サツキマス(皐月鱒)完全図鑑|長良川を遡る「東海の宝」生態・アマゴとの関係・サクラマスとの違い・本流ルアーの釣り方・絶品レシピまで魚太郎が徹底解説

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Contents

サツキマスとは?|皐月の長良川を遡る「東海の宝」

五月、新緑にサツキの花が咲く頃。木曽三川のひとつ長良川の本流を、銀鱗をきらめかせて一尾の美しいトラウトが遡っていく——それがサツキマス(皐月鱒)だ。渓流で多くの釣り人を魅了するアマゴが海へ降り、栄養豊かな伊勢湾で大きく育って母なる川へ帰ってきた姿。それがこの魚の正体である。

サツキマスは、まさに東海地方を象徴する魚だ。中でも長良川は、いまや日本でただひとつ「サツキマス漁が成り立つ川」として知られ、毎年春になると全国から憧れのアングラーが集まる。サクラマスが日本海側・北日本の「川の女王」なら、こちらは太平洋・東海の「川の貴公子」。体こそひと回り小ぶりだが、銀の地肌にうっすら残る朱点をまとった姿の美しさは、サクラマスにまったく引けを取らない。

味もまた絶品だ。サケ科の中でもとりわけ身がやわらかく甘みが強く、市場では「究極の美味」と評されるほど。だが産地は岐阜・愛知・徳島などごく一部に限られ、関東の市場ではまず見かけない「幻の高級魚」である。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)、水産庁のレッドデータブックでも絶滅危惧種に挙げられ、堰堤やダムによる遡上の分断で数を大きく減らしている。守りながら向き合うべき、貴重な魚なのだ。

この記事では、サツキマスの基本的な生態データから、切っても切れないアマゴとの関係、よく混同されるサクラマス(ヤマメの降海型)との見分け方、本流ルアーの仕掛けと釣り方のコツ、そして塩焼きや煮つけといった絶品レシピまで、この1記事で「サツキマスのすべて」が分かるように魚太郎がまとめた。安全に楽しむための寄生虫対策や、遊漁ルール・資源保護の注意点も盛り込んだので、ぜひ最後まで読んでほしい。

サツキマスの基本データ|分類・大きさ・名前の由来

項目内容
和名サツキマス(皐月鱒)
学名Oncorhynchus masou ishikawae(サクラマスの亜種・日本固有亜種)
別名・地方名河川残留型は「アマゴ(雨子・天魚)」。地方によりヒラベ、コサメ、エノハなどとも
分類サケ目 サケ科 サケ属(タイヘイヨウサケ属)
全長降海型は35〜50cm(40cm前後が主体)。サクラマスよりひと回り小型。アマゴは20〜30cm
分布神奈川県西部以西の本州太平洋岸、四国、九州の瀬戸内海側河川の一部。長良川・木曽川・揖斐川・宮川など
寿命およそ2年。産卵後は一生を終える
冬から春(おおむね3〜5月)。脂がのって最も美味い時期
名前の由来皐月(さつき=5月)の頃に川を遡上することから「皐月鱒」と名づけられた

サツキマスは、渓流で親しまれるアマゴとまったく同じ種だ。同じ卵から生まれても、川にとどまって一生を渓流で過ごせば「アマゴ」、海へ降って大きく育てば「サツキマス」になる。名前が二つあるのは、暮らし方(生活史)が二通りに分かれるからにほかならない。氷河期に内陸へ取り残され、一生を川だけで過ごせるように進化したのがアマゴ。その血を引きながら、なお海へ出る道を選ぶ個体がサツキマスへと姿を変えるのである。

サツキマスの生態|伊勢湾と川を行き来する「東海の降海型トラウト」

分布|太平洋・東海を主な舞台に

サツキマス(降海型)の天然分布は、おおむね神奈川県西部以西の本州太平洋岸、四国、そして九州の瀬戸内海側に注ぐ河川の一部に限られる。北日本に広く分布するサクラマスとは対照的に、温暖な太平洋・瀬戸内側を主な舞台とする西日本・東海の魚だ。海に出た個体は伊勢湾などの内湾で暮らす。

