魚の血合いの取り方|赤身魚を生臭くしない下処理の正しい順序

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魚の血合いの取り方|赤身魚を生臭くしない下処理の正しい順序
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結論:刺身は除き、煮付け・佃煮は活かす。判断軸はこの1点

三枚おろしのあと、身の中央に残る赤黒い帯。これが「血合い(ちあい)」です。結論から言うと、血合いを取り除くべきか活かすべきかは、作る料理で決まります。刺身・カルパッチョ・寿司など生で食べるものは、見栄えと生臭さの両面から除くのが基本。一方、煮付け・佃煮・唐揚げ・つみれなど火を通して味を含ませる料理では、栄養と旨味の塊として「活かす」のが正解です。血合いは赤色筋(せきしょくきん)という筋肉の一種で、鉄分やDHA・EPAが豊富。捨てるのが必ずしも正しいわけではありません。

そして、生臭くしないための下処理には正しい順序があります。「流水洗い → ふり塩 → 塩水で洗う → 霜降り → 酒洗い → 水気を拭く」。この順番を守るかどうかで仕上がりが変わります。この記事では、台所での血合いの扱いを「取り除く/活かす」の判断軸と工程の順序に絞って解説します。釣り場での血抜き・締めとは別のシーン、あくまで「まな板の上の処理」の話です。

料理血合いの扱い理由
刺身・寿司・カルパッチョ除く生は酸化臭が出やすく見栄えも落ちる
煮付け・佃煮活かす火入れで臭みが飛び、栄養と旨味が残る
唐揚げ・竜田揚げ活かす下味と高温で臭みをマスキングできる
つみれ・つみれ汁活かす叩いて練れば食感も気にならない
塩焼き(切り身)残してOK直火の高温で生臭さが抜ける

そもそも血合いとは?「赤色筋」と臭みの正体

血合いは「赤色筋」という持久力の筋肉

血合いの正体は、酸素をたくさん使う「赤色筋(遅筋)」です。長時間泳ぎ続ける回遊魚ほど発達しており、赤く見えるのは酸素を貯蔵するミオグロビンという色素タンパク質が豊富だから。血そのものではなく、あくまで筋肉の一種です。マグロ・カツオ・サバ・ブリといった赤身・青魚で大きく、ヒラメやカレイのような白身魚ではごくわずかしかありません。

静岡県水産技術研究所の研究レポートによると、カツオの血合肉は可食部筋肉中の13〜16%を占めるのに対し、クロダイは約4%、マガレイは約5%とされています。つまり同じ「血合い」でも、魚種によって量が桁違いに変わるということです。回遊性の高い魚ほど血合いが発達し、その分、下処理の重要度も上がると覚えておくと判断しやすくなります。

生臭さの正体はミオグロビンの酸化とトリメチルアミン

血合いが生臭くなる原因は主に2つです。1つはミオグロビンの酸化。時間が経つと鮮やかな赤から赤黒・茶褐色へ変色し、独特の鉄っぽい血生臭さが強まります。もう1つはトリメチルアミン。魚の体内にあるトリメチルアミンオキサイドが、死後に微生物の働きで分解されてできる成分で、あのアンモニアのような生臭さの主因です(東京ガス ウチコト)。血合いはミオグロビンが濃い分、酸化臭も出やすい部位というわけです。

だからこそ、青魚や赤身魚は鮮度が命。鮮度が落ちるほど血合いの臭みは加速度的に強まります。釣った魚を美味しく食べる前提として、現場での処理も重要です。釣り場での締めと血抜きについてはカツオ料理レシピの記事でも触れていますが、台所に上がってからの処理がこの記事のテーマです。

血合いの取り方:V字切り込みで一気に引き抜く

刺身などで血合いを除く場合の、もっとも基本的なやり方です。身の中央には「血合い骨」が並んでおり、その線に沿って処理すると、血合いと小骨をまとめて除けます。

切り身(サク取り前)でのV字カット手順

  1. 血合い骨のラインを確認する:身の真ん中、背側と腹側の境目に赤黒い帯と小骨が並んでいます。ここが目印です。
  2. 背側から斜めに包丁を入れる:血合い骨の片側に沿って、刃を斜めに当てて浅く切り込みます。
  3. 腹側からも斜めに切り込む:反対側からも同じ角度で切り込み、断面がV字(くさび形)になるようにします。
  4. V字部分をつまんで引き抜く:切り離した血合い骨入りの帯を、頭側から尾側へ向かって指でつまみ、ゆっくり引っ張って外します。
  5. 残った赤身をこそげる:薄く残った血合いは、包丁の刃先か柔らかい歯ブラシで軽くこすって落とします。

