- 浜名湖の天然うなぎを自分で捌いて食べる——釣り人だけの最高の贅沢
- 釣り場での処理——鮮度を決める最初の一手
- うなぎの捌き方——目打ちから背開きまでの全手順
- 蒲焼き——炭火がなくても家庭で本格派【難易度:中級】
- 白焼き——天然うなぎの真価がわかる通の食べ方【難易度:初級】
- ひつまぶし——名古屋の名物を浜名湖天然うなぎで【難易度:中級】
- う巻き(うなぎ入りだし巻き卵)——余った蒲焼きの最高のリメイク【難易度:初級】
- 肝吸い・骨せんべい——捨てるところなし!アラの活用術【難易度:初級】
- 浜名湖うなぎをもっと楽しむ——保存とお酒の提案
- 天然うなぎ料理のQ&A——よくある疑問に答える
- まとめ——浜名湖の天然うなぎは「捌く」ところから楽しい
浜名湖の天然うなぎを自分で捌いて食べる——釣り人だけの最高の贅沢
浜名湖といえば、うなぎ。浜松を拠点に釣りをしていると、夏の夜にぶっこみ釣りやミャク釣りで天然うなぎを手にする機会がある。スーパーで買う養殖うなぎとは次元の違う、身の締まりと野性味あふれる脂の旨さは、一度食べたら忘れられない。
しかし「うなぎは捌くのが難しい」「蒲焼きのタレがうまく作れない」という声も多く、釣ったのに持ち帰れず逃がしてしまう人もいる。それは本当にもったいない。
この記事では、浜名湖・都田川・天竜川河口で釣れた天然うなぎを、蒲焼き・白焼き・ひつまぶし・う巻き・肝吸い・骨せんべいまで、自宅で絶品に仕上げるための全工程を徹底解説する。難易度別に整理しているので、初めてうなぎを捌く人でも安心してチャレンジできるはずだ。
対象サイズ:全長40cm以上が料理向き。50〜60cmクラスが最も扱いやすく、蒲焼き1人前にちょうどよい。30cm以下はリリース推奨。
釣り場での処理——鮮度を決める最初の一手
活かして持ち帰るのが大原則
うなぎは生命力が非常に強い魚で、活かしたまま持ち帰ることが鮮度管理の最善策だ。釣った直後に締めてしまうと身が硬直しやすく、家に着く頃には捌きにくくなる。
- 持ち帰り容器:フタ付きバケツ(10L程度)に少量の水を入れる。水量は底から3〜5cm程度で十分。水が多すぎると暴れて体力を消耗する
- エアポンプ:不要。うなぎは皮膚呼吸ができるため、濡れたタオルを被せておけば数時間は問題ない
- 脱走防止:フタは必ずしっかり閉める。わずかな隙間から脱走するのがうなぎの得意技。クーラーボックスのドレン穴にも注意
- 夏場の温度管理:直射日光を避け、保冷剤を容器の外側に当てて水温上昇を防ぐ。水温30℃を超えると弱りやすい
泥抜きは必要か?
天然うなぎの泥抜きについては意見が分かれるが、浜名湖の汽水域で釣れた個体であれば、泥臭さはほとんど感じない。都田川上流や農業用水路で釣れたうなぎは、きれいな水で1〜2日泥抜きすると安心だ。
| 釣り場 | 泥抜きの必要性 | 推奨時間 |
|---|---|---|
| 浜名湖本湖・今切口周辺 | 不要〜半日 | 0〜12時間 |
| 都田川下流・汽水域 | 半日〜1日 | 12〜24時間 |
| 都田川上流・淡水域 | 1〜2日 | 24〜48時間 |
| 農業用水路・ため池 | 2日以上 | 48時間〜 |
泥抜きの方法は、バケツにきれいな水を入れて暗所に置き、12時間ごとに水を替えるだけ。水道水のカルキは気にしなくてよい。エサは与えない。
うなぎの捌き方——目打ちから背開きまでの全手順
用意する道具
- 目打ち用の千枚通し(またはアイスピック):まな板に固定するために必須
- うなぎ包丁(または出刃包丁):専用の鰻裂き包丁がベストだが、刃渡り15cm程度の出刃でも可能
- まな板:木製が滑りにくくおすすめ。厚みのあるものを
- タオル・軍手:うなぎは体表のぬめりが強いため、滑り止めに
- 氷水:捌く前にうなぎを10〜15分漬けると動きが鈍くなり、作業しやすい
関東風(背開き)の手順【難易度:中級】
浜松は文化的に関西圏に近いが、背開きのほうが家庭では作業しやすい。腹開きは内臓を傷つけやすく、慣れが必要だ。
