この記事の結論を3行で
・太さ(mm)から選ぶと外します。メーカーが公表している「適合ハリス」の欄から逆に引くのが正解で、ヤマシタのゴムヨリトリならハリス2号で1.2mm、5号で2mm、10号で3mmが公式の対応です。
・長さは魚の大きさではなく「アタリを取る必要があるか」で決まります。ビシアジやアマダイの専用品は20〜30cm、コマセマダイは50cm〜1m、ワラサは1m固定というのがメーカーの答えです。
・「いらない」が成立するのは、軟らかい竿とナイロンハリスで小型を手持ちで釣るときだけ。細ハリスで良型、多点掛け、電動の一定速巻き上げ、このどれかが入ったら付ける側に倒します。
秋の乗合船が本格化する9月から11月は、ビシアジもコマセマダイもアマダイもワラサも同時に開幕する、船釣りでいちばん忙しい季節です。仕掛けを組み直すときに必ずぶつかるのが、クッションゴムの太さと長さをどう決めるかという問題ではないでしょうか。
ネットを見ると「カゴ釣りは2.5mmで30cm」「ライトアジは1.5mm」「コマセマダイは2mmの1m」といった数字が並んでいますが、どれも根拠の書き方がまちまちで、そもそも「クッションゴムなんていらない」という意見まで混ざっています。この記事では、ヤマシタ・ダイワ・ハヤブサが公式に公表している規格表だけを土台にして、太さと長さの早見表、釣り物別の組み合わせ、そして「いる/いらない」の境界線までを一気に整理します。数字はすべてメーカー公式ページの表記に合わせ、公表されていない項目は「公表なし」と正直に書きます。
結論:クッションゴムは太さではなく「適合ハリス」から逆算する
まず前提を整理します。クッションゴムに求められる仕事は大きく2つです。ひとつは魚が突っ込んだときの衝撃を伸びで吸収して、ハリス切れと口切れを防ぐこと。もうひとつは、名前が示すとおり糸の撚れを取ることです。ヤマシタの製品名が「ゴムヨリトリ」であることからも分かるとおり、この道具はもともと衝撃吸収と撚れ取りの二役を担っています。
ヤマシタは公式ページで「ハリス切れを防ぎ、魚の食い込みを助長します」と製品の役割を明記し、さらに太さごとの実質強度と適合ハリスを表で公開しています。つまり、太さを自分で計算する必要はまったくなく、公式の対応表を引けばよいのです。
「ハリス号数×0.5mm」という目安がどこで壊れるか
よく紹介される「ハリス号数に0.5を掛けた数字がミリ」という覚え方があります。この式を、ヤマシタのゴムヨリトリの公式適合表と突き合わせてみましょう。
ハリス2号なら式では1.0mm、公式は1.2mm。ここはほぼ合っています。ハリス5号なら式では2.5mm、公式は2mm。すでに1ランクずれます。ハリス7号なら式では3.5mm、公式は2.5mm。ハリス10号なら式では5mm、公式は3mm。ハリス18号なら式では9mmという存在しない太さになり、公式は3.5mmです。
つまりこの式は、ハリス2号から3号あたりの細番手でだけ粗い目安として使えるもので、5号を超えたあたりから完全に破綻します。しかもずれ方は太番手ほど大きく開いていきます。ラインナップ(1.2/1.5/2/2.5/3/3.5/4/5mm)で数えると、5号でおよそ1ランク、7号で2ランク、10号になると3ランク細いのが正解で、10号を超えると式の答えはそもそもラインナップに存在しない太さになります。式で買うと必要以上に太く硬いゴムを付けてしまい、食い込みも感度も落とすことになります。早見表を持ち歩くほうが確実です。
【早見表1】太さ×実質強度×適合ハリス(ヤマシタ ゴムヨリトリの公式規格)
ヤマシタの定番品「ゴムヨリトリ」の公式スペックです。強度は同社が「実質強度」と呼ぶ値で、破断強度の最小値を基に算出したものだと明記されています。カタログ上の理論値ではなく下限寄りの数字である点は、安全率を考えるうえで覚えておく価値があります。
| 太さ | 実質強度 | 適合ハリス | 公式にある長さ |
|---|---|---|---|
| 1.2mm | 3.9kg | 2号 | 20cm・30cm |
| 1.5mm | 4.8kg | 2.5号 | 20cm・30cm・50cm・1m |
| 2mm | 8.3kg | 5号 | 20cm・30cm・50cm・1m |