代表的なのが、伊勢湾へ注ぐ木曽三川(長良川・木曽川・揖斐川)と、伊勢の宮川だ。とりわけ長良川は、産卵・降海・遡上という一連の生活史が天然のまま確認できる貴重な川として知られ、後述するように「日本で唯一サツキマス漁が成立する個体群」がいる聖地でもある。浜名湖・遠州灘エリアのアングラーにとっては、車で足を延ばせば本場の長良川に立てる、まさに地元圏の憧れの魚といえる。

一方、河川残留型のアマゴは、静岡県以西の太平洋側・瀬戸内海側の冷たい渓流に広く分布する。標高の高い源流域や水温の低い本流上流が、アマゴ=サツキマスの幼魚が育つゆりかごだ。

降海と遡上|0歳の秋に旅立つ早熟さ

サツキマスの一生は、アマゴとして渓流で生まれることから始まる。ここでサクラマスとの決定的な違いが現れる。サクラマス(ヤマメ)が満1歳〜1歳半の春に海へ降るのに対し、サツキマスは孵化したその年の秋、つまり0歳の秋に早くもスモルト化(銀化)を始めるのだ。体側のパーマーク(小判型の斑紋)が薄れ、ウロコが銀白色に輝くこの変化を経て、11〜12月の出水(増水)に乗って海へと流れ下っていく。アマゴからサツキマスへ旅立つ時期が、サクラマスより一足早いのである。

海に降ったサツキマスは、甲殻類やイカナゴなどを食べて急速に成長する。海での滞在はおよそ半年余りと短く、川を出てから7〜8か月ほどで成熟し、母なる川へ戻る準備を整える。そして翌春、4〜6月(ピークは5月=皐月)に遡上を開始する。サクラマスが桜の頃に遡るように、サツキマスは皐月の花咲く頃に遡る——和名そのものが、その季節を映している。

アマゴとの関係|なぜ二つに分かれるのか

同じ卵から生まれた魚が、なぜ「海へ降る組」と「川に残る組」に分かれるのか。これにはエサや成長スペースが深く関わっている。川は栄養に乏しく成長できる場所も限られるため、すべての個体が大きくなれるわけではない。そこで一部の個体は、リスクを取ってでも栄養豊富な海へ出て大きく育つ道を選ぶ。一方、川に残った個体は小型のアマゴのまま成熟し、繁殖に加わる。

興味深いことに、海へ降るのはメスがほとんどで、オスは川にとどまってアマゴのまま繁殖する割合が高いとされる。卵をたくさん産むメスほど大きな体が有利になるため、リスクを取ってでも海で成長する価値が高いからだと考えられている。大きく育ったメスのサツキマスと、川に残った小型のオスのアマゴが産卵期に出会い、次の世代をつなぐ。海と川にまたがって命を結ぶ、巧みな生存戦略がそこにある。

繁殖と一生

春に遡上したサツキマスは、夏の間を本流の淵など水温の低い場所でじっと過ごし、秋(9〜11月、ピークは10月ごろ)に産卵期を迎える。源流域まで遡って砂利底に産卵床を掘って産卵し、その役目を終えるとサケと同じように一生を閉じる。卵は翌年の1月ごろに孵化する。生まれてから産卵までおよそ2年。アマゴとして生まれ、海を旅し、たった一度の繁殖に命をかけて源流へ還る——それがサツキマスの生き方だ。

サクラマス・ヤマメ・アマゴとの見分け方|朱点の有無が決定打

サツキマスを語るとき、避けて通れないのが「よく似た仲間」との関係だ。とくに北方のサクラマスとは混同されやすい。整理すると、両者は近い亜種どうしで、降海するか・川に残るかで呼び名が変わるという入れ子構造になっている。

  • サツキマスO. masou ishikawae)の河川残留型がアマゴ
  • サクラマスO. masou masou)の河川残留型がヤマメ

つまり「海に降ったアマゴ=サツキマス」「海に降ったヤマメ=サクラマス」という関係だ。見分けの決定打は、体側に散る朱点(しゅてん/朱色の小さな斑点)の有無である。

見分けポイントサツキマス(アマゴ)サクラマス(ヤマメ)
朱点(朱色の斑点)ある(側線の上下から背部に朱点が散る)ない
陸封型の呼び名アマゴヤマメ
主な分布神奈川県西部以西の太平洋・瀬戸内側の河川(長良川など)日本海側・北日本・北海道の河川
大きさ35〜50cm(やや小型)大型は60〜70cmに達する
スモルト化(降海)の時期0歳の秋(その年の秋)と早い満1歳〜1歳半の春
遡上のピーク5月ごろ(皐月=サツキの季節)4月ごろ(桜の季節)