- うなぎを冷やす:氷水に10〜15分漬けて動きを鈍くする。完全に動かなくなるまで待つ必要はない
- 目打ちで固定:うなぎの目の後ろ(頭部)に千枚通しを刺し、まな板に固定する。頭を左、尾を右に置く
- 頭の後ろから背骨に沿って切り開く:背びれの際に包丁を入れ、背骨の上を尾に向かって滑らせる。包丁の刃先が背骨に当たる感触を頼りに、一気に引く
- 背骨を外す:開いた身の中央にある背骨の下に包丁を入れ、骨を剥がすように切り離す。骨は肝吸い・骨せんべいに使うので捨てない
- 内臓を取り除く:肝(肝臓)は肝吸い用に取り分ける。緑色の胆のうを潰さないよう注意。苦みが身に移る
- 腹骨をすく:腹骨を薄く削ぎ取る。多少身が残っても気にしない
- ぬめりを取る:包丁の背で皮目のぬめりをこそぎ取る。熱湯をさっとかけてからキッチンペーパーで拭くとより効果的
初心者へのアドバイス:最初の1〜2匹は時間がかかって当然。YouTube等で動画を見てからチャレンジすると格段にやりやすくなる。包丁は必ずよく研いでおくこと。切れない包丁では絶対にうまく捌けない。
蒲焼き——炭火がなくても家庭で本格派【難易度:中級】
自家製タレの作り方
蒲焼きの味を決めるのはタレだ。市販品でも悪くはないが、自家製タレは香りと深みが段違い。一度作れば冷蔵で1ヶ月以上持つ。
材料(作りやすい分量):
- 醤油 200ml(濃口。浜松なら地元の「明治屋醤油」が合う)
- 本みりん 200ml
- 砂糖 大さじ3〜4(ザラメがベスト、なければ上白糖)
- 酒 100ml
- うなぎの頭・骨 2〜3匹分(あれば。なくても可)
作り方:
- うなぎの頭・骨があれば、グリルまたはフライパンで軽く焼き色をつける(旨味が出る)
- 鍋に酒を入れて強火でアルコールを飛ばす
- 醤油・みりん・砂糖・焼いた頭と骨を加え、中火で煮立てる
- 弱火にしてアクを取りながら20〜30分煮詰める。とろみがついてきたら完成
- ザルで濾して瓶に移す。使うたびに少しずつ煮詰まって味が深くなる「継ぎ足し」も可能
フライパンで焼く蒲焼き
炭火がなくても、フライパンで十分に美味しい蒲焼きが焼ける。ポイントは「蒸し」の工程を入れること。
材料(2人前):
- うなぎ開き 2匹分
- 自家製タレ 適量
- サラダ油 少々
- 酒 大さじ2
- 山椒粉(好みで)
手順:
- フライパンにサラダ油を薄くひき、皮目を下にして中火で焼く。皮がパリッとするまで3〜4分
- 裏返して身側を2〜3分焼く
- 酒を振り入れてフタをし、弱火で5分蒸し焼きにする。この工程でふっくら仕上がる
- フタを取り、タレを刷毛で塗る。弱めの中火で焼きながら、タレ→焼き→タレ→焼きを3〜4回繰り返す
- 表面にツヤと照りが出たら完成。焦がさないよう火加減に注意
炭火で焼く場合のコツ:備長炭またはオガ炭を使い、強火の遠火で。串打ちして焼くなら竹串を水に30分以上漬けてから使う。焼き台から20cm以上離して、脂が炭に落ちて炎が上がったらうなぎを避難させる。
白焼き——天然うなぎの真価がわかる通の食べ方【難易度:初級】
天然うなぎを釣ったなら、まず試してほしいのが白焼きだ。タレの味に頼らず、うなぎ本来の風味と脂の質を味わえる。養殖と天然の違いが最もはっきり出る調理法でもある。
材料(2人前):
- うなぎ開き 2匹分
- 塩 少々
- わさび(本わさびがベスト)
- ポン酢または醤油
- 大葉 4〜5枚
- すだち 1個
手順:
- うなぎの両面に軽く塩を振り、5分置いて余分な水分を出す
- グリルまたは魚焼きコンロで皮目から焼く。中火で5〜6分
- 裏返して身側を3〜4分。身がふっくり膨らみ、表面に軽く焼き色がつけば完成
- 大葉を敷いた皿に盛り、わさびとすだちを添える
食べ方:まずは何もつけずにひと口。天然うなぎ特有の力強い旨味と、養殖にはないすっきりした脂を感じてほしい。次にわさび醤油で、最後にすだちを搾って。日本酒(純米吟醸の冷や)との相性は筆舌に尽くしがたい。