| 2.5mm | 15.0kg | 7号 | 20cm・30cm・50cm・1m・1.5m |
| 3mm | 16.4kg | 10号 | 30cm・50cm・1m・1.5m・2m |
| 3.5mm | 21.3kg | 18号 | 1m・1.5m・2m |
| 4mm | 25.4kg | 24号 | 1m・2m |
| 5mm | 43.0kg | 40号 | 1m・2m |
この表を見ると、太さが2.5倍(1.2mmから3mm)になる間に適合ハリスは5倍(2号から10号)になっています。太さと適合ハリスは比例していません。しかも1.5mmから2mmへ0.5mm太くしただけで、適合ハリスは2.5号から5号へ倍になります。細番手ほど刻みが細かく、太番手ほど大ざっぱに効いてくる、という非線形の関係です。手計算で当てにいくのが難しい理由がここにあります。
同じ太さでも中身は別物——1.2mmと1.25mmで強度が3倍違う
もっと決定的な話をします。「太さ」という指標そのものが、製品をまたぐと意味を持たなくなるのです。ヤマシタの現行ラインナップから、ほぼ同じ太さの製品を並べてみます。
| 製品名 | 太さ | 実質強度 | 適合ハリス |
|---|---|---|---|
| ゴムヨリトリ(定番) | 1.2mm | 3.9kg | 2号 |
| 厳選ゴムヨリトリ アマダイ | 1.25mm | 11.6kg | 6号迄 |
| ゴムヨリトリ(定番) | 1.5mm | 4.8kg | 2.5号 |
| ゴムヨリトリSS | 1.5mm | 3.9kg | 2.5号 |
| ゴムヨリトリ(定番) | 2mm | 8.3kg | 5号 |
| ゴムヨリトリSS | 2mm | 5.7kg | 5号 |
| ゴムヨリトリ(定番) | 2.5mm | 15.0kg | 7号 |
| ゴムヨリトリSS | 2.5mm | 9.2kg | 7号 |
| ゴムヨリトリ(定番) | 3mm | 16.4kg | 10号 |
| ゴムヨリトリSS | 3mm | 14kg | 10号 |
1.2mmの定番品は3.9kgでハリス2号までなのに、0.05mmしか太くない1.25mmのアマダイ専用品は11.6kgでハリス6号まで対応します。強度で約3倍、適合ハリスの号数でも3倍です。ゴムの素材と配合が変われば、同じ太さでもまったく別の道具になるということです。「アマダイ用は細いのに強い」と覚えるのではなく、「太さは強度の代わりにならない」と覚えてください。
もうひとつ読み取れるのが、定番品とSSの関係です。SSは同じ太さで強度が1割から4割ほど低いのに、適合ハリスの号数は定番品と同じに設定されています。SSは「ワンランク細いハリスを使用しても伸びで衝撃吸収」「軟らかい伸びで、口の軟らかい魚には特に効果的」という設計思想の製品で、強度で押すのではなく伸びで受け止めるタイプです。数字が低いから弱いのではなく、性格が違うと理解するのが正しい読み方になります。
メーカーによって公表している情報の粒度が違う
買う前に知っておきたいのが、メーカーによって公表している情報の粒度がまったく違うという点です。強度や適合ハリスを公開しているのはヤマシタで、ダイワとハヤブサは製品ページで太さと長さは示していますが、強度と適合ハリスの数値は掲載していません。
| メーカー | 製品 | 太さの範囲 | 長さの範囲 | 強度・適合ハリスの公表 |
|---|---|---|---|---|
| ヤマシタ | ゴムヨリトリ(定番) | 1.2〜5mm | 20cm〜2m | あり(実質強度と適合ハリスを表で公開) |
| ヤマシタ | 釣り物別の専用モデル各種 | 1.2〜3.5mm | 10cm〜1m | あり(モデルごとに表で公開) |
| ダイワ | サクサスクッションゴム | 1.0〜1.8mm | 10〜100cm | なし(製品ページに数値の記載なし) |
| ハヤブサ | ハイパースムースクッション | 1.5〜2.5mm | 20〜150cm | なし |
| ハヤブサ | 名人の道具箱 海上釣堀 ハイパークッション | 2mm・2.5mm | 15cm・30cm | なし(適合オモリ0.5〜4号を表示) |