覚え方はシンプルだ。朱点があればサツキマス(アマゴ系)、なければサクラマス(ヤマメ系)。名前も季節とリンクしていて、桜の頃に遡るのがサクラマス、皐月(さつき)の頃に遡るのがサツキマスと、和名そのものが時期を表している。スモルト化して銀色になった個体は朱点が見えにくくなることもあるが、サツキマスは銀化しても背部にうっすら朱点が残るのが大きな手がかりになる。海から上がってきた銀ピカの魚体に、点々と朱が透けて見えたら、それはサツキマスだ。

分布の境界もはっきりしている。太平洋側ではおおむね静岡県あたりを境に、東がヤマメ(サクラマス)域、西がアマゴ(サツキマス)域に分かれる。当サイトの地元・浜名湖や遠州灘はちょうどその境界付近で、東海寄りの長良川水系はまさにサツキマスの本場というわけだ。

サツキマスの釣りシーズン|釣期カレンダー

サツキマス釣り(本流の遡上魚狙い)は、ごく限られた春のシーズンに集中する。遡上のタイミングと水温・増水の具合が、釣果を大きく左右する。あくまで一般的な目安として、長良川など東海の本流を念頭にカレンダーをまとめた。

時期状況狙いおすすめ度
3月渓流解禁(多くは3月1日前後)。まだ水温が低く、本命のサツキマスは少ないが早期の初物に期待早期の一尾★★★☆☆
4月遡上が本格化し始める。水温の上昇とともにチャンスが拡大していくシーズンイン★★★★☆
5月皐月の本命期。遡上のピークで、釣り人が最も集まる最盛期。「サツキ」の名にふさわしい一尾を狙える本命の遡上魚★★★★★
6月後半戦。遡上の終盤だが、アユを追って active になる個体も。増水後の好機を突けば良型も増水後の荒食い★★★★☆
7月〜(夏)多くの本流はアユ釣りへ移行。サツキマスは淵で夏を越し、秋の産卵へ。源流ではアマゴ釣りが楽しめる渓流アマゴ★★★☆☆

本流での王道はやはり遡上がピークを迎える5月前後。「サツキの花が咲く頃が本番」と言われ、この短い期間に全国の釣り人が憧れの一尾を求めて川へ立つ。ただし解禁日・禁漁期間・遊漁区域は河川ごとにまったく異なる。釣行前に必ず、対象河川を管轄する漁業協同組合の遊漁規則を確認すること。これは安全と資源保護の大前提だ。

どこで釣れる?|サツキマスの主なフィールド

本流|唯一無二の聖地・長良川

サツキマスの本流釣りといえば、まず名が挙がるのが岐阜県の長良川(ながらがわ)だ。長良川のサツキマス個体群は、日本で唯一、漁業が成立しているサツキマスの個体群とされ、産卵・降海・遡上のすべてが天然のまま確認できる貴重な川。まさに「サツキマスの聖地」である。中流域の瀬と淵が連続する区間が一級フィールドで、毎年春になると銀鱗との出会いを求めて全国からアングラーが集まる。

狙い目になるのは、本流と支流の合流点、瀬から淵へ落ち込むカケアガリ、流れのヨレや反転流など。たとえば支流の板取川が本流に合流するあたりは、瀬の流れ込みと、ゆったり水を湛えた淵がセットになった好ポイントとして知られる。遡上してきた魚が一時的に体を休める「居つきやすい地形」を読むのが攻略の核心だ。

長良川以外にも、同じ木曽三川の木曽川・揖斐川、伊勢の宮川などがサツキマスの実績河川として知られる。いずれも遊漁券を購入して合法的に楽しめる川で、漁協が遊漁ルールを定めている。広い本流の流れを読み、限られたチャンスに賭けるのが、この釣りの醍醐味だ。

