妊娠中に食べていい釣り魚・週1回までの魚|厚労省の水銀注意16種の早見表2026

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妊娠中に食べていい釣り魚・週1回までの魚|厚労省の水銀注意16種の早見表2026

結論1:厚生労働省が妊婦向けに「食べる量の目安」を示している魚介類は16種だけです。釣り人が実際に手にする魚のうち該当するのは、キンメダイ・クロムツ・ユメカサゴ・キダイ(レンコダイ)といった中深場の魚と、クロマグロ・メバチ・ミナミマグロ・メカジキ・マカジキ・ヨシキリザメといった大型の回遊魚・サメ類に限られます。

結論2:アジ・イワシ・サバ・シロギス・カレイ・カワハギ・タチウオ・アオリイカ・マダコ・アサリなど、堤防や浜、浜名湖で釣れる魚介の大半は目安の対象外です。厚労省が集計した実測データでも、これらの総水銀の平均値はいずれも0.16ppm以下です。

結論3:この注意事項の対象は妊婦だけです。授乳中の母親・子ども・妊婦以外の大人は対象外だと厚労省が明記しています。目的は魚を減らすことではなく、水銀濃度の高い一部の魚に偏らないことです。

釣った魚を家に持ち帰って、家族で食べる。その家族の中に妊娠中の人がいるとき、「この魚は食べさせていいのか」という判断が必要になります。ところがインターネット上の情報は「マグロは危ない」「深海魚は避けたほうがいい」といった大づかみな話に流れがちで、クーラーボックスの中にいる具体的な魚の名前に答えてくれません。

この記事は、厚生労働省の「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(平成17年11月2日公表、平成22年6月1日改訂)と、その根拠になった約450種・約16,400検体の水銀濃度調査データを、釣り人が実際に釣る魚種に対応づけて整理したものです。数値はすべて厚労省の公表資料そのものから取っています。

Contents

厚労省が量の目安を示しているのは16種だけ——それ以外は対象外です

まず全体像を正確に押さえます。厚生労働省の注意事項が「1回約80gとして週に何回まで」という目安を示しているのは、魚介類16種類だけです。それ以外の魚介類については、注意事項は摂食量の目安を示していません。

対象は妊婦のみ。授乳中・子ども・一般の大人は対象外

注意事項のQ&A(平成22年6月1日改訂)は、対象者をはっきり限定しています。食品安全委員会の食品健康影響評価で、メチル水銀の悪影響を特に受けやすい対象(ハイリスクグループ)は胎児とされたため、対象は「妊娠している方または妊娠している可能性のある方」です。

授乳中の母親については、母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低いことが示されているとして、注意事項の対象としていません。小児についても、成人と同様の水銀の排泄機能を有しており脳への作用も成人と類似していること、セイシェル小児発達研究で子供の神経系の発達にメチル水銀に関連する有害影響が証明されなかったことから、対象外としています。

つまり、釣った魚を子どもに食べさせることについて、この注意事項は摂食量の目安を課していません。ここを混同して「深海魚は子どもに食べさせない」と考えるのは、資料の読み違いです。ただし厚労省は、妊婦以外についても、一部のクジラ・イルカなど特に水銀含有量の多い魚介類は偏って摂取しないなど、バランスの良い食生活を心がけてほしいと助言しています(Q&Aの問21)。

「食べるな」ではなく「偏って多量に食べるな」

注意事項の本文には、次のような一節があります。妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではない、水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀摂取量を減らすことで魚食のメリットを活かすこととの両立を期待する、という趣旨です。

同じ本文には、魚介類を全く食べない集団では高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されている、とも書かれています。この注意事項は「魚を減らすための文書」ではありません。