ダイワのサクサスクッションゴムは1.0mmという細番手から用意されているのが特徴で、ライトな船釣り寄りのラインナップです。公式のメーカー希望本体価格はおおむね1,000円台から、1mクラスで2,000円台という設定になっています。クッションゴム自体に加えて、天秤側に付くスイベル付きスナップがゴムの線径ごとに最適化されている点が売りとされています。
ハヤブサのハイパースムースクッションは1.5mm・2mm・2.5mmの3種類に絞られていて、長さは20cmから150cmまで。太さの選択肢が少ないぶん、売り場で迷いにくい構成です。海上釣堀用の名人の道具箱シリーズは「ハイパーモビロン」という素材名を公表していて、2mm×15cmが適合オモリ0.5号から3号、2.5mm×30cmが2.5号から4号という区分になっています。
実務上のおすすめは、数値が公開されているヤマシタの適合ハリス表を物差しとして頭に入れておき、他社製品を買うときはその物差しに当てはめて太さを決めるという使い方です。太さと長さの表記はメーカー共通なので、換算の手間はありません。
【早見表2】長さの決め方——10cmから2mまで、何が長さを決めるのか
太さと違って、長さには公式の対応表がありません。そこで、メーカーが釣り物別の専用品にどの長さを設定しているかを逆に読むと、実務的な答えが見えてきます。
| 長さ帯 | この長さが設定されている釣り物(公式の専用品より) | 効き方の傾向 |
|---|---|---|
| 10〜15cm | ライトアジ(ヤマシタ 1.2mm 10cm、SS 1.5mm 15cm)、海上釣堀(ハヤブサ 2mm 15cm) | 感度を最優先。口切れ対策を最小限だけ入れる |
| 18〜20cm | 海上釣堀(ヤマシタ 2mm 18cm)、ライトアジ、アジ・イサキ、ライトウィリー五目、アマダイ | 短ハリス・手持ち・アタリを自分で取る釣り |
| 30cm | アジ・イサキ、ウイリー五目、アマダイ、海上釣堀(ヤマシタ 3mm 30cm、ハヤブサ 2.5mm 30cm) | 標準解。迷ったらこの長さ |
| 50cm | ウイリー五目、コマセマダイ | 中型狙いでハリスがやや長い釣り |
| 1m | コマセマダイ、ワラサ | ロングハリスと強い突っ込みの両方に備える |
| 1.5〜2m | 定番ゴムヨリトリの2.5mm以上のみに設定 | 大型・重量級。取り込みの取り回しは要注意 |
ここで注目したいのが、アマダイの扱いです。厳選ゴムヨリトリ アマダイは20cmと30cmの2サイズしかありません。アマダイは大型が来る釣りですが、ヤマシタは公式に「アタリは確実にとらえ、大型アマダイの3段引きをも余裕でかわす」と説明しています。つまり長さで吸収するのではなく、素材の強度と伸び方で吸収し、長さは短く抑えてアタリを殺さない設計です。
逆にワラサ専用品は2.5mm・3mm・3.5mmのすべてが1m固定で、短い設定が存在しません。ワラサはアタリが明確に出る釣りなので感度を犠牲にでき、その代わりに突っ込みの吸収を最大化しているわけです。
ここから導ける長さの原則はシンプルです。長さは魚の大きさではなく、アタリを取る必要があるかどうかで決まる。アタリを自分で取って掛けにいく釣りは短く、アタリは向こう合わせで突っ込みの吸収が最重要な釣りは長く、と覚えてください。
もうひとつの変数がハリスの長さです。コマセマダイのようにハリスを何ヒロも取る釣りでは、仕掛け全体が長くなるぶん投入時の取り扱いが難しくなり、1m級のクッションを足すと竿の長さに対して仕掛けが余ります。ハリスの長さそのものの決め方はハリスの長さは何ヒロか——釣り方別の長さ早見表で釣り方別の目安を整理していますので、クッションの長さと合わせて仕掛け全体の寸法を組み立ててみてください。
【早見表3】釣り物別の組み合わせ——メーカーの「専用品」が答えを出している
クッションゴム選びでいちばん確実なのは、その釣り物の専用品が出ているならそれを買うことです。ヤマシタは釣り物別の専用モデルを揃えていて、これは事実上「メーカーが出した釣り物別の正解表」として使えます。
