2026年・静岡県の河川でキャッチ&リリース区間が拡大|天竜川・気田川の新ルールと浜松アングラーが知るべき資源保護の最新動向

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2026年・静岡県の河川でキャッチ&リリース区間が拡大|天竜川・気田川の新ルールと浜松アングラーが知るべき資源保護の最新動向

静岡県内の河川でキャッチ&リリース区間が続々と新設——その背景と浜松アングラーへの影響

2026年春、静岡県内の複数の漁業協同組合が相次いでキャッチ&リリース(以下C&R)専用区間の新設・拡大を発表した。天竜川水系の気田川(きたがわ)、太田川上流域、そして天竜川本流の一部区間が新たにC&Rエリアとして指定され、浜松・磐田・掛川エリアのアングラーにとって見逃せない動きとなっている。

背景には、近年の渓流魚資源の減少がある。稚アユの不漁が全国的に報じられているが、アマゴ・ヤマメといった渓流魚でも同様の傾向が顕在化。放流量の減少、気候変動による水温上昇、そして釣り人口の回復による釣獲圧の増大が三重に重なり、各漁協が「獲る釣りから守る釣りへ」の転換を迫られている。

この記事では、2026年に新設・拡大されたC&R区間の場所とルール、違反した場合のリスク、C&R釣行で推奨されるタックルとリリース方法、そして今後の規制動向までを網羅的に解説する。渓流釣りを楽しむ浜松アングラーは、ぜひ最後まで目を通してほしい。

2026年に新設・拡大された静岡県内のC&R区間一覧

以下は、2026年度の遊漁規則改正により新設または区間延長されたC&R区域の一覧だ。いずれも各漁協の公式発表に基づく情報である。

河川名区間対象魚種期間管轄漁協
気田川春野町気田・杉橋〜向島橋(約2.8km)アマゴ・ニジマス3月1日〜9月30日気田川漁協
気田川上流熊切川合流点〜石切場堰堤(約1.5km)アマゴ3月1日〜9月30日気田川漁協
太田川森町・三倉川合流点〜天方橋(約2.0km)アマゴ・ニジマス3月1日〜9月30日太田川漁協
天竜川支流・阿多古川阿多古橋〜両島堰堤(約1.2km)アマゴ4月1日〜8月31日天竜川漁協
大井川上流寸又峡・飛龍橋〜前黒法師沢出合(約3.0km)既存区間を延長アマゴ・イワナ3月1日〜9月30日大井川漁協

注目は気田川だ。従来は杉橋上流の約1km区間のみがC&R指定だったが、2026年度から下流の向島橋まで延長され、約2.8kmのロングストレッチが丸ごとC&Rエリアとなった。さらに上流の熊切川合流点周辺にも別区間が新設され、気田川だけで合計4km超のC&R区間を持つことになった。これは静岡県内の単一河川としては最大規模である。

なぜ今、C&R区間が拡大しているのか——3つの要因

要因1:放流原資の減少と稚魚価格の高騰

漁協の収入源である遊漁券の販売数は、少子高齢化の影響で長期的な減少傾向にある。一方、放流用の稚魚価格は養殖コストの上昇(飼料費・電気代・人件費)を反映して年々値上がりしている。気田川漁協の関係者によると、アマゴ稚魚の仕入れ価格は5年前と比べて約35%上昇したという。

放流に頼る従来の「蒔いて獲る」モデルが財政的に持続困難になる中、C&R区間を設けて天然魚・放流魚を繰り返し釣れる状態にすることで、限られた放流原資を最大限活かす戦略に転換しつつある。

要因2:渓流魚の再生産力を活かす発想への転換

近年の調査で、C&R区間に設定された河川では数年で魚の個体数・平均サイズが明確に回復するというデータが蓄積されてきた。長野県の木曽川水系や岐阜県の長良川水系での先行事例では、C&R導入後3年で尺(30cm)超えのアマゴの目撃頻度が2〜3倍に増加したという報告がある。

天竜川水系でも同様の効果が期待されており、気田川漁協は「放流に頼らず、川に残った魚が自然に産卵・繁殖するサイクルを取り戻したい」と方針を示している。

要因3:「体験価値」重視のアングラー層の増加

SNSやYouTubeの影響で、渓流釣りに新規参入するアングラーが増えている。彼らの多くは「たくさん持ち帰る」ことより「美しい魚と出会う体験」に価値を置く傾向があり、C&R区間への支持が年々高まっている。漁協側も、C&R区間を「看板エリア」として整備し、遠方からの釣行者を呼び込む観光資源として位置づけ始めた。

C&R区間の具体的なルールと注意点

共通ルール

  • 釣った魚はすべてその場でリリースする(持ち帰り厳禁)
  • 遊漁券は通常の年券・日券で入漁可能(特別なC&R券は不要な漁協がほとんど)
  • エサ釣り・ルアー・フライいずれも可(ただし一部区間に制限あり、後述)
  • バーブレスフック(カエシなし)の使用を強く推奨(気田川新区間では義務化)
  • ランディングネット使用を推奨(ラバーネットが望ましい)
  • 魚に触れる際は手を水で十分に濡らす