【早見表1】妊婦が注意すべき16種と、釣りで実際に釣れるかどうか

厚労省の表をそのまま転記し、右端に「日本の釣りで実際に対象になりうるか」の欄を足しました。目安はいずれも筋肉部位についてのものです。

摂食量(筋肉)の目安魚介類釣り人にとっての位置づけ
1回約80gとして2ヶ月に1回まで(1週間当たり10g程度)バンドウイルカ遊漁の対象ではありません
1回約80gとして2週間に1回まで(1週間当たり40g程度)コビレゴンドウ遊漁の対象ではありません
1回約80gとして週に1回まで(1週間当たり80g程度)キンメダイ/メカジキ/クロマグロ/メバチ(メバチマグロ)/エッチュウバイガイ/ツチクジラ/マッコウクジラキンメダイは深場船の主対象。クロマグロは30kg以上のみ遊漁の対象(30kg未満は周年禁止)。メカジキ・メバチは沖釣りで可能性あり。エッチュウバイガイは貝で、竿で釣れる相手ではありません
1回約80gとして週に2回まで(1週間当たり160g程度)キダイ/マカジキ/ユメカサゴ/ミナミマグロ/ヨシキリザメ/イシイルカ/クロムツ(平成22年6月追加)キダイ・ユメカサゴ・クロムツはいずれも中深場の船釣りで普通に釣れます。ヨシキリザメもオフショアで上がることがあります

キダイは水産庁の「魚介類の名称のガイドライン」で標準和名キダイ、名称例としてレンコダイが挙げられている魚です。神奈川では「ハナダイ」の地方名も記載されています。ただし同じ別表では、小名浜・小湊でチダイのことも「ハナダイ」と呼ぶとされています。チダイは16種に入っていないので、船宿で「ハナダイ」と言われたら、どちらの魚なのかを確かめてください。アマダイ狙いや中深場の胴突き仕掛けで数釣りになることがあるため、釣り人にとっては16種の中で最も身近な1種かもしれません。

16種のうちクジラ・イルカ類が5種、貝のエッチュウバイガイが1種を占めています。竿の対象になりうるのは残る魚10種で、釣り人の食卓に上る可能性があるのはこの範囲です。この点を押さえずに「16種も注意対象がある」と受け取ると、実態より過度に警戒することになります。

釣り人が本当に押さえるべきは中深場の魚です

釣りという趣味に限って言えば、注意事項が現実に効いてくる場面はほぼ中深場の船釣りに集中します。厚労省Q&Aは、食物連鎖の上位にあるサメやカジキなどの大型魚、一部のハクジラのほか、キンメダイのような深海魚等は比較的多くのメチル水銀を含んでいる、と説明しています。

キンメダイ:週に1回まで(1週間当たり80g程度)

厚労省の集計では、キンメダイの国内データは総水銀が145検体で平均0.654ppm、メチル水銀が102検体で平均0.535ppmです。総水銀の平均値でみると、16種のうち魚類の中ではメカジキ(1.003ppm)・メバチ(0.832ppm)・クロマグロ(0.687ppm)に次ぐ4番目で、週1回グループに入っています。なお16種にはクジラ・イルカ類が5種含まれており、これらはキンメダイよりさらに高い水準です。煮付け一切れがちょうど80g前後になりますから、妊娠中は「週に煮付け1切れまで」という理解で実務上ずれません。キンメダイという魚そのものについてはキンメダイ(金目鯛)完全図鑑で生態と深場船の釣り方を扱っています。

クロムツ:週に2回まで(1週間当たり160g程度)

クロムツは総水銀173検体で平均0.393ppm、メチル水銀142検体で平均0.339ppm。2010年6月の改訂で新たに追加された1種で、それ以前の資料には載っていません。古い記事や古いパンフレットを参照すると抜け落ちるので注意してください。クロムツの生態とスロージギング・テンヤでの狙い方はクロムツ(黒鯥)完全図鑑2026にまとめています。

ユメカサゴ:週に2回まで(1週間当たり160g程度)

ユメカサゴは総水銀177検体で平均0.361ppm、メチル水銀139検体で平均0.309ppm。中深場の胴突きで外道として数が出る魚ですが、目安の対象です。クーラーに何尾も入る魚なので、まとめて煮付けにする場面が想像しやすく、実質的にはキンメダイより注意が必要な局面が多いかもしれません。

