気田川とは?天竜川水系最大の支流が持つポテンシャル
浜松市天竜区を北から南へ流れる気田川(けたがわ)は、天竜川水系で最大級の支流として知られる全長約40kmの清流だ。源流は春野町の竜馬ヶ岳(標高1,501m)付近に発し、春野の山間集落を縫うように南下して、船明ダム湖の上流側で天竜川に合流する。
この川の最大の魅力は水質の良さ。上流部には生活排水がほとんど流入せず、初夏には川底の石に天然アユが付く良質な苔が育つ。「天竜川本流よりアユの味が良い」と言う地元師も多く、友釣りシーズンには県内外からベテランが集まる一級フィールドだ。
一方で、アマゴ・イワナが狙える上流部の渓流域、オイカワやカワムツが群れる下流部の里川域まで、1本の川で渓流から里川までの釣りを楽しめる懐の深さがある。浜松市街地から車で約60〜80分とアクセスもそこまで悪くなく、日帰り釣行にちょうどいい距離感だ。
この記事では、気田川を上流域(源流〜犬居)・中流域(犬居〜気田)・下流域(気田〜天竜川合流)の3エリアに分けて、各区間の特徴・狙える魚種・入渓ポイント・駐車スペースを徹底解説する。2026年の解禁情報や遊漁券の購入方法も網羅しているので、初めて気田川に行く人もこの記事だけで釣行計画を立てられるはずだ。
気田川で釣れる魚種と季節別カレンダー
気田川は標高差が大きいため、エリアによって狙える魚種がガラッと変わる。まずは季節×魚種の全体像を把握しておこう。
| 魚種 | 主なエリア | ベストシーズン | 釣り方 |
|---|---|---|---|
| アマゴ | 上流〜中流 | 3月〜9月(解禁後) | 渓流ルアー・フライ・餌釣り |
| イワナ | 源流〜上流 | 3月〜9月 | 餌釣り・テンカラ |
| アユ | 中流〜下流 | 6月〜10月 | 友釣り・ドブ釣り・コロガシ |
| オイカワ | 中流〜下流 | 5月〜10月 | 毛バリ・餌釣り・フライ |
| カワムツ | 全域 | 4月〜11月 | 餌釣り・フライ |
| ウグイ | 中流〜下流 | 3月〜11月 | 餌釣り |
| ニジマス(放流) | 中流(管理区間) | 放流日に依存 | ルアー・餌釣り |
春(3月〜5月):アマゴ解禁で始まる渓流シーズン
3月1日のアマゴ・イワナ解禁と同時に、気田川の1年が始まる。解禁直後は水温がまだ低く(8〜10℃程度)、魚の活性は高くないが、放流ポイント周辺では数釣りが楽しめる。上流域の犬居ダム上流や、中流域の秋葉神社前後に放流が入ることが多い。4月以降は水温の上昇とともに天然アマゴの活性が上がり、瀬の開きや落ち込みで良型が出始める。
夏(6月〜8月):アユ友釣りの最盛期
6月上旬のアユ解禁から一気に川が賑わう。気田川のアユは天竜川本流からの遡上魚と漁協の放流魚が混在するが、中流域では天然遡上の比率が比較的高い。7月〜8月がピークで、良い瀬に入れば20cm超の良型が掛かる。水温は18〜22℃前後で推移し、アユにとって理想的な環境だ。
秋(9月〜11月):落ちアユと秋色アマゴ
9月後半からアユが産卵のために下流へ移動する「落ちアユ」シーズン。この時期のアユは体が大きく引きも強烈だ。同時にアマゴも秋の婚姻色を帯び始め、渓流釣りのラストスパートとなる。9月末でアマゴ・イワナは禁漁となるエリアが多いので注意。
冬(12月〜2月):オフシーズン
主要魚種がほぼ禁漁期に入るため、気田川は静かな冬を迎える。ただし、下流域のオイカワやウグイは通年狙える。厳冬期は積雪・凍結でアクセス自体が困難になる区間もあるため、無理な釣行は避けたい。
上流域(源流〜犬居エリア):アマゴ・イワナの渓流パラダイス
気田川上流域は、春野町の奥地から犬居(いぬい)地区にかけてのエリア。川幅は5〜15m程度で、巨岩がゴロゴロと転がる典型的な山岳渓流の様相を呈する。アマゴがメインターゲットで、さらに上流の支沢ではイワナも顔を出す。
ポイント①:石切(いしきり)〜勝坂(かつさか)区間
春野町の最奥部にあたるこの区間は、気田川でも最も渓谷感が強いエリアだ。国道362号から県道389号に入り、さらに林道を進んだ先にある。
- 川の特徴:落差のある落ち込みと深い淵が連続。川幅5〜8mで両岸は切り立った岩壁
- 狙える魚:アマゴ(放流+天然)、イワナ(支流合流点付近)
- おすすめの釣り方:餌釣り(ブドウムシ・キジ)が最も実績あり。ルアーならスピナー(AR-S 3.5g)やミノー(50mm前後のシンキング)
- 入渓:林道沿いに数カ所、川へ降りられる踏み跡あり。足場が急なので沢靴(フェルトソール)必須
- 駐車:林道の路肩に2〜3台程度。転回スペースが限られるので注意
このエリアはアクセスの悪さゆえに釣り人が少なく、平日なら貸し切り状態になることも珍しくない。ただし携帯電話の電波が入らない区間が多いので、単独釣行の場合は家族や仲間に行き先を伝えておくこと。ヒル・マムシ・ツキノワグマのリスクもあり、鈴やスプレーの携帯を強く推奨する。
