浜名湖のウナギに「明るいニュース」が届いた──シラスウナギ遡上量が3年連続で増加
浜松といえばウナギ。地元アングラーにとっても、夏の夜釣りでぶっこみ仕掛けを投入し、鈴の音を待つあの時間は特別なものだ。しかしここ十数年、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定され、採捕規制は年々厳しくなり、「もう気軽にウナギ釣りはできないのか」という声が増えていた。
ところが2026年春、静岡県水産技術研究所が公表した最新データによれば、浜名湖・天竜川河口域におけるシラスウナギの遡上量が2024年シーズンから3年連続で増加していることが判明した。全国的にも遡上量は回復基調にあり、2026年漁期(2025年12月〜2026年4月)の国内採捕量は前年比約120%で推移している。
本記事では、この資源回復の背景にある要因を整理したうえで、2026年現在の採捕規制・遊漁ルールの最新情報、そして浜名湖・天竜川水系でウナギ釣りを楽しむアングラーが押さえるべきポイントを徹底的に解説する。「ウナギ資源が回復しているなら、もっと釣っていいの?」──その疑問に、正面から答えていきたい。
シラスウナギ遡上量の推移──数字で見る回復の実態
全国と静岡県の遡上量データ
水産庁および静岡県が公表しているシラスウナギ採捕実績をもとに、近年の推移を整理した。
| 漁期(12月〜翌4月) | 全国採捕量(kg) | 静岡県採捕量(kg) | 池入れ量上限(kg) |
|---|---|---|---|
| 2021年漁期 | 約17,100 | 約1,800 | 21,700 |
| 2022年漁期 | 約12,300 | 約1,200 | 21,700 |
| 2023年漁期 | 約15,200 | 約1,500 | 21,700 |
| 2024年漁期 | 約17,800 | 約2,000 | 21,700 |
| 2025年漁期 | 約19,500 | 約2,300 | 21,700 |
| 2026年漁期(速報値) | 約23,400 | 約2,800 | 21,700 |
注目すべきは、2026年漁期の全国採捕量が池入れ量上限(21.7トン)を超えた点だ。これは2014年以降に国際的な枠組みで設定された上限を、採捕可能量が初めて明確に上回ったことを意味する。静岡県単体でも2,800kgは過去10年で最高水準だ。
浜名湖・天竜川河口での体感変化
データだけでなく、現場でも変化は感じられている。浜名湖の湖西側や天竜川河口の汽水域でウナギを狙う地元アングラーからは、以下のような報告が相次いでいる。
- 2025年夏から、1晩で2〜3本のキープサイズ(40cm以上)が釣れる日が増えた
- 天竜川下流域(掛塚橋〜河口)で、以前より上流側でも釣果が出るようになった
- 浜名湖奥部(細江湖・猪鼻湖周辺)でのウナギ目撃情報が増加
- 秋の下りウナギ(産卵回遊個体)の目撃が複数の漁師から報告されている
もちろん、これらは統計データではなく体感レベルの話だが、シラスウナギ遡上量の増加が数年後の成魚資源に反映され始めている可能性を示唆している。
なぜウナギ資源は回復しつつあるのか──5つの要因
要因1:国際的な池入れ量規制の効果
2014年、日本・中国・韓国・台湾の4か国・地域がシラスウナギの池入れ量(養殖用に確保する量)に上限を設定した。日本の上限は年間21.7トン。この規制により、乱獲に一定の歯止めがかかったことが、10年後の現在になって成果として現れている。
要因2:河川環境の改善
天竜川水系を含む全国の主要河川で、魚道の改修・新設が進められてきた。静岡県では2020年代に入り、天竜川の堰堤に設置された魚道の改良工事が複数実施された。ウナギの遡上を阻害していた構造物が改善されたことで、河川中上流域まで分布域が広がっている。
要因3:浜名湖のアマモ場再生との相乗効果
本サイトでも2026年の浜名湖アマモ場再生事業について報じたが、アマモ場の回復はウナギにとっても重要だ。アマモ場はシラスウナギが遡上後に最初に定着する「ナーサリー(育成場)」として機能する。浜名湖南部のアマモ場面積が2020年比で約1.4倍に拡大したことが、稚ウナギの生残率向上に寄与している可能性がある。
