【訂正とお詫び】2026年7月27日
このURLで以前公開していた記事には、重大な事実誤認があった。「浜名湖でワタリガニ(ガザミ)の資源が急回復し、2025年の漁獲量が過去10年で最高水準に達した」という趣旨の記述には裏付けとなる公表資料がなく、公式統計はむしろ減少を示している。さらに「遊漁のカニ網は1人5個まで」という記述は誤りで、浜名湖の遊漁ではそもそもカニ網を使うことができない。読者を漁業調整規則の違反に導きかねない内容であり、深くお詫びする。
アサリについて「稚貝密度が回復傾向」としたのも事実と逆であり、組合名の表記にも誤りがあった。正しくは浜名漁業協同組合である。本記事は、一次情報で確認できた内容だけを用いて全面的に書き直したものである。旧記事の記述はすべて撤回する。
なお、以下で反証として示す2025年の漁獲数値は、公表資料で確認できたノコギリガザミ(地元名ドウマン)のものである。ガザミ(ワタリガニ)単独の2025年漁獲数値は、公表資料では確認できなかった。
訂正の内容|旧記事の記載と確認できた事実
| 旧記事の記載(誤り) | 一次情報で確認できた事実 |
| 2025年のガザミ漁獲量が約85トンに達したとする記述 | その数値を裏付ける公表資料は確認できない。静岡県水産・海洋技術研究所浜名湖分場の広報誌「はまな」591号(令和8年3月)の「2025年の浜名湖漁獲統計」では、ノコギリガザミ(地元名ドウマン)の2025年漁獲は4,970キログラム、前年(6,676キログラム)に対する比は0.74で減少している。なお同統計でガザミ単独の数値は確認できない |
| 過去10年で最高水準の漁獲量を記録したとする記述 | 同統計は「重要魚種は前年よりも減少」と記している。カニ類を主にとる漁具である袋網の漁獲は、全魚種を合計しても年40.6トン。単一の魚種で85トンという数字は桁が合わない |
| 遊漁のカニ網は1人5個まで使用できるとする記述 | 浜名湖の遊漁でカニ網は使用できない。静岡県漁業調整規則第43条第1項が定める、漁業者以外の者が使用できる8つの漁具・漁法にカニ網は含まれない。違反は同規則第58条により科料 |
| アサリの稚貝密度が回復傾向にあるとする記述 | 2025年(暦年)の浜名湖のアサリ漁獲量は全月0キログラム(2024年は180キログラム)。同統計に「2025年はアサリ水揚げが無かった」と明記されている |
浜名湖のドウマン(ノコギリガザミ)は増えていない|2025年の漁獲統計
まず数字を確認しておきたい。静岡県水産・海洋技術研究所浜名湖分場が発行する広報誌「はまな」591号(令和8年3月)には、「2025年の浜名湖漁獲統計」が掲載されている。ここに載っているノコギリガザミ、つまり地元でドウマンと呼ばれるカニの2025年漁獲は4,970キログラムだった。前年は6,676キログラムだったので、前年に対する比は0.74。約4分の3に落ちている。
旧記事が主語にしていたガザミ(ワタリガニ)については、2025年の漁獲量を単独で示す数値を公表資料で確認できなかった。確認できる範囲で言えるのは、同資料が全体の評価として「重要魚種は前年よりも減少」と記していること、そして数値を確認できるノコギリガザミが前年より減っていることまでである。少なくとも「資源が急回復した」と書ける材料は、どこにもなかった。
旧記事が挙げた「85トン」という数字が、なぜありえないのかも押さえておきたい。浜名湖でカニ類を主にとる漁具は袋網だが、その袋網の漁獲は全魚種を合計しても年40.6トンにとどまる。単一の魚種で85トンという数字は、漁具別の合計を大きく上回ってしまう。桁の時点で成立しない数字だった。
確認できる数字が減少を示している年に「回復した、今が狙い目だ」と書いてしまったことは、単に数字を間違えたという以上に、読者の行動を誤った方向に押し出す誤りだった。