河口・内湾|銀化した個体を狙う

サツキマスは伊勢湾などの内湾で育つため、海から川へ入る直前の河口部や汽水域でも狙える可能性がある。ただし河口域はサツキマスにとって命をつなぐ通り道であり、産卵に向かう貴重な親魚が集まる場所でもある。むやみに数を持ち帰らず、節度を持って向き合いたいエリアだ。区域ごとに採捕禁止区間が設けられている場合もあるので、立つ前に必ず規制ラインを確認しよう。

東海・遠州灘ではどうか

当サイトの地元・浜名湖や遠州灘について正直に書くと、このエリアそのものはサツキマス釣りの本場ではない。浜名湖・遠州灘はちょうどアマゴ域とヤマメ域の境目にあたり、サツキマスを本気で狙うなら舞台はあくまで西隣の長良川水系ということになる。とはいえ、車を1〜2時間も走らせれば本場の長良川に立てる距離感だ。サクラマスを狙うなら北陸・東北まで遠征が必要なことを思えば、東海のアングラーにとってサツキマスは「もっとも身近な憧れの本流トラウト」と言ってよい。

サツキマス釣りの仕掛けとタックル

① 本流ルアー(ミノーが主役)

本流サツキマスのルアー釣りは、広い流れに立ち込み、遡上ルートを丁寧に探っていく繊細かつダイナミックな釣りだ。主役となるのはミノー。サクラマスがヘビーシンキングの大型ミノーやスプーンを多用するのに対し、ひと回り小さいサツキマスでは6〜7cmクラスのミノーが主流になる。

  • ミノー60〜72mm前後・6〜8gほどのシンキングミノーが中心。流れに対して上流側へ斜めにキャストし、ダウンクロス(斜め下流)で水圧を受けながらゆっくり通すのが基本。水深や流速に応じて、潜行レンジの違うものを使い分ける。
  • スプーン・スピナー:流れが強いときや、遠投してボトム付近を探りたいときの引き出しとして持っておくと心強い。重さで沈めて流れに乗せる使い方が効く。

② タックル(ロッド・リール・ライン)

  • ロッド:本流の流れに立ち込み、ミノーを操作しやすい本流トラウト用の7〜8ftクラス。長めの竿が流れの中でのラインメンディングとファイトを助ける。最低でも7ftはほしい。
  • リール:中型スピニング(おおむね2500〜3000番)。増水した流れでも安定して巻ける剛性のあるものを。
  • ライン:飛距離と感度を取るならPE0.8号前後+ナイロンまたはフロロカーボンのリーダー8〜12lbが定番。ナイロンリーダーはクッション性に優れバラシを軽減し、フロロは根ズレに強い。流れの変化を竿に伝えたい人はナイロン6lbほどの直結を好むこともある。突然の良型に備え、全体に少し強めの設定が安心だ。

③ 装備(ウェーダー・ベスト・ランディングネット)

本流に立ち込むため、ロッド・リール・ルアー以外の装備品も欠かせない。胴付きのウェーダー、小物を収納するフィッシングベスト、せっかくの一尾を確実に取り込むランディングネットは必須。流れの強い本流では、転倒や流されのリスクに備えてライフジャケット(フローティングベスト)を必ず着用すること。増水時の無理な立ち込みは厳禁だ。

釣り方のコツ|難敵を攻略する3つのポイント

サツキマス釣りは「川で最も難しいルアー釣りの一つ」と言われる。何しろ数が少ないうえ、遡上中の個体は産卵に向かう旅の途中で、積極的にエサを追わない。だからこそ攻略には理にかなった工夫がいる。

1. とにかく「通う」――遡上のタイミングを読む

サツキマスは個体数が少なく、しかも刻々と遡上・移動している。だから何より大事なのは場所と時間に身を置き続けることだ。釣果情報をこまめに集め、増水後のタイミングや朝マズメといった「魚が動く瞬間」に川に立つ。足元に常にいる魚ではなく、「いつ・どこを群れが通るか」を読む釣りだと心得たい。一日一尾出れば上出来、ボウズが当たり前——その心構えが、結局は憧れの一尾への近道になる。