要因4:海洋環境の周期的変動
ニホンウナギのシラスウナギは、マリアナ海嶺付近で孵化し、黒潮に乗って日本沿岸に到達する。この回遊ルートは海流の強弱や水温に大きく左右され、数年〜十数年の周期で遡上量が変動する。2024年以降の回復は、黒潮の流路が安定し、レプトセファルス(葉形幼生)の日本沿岸への到達効率が高まったことが一因と考えられている。
要因5:密漁対策の強化
シラスウナギの密漁は長年の問題だったが、2023年の漁業法改正により罰則が大幅に強化された(個人:3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金)。静岡県でも沿岸パトロールが増強され、違法採捕の抑止効果が出ている。浜名湖周辺でも、夜間の不審な網掛け行為に対する監視体制が強化された。
2026年現在のウナギ採捕規制──遊漁者が守るべきルール
「資源が回復しているなら自由に釣っていいのか?」──答えは明確にNOだ。ニホンウナギは依然としてIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでEN(絶滅危惧IB類)に指定されており、規制は緩和されるどころか、むしろ強化の方向にある。
静岡県内水面漁業調整規則の主なウナギ関連規定(2026年現在)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遊漁で使用可能な漁具 | 竿釣り(手釣り・リール釣り)、たも網 |
| 禁止漁具 | うなぎ筒、延縄、刺し網、電気ショッカー等 |
| 採捕禁止期間 | 10月1日〜翌2月末日(下りウナギ保護期間) |
| 採捕禁止サイズ | 全長25cm未満(静岡県は全国より厳しい基準) |
| 1日の持ち帰り上限 | 遊漁者は5尾まで(2025年より新設) |
| シラスウナギの採捕 | 許可制(遊漁者は採捕不可) |
| 遊漁券 | 天竜川水系は天竜川漁協の遊漁券が必要(日釣券1,500円〜) |
2026年に追加・強化されたポイント
- 持ち帰り上限の新設:2025年4月から静岡県全域で遊漁者のウナギ持ち帰りが「1日5尾」に制限された。これは全国に先駆けた措置で、違反には罰則が適用される。
- 禁漁期間の延長検討:現行の10月〜2月に加え、9月を追加する案が県の水産資源管理委員会で議論されている。下りウナギの産卵回遊を保護する目的で、2027年シーズンからの適用が見込まれる。
- 浜名湖特別区域の設定:浜名湖内の一部水域(細江湖のアマモ再生区域周辺)が「ウナギ保護重点エリア」に指定され、ウナギの採捕が通年禁止となった。具体的な区域は浜名漁協のウェブサイトで確認できる。
海面(遠州灘・浜名湖湖口部)での扱い
浜名湖の今切口付近や遠州灘の汽水域で釣れるウナギは、内水面漁業調整規則ではなく静岡県海面漁業調整規則の対象となる場合がある。海面側ではウナギに関する持ち帰り制限は現時点では設定されていないが、25cm未満のリリース義務は海面でも適用される。今切口周辺はエリアの線引きが曖昧なため、迷ったら内水面ルール(より厳しい方)に従うのが安全だ。
浜名湖・天竜川のウナギ釣り──2026年の実践ガイド
規制を正しく理解したうえで、合法的にウナギ釣りを楽しむためのポイントを整理しよう。
ベストシーズンとタイミング
- 解禁期間:3月1日〜9月30日(禁漁期の延長が決まれば8月31日まで)
- ハイシーズン:6月中旬〜8月下旬。水温が22℃を超えるとウナギの活性が上がる
- 時間帯:日没後30分〜深夜0時がゴールデンタイム。特に潮が動く時間帯(浜名湖は潮位変動が大きい)に食いが立つ
- 天候条件:雨後の増水時は大チャンス。濁りが入ると日中でも釣れることがある
- 月齢:新月周りの闇夜が有利。満月の明るい夜は活性が下がる傾向
浜名湖のおすすめポイント
| ポイント | 特徴 | 狙い目の時期 |
|---|---|---|
| 都田川河口(浜名湖北部) | 汽水域の泥底。良型が多い。駐車スペースあり | 6月〜8月 |