浜名湖の遊漁で使える漁具は8つだけ|カニ網は入っていない
ここが本記事でいちばん伝えたい部分である。浜名湖は静岡県漁業調整規則上、「海面」として扱われる。淡水域のイメージから内水面のルールを探す人がいるが、静岡県では令和2年12月1日に旧・漁業調整規則と内水面漁業調整規則が統合されており、現在「静岡県内水面漁業調整規則」という規則は存在しない。検索して古い名称のページに行き当たった場合は注意してほしい。
その静岡県漁業調整規則の第43条第1項により、漁業者以外の者、つまり遊漁者が使用できる漁具・漁法は次の8つに限られている。
- たも網及びさで網
- やす(水中眼鏡利用を除く)
- は具(火光又は水中眼鏡利用を除く)
- くまで(幅15センチメートル以下のものに限る)
- 投網(船舶を使用する場合を除く)
- さお釣又は手釣(空釣を除く)
- 徒手採捕
- ひき縄釣
この8つがすべてである。カニ網はここに含まれていない。したがって遊漁者は、浜名湖でカニ網を使うことができない。個数の上限があるという話ではなく、そもそも使ってはいけない漁具だという整理になる。違反した場合、同規則第58条により科料の対象となる。
「昔から使っている人がいる」「売られているのだから使えるはずだ」といった理由は、規則の前では通らない。漁具として市販されていることと、その水域で遊漁者が使ってよいこととは別の話だ。
ドウマン(ノコギリガザミ)やガザミを狙う場合も、認められた8つの範囲で
ではカニを狙えないのかというと、そうではない。使える漁具の中にはさお釣・手釣があり、たも網と徒手採捕も認められている。狙う場合も、この8つの範囲から出ないことが条件になる。ただし、具体的な仕掛けや手法が第43条第1項の範囲に収まるかどうかは、本記事で判断できることではない。迷う場合は静岡県水産資源課(054-221-2696)に確認してほしい。
そのうえで、数値を確認できるノコギリガザミの2025年の漁獲が前年比0.74まで落ちている年であることは頭に置いておきたい。持ち帰る数を絞る、小さい個体は戻す、抱卵個体には手を出さない。資源が減っている局面で釣り人ができることはある。なお、魚種ごとの体長制限や採捕禁止の規定については、静岡県水産資源課(054-221-2696)で最新の内容を確認してほしい。
ハゼやクロダイは「さお釣」の範囲で楽しめる
今回の訂正で制限が増えたように感じるかもしれないが、浜名湖の釣りそのものが窮屈になったわけではない。8つの中にはさお釣・手釣が入っている。竿を出して魚を釣るという、多くの人が浜名湖でやっている釣りは、この枠にきちんと収まる。
ハゼをちょい投げで狙う、堤防際でクロダイを落とし込む、といったスタイルは、いずれもさお釣の範囲だ。取り込みにたも網を使うことも認められている。つまり、一般的な浜名湖の岸釣りは、使ってよい漁具という点では規則の枠内に収まる。ただし場所ごとの立入や区域ごとのルールは別途あるため、浜名湖総合環境財団の遊漁に関するルールのページもあわせて確認してほしい。
問題になるのは、竿以外の「仕掛けを沈めて放置し、後から回収する」タイプの道具である。カニ網がまさにそれにあたる。手軽さを売りにした漁具ほど、遊漁では認められていない可能性が高いと考えておくと安全側に倒せる。
アサリの潮干狩りは2026年3月から浜名湖内全域で禁止
カニ以上に事態が深刻なのがアサリだ。「はまな」591号の漁獲統計によれば、2025年(暦年)の浜名湖のアサリ漁獲量は全月0キログラムだった。2024年でも180キログラムしかなく、そこからさらにゼロになった。同統計にも「2025年はアサリ水揚げが無かった」と明記されている。
