリはテナガエビ用2〜3号、ハリス0.4号
- エサ:赤虫がベスト。キジ(ミミズの小型)でも可
- 釣り方:ゴロタ石の隙間にエサを落とし、ウキが沈んでも30秒〜1分待ってからゆっくり聞きアワセ。テナガエビは抱え込んでから食うので、早アワセは厳禁
- 時間帯:早朝5時〜8時がゴールデンタイム。日が高くなると石の奥に隠れて食いが渋くなる
- 持ち帰り:活かしバケツにエアポンプで持ち帰り、泥抜き1〜2日後に素揚げが絶品
主要ポイント③ 掛塚橋周辺(下流側)
掛塚橋西岸(浜松側)の河川敷
掛塚橋の浜松側には広い河川敷があり、車を横付けして釣りができる。秋〜冬のハゼ釣り最盛期には、投げ釣り師が並ぶ人気エリアだ。
掛塚橋付近は汽水域の中でも塩分濃度が高い区間で、マハゼの魚影が濃い。9月〜11月の落ちハゼシーズンには、15〜20cmクラスの良型が連発する。
- 仕掛け:ちょい投げ(2〜3本針、キス天秤8号)orミャク釣り(のべ竿3.6m)
- エサ:青イソメ一択。1パック(500円分)で半日遊べる
- 投点:護岸から15〜30m沖。ちょい投げで十分届く距離
- 底質:砂泥底で根掛かりは少ないが、流木やゴミが沈んでいる場所がある。仕掛けのロストを想定して予備は多めに
掛塚橋東岸(磐田側)のシーバスポイント
磐田側の橋脚周辺は、天竜川リバーシーバスの一級ポイントとして知られる。特に下げ潮のタイミングで浜名湖方面へ流れる潮流が強まると、橋脚裏のヨレにベイトフィッシュが溜まり、シーバスがボイルすることがある。
- ベストタイミング:大潮〜中潮の下げ3分〜7分。上げ潮はポイントが絞りにくい
- 攻め方:アップクロスでミノーを流し込み、橋脚裏のヨレでターンさせる。バイトはターン直後に集中する
- 実績ルアー:邪道 ヨレヨレ(14g)、ダイワ モアザン スイッチヒッター85S、シマノ サイレントアサシン99F
- ライン:PE1.0〜1.2号+フロロリーダー20lb。橋脚のコンクリートでリーダーが傷むため、こまめなチェックが必要
- サイズ:平均40〜60cmだが、秋の落ちアユパターン時には80cmオーバーのランカーも実績あり
季節別・ターゲット別攻略カレンダー
| 月 | 主なターゲット | おすすめポイント | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1〜2月 | コイ(寒鯉) | 公園前護岸の深場 | 練り餌で粘りの釣り。日中の暖かい時間帯に |
| 3月 | シーバス(バチ抜け) | 掛塚橋周辺 | ゴカイ類のバチ抜けに合わせてシンペンで |
| 4〜5月 | テナガエビ(走り)・シーバス | 公園前ゴロタ・鹿島橋 | テナガエビは5月後半から本格化 |
| 6〜7月 | テナガエビ(最盛期)・ナマズ | 公園前ゴロタ・鹿島橋東岸 | 梅雨の増水後は一時的に釣果ダウン |
| 8月 | ハゼ(デキハゼ)・テナガエビ | 掛塚橋西岸・公園前 | 小型主体だが数釣りが楽しい |
| 9〜10月 | ハゼ(良型)・シーバス(落ちアユ) | 掛塚橋全域・鹿島橋 | 年間最高のシーズン。両ターゲットが同時に狙える |
| 11月 | ハゼ(落ちハゼ)・シーバス | 掛塚橋西岸・掛塚橋東岸 | ハゼは深場に移動、投点を遠めに |
| 12月 | シーバス・ウナギ(終盤) | 鹿島橋・掛塚橋 | 水温低下で活性は落ちるが、型は出る |
タックル・装備ガイド
シーバスタックル
- ロッド:シーバスロッド8.6〜9.6ft ML〜Mクラス(ダイワ ラテオ 96M、シマノ ディアルーナ S90ML)
