浜名湖と御前崎を結ぶ国道150号を東へ走ると、御前崎を越えたあたりから景色が一変します。広大な茶畑と、太平洋に向かって緩やかに下る海岸線。そして、その途中に静かに点在する3つの漁港──相良港・地頭方港・片浜港。これが牧之原市東部の遠州灘西端に並ぶ、地元アングラーだけが知る穴場エリアです。
御前崎港・福田港・舞阪港のように釣り雑誌で頻繁に取り上げられることはなく、観光客や遠征釣り師の姿もまばら。しかし、地元のクロダイ師・アジング師・サーフルアーマンが通い詰める実力派ポイントが揃っており、「人が少なく、魚はいる」という現代の釣り場として希少な条件を満たしています。本記事では、3港それぞれの特徴・主要ターゲット・季節動向・駐車場とトイレのインフラ・地元ルールまでを、現地に何度も通った経験に基づいて整理します。
牧之原市東部・3漁港の位置と性格
3港はいずれも牧之原市の遠州灘沿いに位置し、御前崎港の東隣エリアにあたります。距離的には御前崎港から片浜港まで国道150号で約8〜15km、相良港まで約20km。浜松市街からは車で約1時間、首都圏からも東名高速+国道で日帰り可能なポジションです。
| 漁港 | 所在地 | 規模 | 主要対象魚 | 釣り人プレッシャー |
|---|---|---|---|---|
| 相良港 | 牧之原市相良 | 中規模・防波堤2基 | アジ・クロダイ・カマス・タチウオ | 中 |
| 地頭方港 | 牧之原市地頭方 | 小規模・防波堤1基 | キス・カレイ・クロダイ | 低 |
| 片浜港 | 牧之原市片浜 | 小規模・船溜まり中心 | クロダイ・キス・サーフ寄り | 低 |
3港のなかで最も規模が大きく対象魚も多彩なのが相良港、最も静かで穴場感が強いのが地頭方港、サーフ寄りで投げ釣り適性が高いのが片浜港、という性格分けです。
相良港(さがらこう)──牧之原東部最大のオールラウンドポート
港の概要とアクセス
相良港は萩間川の河口に位置し、外側防波堤と内側防波堤の二重構造で、沖は遠州灘に面しています。地元の小型漁船とエビ漁の船が出入りする現役漁港で、漁業活動が優先される時間帯(早朝〜午前中)には港内通路が制限される場合があります。釣り場としては、外向きの白灯台堤、内向きの東岸壁、河口側の南護岸の3エリアが代表的なポイントです。
- アクセス:国道150号「相良交差点」から南へ徒歩5分、車で1分
- 駐車場:港内に複数の空きスペースあり。漁協前は漁業者専用なので避ける。週末は東側の砂利スペースがアングラー向けに解放されることが多い
- トイレ:漁港北側の公衆トイレが利用可。深夜閉鎖の可能性あり
- コンビニ:国道150号沿いにファミリーマート相良店(港から約500m)
狙えるターゲットと釣法
相良港の最大の特徴は、外洋性の魚から内湾の根魚まで、ターゲットが広いことです。代表的な狙い方を季節順に並べます。
- 春(3〜5月):白灯台堤の外向きでメバル・カサゴ。河口側でクロダイのフカセ釣りが本格化
- 初夏(6〜7月):港内のアジ・サバ。サビキで小〜中アジが連発する
- 夏(8〜9月):外向きでカマス・サワラ・シイラ稚魚(ペンペン)。投げサビキとライトショアジギングが熱い
- 秋(10〜11月):青物の回遊。ヒラマサ・カンパチ・ブリ若魚(ワカシ・イナダ)。ショアジギング・カゴ釣り
- 晩秋〜冬(11〜2月):タチウオの夜釣りが本格化。電気ウキ+キビナゴ、もしくはワインドで20cmクラスから指5本サイズまで
- 冬(12〜2月):内向き東岸壁で良型クロダイ、白灯台外向きでアコウ(キジハタ)の根魚ゲーム
白灯台堤の使い分け
相良港のメインスポットは外側白灯台堤で、外向き(沖向き)と内向き(港内向き)で性格が大きく異なります。外向きはカマス・サワラ・青物の回遊狙いと、足元のテトラでメバル・カサゴ・アコウ。内向きはアジサビキとクロダイのフカセが鉄板。1日通うなら、朝マズメ〜午前中は外向きで青物、午後〜夕マズメは内向きでアジ、夜は外向きでタチウオ・メバル、というローテーションが地元の常套手段です。
河口側南護岸の隠れた魅力