気田川C&R区間の独自ルール(2026年度新設)

気田川の新C&R区間では、県内でも先進的なルールが設けられた。

  1. バーブレスフック義務化:カエシ付きフックの使用は禁止。ペンチで潰したものも可。
  2. シングルフック限定:トレブルフック(トリプルフック)のルアーは使用不可。交換するか、他区間で使用すること。
  3. 魚体の水面外露出は30秒以内:写真撮影時も含め、魚を水から出す時間を30秒以内に制限。
  4. エサ釣りの場合、飲み込まれた針はラインカットしてリリース:無理に外すと致死率が上がるため。

これらのルールは、北海道の忠類川や栃木県の鬼怒川C&R区間で採用されている先進事例を参考にしたものだ。

違反した場合のリスク

C&R区間で魚を持ち帰った場合、漁業権侵害として水産資源保護法に基づく処分の対象となる可能性がある。具体的には以下のリスクがある。

  • 遊漁券の没収・次年度の発行拒否(漁協の内規による)
  • 漁業権侵害による刑事罰(悪質な場合、20万円以下の罰金)
  • 漁協による当該区間の立入禁止措置

「知らなかった」は通用しない。特に新設区間は現地看板の設置が追いつかない場合もあるため、釣行前に必ず漁協の公式サイトや遊漁規則を確認してほしい。

C&R釣行で揃えるべきタックルとリリースのコツ

推奨タックル

アイテム推奨仕様理由
フックバーブレス・シングルフック(がまかつ「バーブレス渓流」、オーナー「SBL-55M」等)フック外しが迅速、魚体へのダメージ最小
ランディングネットラバーコーティングネット(プロックス「ラバーランディングネット」等)鱗・粘膜を傷つけにくい
フォーセップ先曲がりタイプ(ティムコ「TMCフォーセップ 5.5インチ」等)口腔内の針を素早く安全に外せる
リリーサーC&Rリリーサー(自作・市販品いずれも可)魚に触れずにフックを外せる
偏光グラスブラウン系・コパー系レンズ渓流の水中を見やすく、魚の確認とサイトフィッシングに必須

正しいリリース方法——生存率を高める5つのポイント

C&R区間での釣りは、リリースした魚が元気に泳ぎ去ってこそ意味がある。以下の手順を徹底しよう。

  1. ファイト時間を短くする:ドラグを適切に設定し、必要以上に魚を疲弊させない。ライトタックルすぎるのも考えもの。気田川のアマゴ(20〜25cm中心)なら、ロッドパワーUL〜Lクラスで速やかに寄せよう。
  2. ネットですくう:素手で掴むより、ラバーネットで水中のままキャッチする方が魚体への負担が少ない。
  3. 手を濡らしてから触る:渓流魚の体表は粘膜で覆われており、乾いた手で触ると粘膜が剥がれて感染症の原因になる。必ず手を水に浸してから扱うこと。
  4. 水中でフックを外す:バーブレスフックなら水中でフォーセップを使えば数秒で外れる。魚を水面から出さずに済むのが理想だ。
  5. 蘇生してからリリース:リリース時、魚が自力で泳げない場合は、頭を上流に向けて流れに対峙させ、エラに水が通るようにしながら支える。魚が自分から手を離れて泳ぎ出すまで待つこと。下流に向けて放す、尾を持って振る、といった行為はNG。

浜松から各C&R区間へのアクセス

気田川C&R区間(杉橋〜向島橋)

  • 浜松市中心部から:国道362号を北上、約60分。春野町気田地区。
  • 駐車場:杉橋付近に漁協管理の無料駐車スペースあり(約10台)。向島橋側にも路肩駐車可能なスペースがあるが、地元住民の迷惑にならないよう配慮を。
  • 遊漁券:気田川漁協の年券5,000円、日券1,500円。春野町内のコンビニ(セブンイレブン春野気田店)でも購入可能。
  • 入渓ポイント:杉橋から階段で河原に降りられる。川幅15〜20mの開けた瀬と淵が交互に現れる変化に富んだ区間で、フライ・ルアー・エサ釣りいずれも楽しみやすい。

太田川C&R区間(三倉川合流点〜天方橋)

  • 浜松市中心部から:新東名高速・森掛川ICから約25分、計約50分。
  • 駐車場:天方橋近くに町営駐車場(無料・5台程度)。
  • 遊漁券:太田川漁協の年券4,500円、日券1,200円。森町内の釣具店「フィッシング森」で購入可。
  • 特徴:川幅10〜15mとやや狭く、頭上に木が被るポイントが多い。ショートロッド(5ft以下)やテンカラが有利。

阿多古川C&R区間(阿多古橋〜両島堰堤)