- リール:3000〜4000番(シマノ ストラディック 3000MHG、ダイワ カルディア LT3000-CXH)
- ライン:PE1.0〜1.2号+フロロリーダー16〜20lb
- 必携ルアー:ミノー9〜12cm×2〜3本、バイブレーション14〜26g×2本、シンキングペンシル×1本
ハゼ・ちょい投げタックル
- ロッド:コンパクトロッド1.8〜2.7m、またはちょい投げセット
- リール:小型スピニング2000番
- 仕掛け:キス天秤6〜8号+2本針(ハゼ針5〜7号)
- エサ:青イソメ(1cm程度にカットして使用)
テナガエビタックル
- 竿:のべ竿1.5〜2.1m(渓流竿の短竿でもOK)
- 仕掛け:市販のテナガエビ仕掛けセットが手軽。自作するなら玉ウキ+ハリス0.4号+テナガエビ針2号
- 小物:活かしバケツ、エアポンプ、先細りのハリ外し(テナガエビは針を飲みやすい)
共通で持っていくべき装備
- ヘッドライト:夜釣りが多いエリアなので必須。赤色灯モード付きが便利(魚を警戒させにくい)
- ライフジャケット:護岸からの転落リスクに備え、膨張式でもいいので必ず着用
- 長靴またはスパイクシューズ:護岸のスロープは苔で滑りやすい
- 虫除けスプレー:河川敷は蚊・ブヨが多い。特に6〜9月は必須
- ランディングネット:シーバス狙いなら5m以上の柄が必要(護岸から水面までの落差対策)
周辺施設・コンビニ・釣具店情報
コンビニ
- セブンイレブン磐田掛塚店:掛塚橋東岸から車で約3分。エサ切れ時の青イソメ調達は無理だが、食料・飲料はここで
- ファミリーマート浜松天竜川町店:鹿島橋西岸から車で約5分
釣具店
- フィッシング遠州 磐田店:掛塚橋から車で約15分。青イソメ・赤虫・練り餌など生き餌が充実
- イシグロ 浜松高林店:鹿島橋から車で約20分。品揃え豊富で、ルアーの補充にも対応できる
- かめや釣具 浜松店:鹿島橋から車で約25分。深夜営業なので夜釣り前の立ち寄りに便利
トイレ
竜洋すこやか公園のトイレ以外、釣り場周辺にトイレはない。長時間の釣行では事前にコンビニで済ませておくか、携帯トイレの持参を推奨する。
安全対策と注意事項
増水・急な水位変動に注意
天竜川は上流に佐久間ダム・秋葉ダムを抱えるダム放流河川だ。晴天でも上流の降雨によるダム放流で急激に水位が上昇することがある。以下の対策を必ず実行してほしい。
- 釣行前に水位を確認:国土交通省「川の防災情報」サイトで天竜川・掛塚観測所の水位データをチェック
- サイレンが鳴ったら即撤収:ダム放流時はサイレンが鳴る。聞こえたら荷物をまとめて堤防上に退避
- 河川敷への車の乗り入れ:増水時に車が水没するリスクがある。水位が上がりそうな日は堤防上に駐車すること
- 雨天・雨後の釣行は避ける:増水で濁りが入ると釣果も落ちる。無理する理由がない
足場の安全性
- コンクリート護岸:苔が付着している箇所は極めて滑りやすい。特に朝露のある早朝は要注意
- テトラポッド:鹿島橋東岸のテトラは大型だが隙間が大きく、転落すると自力脱出が困難。必ず2人以上で
- 河川敷の草むら:マムシの生息域。夏場は草むらに不用意に踏み込まないこと
ルール・マナー
- 遊漁券:天竜川はアユ・マス類の釣りに遊漁券が必要(天竜川漁業協同組合)。シーバス・ハゼ・テナガエビなど遊漁券対象外の魚種のみを狙う場合は不要だが、コイ釣りは組合の規定を確認すること
- ゴミの持ち帰り:仕掛けのパッケージ、切れたライン、エサの空き箱は必ず持ち帰る。近年、河川敷のゴミ問題で釣り禁止区域が増えている