アカムツ(ノドグロ)は対象外です

同じ中深場で並んで釣れるアカムツは、16種のリストに入っていません。厚労省の集計でも総水銀51検体で平均0.186ppm、メチル水銀31検体で平均0.171ppmと、クロムツやユメカサゴの半分程度です。「深海魚だから一律に危ない」という理解が成立しないことがここでわかります。アカムツの生態と釣り方はアカムツ(ノドグロ)完全図鑑を参照してください。同じ日に同じ船でキンメダイ・クロムツ・アカムツを狙う釣り方については中深場ジギング完全攻略で解説しています。

【早見表2】対象外の釣り魚は、実測でどのくらいの水銀濃度なのか

「対象外」とだけ言われても納得しにくいので、根拠になった実測データを釣り魚に絞って並べます。以下はすべて厚労省がまとめた国内調査(魚介類453種・16,437検体)の総水銀の平均値です。単位はμg/g、すなわちppmと同じです。

区分魚種検体数総水銀 平均値(ppm)
堤防・サーフの定番マアジ3780.049
マイワシ1590.024
シロギス1470.046
カワハギ2000.043
メジナ430.039
マハゼ400.011
青物・回遊魚マサバ2120.151
カツオ790.154
ブリ1990.145
ブリの中型(ハマチ)2190.103
サワラ1210.036
船・根魚・フラットマダイ4780.127
ヒラメ3760.062
スズキ6040.146
タチウオ1490.107
カサゴ470.123
アイナメ1480.105
イカ・タコ・貝アオリイカ270.080
スルメイカ1410.054
マダコ240.023
アサリ2540.008
参考:注意対象の魚キンメダイ1450.654
クロムツ1730.393
ユメカサゴ1770.361

表の読み方:暫定的規制値は総水銀0.4ppm・メチル水銀0.3ppm

厚労省は昭和48年に、魚介類の水銀の暫定的規制値を総水銀0.4ppmおよびメチル水銀0.3ppmと設定しています。ただしマグロ類、内水面水域の河川産の魚介類(湖沼産を除く)、深海性魚介類はこの規制値の適用から除かれています。一方、注意事項の16種の抽出は、これとは別の手続きです。Q&Aの問2によれば、総水銀の平均値が0.4ppmまたはメチル水銀の平均値が0.3ppmを超える魚介類を抽出し、そのうえで1回約80gを1週間に3回程度食べた場合に耐容量を超えてしまう魚介類について、摂食量の目安が示されました。しきい値の数字は昭和48年の暫定的規制値と同じですが、暫定的規制値のほうがマグロ類や深海性魚介類を適用から除いているのに対して、16種の抽出はその除外に縛られていません。現に16種にはクロマグロもキンメダイも入っています。

表2を見ると、注意対象になったキンメダイ・クロムツ・ユメカサゴが0.36〜0.65ppmという水準にあるのに対して、堤防で釣れる魚の大半は0.05ppm前後、イカ・タコ・貝は0.01〜0.08ppmと、桁が1つ違うことがわかります。

平均値であることの意味

この目安は、魚種ごとの平均メチル水銀濃度をもとに作られています。裏を返せば、同じ魚種の中の個体差は平均に均されています。実際、厚労省の集計表では最小値と最大値の幅がかなり広い魚種があり、たとえばヒラメは376検体の平均が0.062ppmである一方、最大値は1.080ppmです。クロマグロも平均0.687ppmに対して最大6.100ppmという記録があります。

個体差があること自体は、目安の作り方の前提です。ただし「1匹あたりの数値は測らないとわからない」という当然の限界は、頭の片隅に置いておく価値があります。だからこそ厚労省は、特定の魚に偏らせずバランス良く食べることを繰り返し求めています。

マグロは種類で答えが変わります

釣り人にとって最も誤解が多いのがマグロです。厚労省Q&Aは、マグロを一括りにせず種類ごとに分けて説明しています。

注意が必要な3種:クロマグロ・ミナミマグロ・メバチ

クロマグロ(本マグロ)は総水銀163検体で平均0.687ppm、メバチ(メバチマグロ)は113検体で平均0.832ppm。この2種は週1回まで。ミナミマグロ(インドマグロ)は102検体で平均0.506ppmで、週2回までです。

通常の摂食で差し支えない3種+ツナ缶

キハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、そしてツナ缶については、水銀含有量が低いことから妊婦であっても通常の摂食で差し支えないと明記されています。実測値でもキハダは209検体で平均0.270ppm、ビンナガは21検体で平均0.229ppm、メジマグロは36検体で平均0.165ppmです。