ひつまぶし——名古屋の名物を浜名湖天然うなぎで【難易度:中級】
浜松から名古屋は近い。名古屋名物のひつまぶしを、浜名湖の天然うなぎで作れば最強の一杯になる。3通りの食べ方で最後まで飽きさせない、うなぎ料理の決定版だ。
材料(2人前)
- うなぎ蒲焼き 2匹分(上記の蒲焼きレシピで準備)
- ご飯 2合分(硬めに炊く)
- 自家製タレ 大さじ4
- 出汁 400ml(かつお昆布出汁。顆粒だしでも可)
- 刻み海苔 適量
- 万能ねぎ小口切り 適量
- わさび 適量
- 白ごま 大さじ1
- 三つ葉 適量
作り方
- 蒲焼きを1.5cm幅にカットする
- ご飯にタレ大さじ2を回しかけ、さっくり混ぜる
- おひつ(なければ大きめの丼)にご飯を盛り、刻んだ蒲焼きを敷き詰める。残りのタレを回しかける
- 出汁を小鍋で温めておく。塩で味を調え、薄口醤油を数滴加えてもよい
3通りの食べ方
| 食べ方 | 手順 | ポイント |
|---|---|---|
| 1杯目:そのまま | 茶碗によそってそのまま食べる | 蒲焼きとタレご飯の王道の味を堪能 |
| 2杯目:薬味で | 刻み海苔・ねぎ・わさび・ごまを載せて | 薬味の爽やかさで味変。わさびは多めが美味い |
| 3杯目:出汁茶漬け | 薬味を載せた上から熱い出汁をたっぷり注ぐ | 出汁の旨味とうなぎの脂が混然一体。〆に最高 |
個人的には3杯目の出汁茶漬けが一番好きだ。天然うなぎの脂は出汁に溶け出してもくどくならず、最後の一滴まで飲み干したくなる。
う巻き(うなぎ入りだし巻き卵)——余った蒲焼きの最高のリメイク【難易度:初級】
蒲焼きが余ったら、翌朝の「う巻き」が楽しみになる。卵のまろやかさとうなぎの旨味が溶け合う、料亭の味を自宅で。
材料(2人前):
- うなぎ蒲焼き 1/2匹分(1cm幅に切る)
- 卵 4個
- 出汁 大さじ3
- 薄口醤油 小さじ1
- みりん 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
- サラダ油 適量
- 大根おろし 適量
手順:
- 卵を溶きほぐし、出汁・薄口醤油・みりん・砂糖を加えてよく混ぜる。漉すと仕上がりがなめらかに
- 卵焼き器を中火で熱し、油をなじませる
- 卵液の1/3を流し入れ、半熟のうちに手前にうなぎを並べる
- うなぎを芯にして奥から手前に巻く
- 残りの卵液を2回に分けて流し入れ、同様に巻いていく
- 巻きすで形を整え、3分ほど落ち着かせてからカットする
大根おろしを添えて、蒲焼きのタレを少量かけて食べるのが定番。冷めても美味しいので、お弁当にもおすすめだ。
肝吸い・骨せんべい——捨てるところなし!アラの活用術【難易度:初級】
肝吸い
うなぎ屋でうな重を頼むと必ずついてくる肝吸い。あの上品な一杯が自宅で作れるのは、自分で捌く釣り人の特権だ。
材料(2人前):
- うなぎの肝 2〜3匹分
- 水 400ml
- 昆布 5cm角1枚
- 薄口醤油 小さじ1
- 塩 少々
- 酒 大さじ1
- 三つ葉 適量
- 柚子皮(あれば) 少々
手順:
- 肝は胆のうを慎重に取り除き、流水で血合いを洗い流す。ひと口大に切る
- 熱湯にさっとくぐらせて霜降りにし、臭みを取る
- 鍋に水と昆布を入れ、30分浸けてから中火にかける。沸騰直前に昆布を取り出す
- 酒を加え、肝を入れて弱火で2〜3分煮る。アクが出たら取り除く
- 薄口醤油と塩で味を調え、椀に盛る。三つ葉と柚子皮を浮かべる
味付けは極力シンプルに。肝の旨味を引き立てるために、出汁は昆布のみで十分。かつお節を入れると肝の繊細な味が負けてしまう。
骨せんべい
背骨と腹骨も立派な酒のつまみになる。パリパリ食感と香ばしさがビールにも日本酒にも合う。
手順:
- 背骨は10cm程度に切り分け、キッチンペーパーで水分を拭き取る
- 160℃の油でじっくり10〜15分揚げる。低温でゆっくり水分を飛ばすのがカリカリに仕上げるコツ