| 釣り物 | 専用品(ヤマシタ) | 太さ | 長さ | 適合ハリス | 実質強度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ライトアジ | ゴムヨリトリ ライトアジSP | 1.2mm/1.5mm | 1.2mm=10cm・20cm/1.5mm=20cm・30cm | 2号/2.5号 | 3.9kg/4.8kg |
| ライトアジ(軟らかめ) | ゴムヨリトリSS ライトアジSP | 1.5mm | 15cm・20cm | 2.5号 | 3.9kg |
| ビシアジ・イサキ | ゴムヨリトリ アジイサキSP | 1.5mm/2mm | 1.5mm=20cm・30cm/2mm=30cm | 2.5号/5号 | 4.8kg/8.3kg |
| ライトウィリー五目 | ゴムヨリトリ ライトウィリー五目SP | 1.5mm/2mm | 20cm・30cm | 2.5号/5号 | 4.8kg/8.3kg |
| ウイリー五目 | ゴムヨリトリ ウイリー五目SP | 1.5mm/2mm | 1.5mm=30cm/2mm=30cm・50cm | 2.5号/5号 | 4.8kg/8.3kg |
| コマセマダイ | ゴムヨリトリ マダイSP | 2mm/2.5mm | 50cm・1m | 5号/7号 | 8.3kg/15.0kg |
| ワラサ | ゴムヨリトリ ワラサSP | 2.5mm/3mm/3.5mm | 1m | 7号/10号/18号 | 15.0kg/16.4kg/21.3kg |
| アマダイ | 厳選ゴムヨリトリ アマダイ | 1.25mm | 20cm・30cm | 6号迄 | 11.6kg |
| 海上釣堀 | 海上釣堀クッション | 2mm/2.5mm/3mm | 18cm・20cm・30cm | 公表なし(鉛0.8〜8号を内蔵) | 公表なし |
この表の読み方でひとつ補足します。ビシアジで「1.5mm」という数字がよく挙がりますが、これはアジイサキSPの細いほうが1.5mmであることと整合します。ただし同じ専用品に2mmも用意されているとおり、ハリスを2.5号で通すなら1.5mm、5号まで上げるなら2mmという分岐になります。船宿の指定ハリスが何号かを先に確認して、そこから太さを決めるのが順序です。ビシアジの釣り自体の組み立てはアジのコマセ船釣り完全ガイド——御前崎沖・遠州灘のビシアジとサビキ船でシーズンとタックル、乗合船の利用方法まで解説しています。
コマセマダイの「2mmの1m」も、マダイSPに2mm×1mの設定が実在することが根拠です。ハリスを太めの4号から5号で組むなら2mm、6号から7号まで上げるなら2.5mmという読み替えになります。タナ取りとコマセワークを含めた釣り全体の手順はコマセマダイ完全攻略——タックルとコマセワーク、アタリの取り方にまとめてあります。
なお海上釣堀用は、クッションにオモリが内蔵されているのが特徴です。ヤマシタの海上釣堀クッションは水中で目立ちにくい暗透色を採用し、2mm×18cmで鉛0.8号から3号、2.5mm×20cmで1号から3号、3mm×30cmで3号から8号という組み合わせが設定されています。ここは適合ハリスではなくウキの浮力とオモリ号数で選ぶ世界なので、他の船釣りとは選び方の軸そのものが違います。
「クッションゴムはいらない」派の言い分と、その裁定
ライトアジを中心に、「クッションゴムは付けないほうが釣れる」という主張は根強くあります。これは感情論ではなく、きちんと理屈があります。
いらない側に振れる4つの条件
第一に、繊細なアタリが取りにくくなること。ゴムが伸びる分だけ、魚が触った情報が手元に届くまでにワンクッション入ります。小型主体で渋いアタリを拾っていく展開では、これは実害になります。
第二に、竿がすでにクッションの役目をしている場合。胴から曲がる軟らかい竿は、それ自体が長大なクッションです。5対5に近い胴調子の竿で手持ちしているなら、ゴムの仕事は相当部分が重複します。
第三に、ハリスがナイロンの場合。ナイロンはフロロカーボンより伸びる素材なので、ハリスそのものが衝撃を吸収します。ナイロンの長めのハリスを使っているなら、クッションを足す必然性は下がります。
第四に、手返しと絡み。クッションを1本挟むだけで仕掛けは長くなり、投入時に絡む要素が増えます。数を釣る展開では、この時間ロスが効いてきます。