萩間川河口に面した南護岸は、汽水の流れが効くポイントで、シーバス(スズキ・セイゴ)の好漁場として知られています。バチ抜けが入る3〜5月、稚アユが河口を下る6〜7月、コノシロパターンが入る10〜12月の3シーズンが本命。フカセドリフトとシンキングペンシルでの巻きの釣りが効きます。
地頭方港(じとうがたこう)──牧之原最深の穴場
港の概要とアクセス
地頭方港は3港のなかで最も小規模で、防波堤も1基のみ。漁港というより船溜まりに近い佇まいで、釣り人の数も極端に少ない静かな港です。地元のシニアアングラーが昼間に短時間遊ぶ程度で、週末でもプレッシャーは限りなく低いのが特徴。
- アクセス:国道150号「地頭方北交差点」から南へ車で2分。港の手前で道幅が狭くなるので大型車注意
- 駐車場:港内に5〜6台分の駐車スペース。漁業者の作業時間(5〜10時)は混むので避ける
- トイレ:常設トイレなし。コンビニで済ませてから入る
- コンビニ:国道150号沿いに約1km
狙えるターゲットと釣法
地頭方港の本命は、なんといってもキスの投げ釣りとカレイの投げ釣りです。港の沖側は砂底が広がっており、防波堤の先端からちょい投げで沖50〜80mに仕掛けを送り込むと、夏のキス・冬のカレイが安定して釣れます。混雑する御前崎港・福田港の比ではないキスの数が出ることもあります。
- キス(5〜10月):13〜18cmが中心、稀に20cm超。仕掛けは2本針キス用、エサはイシゴカイ。投げ点は港の南東方向
- カレイ(11〜3月):マコガレイ20〜30cm。投げ釣り仕掛け、エサは青イソメ太め+イシゴカイ。タナは底ベタ
- クロダイ(通年):港内の岸壁際で前打ち・落とし込み。20〜35cmが中心
- メバル・カサゴ(冬〜春):防波堤外向きの足元でジグ単・電気ウキ
- シロギス+イシガレイのちょい投げ(10〜12月):地元シニアの定番。ファミリーフィッシングにも適する
地頭方港で気をつけたいこと
常設トイレがなく、休憩施設もないため、長時間の釣行では事前準備が重要です。また漁協の作業時間(早朝〜午前中)はスロープと港内通路が漁業者で埋まるので、釣り人は防波堤外側に退避するのがマナー。地元の漁業者と顔を合わせたら必ず挨拶を──これが穴場ポイントを継続して使わせてもらう最低限のルールです。
片浜港(かたはまこう)──サーフ寄りの船溜まり
港の概要とアクセス
片浜港は3港のなかで最もサーフに近い性格を持ち、港というより遠州灘サーフの中継基地のような佇まいです。船溜まりとしての規模は小さく、防波堤も短いですが、港の東西に広がる片浜サーフへのアクセス起点として、サーフルアーマンに人気のエリアです。
- アクセス:国道150号「片浜交差点」から南へ車で3分
- 駐車場:港内駐車場は10台前後。混雑時は港東側の砂利スペースを利用
- トイレ:港内に簡易トイレあり(メンテナンス状況により閉鎖もあり)
- コンビニ:港から約1.5km、国道沿い
狙えるターゲットと釣法
片浜港のターゲットは2系統に分かれます。港内の防波堤・岸壁と、港東西に広がる片浜サーフです。
- 港内:クロダイ(年間):前打ち・チニング・フカセ。30〜45cmの良型実績多数
- 港内:シロギス(夏):ちょい投げで防波堤先端から
- 港内:カサゴ・メバル(冬):足元のテトラで小型ながら数釣り
- サーフ:ヒラメ・マゴチ(5〜11月):シンペン・メタルジグ・ジグヘッドワーム
- サーフ:シーバス(春・秋):ヘビーシンキングミノー・ジグヘッドワーム
- サーフ:シロギス・キャスティング(夏):投げ釣り仕掛けで沖へ
片浜サーフのポイント
片浜港から東西それぞれ2〜3km歩くと、ヒラメ・マゴチ・シーバスの好ポイントが連続します。地元アングラーは「東の駆け上がり」「西のワンド」と呼び分けており、それぞれ砂底の地形変化が魚を寄せる場所として知られています。サーフは海岸侵食保全のためのヘッドランド(人工岬)が点在しており、ヘッドランド周辺は流れが効いて魚が回遊しやすいエリア。ただしヘッドランド上は立入禁止区域もあるため、看板をよく確認してから入ること。
3港の使い分け──シチュエーション別ベストチョイス
| シチュエーション | 本命港 | 理由 |
|---|---|---|
| 家族連れでアジサビキ | 相良港 | 港が広く、駐車場・トイレ完備 |
| キス・カレイの数釣り | 地頭方港 | 砂底が広く投げ釣り適性 |