- 油を切り、熱いうちに塩(または山椒塩)を振る
二度揚げ(160℃で8分→180℃で2分)するとさらにカリッと仕上がる。頭も同様に揚げれば食べられる。カルシウム補給にもなる一品だ。
浜名湖うなぎをもっと楽しむ——保存とお酒の提案
保存方法
| 状態 | 保存方法 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 生の開き | ラップで密封し冷蔵 | 当日中に調理 |
| 蒲焼き(焼き上がり) | ラップ+ジップロックで冷蔵 | 2〜3日 |
| 蒲焼き(冷凍) | 1匹ずつラップ→ジップロック→冷凍 | 1ヶ月 |
| 白焼き(冷凍) | 同上 | 1ヶ月 |
| 自家製タレ | 煮沸消毒した瓶に入れて冷蔵 | 1〜2ヶ月 |
冷凍蒲焼きの温め方:自然解凍後、アルミホイルに包んでトースターで5分。仕上げにタレを塗ってさらに1分焼くと、焼きたての香ばしさが蘇る。電子レンジだけだとベチャッとするので避けたい。
合わせるお酒
- 蒲焼き × 純米酒(燗):タレの甘辛さには燗酒が鉄板。浜松の地酒「花の舞」純米がよく合う
- 白焼き × 純米吟醸(冷や):繊細な脂には冷たい吟醸酒。「初亀」や「志太泉」など静岡の地酒で
- 骨せんべい × ビール:説明不要の組み合わせ。キンキンに冷えたラガーで
- ひつまぶし(出汁茶漬け)× 焼酎(芋・お湯割り):出汁の旨味と芋焼酎の甘みが意外に合う
- う巻き × スパークリング日本酒:卵のまろやかさに泡の爽快感。最近増えている静岡産スパークリング清酒を試してみてほしい
天然うなぎ料理のQ&A——よくある疑問に答える
うなぎの血に毒があるって本当?
本当だ。うなぎの血液にはイクチオヘモトキシンという毒素が含まれており、目に入ると炎症を起こし、大量に口に入れると嘔吐や下痢を引き起こす可能性がある。ただし60℃以上の加熱で完全に無毒化されるので、しっかり火を通せば何の問題もない。刺身で食べてはいけない魚だということだけ覚えておこう。
天然と養殖で調理法は変えるべき?
天然うなぎは養殖に比べて脂が少なく身が締まっている。そのため、蒸し時間を少し長めに取るとふっくら仕上がる。逆に白焼きは天然の方が断然美味い。脂がくどくないので、素材の味がストレートに伝わる。
小さいうなぎはどう料理する?
40cm以下の小型は開きにせず、丸ごと蒲焼きにする方法がある。背に切れ目を入れて串を打ち、タレを塗りながら焼く。ワイルドだが、身離れがよく食べやすい。ただし30cm以下は成長のためにリリースを推奨したい。
まとめ——浜名湖の天然うなぎは「捌く」ところから楽しい
浜名湖・都田川・天竜川河口で天然うなぎが釣れたら、ぜひ自分で捌いて料理してみてほしい。最初は難しく感じる目打ちと背開きも、2〜3匹やれば手が覚える。
今回紹介したレシピを改めて整理しよう。
| 料理 | 難易度 | おすすめシーン |
|---|---|---|
| 白焼き | 初級 | 天然うなぎを初めて食べる人に。素材の力を知る一品 |
| 蒲焼き | 中級 | 王道。自家製タレで作ると店の味を超える |
| ひつまぶし | 中級 | 蒲焼きからのアレンジ。3つの味で最後まで楽しい |
| う巻き | 初級 | 余った蒲焼きの活用。朝食やつまみに |
| 肝吸い | 初級 | 自分で捌いた人だけの特権。上品な一杯 |
| 骨せんべい | 初級 | ビールのおつまみに。カリカリ食感がたまらない |
スーパーでうなぎを買えば身だけだが、釣って自分で捌けば、肝も骨も頭もすべて活かせる。1匹のうなぎから6品以上の料理が生まれるのだ。浜名湖の恵みを丸ごと味わい尽くす——それが釣り人の最高の贅沢だと思う。
次の夏、浜名湖の夜釣りで天然うなぎが釣れたら、この記事を思い出してチャレンジしてみてほしい。きっと「自分で釣って、自分で捌いて、自分で焼いた蒲焼き」が、今まで食べたどんなうなぎよりも美味しく感じるはずだ。