これを受けて浜名漁業協同組合は、資源を回復させるため2026年3月から、浜名湖内全域・通年で一般の人のアサリ潮干狩りを禁止した。期間限定の措置ではなく、湖内のどこでも、いつでも採れないという内容である。ハマグリについても従来どおり禁漁が続いている。静岡県も「令和8年3月1日から浜名湖における潮干狩りのルールが変更になります」として告知している。
「くまでが使えること」と「アサリを採ってよいこと」は別
先ほどの8つの漁具の中に、幅15センチメートル以下のくまでが入っている。ここで誤解が生まれやすいので補足しておきたい。漁具として認められていることと、その対象種を採ってよいことはまったく別の問題である。
アサリとハマグリは浜名漁業協同組合の漁業権対象種であり、許可のない者は採捕できない。漁業権の対象種を無断で採れば、漁業権侵害として罰せられることがある。使える漁具の一覧だけを見て「くまでならいい」と判断しないでほしい。
明るい材料もある|アマモ場の再生
数字の悪い話が続いたが、環境面では前向きな動きもある。浜松・湖西両市の漁業者らによる環境再生グループが2018年度以降続けているアマモ場の再生活動により、生育面積は推計で約200〜300ヘクタールから400ヘクタール以上へ拡大したとみられる(静岡新聞2026年5月19日報道)。
ただし、これはあくまで推計値である。面積が広がったことが直ちに漁獲の回復につながるわけでもない。実際、アマモ場が広がったとされる期間においても、2025年の重要魚種の漁獲は前年より減っている。時間のかかる話として受け止めておきたい。
結局どうすればいいか|浜名湖で遊ぶ前のチェックリスト
- カニ網は持ち込まない。浜名湖の遊漁では使用できない漁具である
- 使えるのは8つだけ。たも網・さで網、やす(水中眼鏡の利用は不可)、は具(火光・水中眼鏡の利用は不可)、幅15センチメートル以下のくまで、投網(船舶を使う場合は不可)、さお釣・手釣(空釣は不可)、徒手採捕、ひき縄釣。この一覧にないものは使わない
- アサリとハマグリは採らない。2026年3月から浜名湖内全域・通年で一般の潮干狩りは禁止。ハマグリも従来どおり禁漁で、いずれも漁業権対象種である
- ドウマン(ノコギリガザミ)やガザミも、認められた8つの範囲で。数値を確認できるノコギリガザミの漁獲は前年より減っているので、持ち帰る数は控えめに
- ハゼやクロダイなど、さお釣で狙える魚は楽しめる。ただし規則の枠内に収まるのは漁具の話であり、場所ごとの区域のルールは別途確認する
- 迷ったら出発前に確認する。規則やルールは変わる。最新の内容は下記の公式ページと問い合わせ先で確かめてほしい
問い合わせ先
| 窓口 | 連絡先 | 主な内容 |
| 浜名漁業協同組合 | 053-592-2911 | 浜名湖の漁業権、潮干狩りの取り扱い |
| 静岡県 経済産業部 水産・海洋局 水産資源課 | 054-221-2696 | 静岡県漁業調整規則、遊漁のルール |
その他の点についても、判断に迷う場合は自己判断で進めず、各機関の公式サイトで確認してほしい。
参考にした一次情報
- 静岡県水産・海洋技術研究所浜名湖分場 広報誌「はまな」591号(令和8年3月)/2025年の浜名湖漁獲統計 https://fish-exp.pref.shizuoka.jp/hamanako/6_pro/pdf_hamana/hamana591.pdf
- 浜名漁業協同組合 http://hamanagyokyo.or.jp/
- 浜名湖総合環境財団 遊漁に関するルール http://www.hamanako-zaidan.or.jp/rules/010_yugyo/
- 静岡県 海面における遊漁のルールについて https://www.pref.shizuoka.jp/sangyoshigoto/suisan/suisanshigen/1047550/1028113.html
- 静岡新聞 2026年5月19日報道(浜名湖のアマモ場再生活動と生育面積の推計)