| サーフでヒラメ・マゴチ | 片浜港 | 東西のサーフが好ポイント |
| 夜のタチウオ・カマス | 相良港 | 外向き堤と常夜灯 |
| クロダイの前打ち・フカセ | 3港すべて | 港内岸壁が狙い目 |
| 青物の回遊 | 相良港 | 外洋に最も開けた白灯台堤 |
| 静かにのんびり | 地頭方港 | プレッシャー最低 |
季節別の動向──月別の狙い目まとめ
春(3〜5月)
各港でメバル・カサゴが活性を上げ、相良港河口でシーバスのバチ抜けが始まります。地頭方港・片浜港でクロダイの活性も上昇。水温は12〜15℃と低めなので、エサ釣りが優位。
夏(6〜8月)
3港すべてでアジ・サバのサビキ全盛期。地頭方港のキスが本格化、片浜サーフでマゴチが好調。日中は強烈な日差しのため、朝マズメと夕マズメ集中型がベスト。日中は地頭方港のキス釣り+休憩のんびりが現実的。
秋(9〜11月)
1年のハイシーズン。相良港で青物・カマス・タチウオが連発、片浜サーフでヒラメ・シーバス、地頭方港でカレイ・キスとも好調。3港のどこに通っても外れがない時期。
冬(12〜2月)
遠州灘特有の北西風が強く、外向きが釣りにならない日が多い。風裏となる相良港内向き・地頭方港船溜まり・片浜港の港内が現実的。ターゲットはクロダイ・カレイ・カサゴ・メバル中心の渋めの釣り。
3港共通の注意事項とマナー
地元漁業者との共存
3港とも現役の漁港で、釣り人は「漁業活動の合間に使わせてもらう立場」です。次の点を必ず守ってください。
- 漁業者の作業時間(早朝5時〜午前10時頃)は通路と岸壁を譲る
- 漁協前と荷揚げスロープでの釣りは避ける
- 係留ロープや漁具を踏まない・引っ張らない
- 地元の方と顔を合わせたら必ず挨拶
- ゴミは絶対に持ち帰る(小さな仕掛けゴミも含めて)
安全装備
外向き堤やテトラ帯では、自動膨張式ライフジャケット(桜マーク付き)の着用が必須。冬の北西風が抜ける日は、防寒着+滑り止め付き靴。夜釣り時はヘッドライト+予備電池+ホイッスル。これは命を守るための最低ラインです。
立入禁止区域の確認
3港のどこにも、漁業者専用の立入禁止区域や、安全上の理由で立入禁止になっているテトラ・防波堤先端があります。看板と地元の張り紙を必ず確認し、グレーゾーンには立ち入らない判断が、結果的に釣り場を守ります。
遠征プランの提案──牧之原東部1日コース
浜松市街・遠州中部から日帰りで3港を回るなら、次のような行程がおすすめです。
- 04:30:浜松出発、国道150号東進
- 05:30:相良港着、白灯台外向きで朝マズメの青物・カマス狙い
- 09:00:相良港から地頭方港へ移動(車で15分)
- 09:30〜12:00:地頭方港でキスの投げ釣り+休憩
- 12:00〜13:00:国道沿いのファミマでランチ+給油
- 13:30:片浜港へ移動、サーフのヒラメ・マゴチを夕マズメまで
- 17:30:片浜サーフで夕マズメ勝負
- 19:00:相良港に戻り、夜のタチウオ電気ウキ釣り
- 22:00:撤収、浜松へ帰還
このローテーションだと、1日で「青物・キス・サーフフラット・タチウオ」と4ジャンルを楽しめます。3港を結ぶ国道150号は信号も少なく、移動ストレスが小さいのも魅力。
まとめ──遠州灘西部の静かなる宝庫
相良港・地頭方港・片浜港の3港は、御前崎・福田・舞阪のような華やかさはありません。釣り雑誌に載ることも稀で、SNSで話題になることもほとんどないエリアです。しかし、「静かに釣りたい」「混雑が嫌い」「自分の技術で結果を出したい」というアングラーにとって、これほど条件の整った穴場はそう多くありません。
本記事で紹介した季節動向・ターゲット・ポイント情報は、私と地元アングラー仲間の経験を集約したものです。皆さんが実際に通って、その時々の状況に合わせて応用していただければ、必ず結果は出ます。そして、もし3港を継続的に使わせてもらうなら、地元の漁業者と良好な関係を築くこと。これが、釣り場を未来に残すための、私たちアングラーが負うべき最低限の責任です。
静かな港の朝、波の音だけが聞こえる時間。皆さんが牧之原東部の3港で、それぞれの「相棒の魚」と出会えることを願っています。



