【訂正とお詫び】2026年7月27日
当サイトが本記事の旧版として公開していた内容には、事実と異なる記載がありました。「2026年4月に静岡県と浜松市が遠州灘のアカウミガメ産卵保護区域を約1.5倍に拡大すると正式に発表した」「保護区域内では夜間の照明が原則禁止となり、違反には過料が科される」と書きましたが、そのような発表も、区域の指定も、過料の規定も存在しません。根拠として挙げた法律の適用も誤っており、産卵数についての記述も静岡県が公表している内容と食い違っていました。さらに、保護活動団体の電話番号を仮の文字列のまま掲載するという初歩的な誤りもありました。地元で竿を出す方に向けて、存在しない規制を「決まったこと」として発信してしまったことを、深くお詫び申し上げます。
本記事は、公的機関が公表している情報だけを使って全面的に書き直しました。以下ではまず何が誤りだったのかを対照し、そのうえで遠州灘のサーフで釣りをする方が実際に知っておくべきことをまとめます。
訂正の内容|旧記事の記載と確認できた事実
| 旧記事の記載(誤り) | 確認できた事実 |
|---|---|
| 2026年4月に静岡県と浜松市が産卵保護区域を約1.5倍に拡大すると正式に発表した | そのような発表も、拡大される区域制度も存在しない。静岡県希少野生動植物保護条例には生息地等保護区・管理地区・立入制限地区という区域指定の制度がある(第22条・第23条)が、アカウミガメについてこれらの区域指定は行われていない |
| 保護区域内では夜間の照明が原則禁止になる | 照明の使用を禁じる規定は確認できない。ただし強い光がウミガメの上陸や子ガメの移動を妨げること自体は事実であり、マナーとしての配慮は必要 |
| 違反には過料が科される | 過料の規定は存在しない。県条例第11条は指定種の捕獲・採取・殺傷・損傷を禁じ、第8章に罰則が置かれているが、これは照明や立入に対するものではない |
| 種の保存法が夜釣り規制の根拠になる | アカウミガメが同法の国際希少野生動植物種であることは事実だが、同法が規制するのは譲渡し・販売・頒布目的の陳列等であり、産卵地への立入や車両進入を直接規制するものではない |
| 産卵数が近年増え続け、過去最多を記録した | 静岡県公式によると、上陸数等は平成24年をピークに減少し、近年は隔年で増減を繰り返しながら横ばいで推移している |
| 保護活動団体の連絡先として電話番号を掲載 | 仮の文字列をそのまま公開していた。確認の取れた番号がないため、本記事には電話番号を記載しない |
2026年7月時点で実在する保護の枠組み
遠州灘のアカウミガメをめぐる枠組みは、大きく三つある。浜松市の指定天然記念物としての指定、静岡県希少野生動植物保護条例の指定種としての指定、そして種の保存法の国際希少野生動植物種としての位置づけである。旧記事が書いたような「産卵保護区域」は、このいずれにも存在しない。順に見ていく。
浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地(浜松市指定天然記念物)
浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地は、浜松市の指定天然記念物である。指定は平成2年3月10日。対象となる範囲は、中央区松島町から舞阪町にかけての海岸とされている。
浜松市が指定しているのは中央区松島町から舞阪町にかけての海岸で、この範囲は行政が公式に「アカウミガメの産卵地」と位置づけている場所である。釣り人としてまず押さえておきたいのはこの一点で、規制の有無より先に「ここは産卵地として認められている浜だ」という前提が立つ。個別の行為について判断が必要になった場合は、浜松市の文化財担当に確認するのが確実である。
静岡県希少野生動植物保護条例の指定種
アカウミガメは、静岡県希少野生動植物保護条例の指定種でもある(平成26年4月1日指定)。同条例第11条は、指定種の捕獲・採取・殺傷・損傷を禁止しており、違反に対しては第8章に罰則が定められている。
ここで禁じられているのは、あくまでカメそのものに手を出す行為である。卵を掘り出す、子ガメを持ち帰る、上陸してきた個体を傷つける。こうした行為は明確にこの禁止に触れる。逆に言えば、この条文は「浜に入るな」「夜に釣るな」と言っているわけではない。
区域を指定する制度はあるが、アカウミガメには使われていない
同じ条例には、場所そのものを指定する仕組みも用意されている。生息地等保護区、管理地区、立入制限地区といった制度がそれで、第22条・第23条に規定がある。旧記事が書いた「産卵保護区域の拡大」は、この制度と紛らわしい形の記述になっていた。
ただし実際には、アカウミガメについてこれらの区域指定は行われていない。したがって現時点で、砂浜へ立ち入ること自体や、夜間に釣りをすること自体を条例で禁じる規定は存在しない。「区域が拡大されたから今年から夜釣りができなくなった」という話は、前提から成立しない。
種の保存法が規制しているのは主に「取引」
アカウミガメは種の保存法の国際希少野生動植物種でもある。ただし同法が規制するのは、譲渡し、販売、頒布目的の陳列といった行為であって、産卵地への立入や車両の進入を直接規制するものではない。旧記事はこの法律を夜釣り規制の根拠として挙げていたが、これは条文の対象を取り違えた誤りだった。
御前崎のウミガメ及びその産卵地(国指定天然記念物)
遠征先として名前が挙がることのある御前崎については、「御前崎のウミガメ及びその産卵地」が国の天然記念物に指定されている(昭和55年3月6日指定・静岡県御前崎市)。浜松市域の指定とは、指定の主体も年も別である。県内の海岸を移動しながら釣る人は、浜松と御前崎で枠組みが違うことだけ頭に入れておきたい。
産卵の状況|「近年増え続けて過去最多」は事実ではない
静岡県が公表している内容によると、アカウミガメの上陸数等は平成24年をピークに減少し、近年は隔年で増減を繰り返しながら横ばいで推移している。旧記事が書いた「近年増え続けて過去最多を記録した」という事実はない。(この推移の出典=静岡県「希少野生動植物の指定種」 https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/shizenkankyo/wild/1051663.html )