いる側に振れる5つの条件
逆に、次のどれかが当てはまるなら付ける側に倒してください。
ひとつ、口が軟らかい魚を狙うとき。アジは口切れの代表格で、ヤマシタもSSライトアジSPの説明で「自然な伸びで大型のアジでも口切れを防止」「一荷の際に本領発揮」と明記しています。
ふたつ、多点掛けを狙うとき。2尾3尾が同時に暴れると、荷重は単純に足し算では済みません。一荷のときこそクッションが効くというのがメーカーの説明でもあります。
みっつ、細ハリスで良型が出るとき。ハリスの号数を落として食わせたいのに、大型が来る可能性がある。この矛盾を埋めるのがクッションの本来の仕事です。
よっつ、電動リールで一定速に巻き上げるとき。手持ちなら竿で送ってやれる突っ込みも、電動の一定速巻き上げでは吸収先がありません。深場でスイッチを入れっぱなしにする釣りほど、クッションの有無が差になります。
いつつ、竿が硬い場合。先調子の硬い竿は感度が高い代わりに、衝撃を逃がす余地が少なくなります。
第三の選択肢——クッションを入れて、その代わりハリスを細くする
ここまでは「付けるか外すか」の二択で書いてきましたが、メーカーの製品説明を読むと、実はもうひとつの使い方が示されています。ヤマシタはゴムヨリトリSSを「ワンランク細いハリスを使用しても伸びで衝撃吸収」と説明し、ダイワもサクサスクッションゴムについて「従来クッションゴム線径を1ランク落とせる安心の強度設計」とうたっています。
つまりクッションゴムは、切られないための保険であると同時に、ハリスを細くするための道具でもあるということです。ハリスを1号細くできれば潮なじみが良くなり、仕掛けの動きが自然になって食いが立つ。感度を少し犠牲にしても、食わせる確率が上がるならトータルで勝てる、という損益計算が成立します。
この視点を持つと、判断の順序が変わります。「クッションを付けると感度が落ちるから外す」ではなく、「クッションを付けてハリスを1号落とし、その細さで食わせにいく」という組み立てができるようになります。渋い日ほど、この振り方が効いてきます。
劣化の見分け方と交換時期——公式が指示する「使用前のなじませ」
クッションゴムは消耗品です。しかも、切れるまで気づきにくいという性質があります。チェックポイントは3つです。
チェック1:表面の白濁と細かいひび
ゴムは紫外線と熱、そして空気中のオゾンで劣化します。表面が白っぽくくすんできたり、曲げたときに細かいひび割れが浮いて見えるようになったら、内部でも分子構造が傷んでいると考えてください。特に、曲げたり伸ばしたりした状態で保管したものは、力がかかっていた場所からひびが入ります。
チェック2:伸ばしたあとに戻らない
健全なゴムは、伸ばしても手を離せばほぼ元の長さに戻ります。使い込んだクッションは「腰が抜けた」状態になり、伸びたまま戻りきらなくなります。仕掛けを組むときに元の長さと見比べて、明らかに間延びしていたら交換のサインです。ダイワが自社製品の売り文句として「腰抜け」への強さを挙げているのは、裏を返せばこれがクッションゴムの代表的な劣化モードだということです。
チェック3:金具まわりの固定部
意外に見落とされるのが、ゴムとサルカンの接合部です。ここは応力が集中する場所で、ゴム本体が無事でも接合部だけ痛んでいることがあります。装着前に指で軽く引いて、ズレや浮きがないかを確認してください。
ヤマシタが公式に指示している「使い始めの一手間」
これは知られていない割に重要なのですが、ヤマシタはゴムヨリトリシリーズの多くの製品ページに「使用する際は切れない程度の力でしっかりゴムを伸ばして馴染ませてからご使用ください」という注意書きを載せています。買ってきたばかりのクッションをそのまま海に落とすのではなく、一度しっかり伸ばしてから使うのがメーカー指定の手順だということです。この一手間で伸び方が安定し、初回のいちばん危ない場面での挙動が読みやすくなります。
保管は、直射日光と高温を避けて、伸ばしたり折り曲げたりせず自然な状態で置いておくのが基本です。夏場の車内に仕掛け箱を置きっぱなしにするのがいちばん良くない扱いになります。シーズン初めに前年のクッションを引っ張り出したら、まず上の3チェックを通してから使ってください。
