【訂正・お詫び】「静岡県が遊漁船の安全基準を強化」は誤りでした|2026年10月から本当に変わる遊漁船の安全設備

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2026年・静岡県が遊漁船の安全基準を大幅強化|船長資格厳格化・AIS搭載義務化で浜名湖・遠州灘の沖釣りが変わる最新動向と利用者が知るべき新ルール

【訂正とお詫び】2026年7月27日

当サイトが2026年4月に公開した「2026年・静岡県が遊漁船の安全基準を大幅強化」という記事には、事実と異なる記述が多数含まれていた。記事が紹介した「静岡県独自の遊漁船安全認証制度(舞阪3隻・御前崎2隻が認証取得済み)」も「浜松市のフィッシングセーフティステーション」も実在しない。さらに改正遊漁船業法の施行日、船長資格の要件、損害賠償措置(保険)の金額、AIS搭載義務の中身も誤っていた。遊漁船の安全基準を強化しているのは静岡県ではなく国である。誤った情報を掲載し、船宿選びや予約の判断の材料にされた方にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

本記事は、水産庁と国土交通省が公表している資料だけを根拠に全面的に書き直したものである。結論から言うと、2026年10月に本当に変わるのは「遊漁船の安全設備の義務化」であり、その所管は国土交通省だ。以下、旧記事の誤りを対照したうえで、利用者(釣り客)の側から見て何を確認すればよいかをまとめる。

訂正の内容|旧記事の記載と確認できた事実

旧記事の記載(誤り)確認できた事実
静岡県が独自の遊漁船安全認証制度を2026年4月に試行開始し、舞阪3隻・御前崎2隻が認証を取得済みそのような県独自の認証制度は確認できない。遊漁船の安全基準を定めているのは国(遊漁船業法は水産庁、船舶の設備・船長の免許は国土交通省)である。重大事故の報告先は都道府県だが、基準そのものを作っているのは県ではない。旧記事はこの制度に関連して、認証を取得した隻数、県内での普及目標、県が無償提供するとしたアプリ、県内の事故事例にも触れていたが、いずれも確認できなかった
浜松市が2026年度予算で舞阪漁港にフィッシングセーフティステーションの設置を計画そのような施設も、その計画も確認できない
改正遊漁船業法が2026年10月1日に施行される改正法は令和5年法律第39号「遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律」として2023年6月2日に公布、2024年4月1日に施行済み
船長資格が厳格化され、水産庁が認定する20時間講習と実務経験5年以上が必要になるそのような要件は存在しない。遊漁船の船長に必要なのは国土交通省所管の特定操縦免許で、制度改正により講習は合計15時間以上。旧免許からの移行期限は2026年3月31日
損害賠償保険の下限が「対人1億円以上」に引き上げられる旅客定員1人当たり3,000万円以上から5,000万円以上へ引き上げ。既存事業者を含め2025年4月1日までに加入が必要とされた
旅客定員12名以上の遊漁船にAIS(船舶自動識別装置)の搭載が義務化される義務化されるのは「非常用位置等発信装置」で、簡易型AIS・AIS・EPIRBの3区分から航行区域に応じて決まる形。AIS単独の義務化ではなく、旅客定員12名以上といった線引きでもない
2026年に安全基準を強化するのは静岡県2026年10月1日から段階的に効いてくるのは国土交通省令による船舶設備の義務化。県独自の上乗せ制度は確認できない

2026年10月から本当に変わること|遊漁船の安全設備の義務化

ここからが本題である。国土交通省は、旅客船・遊漁船等に対して安全設備等の搭載を義務づける制度改正を進めており、遊漁船については2026年(令和8年)10月1日から順に適用が始まる。ポイントは3つある。