ただし、ここは釣り人がいちばん勘違いしやすいところなので、はっきり書いておきます。いま挙げた4つのうち、メジマグロだけは事情が違います。この「通常の摂食で差し支えない」という分類が効くのは、あくまで市販のメジマグロやツナ缶を食べる場面であって、自分で釣ったメジサイズについては次のとおり別の話になります。

水産庁は、小型のクロマグロ(30kg未満)の採捕は、船舶からの釣りあるいは防波堤などの陸釣りを問わず周年禁止になっている、釣れてしまった場合には直ちにリリースをしてほしい、と注意喚起しています。直ちにリリースをしなかった場合は、漁業法に基づく広域漁業調整委員会指示の違反になる可能性があるとも明記されています。同じページでは、秋にマダイやワカシのエサ釣り、カツオ狙いのルアー釣りでクロマグロの幼魚(地方名:メジ、ヨコワ、シビ等)が釣れることが想定される、として注意を促しています。

つまり、釣り人が自分で釣ったメジサイズのクロマグロを食卓に出す場面は、ルールを守る限り存在しません。遊漁で持ち帰りの対象になるのは30kg以上の大型魚のほうで、そちらは届出制・バッグリミット・採捕禁止期間といった規制の下に置かれています。水銀の目安の上で「クロマグロ=週に1回まで」に当たるのは、この大型魚のほうです。

週の組み立て方——2種類食べるなら半分ずつ

注意事項が実務で使いにくいのは、「複数の対象魚を同じ週に食べたらどうするのか」が抜けやすいからです。厚労省Q&Aの問12はこの点に具体例を示しています。

1回80gの実寸

厚労省が示している目安は次のとおりです。寿司・刺身は一貫または一切れ当たり15g程度、刺身は一人前当たり80g程度、切り身は一切れ当たり80g程度。つまり「1回80g」は、刺身なら一人前、煮付けや塩焼きなら切り身一切れ、寿司なら5〜6貫に相当します。

組み合わせたときの割り算

同じ週に食べる組み合わせ厚労省が示す調整の考え方釣り魚での具体例
週1回の魚を2種類それぞれ2分の1にするキンメダイ40gとクロマグロ40gを週1回ずつ
週1回の魚を3種類それぞれ3分の1にするキンメダイ・メカジキ・クロマグロを各27g程度
週1回の魚と週2回の魚それぞれ2分の1にするメカジキ40gとミナミマグロ80gを週1回ずつ
1回の量を減らす場合回数と量は交換できる週2回までの魚なら、1回40gで週4回まで/1回160gで週1回まで
食べ過ぎた週があった次の週に量を減らす中深場船で釣った翌週は対象魚を空ける

釣り人の生活パターンに引き直すと、こうなります。中深場に一度出ればキンメダイもクロムツもユメカサゴも同時にクーラーに入ります。この3種を同じ週に食べるなら、量を割り算する必要があります。逆に、翌週の釣行が青物やアジであれば、注意対象はゼロなので何も気にする必要がありません。

参考:公開データから計算された一般魚の回数目安

愛知県衛生研究所は、厚労省の公開データを使って、注意事項の対象外である一般の魚介類についても1週間の摂食回数の目安を試算し、2024年7月更新のページで公開しています。これは厚労省の公式目安ではなく同研究所の計算であることを断ったうえで紹介すると、1回80gとした場合、カツオが週2.0回、スズキが週2.2回、マダイが週2.5回、ブリが週2.2回、マサバが週2.1回、マアジが週6.4回、サンマが週6.0回、シロギスが週6.8回、マイワシが週13回といった数字になります。

同研究所は、15〜49歳の女性の平均一日魚摂食量が73.6gであることから1週間当たり500g程度と見積もり、注意すべき魚介類を1〜2回食べたら一般の魚介類を3〜5回、魚種が偏らないように組み合わせるという考え方を示しています。釣り人にとってはこちらのほうが実感に近いはずです。