秋の遠州灘・御前崎で組むなら——釣り物別の現場セット
ここまでの早見表を、秋の遠州灘・御前崎周辺で実際に乗る船に当てはめてみます。船宿によって指定が違うので、最終的には予約時の確認が正解ですが、持ち込む候補としての組み立て方です。
ビシアジ・ライトアジ
ハリス1.5号から2号で通すライトアジなら、ライトアジSPの1.2mm×20cm、もしくは口切れが気になるならSSライトアジSPの1.5mm×15cmから20cm。ハリス2.5号までのビシアジなら、アジイサキSPの1.5mm×20cmか30cm。3号以上に上げる日は、同じシリーズの2mm(適合ハリス5号)へ1ランク上げると公式の対応範囲に収まります。秋は数釣りになりやすく多点掛けの機会が増えるので、この釣りに関してはクッションを入れる側に倒したほうが取り込みは安定します。
コマセマダイ
ハリス4号から5号ならマダイSPの2mm、6号から7号まで上げるなら2.5mm。長さは50cmと1mの選択で、ロングハリスを取るときほど1mが噛み合います。ただし仕掛け全体が長くなるので、投入時の取り回しには余裕をみてください。
ワラサ・青物
ハリス7号ならワラサSPの2.5mm、10号なら3mm、18号なら3.5mm。いずれも1m固定です。この釣りでは長さで迷う余地がなく、ハリスの号数だけで一意に決まります。
アマダイ五目
厳選ゴムヨリトリ アマダイの1.25mm×20cmか30cm。ハリス6号までカバーします。深場を電動で巻き上げる釣りなので、巻き上げ途中の突っ込みに対する備えとして効きます。潮が速くて仕掛けが暴れる日は30cm、アタリを丁寧に取りたい日は20cmという振り分けが自然です。大型が出ているからといって長さを足す必要はありません。そこは1.25mmで実質強度11.6kg・適合ハリス6号迄という素材側のスペックが引き受けています。
ショアのカゴ釣り
堤防からのカゴ釣りは、船と違って自分でアワセを入れる釣りです。長すぎるクッションはアワセが伝わらず、投げるときにも仕掛けが暴れます。定番ゴムヨリトリなら20cmから30cmの範囲で、ハリスの号数に合わせて太さを決めるのが扱いやすい組み方です。カゴ・ウキ・ハリスを含めた仕掛け全体の考え方はカゴ釣りとは——コマセで魚を寄せる仕組みと仕掛けの基本で、カゴやウキの選び方から遠投技術まで解説しています。
安全装備の確認も忘れずに
船釣りでは、小型船舶の船室外に乗船する人にライフジャケットの着用が義務づけられています。国土交通省の安全基準に適合したものには桜マーク(型式承認と検定の合格印)が付いていますので、自前で用意するならこの表示を確認してください。船宿の貸し出しを使う場合も、乗船前にサイズと股ベルトの有無をチェックしておくと安心です。秋は夜明け前に集合する船が増えるので、手元を照らすヘッドライトも用意しておきましょう。仕掛けを組み替える場面が多い釣りほど、明かりの有無が釣果に直結します。
まとめ——3つのルールで迷わなくなる
最後に、この記事の内容を実戦で使える3つのルールに圧縮します。
ルール1:太さはハリスの号数から、公式の適合表で引く。計算式に頼らない。ヤマシタのゴムヨリトリなら2号で1.2mm、2.5号で1.5mm、5号で2mm、7号で2.5mm、10号で3mm、18号で3.5mm。これだけ覚えておけば大半の船釣りは足ります。
ルール2:長さはアタリを取る必要度で決める。自分で掛けにいく釣りは20cmから30cm、向こう合わせで突っ込みを吸収したい釣りは50cmから1m。魚の大きさではありません。
ルール3:迷ったら専用品を買う。ライトアジ、アジ・イサキ、ウイリー五目、マダイ、ワラサ、アマダイ、海上釣堀には専用モデルが存在します。メーカーが釣り物ごとに答えを出してくれているので、それを使うのがいちばん外しません。
そして「いる/いらない」については、軟らかい竿とナイロンハリスで小型を手持ちで釣るときだけ外す価値がある、と割り切ってください。細ハリス、良型、多点掛け、電動巻き上げのどれかが混ざった瞬間に、クッションゴムは保険から戦力に変わります。秋の本番前に、手持ちのクッションを一度全部出して、白濁とひび、腰抜けの3チェックを通しておきましょう。