- 駐車マナー:河川敷の未舗装スペースは農作業車両の通路を兼ねている場合がある。通路を塞がないように駐車すること
- 火気厳禁:河川敷でのバーベキューや焚き火は原則禁止。冬場の暖を取るなら使い捨てカイロで
地元アングラーの実践テクニック
落ちアユパターンのシーバス攻略(9〜10月)
天竜川下流域の年間ハイライトが落ちアユパターンだ。産卵を終えたアユが弱りながら流される9月下旬〜10月下旬、シーバスは狂ったように捕食モードに入る。
- ポイント選定:鹿島橋・掛塚橋の橋脚下、護岸のカーブでヨレが発生する場所
- 時間帯:夕マズメ〜日没後2時間が最も熱い。深夜はバイトが散発的になる
- ルアーセレクト:12〜14cmのフローティングミノー(アユカラー)をドリフトさせる。アイマ コモモSF-125 稚アユカラーが実績抜群
- アプローチ:アップクロスにキャストし、ラインスラックを出しながらナチュラルにドリフト。流れのヨレに差し掛かったところでトゥイッチを1〜2回入れると、弱ったアユの動きを演出できる
- ランディング:70cmオーバーが掛かることを想定し、ランディングネットは必携。護岸の高さがあるため、ネットの柄は5m以上を推奨
テナガエビの数釣りテクニック(6〜8月)
竜洋公園前でのテナガエビは、コツを掴めば初心者でも2時間で30匹は固い。以下は地元勢が実践するテクニックだ。
- エサ付け:赤虫は3〜4匹を房掛けにする。1匹掛けだとアタリが遠のく
- 合わせのタイミング:ウキがスーッと沈んでも、すぐに合わせない。30秒〜1分待って、ウキが横に動き始めたら聞きアワセ。テナガエビはエサを巣穴に持ち帰ろうとするので、この「持ち帰り行動」を利用する
- ポイントローテーション:一箇所で5〜6匹釣ったら2〜3m移動する。テナガエビは縄張り意識が強く、密集しすぎると警戒して食いが落ちる
- 泥抜き:釣ったエビは活かしたまま持ち帰り、きれいな水で1〜2日泥抜きする。これをやるかやらないかで味が別物になる
冬場のコイ釣り(12〜2月)
冬の天竜川下流域は閑散としているが、コイ師にとっては大型狙いのチャンスだ。水温が下がると小型は動かなくなるが、体力のある大型のコイは緩やかな流れの深みで餌を探し続ける。
- ポイント:竜洋公園前の護岸沖、流心と岸寄りの境目にある深み(水深2〜3m)
- 仕掛け:吸い込み仕掛け+練り餌(マルキュー 鯉パワー+大ゴイ)をダンゴに握って投入
- 時間帯:日中の水温が上がる10時〜15時が有望。朝夕は食いが渋い
- 実績:60〜80cmクラスが中心。過去には90cmオーバーの実績もある
まとめ——天竜川下流域は通い詰める価値のある万能フィールド
天竜川下流域(鹿島橋〜掛塚橋)は、派手さこそないものの、シーバス・ハゼ・テナガエビ・ウナギ・コイ・ナマズと多彩なターゲットが四季を通じて楽しめる懐の深いフィールドだ。
河口域のようなサーフの過酷さもなく、中流域のような遠征感もない。浜松市街や磐田市街から30分以内でアクセスでき、仕事帰りの夕マズメにサクッと1〜2時間竿を振るような使い方にも最適だ。
まずは以下のステップで始めてみてほしい。
- 初回は竜洋すこやか公園前から。駐車場・トイレ完備で、ハゼやテナガエビの数釣りで川の雰囲気を掴む
- 慣れてきたら掛塚橋で落ちハゼやシーバスにステップアップ
- 夜釣りデビューは鹿島橋の橋脚明暗部でリバーシーバスの醍醐味を味わう
天竜川下流域は、釣り人が増えすぎていないからこそ魚がスレておらず、素直な反応を見せてくれる。その「通い甲斐」をぜひ体感してほしい。