「80g」と魚種を自分の手で確かめる道具

1g単位のデジタルキッチンスケール

厚労省の目安は「1回80g」が単位。切り身を量れば割り算がぶれない

釣魚の図鑑(魚種同定用)

クロムツは対象でアカムツは対象外。判断はまず魚種を正しく見分けることから

魚をおろす出刃包丁

1尾を80g前後の切り身に分けるには自分で切り分けるのが早い

小分け冷凍用のフリーザーバッグ

週1回・週2回の目安は週をまたぐ前提。1切れずつ小分けにして残りを冷凍する

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よくある不安に、厚労省の回答で答えます

妊娠に気づくのが遅れた場合はどうするか

厚労省Q&Aは、胎盤の形成は一般的に妊娠4ヶ月であること、体内に取り込まれた水銀は代謝・排泄され、その量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月であることなどから、妊娠に気づいた段階から水銀の摂取量をコントロールすることで一定の効果が期待されると回答しています。

毛髪の水銀濃度を測るべきか

妊婦であっても毛髪の水銀濃度等を測定することは必要ないとされています。諸外国でも妊婦に対して毛髪の水銀濃度の測定を勧めている国はない、とも記載されています。食品安全委員会の評価結果では、15歳から49歳の女性の毛髪水銀濃度分布を見た場合、99.9%の人が10ppm以下で、耐容量の算出の出発点となった11ppmを下回っていることが示されています。

エビ・サケ・タラは米国では対象なのに、日本では対象外なのはなぜか

この質問はQ&Aの問7に立てられています。日本の注意事項は国内に住む人向けであるため、国内で流通している魚介類の調査結果(約450種、約16,400検体)を基礎としており、その結果、エビ・サケ・タラ等の水銀濃度は低く、特に注意を促す必要があるものではないと判断されたと説明されています。海外の注意事項をそのまま日本に持ち込むと判断を誤ります。

加工食品やツナ缶は

加工食品は一般にいろいろな食材から作られているため、加工食品中の水銀濃度は妊婦であっても特に注意するようなものではない、というのが厚労省の回答です。ツナ缶については前述のとおり、通常の摂食で差し支えないと明記されています。

日本人の平均的な水銀摂取量はどのくらいか

厚労省の一日摂取量調査(平成11年〜平成20年の平均)では、水銀の摂取量は総水銀換算で1人1日当たり8.17μg。このうち魚介類から7.18μg(88.1%)、その他の食品から0.99μg(11.9%)です。摂取している水銀をすべてメチル水銀と仮定しても、食品安全委員会が設定した妊婦を対象とした耐容量の57%にとどまります。耐容量は2.0μg/kg体重/週で、体重50kgなら週100μg、1日当たり14.3μgに相当します。

魚を食べないことのリスクのほうが大きい

釣り人としてどうしても伝えておきたいのはここです。この注意事項は、妊娠中の食卓から魚を減らすためのものではありません。

注意事項の本文には、魚介類は良質なたんぱく質や、生活習慣病の予防や脳の発育等に効果があるといわれているEPA・DHA等の高度不飽和脂肪酸を他の食品に比べ一般に多く含み、カルシウムをはじめとする各種の微量栄養素の摂取源であるなど、健康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養特性を有している、と書かれています。そして、魚介類を全く食べない集団では高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されている、と続きます。

懸念されている胎児への影響についても、注意事項は具体的にこう書いています。例えば音を聞いた場合の反応が1,000分の1秒以下のレベルで遅れるようになるようなもので、あるとしても将来の社会生活に支障があるような重篤なものではない、と。この一文を読まずに数値だけを見ると、必要以上に怖くなります。

釣った魚を家族で食べることは、鮮度・産地・処理の全工程が見えているという意味で、むしろ食品としては上等な部類です。妊娠中に気をつけるのは16種の量だけで、それ以外は「偏らないように組み合わせる」で足ります。

この記事の適用範囲と、あえて書かなかったこと

適用範囲

本記事が扱っているのは、厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」の平成22年6月1日改訂版です。2026年8月時点で厚労省サイトに掲載されている最新版がこれで、これ以降の改訂は掲載されていません。対象は日本国内で流通・漁獲される魚介類であり、海外の注意事項とは対象魚種も基準も異なります。