頭から尾へ引くのは、血合い骨が頭側を起点に並んでいるため、その向きに沿うと抜けやすいからです。アジ・サバなど中型魚はこのV字カットが一般的です(デリッシュキッチン)。コツは、欲張って血合いを全部取ろうとして身を深くえぐらないこと。刺身で気になるのは赤黒く変色した部分なので、鮮やかな赤までは残しても問題ありません。包丁は切れるものを使い、引くときは「切る」より「すべらせる」イメージで力を抜くと、身崩れせずきれいに外れます。

なお、血合い骨と血合いは別物です。血合い骨は身の中央に列をなす小骨で、血合いはその周りの赤黒い赤色筋。V字カットは両方を一度に処理できるのが利点ですが、刺身の歩留まりを重視するなら、血合い骨だけ毛抜きで抜き、血合いは包丁でこそげる方法に切り替えます。料理と魚のサイズに応じて使い分けてください。

マグロ・ブリのサクは1本ずつ抜くか薄く削ぐ

マグロ・ブリ・カンパチのように身が厚くサク取りする大型魚では、刺身の歩留まりを上げるため、血合い骨を毛抜きで1本ずつ抜く方法や、血合いの中央から2つに割って薄く削ぎ取る方法も使われます。サクを美しく仕上げてから切りつける流れは刺身の引き方・盛り付けの記事と合わせて読むと、下処理から盛り付けまで一本につながります。

臭み取りの正しい順序:6ステップで生臭さを断つ

ここが本記事の核心です。臭み取りは個々の技より順序が効きます。塩より先に霜降りをしたり、ふり塩のあと真水で洗ったりすると効果が半減します。一つひとつの工程には「前の工程で何を準備し、次の工程に何を渡すか」という役割があり、順番を入れ替えると役割が噛み合わなくなるからです。煮付けや塩焼きなど火を通す料理の下処理として、次の順番で進めてください。

工程目安狙い
1流水洗いぬめりが取れるまで表面の血・ぬめり・汚れを除く
2ふり塩切り身10〜15分/厚いもの20〜30分浸透圧で臭み水分を引き出す
3塩水で洗う約3%の塩水でさっと表面の塩と臭みを流す
4熱湯で霜降り90〜95℃を回しかけ残った血・ぬめりを固めて落とす
5酒洗いさっと通す残り香をマスキングし旨味を補う
6水気を拭くキッチンペーパーで臭み水分を残さない

STEP1 流水洗い:ぬめりと血を最初に落とす

まず流水で、ぬめりが取れるまで表面をしっかり洗います。血合いや内臓の残りは生臭さの発生源なので、柔らかい歯ブラシで血合いをこすり落とすと効果的です(東京ガス ウチコト)。ここで汚れを残すと、後の工程の効果が落ちます。

STEP2 ふり塩:浸透圧で臭み水分を引き出す

表面に塩をふって少し置きます。塩で濃い塩水ができ、浸透圧で身の中から水分がしみ出します。この水分に生臭さの成分が溶け込むため、置いてから拭き取ると臭みが減る仕組みです(Z会おうち学習ナビ)。目安は切り身で10〜15分、厚みのある切り身や青魚はもう少し長めに。長く置きすぎると身が締まりすぎるので様子を見ます。

STEP3 塩水で洗う:真水で洗わないのがコツ

ふり塩後の表面を洗うときは、真水ではなく約3%の塩水を使います。真水で洗うと浸透圧が逆向きに働き、せっかく引き出した臭み水分が身に戻ってしまうためです(白ごはん.com/東京ガス)。手早く洗うのもポイントです。