  • 浜松市中心部から:国道152号を北上し阿多古方面へ、約45分。浜松市天竜区内。
  • 駐車場:阿多古橋のたもとにスペースあり(3〜4台)。
  • 遊漁券:天竜川漁協の年券6,000円、日券2,000円。
  • 特徴:浜松市内から最もアクセスが良いC&R区間。市街地から1時間以内で渓流のC&R釣りが楽しめる貴重なフィールドだ。水深のある淵が点在し、良型アマゴが期待できる。

地元アングラーの声と漁協の狙い

賛成派の声

浜松市在住で気田川に通い続けて15年のフライフィッシャーは「以前は解禁直後の放流ラッシュが終わると魚がいなくなっていたが、C&R区間が広がれば夏以降もコンスタントに魚がいるフィールドになる。県外からの釣行者も増えて地域活性化にもつながるはず」と歓迎する。

また、ルアーフィッシングを楽しむ30代のアングラーからは「持ち帰りたい人の気持ちもわかるが、渓流魚は海の魚と違って資源回復に時間がかかる。一部区間だけでもC&Rにすることで、川全体のストック量が底上げされると思う」という声も聞かれた。

反対・懸念の声

一方で、エサ釣りを楽しむベテラン層からは「渓流釣りの楽しみには、釣った魚を塩焼きにして食べるところまで含まれる。C&Rばかりになると文化が失われる」という意見もある。また、「バーブレス義務化やシングルフック限定など、ルアー・フライ寄りのルール設計で、エサ釣り師が排除されている感覚がある」という指摘もあった。

この点について気田川漁協は「C&R区間はあくまで河川の一部であり、他の区間では従来どおりキープも可能。すべての釣りスタイルを尊重しつつ、資源保護と釣り場の魅力向上を両立させたい」と説明している。

漁協が描く将来像

気田川漁協では、C&R区間の拡大と並行して以下の施策を計画している。

  • 魚類調査の定期実施:年2回(春・秋)の電気ショッカー調査で個体数・サイズの推移をモニタリング
  • 成果の公開:調査結果を漁協ホームページで公開し、釣り人にフィードバック
  • C&R区間への成魚放流:初年度は30cm級のアマゴ成魚を500尾放流し、「釣れるC&R区間」としての魅力を担保
  • ガイドサービスとの連携:地元の渓流ガイドと提携し、C&R区間でのガイドフィッシングプランを整備

全国のC&R先進事例に学ぶ——静岡はどこまで追いつけるか

北海道・忠類川のサケマス・C&R

国内C&Rの先駆けといえば北海道・忠類川だ。1998年にサケ・カラフトマスのC&R区間が設定されて以来、全国から釣り人が訪れる聖地となった。厳格なルール(バーブレス・シングルフック・エサ釣り禁止・ウェーディング制限区域あり)の下で野生のサケ・マスとの真剣勝負ができるフィールドとして、年間の遊漁者数は約3,000人、地域への経済効果は年間数千万円規模と試算されている。

栃木県・鬼怒川のC&Rエリア

関東圏では栃木県の鬼怒川C&Rエリアが有名だ。都心から日帰り圏内ということもあり、年間を通じて多くのフライ・ルアーアングラーで賑わう。特筆すべきは、C&R導入後にヤマメの平均サイズが明確に大型化し、35cm超の個体が珍しくなくなった点だ。

静岡県の現在地

静岡県はこれまでC&Rの取り組みが全国的に見て後発だった。大井川上流の寸又峡エリアに先行区間があったものの、規模は限定的だった。2026年の一斉拡大は、こうした遅れを取り戻す大きな一歩といえる。

今後、各区間でのモニタリングデータが蓄積されれば、さらなる拡大や他の河川(安倍川・興津川・狩野川など)への波及も期待できる。浜松近郊の天竜川水系が「東海エリアのC&R聖地」となる日も、そう遠くないかもしれない。

まとめ——「守る釣り」が浜松の渓流を変える

2026年の静岡県内C&R区間拡大は、渓流釣りの質的転換を象徴する動きだ。改めてポイントを整理しておこう。

  • 気田川・太田川・阿多古川に新C&R区間が誕生。浜松から日帰り圏内で本格的なC&Rフィッシングが可能に。
  • バーブレスフック義務化・シングルフック限定など、先進的なルールが導入された区間あり。釣行前に必ず遊漁規則を確認。
  • リリース技術の向上が不可欠。正しいリリース方法を実践し、魚の生存率を高めることがC&R成功のカギ。
  • 賛否はあるが、資源回復への期待は大きい。数年後のモニタリング結果が今後の施策を左右する。

浜松アングラーとして、この変化をどう受け止めるか。筆者は、まずは新設されたC&R区間に足を運び、バーブレスフックでアマゴと向き合ってみることを勧めたい。「リリースするために釣る」という発想は、最初は違和感があるかもしれない。しかし、元気に泳ぎ去る魚の背中を見送った時の清々しさは、クーラーボックスに魚を入れた時の満足感とはまた違う、深い充実感をもたらしてくれるはずだ。

天竜川水系の渓流が、持続可能な「宝の川」として次の世代に受け継がれることを願いつつ、今シーズンの渓流に出かけよう。遊漁券の購入をお忘れなく。

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