  • 対象は「遊漁船業にのみ供する船舶」。海上運送法の事業船と兼業している船は別のスケジュールになる。
  • 期限は「ある日を境に一斉に」ではなく、基準日以降、最初に受ける検査までという形。船検のタイミングは船ごとに違うので、対応の時期も船ごとにずれる。
  • すでに同等の設備を積んでいる船は、追加の搭載を求められない項目がある。
設備対象期限
法定無線設備遊漁船業にのみ供する船舶2026年10月1日以降、最初の中間検査または定期検査まで
非常用位置等発信装置(航行区域に応じて簡易型AIS/AIS/EPIRBのいずれか)遊漁船業にのみ供する船舶2026年10月1日以降、最初の定期検査まで
改良型救命いかだ等水温の低い海域を航行する船舶2026年10月1日以降、最初の定期検査まで
隔壁の水密化等遊漁船業にのみ供する船舶2027年(令和9年)4月1日以降、最初の定期検査まで

法定無線設備|「携帯電話があるから大丈夫」は通らない

沿岸5マイル・沿海の航行区域を走る船では、業務用無線または衛星電話を備えることが求められる。携帯電話は認められない。沖に出れば携帯の電波は当てにならないという当たり前の話が、制度の側からも明確にされたと考えればよい。遠州灘の沖に出るような船に乗るなら、船と陸との連絡手段が何なのかは知っておいて損はない。

非常用位置等発信装置|AISだけの話ではない

旧記事が「AIS搭載義務化」と書いたのは、この項目を単純化しすぎた誤りである。実際には簡易型AIS・AIS・EPIRBという3つの区分があり、どれを積むかは航行区域によって決まる。事業者が自由に選べるという話ではない。すでに搭載している船は追加不要とされている。要は「万一のときに船の位置が外に伝わる手段を必ず持つ」という趣旨で、機器の名前を覚えるより、その手段が確保されているかどうかが利用者にとっての実質だ。

改良型救命いかだ等・隔壁の水密化

改良型救命いかだ等は、水温の低い海域を航行する船舶が対象。隔壁の水密化等は遊漁船業にのみ供する船舶が対象で、少し遅れて2027年(令和9年)4月1日以降、最初の定期検査までとされている。いずれも浸水・転覆といった最悪の事態を想定した備えで、船体そのものに手を入れる項目もあるため、事業者側の負担は小さくない。

すでに終わっている改正|2024年4月施行の改正遊漁船業法

旧記事が「これから施行される」と書いた改正遊漁船業法は、すでに動いている。2022年4月の知床遊覧船事故を受けた安全対策の強化が背景にある。主な内容は次のとおり。

  • 損害賠償措置の引き上げ:旅客定員1人当たり3,000万円以上から5,000万円以上へ。瀬渡し(磯渡し・筏渡し・防波堤渡し等)では新設された「利用定員」1人当たりで算定する。既存事業者も含めて2025年4月1日までの加入が必要とされた。
  • 出航中止基準の明確化:営業海域に応じた明確な出航中止基準を業務規程に定めることが必要になった。「船長の勘」ではなく、あらかじめ決めた基準で中止を判断する建て付けである。
  • 記録の保存:出航前検査や乗務記録等の保存期間は1年間。
  • 遊漁船業務主任者の要件強化:実務研修が10日から30日へ延長された。登録の欠格期間も2年から5年へ。
  • 事故情報・安全情報の公表:重大事故は都道府県へ報告され公表される仕組みになり、事業者には安全情報をインターネットで公表する義務が課された。
  • 罰則:無登録営業は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科。改正による重罰化の中心は業務改善命令違反で、100万円以下の罰金から「1年以下の懲役または150万円以下の罰金(法人は1億円以下)」へ引き上げられた。

利用者にとって実務上いちばん効くのは、最後の「安全情報のインターネット公表」だろう。予約前にその船宿のサイトを見れば、何を公表しているかが確認できる。

船長の資格|特定操縦免許と2026年3月31日の移行期限

旅客船・遊漁船の船長には特定操縦免許が必要である。所管は国土交通省で、水産庁ではない。制度改正により講習は合計15時間以上となり、旧免許からの移行期限は2026年3月31日とされた。つまりこの部分は、旧記事が「これから厳格化される」と書いた時点で、すでに期限を迎える段階にあったことになる。