2. スローなただ巻きで「目の前を確実に」通す

遡上個体は捕食目的で動いていないため、ルアーを激しく追わせる釣りではない。基本はスローなただ巻き。上流側へキャストし、ダウンクロスで流れに乗せながら、魚の目の前をゆっくり、確実に通すのが核心だ。「追わせる」より「思わず口を使わせる」イメージで、見切られる前に食わせ間合いを作る。反応が薄いときは、トゥイッチでわずかにリアクションを誘うなど変化をつけるとよい。

3. 「瀬の流れ込み・淵・合流点」を丁寧に

サツキマスは遡上の途中、瀬から淵へ落ち込むカケアガリ、本流と支流の合流点、流れと流れの境目(ヨレ)、カーブの内側のゆるい流れなどで体を休める。やみくもに広く打つより、こうした魚がつきやすい地形を絞って丁寧に通すのが効率的だ。広い本流ほど「どこを狙うか」が結果を分ける。地元の釣具店や漁協で実績ポイントを聞いておくと、初めての川でも回り道を減らせる。

持ち帰り方と下処理|寄生虫対策が最重要

幸運にも一尾を手にしたら、その価値ある魚を最大限おいしく安全に味わいたい。サツキマスの扱いで何より重要なのが寄生虫対策だ。

サツキマスをはじめサケ科の魚には、アニサキスなどの寄生虫が寄生していることがある。これらは加熱や適切な冷凍で死滅するが、生のまま食べると食中毒(激しい腹痛など)を起こすおそれがある。「自分で釣った新鮮なサツキマスを刺身で」という憧れは分かるが、未処理での生食は避けるのが鉄則だ。

  • 釣ったら即冷却:氷をたっぷり入れたクーラーでしっかり冷やして持ち帰る。サケ科は身がやわらかく鮮度落ちが早い。
  • ウロコ・内臓処理:ウロコを引き、エラと内臓を取り除く。腹腔内や中骨沿いの血合いをよく洗い、水気を拭き取る。内臓周りは寄生虫がいることが多いので丁寧に。
  • 生食するなら必ず冷凍:刺身やルイベで食べたい場合は、-20℃以下で24時間以上(安全をみて丸2日程度)しっかり冷凍してから解凍する。これで寄生虫のリスクを大きく下げられる。家庭用冷凍庫は温度が高めなので、長めに凍らせるのが安心だ。
  • 加熱なら中心まで火を:加熱して食べる場合は、中心温度60℃以上で1分以上を目安にしっかり火を通す。

加熱か、しっかり冷凍してから——この一線だけは必ず守ってほしい。とはいえサツキマスは焼き物・煮物にしてこそ真価を発揮する魚でもあるので、安全な加熱調理で味わうのが、実は一番おすすめだ。

サツキマスの絶品レシピ|「究極の美味」を味わう

サツキマスは身がやわらかく甘みと強いうま味を持ち、市場では「究極の美味」と評されるサケ科屈指の味だ。身はほんのり朱色を帯び、火を通してもパサつかず、しっとりと仕上がる。下処理(とくに加熱・冷凍)を守ったうえで、その実力を堪能しよう。

① サツキマスの塩焼き(王道にして最高峰)

サツキマスの魅力をストレートに引き出す、王道の一皿。切り身(または小ぶりなら姿のまま)に振り塩をしてしばらく寝かせ、水気を拭いてからじっくり焼き上げる。脂がのっているので焼いても身はやわらかく、程よく繊維質の身に豊かなうま味が広がる。皮は香ばしく、中はふっくら。確実に中心まで火が通るので、安全面でも安心して楽しめる、まずは試してほしい食べ方だ。

② サツキマスの煮つけ(甘みが際立つ逸品)

市場でも最上級と評される食べ方が煮つけだ。醤油・みりん・酒・砂糖・しょうがの煮汁でコトコト煮ると、身は適度に締まって身離れがよくなり、サツキマス本来の甘みと、微かなサケ科の上品な風味が引き立つ。煮すぎず、味を含ませるのがコツ。ご飯にも酒にもよく合う、滋味深い一品になる。

③ サツキマスのムニエル(脂とバターの黄金コンビ)

洋風に仕立てるならムニエルが絶品。切り身に塩こしょうをして小麦粉を薄くまぶし、バターでこんがり焼く。皮目はパリッと香ばしく、中はふっくら。サツキマス特有の上品な脂とバターの香りが溶け合い、繊細なうま味がふわりと立ちのぼる。仕上げにレモンを搾れば文句なしのごちそうだ。しっかり加熱できるので安全面でもおすすめできる。