また、目安はいずれも筋肉部位についてのものです。厚労省の表の見出しも「摂食量(筋肉)の目安」と明記されています。肝や卵巣といった部位については、この注意事項は数値を示していません。部位ごとの可食・不可食の判断は水銀とはまったく別の軸で、法令による禁止と自然毒に基づきます。こちらは魚の食べてはいけない部位 早見表2026で整理しています。

データの限界として明示されていること

厚労省Q&Aは、16種の抽出にあたって検体数が少ないもの、日本と諸外国で水銀濃度の差が大きいものなどは除外していると明記しています。つまり「リストにない=測って安全と確認された」ではなく、「リストにない=目安を示すだけの根拠が揃っていない魚種を含む」という理解が正確です。実際、集計表には検体数が1桁の魚種が多数あります。

たとえばクロメジナは、集計表では総水銀が7検体で平均0.394ppm、メチル水銀にいたっては1検体(1.300ppm)しかありません。この1検体だけを見ればメチル水銀0.3ppmを大きく上回りますが、クロメジナは16種に入っていません。厚労省は抽出にあたって検体数が少ないものなどを除外したと述べているだけで、個々の魚種について除外の理由までは示していません。「リストにない」にはこういうケースが含まれます。もちろんこれは、クロメジナに摂食量の目安が示されたという意味でもありません。

そのうえで厚労省は、注意事項に記載されている種類以外の魚介類については、その多くは水銀の量は低く、妊婦が食べても健康に影響を及ぼすようなレベルではない、と回答しています。

自治体独自の情報も確認を

東京都をはじめ複数の自治体が、同じ注意事項を自治体のサイトで周知しています。厚労省はこれに加えて、妊婦に注意事項を知ってもらうために母子健康手帳に掲載することを地方自治体に推奨している、とQ&Aの問22に記載しています。手元の母子健康手帳に該当ページがあれば、まずそれを確認するのが最短です。

まとめ:クーラーの中身で判断する

釣りから帰ってきて、妊娠中の家族に食べさせていいかを判断する手順はこうなります。

第一に、クーラーの中にキンメダイ・クロムツ・ユメカサゴ・キダイ(レンコダイ)・クロマグロ・メバチ・ミナミマグロ・メカジキ・マカジキ・ヨシキリザメがいるかを見ます。いなければ、量の目安を気にする必要はありません。16種の残りはクジラ・イルカ類5種と貝のエッチュウバイガイで、いずれも竿で釣れる相手ではありません。

第二に、いた場合は、週1回グループ(キンメダイ・メカジキ・クロマグロ・メバチ)は刺身一人前または切り身一切れで週1回まで、週2回グループ(キダイ・マカジキ・ユメカサゴ・ミナミマグロ・ヨシキリザメ・クロムツ)は同じ量で週2回まで。複数種を同じ週に食べるなら、それぞれ半分または3分の1にします。

第三に、その週の残りは対象外の魚で埋めます。アジ・イワシ・サバ・キス・カワハギ・アオリイカ・マダコ・アサリは、いずれも実測の総水銀平均が0.2ppm未満で、厚労省は目安を示していません。貝でひとつだけ例外があり、エッチュウバイガイ(総水銀の平均0.417ppm)は16種に入る「週に1回まで」の対象です。魚種を偏らせないことが、この注意事項の実質的な中身です。

そして最後に、対象は妊婦だけであることを忘れないでください。同じ食卓の子どもにも、授乳中の家族にも、この目安は適用されません。

出典

  • 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(平成17年11月2日公表、平成22年6月1日改訂)魚介類に含まれる水銀について
  • 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項のQ&A」(平成22年6月1日改訂)
  • 厚生労働省「魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会 平成22年5月18日配付資料
  • 厚生労働省報道発表資料「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」平成17年11月2日
  • 水産庁「魚介類の名称のガイドラインについて」(別表・魚介類の名称例)
  • 水産庁「小型のクロマグロに関する注意喚起」/「クロマグロ遊漁の部屋」
  • 愛知県衛生研究所「魚介類中の水銀濃度から魚の食べ方を考える」(2024年7月8日更新)
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