旧記事にあった「水産庁が認定する20時間講習」「実務経験5年以上」という要件は存在しない。

なお、遊漁船業務主任者には5年ごとの再受講の仕組みが従来からある(遊漁船業法施行規則)。これは2024年の改正で新設されたものではない。ネット上では「新しくできた制度」として語られることがあるが、以前からの仕組みだ。

利用者が船宿を選ぶときに見るポイント

ここまでを踏まえて、釣り客の側が確認できることを整理する。難しい話ではなく、予約の電話やサイトで確かめられる範囲のことである。

確認するもの見方・聞き方
遊漁船業者の登録票登録を受けた事業者は登録票を掲示する。乗船前に船着き場や事務所で目に入るかどうか。見当たらなければ聞いてよい
損害賠償措置(保険)旅客定員1人当たり5,000万円以上の水準に加入しているか。瀬渡しの場合は「利用定員」1人当たりでの算定になる
業務規程の出航中止基準どういう条件で中止するのかを聞く。判断基準が言葉で返ってくる船宿は、それだけで信頼度が違う。中止になった場合の扱いも予約時に確認しておく
安全情報の公表事業者にはインターネットでの公表義務がある。サイトに何も出ていない場合は、その理由を含めて確認する
無線・非常用位置等発信装置陸との連絡手段は何か。2026年10月以降の義務化にどう対応する予定か。船検の時期次第で対応時期が違うため、まだ搭載していないことが直ちに違反というわけではない
ライフジャケット貸してもらえるか、桜マーク(国土交通省型式承認)付きか

もうひとつ、旧記事を読んだ方に強調しておきたいことがある。「静岡県の認証を受けた船」という選び方は成り立たない。そういう制度がないからだ。認証マークの有無ではなく、上の表のような具体的な中身で判断してほしい。

ライフジャケット|船の上と陸の上で扱いが違う

小型船舶では、2018年2月から船室外にいるすべての乗船者に着用が原則義務づけられている(小型船舶操縦者法)。遊漁船に乗るなら、デッキに出ている間は着ているのが前提だ。選ぶときは桜マーク(国土交通省型式承認)付きのものにする。

一方、磯・堤防など陸からの釣りに法的な着用義務はない。ただし義務がないことと、着なくてよいことは別である。浜名湖周辺の護岸でも遠州灘のサーフでも、落ちれば同じことになる。義務の有無ではなく、自分の身を守る道具として考えたい。

結局どうすればいいか

  • 静岡県独自の安全認証を探す必要はない。存在しないので、探しても見つからない。
  • 見るべきは、登録票・損害賠償措置(保険)・業務規程の出航中止基準・安全情報の公表という、法律で決まっている4点。
  • 2026年10月1日以降は、無線設備と非常用位置等発信装置が順に義務になる。ただし「最初の検査まで」という期限なので、船ごとに対応時期が違う。予約時に予定を聞いてみるのがよい。
  • 船に乗ったら、船室の外ではライフジャケットを着る。これは2018年から続いている義務である。
  • 制度の細部は改正が続いている。ここに書いた内容も含め、最終的な確認は各機関の公式サイトで行ってほしい。

再発防止について

今回の誤りは、実在する国の制度改正と、実在しない県の制度を混同したまま記事化してしまったことに起因する。制度名・施行日・数値については、所管官庁の公表ページで確認できたものだけを書く運用に改める。確認が取れない情報は、推測で補わず記載しない。改めてお詫び申し上げます。

参考にした一次情報

  • 水産庁「遊漁船業法の改正について」 https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/yugyo/what/attach/index.html
  • 国土交通省「旅客船・遊漁船等に対する安全設備等の義務化」 https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_mn6_000021.html
  • 国土交通省「特定操縦免許制度について」 https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_mn10_000004.html
  • 国土交通省「ライフジャケットの着用義務拡大」 https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
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