④ サツキマスの甘露煮・甘辛揚げ煮(小型や保存に)

小ぶりの個体や、日持ちさせたいときは甘露煮が向く。一度こんがり焼くか素揚げにしてから、醤油・砂糖・みりんの甘辛いタレでじっくり煮含める。骨までやわらかく仕上がり、頭から丸ごと味わえる。山里の保存食らしいしみじみとした味わいで、アマゴの甘露煮と同じ要領で作れる東海の家庭の味だ。

⑤ ルイベ・刺身(必ず冷凍してから)

釣り人の特権として生でも味わえるが、前章のとおり必ず-20℃以下でしっかり冷凍してからにすること。脂ののった個体の身はとろけるようで、甘みと強いうま味は格別だ。北国の郷土料理「ルイベ」のように凍らせたまま薄く切り、半解凍のシャリッとした食感で味わうのも、寄生虫対策と美味しさを両立した先人の知恵。生食はあくまで「冷凍処理を施したもの」に限る、と肝に銘じておこう。

資源を守る|「幻の魚」を未来へつなぐために

サツキマスは、いま静かに数を減らしている。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)、水産庁のレッドデータブックでも絶滅危惧種に位置づけられる貴重な魚だ。最大の原因は、上流部に造られた堰堤やダムによって、海から産卵場までの道が分断されてしまったこと。海と川を大きく旅して命をつなぐサツキマスにとって、その通り道を断たれることは致命的なのである。森林伐採による河川環境の悪化も追い打ちをかけている。

こうした状況に対し、太平洋側の各河川ではスモルト化したサツキマスを放流して資源の回復を目指す取り組みが続けられている。長良川が「日本で唯一、漁業が成り立つ個体群」であり続けられているのも、地域の人々が川と魚を守ってきたからにほかならない。私たち釣り人にできるのは、遊漁ルールを守り、必要以上に持ち帰らず、産卵に向かう親魚に配慮すること。憧れの一尾と出会えたなら、その背景にある自然の営みにも思いを馳せたい。

まとめ|皐月の本流に光る、東海の銀鱗

サツキマスは、渓流の宝石アマゴが海へ降り、銀鱗をまとって長良川など東海の本流へ帰ってくる、釣り人憧れの「川の貴公子」だ。一日一尾出れば御の字という難しさ、銀の地肌にうっすら残る朱点の美しさ、そして「究極の美味」と称される食味。そのすべてが、多くのアングラーを皐月の本流へと駆り立てる。

本場は何といっても長良川。皐月(5月)の花咲く頃、瀬の流れ込みや淵をスローなただ巻きで丁寧に探り、憧れの一尾を狙う。浜名湖・遠州灘のアングラーにとっては、北陸・東北まで遠征が要るサクラマスより、ずっと身近に会いに行ける特別な本流トラウトだ。サクラマスとは朱点の有無で見分け、釣ったあとは寄生虫対策(加熱または十分な冷凍)を必ず守る——この二つを押さえれば、サツキマスとの付き合いはぐっと豊かになる。

環境省の準絶滅危惧種にも挙げられる「幻の魚」であることを忘れず、遊漁ルールと資源に配慮しながら向き合いたい。海と川を旅して母川へ還ってきた一尾の銀色は、その夜、塩焼きや煮つけとなって、東海の食卓に最高のごほうびを届けてくれるはずだ。

※サツキマスの遊漁ルール(解禁日・禁漁期間・採捕サイズ・遊漁券の要否・採捕禁止区域など)は、河川や都道府県ごとに大きく異なります。釣行前に必ず、対象河川を管轄する漁業協同組合や都道府県の水産担当部局のルールを確認し、節度ある釣りを心がけてください。また本流は流れが強く立ち込みの危険もあるため、ライフジャケットを着用し、増水時は無理をしないなど安全第一で楽しみましょう。

※サツキマスをはじめサケ科の魚にはアニサキス等の寄生虫が寄生していることがあります。生食する場合は-20℃以下で24時間以上の冷凍、または中心温度60℃以上・1分以上の加熱を必ず行ってください。未処理での生食は避けましょう。

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