STEP4 霜降り:熱湯で残りの血とぬめりを固める

霜降りは、熱湯をかけて表面の血・脂・ぬめりを固めて落とす下処理です。表面が白く霜のようになることから「霜降り」と呼ばれます。白ごはん.comによると、丸ごとの魚は90〜95℃のお湯を使い、湯をかけたら差し水で冷ましてから、血や汚れを水中で一つずつ洗い落とします。焼く・揚げる料理と違い、煮る料理は素材を水やだしの中で加熱するため、嫌な風味がそのまま煮汁に移りやすいのです。だからこそ、煮付け・あら炊き・潮汁ではこの霜降りが特に効きます。刺身には霜降りは不向きなので、生食では行いません。

霜降りで大切なのは、熱湯をかけたあとすぐ冷水に取る点です。熱が入りすぎると身に火が通って煮えてしまうため、表面が白くなったらすぐ冷まし、指で触れる温度になってから血の塊やうろこ、ぬめりを丁寧にこすり落とします。あら(頭や中骨)を使う料理では、この工程を省くと臭みが残りやすいので、ひと手間を惜しまないことが仕上がりを分けます。

STEP5・6 酒洗いと拭き取り:仕上げの一手

仕上げに酒でさっと洗うと、残った生臭さをマスキングし、旨味も補えます。青魚では、ふり塩の後に酢で洗う方法も有効です。酢の酸がアルカリ性のトリメチルアミンを中和するためで、先に塩で身を締めてから行うのがコツです(東京ガス ウチコト)。最後に必ずキッチンペーパーで水気を拭き取ってから調理に進みます。臭み水分を残さないことが、生臭さを断つ最後の決め手です。

魚種別の違い:マグロ・サバ・カツオ・ブリ

血合いの量と酸化のしやすさは魚種で大きく違います。脂の量とミオグロビンの濃さの組み合わせで、処理の重点が変わると考えると分かりやすいです。

魚種血合いの量特徴処理の重点
マグロ多い赤身で血合いが厚い。佃煮向き刺身は除く/加熱なら活かす
サバ多い脂が乗り酸化が速い「生き腐れ」素早い処理と塩・酢で締める
カツオ非常に多い血合肉が13〜16%と桁違い鮮度勝負。たたきは表面を焼く
ブリ多い冬は脂が濃く血合いも栄養豊富煮付け・照り焼きで活かす

サバ:酸化が速い「生き腐れ」、塩と酢で締める

サバは脂が多く血合いの酸化が速いため「サバの生き腐れ」と言われるほど鮮度劣化が早い魚です。だからこそ素早い下処理が要。ふり塩でしっかり締め、しめ鯖なら酢で臭みを抑えます。サバの締め方から各種レシピまではサバ料理レシピ大全の記事に詳しくまとめています。

カツオ:血合肉が桁違いに多い、たたきは理にかなう

カツオは血合肉の割合が際立って多く、鮮度の影響をもっとも受けやすい魚のひとつ。表面を炙る「たたき」は、表面の生臭みを飛ばしつつ中の旨味を残す、理にかなった食べ方です。下処理から調理までの流れはカツオ料理レシピの記事を参照してください。

ブリ・マグロ:加熱なら血合いは「活かす」が正解

ブリやマグロの血合いは、鉄分・ビタミンB群・DHA・EPAなどが豊富で、タンパク質は身より多いとも言われます。マグロの血合いにはコレステロールを下げるタウリンも含まれます。生姜を効かせた煮付け、佃煮、下味をつけた唐揚げにすると、臭みを抑えつつ栄養を無駄なくいただけます。血合いを下ごしらえするときは、塩をふって15分ほど置き、臭み水分を抜いてから加熱するのが基本です。さらに臭みを取りたいときは、水を替えながら塩水に漬けたり、酒を入れた熱湯でさっと下茹でしてから本調理に移ると、生臭さがぐっと和らぎます。

ブリの水溶性ビタミンやタウリンは煮汁に溶け出すため、煮付けにしたら煮汁ごといただくと栄養を無駄にしません。冬のブリは脂が濃く血合いも厚いので、生姜や長ねぎ、味噌などと合わせると、こっくりした旨味と臭みのバランスが取れます。「血合いは捨てるもの」という思い込みを外すと、一尾から取れる料理の幅が一気に広がります。