| 新居弁天周辺 | 潮通しが良く、回遊個体が狙える。夜釣りのメッカ | 7月〜9月 |
| 鷲津・湖西側の護岸 | 足場が良く初心者にも安全。小型が多いがアタリは頻繁 | 6月〜8月 |
| 細江湖周辺(保護区域外) | 淡水寄りの環境で居着き個体が多い。アマモ保護区域に注意 | 5月〜9月 |
| 雄踏・舘山寺温泉周辺 | 観光地だが夜間は静か。カキ殻の根回りが好ポイント | 6月〜8月 |
天竜川水系のおすすめポイント
| ポイント | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 天竜川河口(掛塚橋下流) | 大型の実績多数。増水後が特に有望 | 遊漁券不要(海面扱い) |
| 天竜川中流・鹿島橋付近 | 淵や瀬脇のテトラ周りにウナギが定位 | 天竜川漁協の遊漁券が必要 |
| 馬込川下流域 | 都市河川だが意外な好ポイント。60cm超の実績あり | ゴミに仕掛けが絡みやすい |
| 都田川中流域 | 浜名湖への流入河川。小規模だが魚影は濃い | 天竜川漁協の遊漁券が必要 |
基本タックルと仕掛け
ウナギ釣りのタックルはシンプルだ。高価な道具は必要ない。
- ロッド:万能竿またはコンパクトロッド(2.1m〜3.0m)。投げ竿でも可。ダイワ「リバティクラブ ショートスイング」やシマノ「ホリデーパック」が定番
- リール:小型スピニングリール(2500〜3000番)。ドラグは緩めに設定
- ライン:ナイロン3〜5号。PEラインは根ズレに弱いため推奨しない
- 仕掛け:ぶっこみ仕掛け(中通しオモリ8〜15号+ハリス3号30cm+ウナギ針13〜15号)
- エサ:ミミズ(最強エサ。太めのドバミミズが理想)、アオイソメ、テナガエビ、小ハゼの切り身
- 小物:鈴(ケミホタル付きが便利)、タオル(ウナギは滑る)、バケツ、ヘッドライト
釣り方のコツ
- 複数本出しが基本。2〜3本の竿を扇状に投入し、広範囲を探る
- エサはこまめに交換。30分アタリがなければ打ち返す。ミミズが死ぬと食いが激減する
- アタリは「鈴が鳴り続ける」まで待つ。ウナギは一度エサをくわえてから巣穴に戻ろうとする。最初のアタリで合わせると針掛かりしない
- 取り込みは一気に。ウナギは障害物に巻き付く習性があるため、ヒットしたら強引にゴリ巻きする
- 針を飲まれたらハリスごとカット。無理に外すとウナギを傷つける。キープする場合もリリースする場合も、ハリスを切るのが最善
資源回復を「釣り人の手で」加速させるためにできること
リリースの判断基準を持とう
法的にはキープサイズ(25cm以上)かつ5尾以内なら持ち帰り可能だが、資源回復を本気で応援するなら、もう少し踏み込んだ自主ルールを持ちたい。
- 40cm未満はリリース:25cm〜40cm未満の個体はまだ成熟前の可能性が高い。産卵に参加できるサイズ(おおむね50cm以上)まで育てるために、小型はリリースしたい
- 大型メス(60cm以上)もリリース検討:大型個体ほど産卵数が多く、資源回復への貢献度が高い。自己記録更新の喜びはあるが、写真を撮ったら戻すという選択肢もある
- 1回の釣行で2〜3尾を目安に:法定上限の5尾ではなく、食べきれる量だけ持ち帰る
釣果データの共有──「市民科学」への参加
本サイトでも報じた静岡県の「市民科学モニタリング」プログラムでは、ウナギの釣果データも収集対象となっている。釣れた場所、サイズ、時間帯、エサの種類などを報告することで、研究者の資源評価に直接貢献できる。スマートフォンアプリ「しずおか釣りモニター」から手軽に参加可能だ。
生息環境の保全活動
浜名湖周辺では、以下のような保全活動が行われている。アングラーの参加も歓迎されている。
- 浜名湖アマモ場再生ボランティア:毎年春に苗の移植作業を実施(浜名湖環境保全協議会主催)
- 天竜川クリーンアップ作戦:河川敷のゴミ拾い活動(天竜川漁業協同組合主催、年3回)
- 都田川の魚道モニタリング:魚道を通過する魚種の目視記録(都田川を守る会主催)
釣り場のゴミを1つ拾って帰るだけでも、ウナギの生息環境改善につながる。大げさなことではなく、毎回の釣行の「ついで」で十分だ。
今後の見通し──規制は緩和されるのか?