この点は単なる数字の誤りにとどまらない。旧記事は「産卵が急増しているから規制が強化される」という筋書きで規制の話をつなげていたが、その出発点となる増加自体が事実でなかった。ピーク時から減った水準で横ばいという現状のほうが、砂浜を使う側にとってはよほど重い情報だと思う。規制されていないから配慮しなくていい、という向きの話ではない。
中田島砂丘で続いている調査・保護活動
中田島砂丘では、特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオーが長年にわたってウミガメの調査・保護活動を続けている。同じ団体は「サンクチュアリジャパン」の名称でも活動しており、両者は同一の団体を指す。
団体の始まりは1984年の馬込川河口での市民運動で、アカウミガメの繁殖調査は1987年に始まった。長く積み重ねられてきた活動である。夏場の夜の浜で調査をしている人に出くわすことがあるが、そのときは作業の妨げにならない距離をとりたい。
禁止されていなくても、釣り人が守りたいこと
ここから先は法規制の話ではなく、マナーの話である。規制がないことと、何をしてもいいことは違う。産卵期とふ化期はおおむね5月から9月で、遠州灘のサーフが最も賑わう時期とそのまま重なる。
| 場面 | 具体的にどうするか |
|---|---|
| 明かり | ヘッドライトは必要最小限。海側や砂浜を広く照らさない |
| 移動 | 砂浜への車両乗り入れはしない |
| 這い跡・産卵巣を見つけた | 触らない。浜松市の文化財担当か保護活動団体に連絡する |
| 火気 | 花火・焚き火はしない |
| ゴミ | 必ず持ち帰る。特に仕掛けや糸を残さない |
ライトは手元だけに絞る
夜間の砂浜では、強い光がウミガメの上陸を妨げる。ふ化した子ガメが海へ向かう移動も、光によって狂わされる。夜のサーフでヘッドライトは必需品だが、問題になるのは光を持つことではなく向けかたである。
キャスト前に海面をなめるように照らす、仲間を探して浜を横に振る、といった使い方は避けたい。ラインを結ぶ、ルアーを交換する、フックを外すといった手元の作業に用途を絞り、光量も落としておく。海側と砂浜を広く照らさない、という一点を守るだけで影響はかなり変わる。
砂浜に車を入れない
産卵巣は、砂の表面からは分からないことが多い。踏み固められて見える場所でも、その下に卵があるかどうかは外から判断できない。荷物が重い釣りほど浜際まで寄せたくなるが、砂浜への車両乗り入れはしないのが原則である。
這い跡や産卵巣らしきものを見つけたら
砂の上に幅のある這い跡が残っていたり、産卵巣らしき痕跡を見つけたりした場合は、触らず、掘らず、その場を離れる。そのうえで浜松市の文化財担当か、保護活動を行っている団体に連絡してほしい。
本記事には電話番号を書かない。旧記事で仮の番号をそのまま掲載してしまった反省から、確認の取れていない連絡先は載せない方針としている。連絡先は各機関の公式サイトで確認していただきたい。
火とゴミ
花火や焚き火はしない。ゴミは必ず持ち帰る。とりわけ、切れて放置された仕掛けやラインはウミガメにとって危険なものになる。高切れした先を回収しきれないことは釣りをしていれば起きるが、回収できる範囲は必ず拾って帰りたい。
結局、どうすればいいか
- 夜釣りも砂浜への立入も、条例で禁止されてはいない。アカウミガメを対象とした区域指定は行われていない。
- ただしアカウミガメ自体は静岡県希少野生動植物保護条例の指定種であり、捕獲・採取・殺傷・損傷は禁止され、罰則もある。卵や子ガメに手を出す行為は論外である。
- 浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地は市の指定天然記念物。指定範囲は中央区松島町から舞阪町にかけての海岸で、公式に産卵地とされている浜で釣らせてもらっている、という前提で振る舞う。
- 5月から9月は特に、ライトを手元に絞る・車を入れない・火を使わない・ゴミと糸を残さない。
- 這い跡や産卵巣を見つけたら触らず、浜松市の文化財担当か保護活動団体へ。連絡先は各機関の公式サイトで確認する。
再発防止について
今回の誤りは、存在しない制度を「発表があった」という形で書いてしまったことに尽きる。規制の記事は、読んだ人の行動を実際に変えてしまう。事実でない規制を伝えることは、単に間違っているだけでなく、公的機関が本当に出している情報への信頼まで損なう。
以後、制度や規制を扱う記事については、制度名と施行日を公的機関のページで確認できたものだけを書く、罰則や金額は条文で確認できたものだけを書く、確認の取れない連絡先や事業者名は書かない、参照した一次情報のURLを記事末に明示する、という手順をとる。本記事はその手順で書き直したものである。
参考にした一次情報
本記事の記述は、以下の公式ページで確認できる。URLは全文をそのまま掲載しているので、ブラウザのアドレス欄に貼り付けて参照してほしい。
- 浜松市「浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/bunkazai/shitei/hamatsu/hamatsu/umigame.html
- 静岡県「希少野生動植物の指定種」(上陸数等の推移もこのページによる) https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/shizenkankyo/wild/1051663.html
- 御前崎市「御前崎のウミガメ」 https://www.city.omaezaki.shizuoka.jp/soshiki/shakaikyoiku/bunka/omaezakinoumigame/omaezakinoumigame.html
- サンクチュアリジャパン https://www.sanctuarynpo.jp/