やりがちな失敗:順序とNG行動のチェック

下処理がうまくいかないときは、たいてい「順序」か「水」のどちらかでつまずいています。よくある失敗を整理しておきます。

  • ふり塩のあと真水で洗う:浸透圧で臭み水分が身に戻る。塩水で手早く洗うのが正解。
  • 霜降りを先にやってしまう:表面の血をふり塩で引き出す前に熱を入れると、臭みが内側に残りやすい。塩が先、霜降りは後。
  • 霜降りで湯から上げず放置する:身に火が通って煮えてしまう。白くなったらすぐ冷水へ。
  • 水気を拭かずに調理:臭み水分が残り、せっかくの工程が台無しに。最後は必ずペーパーで拭く。
  • 鮮度の落ちた魚を刺身にする:血合いの酸化臭は鮮度低下で加速する。生食は鮮度の良いものに限る。

逆に言えば、この5点を避けるだけで仕上がりは大きく変わります。とくに「塩が先・水は塩水・最後は拭く」の3原則は、どの魚種でも共通の土台です。

安全に下処理するための注意点(アニサキス・鮮度)

血合いの処理そのものは安全ですが、生で食べる魚は寄生虫アニサキスへの注意が欠かせません。厚生労働省の予防のポイントを正しく押さえてください。

  • 新鮮なものを選び、早く内臓を取る:アニサキスは魚が死ぬと内臓から筋肉へ移動するため、早めの内臓除去が有効です。
  • 目視で確認して取り除く:身や腹側を見て、幼虫がいれば取り除きます。
  • 加熱は中心70℃以上、または60℃なら1分(厚生労働省)。煮付け・唐揚げなど中心まで火が通れば死滅します。
  • 冷凍は-20℃で24時間以上(厚生労働省)。家庭用冷凍庫では時間に余裕を持たせます。
  • 内臓は生で食べない
  • 酢・塩・しょうゆ・わさびでは死滅しない:しめ鯖など酢でしめてもアニサキスは死なないと厚生労働省が明記しています。心配なら一度冷凍を。

万一、生魚を食べた後に激しい腹痛・吐き気が出た場合は、自己判断で対処せず医療機関を受診してください。なお、フグなど一部の魚は専用の資格がなければ調理・販売が法令で禁じられています。テトロドトキシン等の毒は素人には判別できず、無資格での処理は重大な事故と法令違反につながります。可食・不可食の判断に迷う魚は、必ず専門家や公的機関の情報に従ってください。

よくある質問(FAQ)

Q. 血合いは体に悪いのですか?

いいえ。血合いは鉄分・DHA・EPA・ビタミンB群などが豊富な栄養価の高い部位で、基本的に食べて問題ありません。生臭さが苦手な場合は、火を通す料理にして下処理をすれば美味しく食べられます。

Q. ふり塩のあと、なぜ真水で洗ってはいけないの?

真水で洗うと浸透圧で水分が身に戻り、せっかく引き出した臭み成分まで戻ってしまうためです。約3%の塩水で手早く洗うのが正解です。

Q. 刺身でも霜降りはした方がいい?

いいえ。霜降りは熱湯を使うため表面に火が入ってしまい、生食には不向きです。刺身は血合いをV字カットで除き、流水とふり塩で対応します。

Q. 血合いの臭みが特に強い魚は?

カツオ・サバ・マグロ・ブリなど血合いが多い赤身・青魚です。中でもサバは酸化が速く、カツオは血合肉の割合が13〜16%と非常に多いため、鮮度と素早い下処理が重要になります。

まとめ:判断軸と順序を守れば生臭さは断てる

血合いは「取るか活かすか」を料理で決め、臭み取りは「流水 → ふり塩 → 塩水 → 霜降り → 酒洗い → 拭き取り」の順序を守る。この2つを押さえれば、赤身魚・青魚の血合いはもう怖くありません。刺身ならV字カットで美しく除き、煮付けや佃煮なら栄養の塊として活かす。魚種ごとの血合いの量と酸化の速さを意識すれば、自宅の一皿は確実にレベルアップします。釣った魚を最後まで美味しくいただくために、まずは次の一尾でこの順序を試してみてください。

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