短期的な見通し(2026〜2028年)
結論から言えば、規制緩和の可能性は低い。理由は以下のとおりだ。
- シラスウナギの遡上量は回復傾向にあるが、1960年代のピーク時(年間200トン以上)と比べればまだ10分の1程度
- 水産庁は「持続可能な資源水準に回復したとは言えない」との立場を維持
- 2025年に新設された持ち帰り上限(5尾/日)の効果検証にはさらに数年が必要
- 禁漁期間の延長(9月追加)は2027年からの施行が有力
中長期的な見通し(2028年以降)
一方で、遡上量の増加が今後5年以上継続し、成魚の資源量にも明確な回復が確認されれば、以下のような変化が起こりうる。
- 持ち帰り上限の引き上げ(5尾→10尾など)
- 養殖用池入れ量の上限緩和(国際交渉が前提)
- 一部河川でのウナギ釣り振興策(放流事業の拡充など)
ただし、ニホンウナギの生態には未解明な部分が多く(産卵場所が特定されたのも2009年のこと)、楽観的な予測は禁物だ。「回復しているから大丈夫」ではなく、「回復しているからこそ、この勢いを止めないために慎重に」というのが、研究者・行政・漁業者の共通認識であることを覚えておきたい。
浜松アングラーとして──ウナギとの共存を考える
浜松はウナギの街だ。うなぎパイ、うな重、浜名湖養殖うなぎ──ウナギは浜松の文化そのものであり、地元アングラーにとっても特別なターゲットだ。
だからこそ、天然ウナギの資源回復は、浜松の釣り文化にとって最高のニュースだ。10年前、20年前と比べて確実に状況は良くなっている。その背景には、規制に耐えてきた漁業者の努力、河川環境の改善に取り組んできた行政と市民、そして密漁に「ノー」を突きつけてきた地域社会の粘り強い取り組みがある。
釣り人としてこの流れに乗れることは3つある。
- ルールを守る。禁漁期、サイズ制限、持ち帰り上限は最低限の約束だ
- 必要以上に獲らない。食べきれる量だけ持ち帰り、残りはリリースする
- データを残す。釣果を記録し、市民科学プログラムに参加する
この夏、浜名湖や天竜川で鈴の音が鳴ったとき、少し嬉しくなるはずだ。「ウナギが帰ってきている」──その実感を、次の世代にも残していこう。
まとめ──この記事のポイント
- 浜名湖・天竜川水系のシラスウナギ遡上量は3年連続増加。2026年漁期は過去10年で最高水準
- 回復の要因は、池入れ量規制・河川環境改善・アマモ場再生・海洋環境変動・密漁対策の複合効果
- 規制は緩和されず、むしろ強化方向。禁漁期延長(9月追加)が2027年から見込まれる
- 遊漁者の持ち帰りは1日5尾まで(2025年新設)。25cm未満はリリース義務
- 浜名湖・天竜川には依然として良いウナギ釣りポイントが複数あり、ルールを守れば十分楽しめる
- 釣り人ができる貢献は「ルール遵守」「自主的リリース」「釣果データの共有」の3つ
※本記事の規制情報は2026年4月時点のものです。最新の漁業調整規則は静岡県公式サイトおよび各漁業協同組合にご確認ください。採捕禁止区域の詳細は現地の標識・看板を必ず確認してください。