ポイント②:犬居ダム上流〜杉川合流点
犬居ダム(太田川ダムとは別)の上流にあたるこの区間は、上流域のなかでは比較的アクセスしやすく、漁協の放流ポイントにもなっているため、解禁直後は特に人気が高い。
- 川の特徴:川幅8〜12m。瀬・淵・トロ場のバランスが良く、餌・ルアー・フライいずれの釣り方にも対応
- 狙える魚:アマゴ(放流直後は25cm級も)、カワムツ
- おすすめの釣り方:解禁直後はイクラ餌のミャク釣りが鉄板。4月以降はルアー(スプーン2〜5g、ミノー50mm)が面白い
- 入渓:県道沿いの橋やガードレール切れ目から。堰堤の上下が好ポイント
- 駐車:犬居地区の集落内に路肩スペースあり。地元の方の迷惑にならないよう配慮を
中流域(犬居〜気田エリア):アユ友釣りの本場
犬居地区から気田(けた)集落にかけての中流域は、気田川で最も釣り人が多いメインエリアだ。川幅は15〜30mに広がり、開けた瀬と適度な深さの淵が交互に現れる。アユ友釣りのメッカであり、6月の解禁日には早朝から河原にズラリと竿が並ぶ光景が見られる。
ポイント③:秋葉神社前〜気田大橋
気田川中流域のハイライトとも言えるのがこの区間。秋葉神社下社の参道入口付近から気田大橋にかけて、約3kmにわたって良質な瀬が続く。
- 川の特徴:川幅20〜25m。大小の石が敷き詰められた平瀬が中心で、石の色付き(苔の付着)が良好。アユが好む流速の瀬が連続する
- 狙える魚:アユ(6月〜10月)、アマゴ(3月〜9月)、オイカワ(通年)
- アユのサイズ:シーズン序盤は15〜18cm、盛期の7〜8月で18〜23cm、落ちアユ期は25cm超も
- おすすめの釣り方:友釣りが王道。竿は8.5〜9m、水中糸はフロロ0.15〜0.2号、ハリは7〜7.5号4本イカリが標準
- 入渓:国道362号沿いに河原へ降りる道が複数あり。秋葉神社下社の駐車場から徒歩5分で河原に出られる
- 駐車:秋葉神社下社駐車場(無料・20台程度)。解禁日は早朝に満車になるので注意
このエリアの魅力は、瀬のバリエーションの豊かさだ。チャラ瀬・早瀬・荒瀬と様々なタイプが揃うため、おとりアユの元気さや自分の技量に合わせてポイントを選べる。友釣り初心者には流れの緩いチャラ瀬から入り、おとりが替わったら早瀬に移動するパターンがおすすめだ。
ポイント④:気田集落周辺〜久保田橋
気田集落は旧春野町の中心部にあたり、商店やガソリンスタンドもあるため、補給拠点としても重宝する。この周辺はアユだけでなく、アマゴの放流ポイントにもなっている。
- 川の特徴:川幅15〜20m。集落裏手は護岸が入っているが、少し上下流に移動すると自然河岸が残る
- 狙える魚:アユ、アマゴ、オイカワ、カワムツ、ウグイ
- おすすめの釣り方:アユの友釣りのほか、瀬脇のたるみでアマゴをルアーで狙うのも面白い。ヘビーシンキングミノー(D-コンタクト50Sなど)を瀬頭にキャストしてドリフトさせるパターンが効く
- 駐車:気田橋付近に河原へ降りる未舗装路があり、河原に5〜6台駐車可能(増水時は要注意)
中流域でのアユ友釣り実践テクニック
気田川の中流域でアユ友釣りを楽しむなら、以下のポイントを押さえておきたい。
- 石の色を見る:アユが苔を食んだ「ハミ跡」がある石は黒っぽく光る。この石が密集している瀬が狙い目
- 朝イチは瀬肩から:早朝はアユが瀬の上流端(瀬肩)に集まりやすい。8時〜9時は瀬肩に立ち、日が高くなったら瀬の中心部へ移動
- 背バリを活用:気田川は流速がやや速い瀬が多いため、おとりを底に沈めるために背バリ(チラシ仕掛けの背中側)を積極的に使う
- 増水後は2〜3日待つ:夏場の夕立で増水した直後は泥水が収まるまで待機。引き水(水位が下がり始め)のタイミングがアユの活性が最も高い
下流域(気田〜天竜川合流エリア):里川の多彩な釣り
気田川の下流域は、春野町の南端から船明ダム湖手前の天竜川合流点にかけてのエリア。川幅は30〜50mに広がり、穏やかな里川の風景が広がる。アユのほか、オイカワ・カワムツ・ウグイなどの雑魚釣りも盛んで、のんびりとした釣りを楽しみたい人に向いている。
ポイント⑤:横川地区〜熊(くんま)方面分岐
- 川の特徴:川幅25〜35m。緩やかな流れのトロ場と浅い瀬が交互に現れる。河原が広く、ファミリーでも入りやすい
- 狙える魚:アユ、オイカワ、カワムツ、ウグイ
- おすすめの釣り方:オイカワのフライフィッシングが隠れた人気。#16〜#20のドライフライ(エルクヘアカディス等)を流すと、夕方のライズタイムに入れ食いになることも
- 駐車:国道362号沿いの退避スペースを利用。農道から河原に降りられるポイントもある
ポイント⑥:天竜川合流点(船明ダム湖上流)
気田川が天竜川に注ぎ込む合流点は、両河川の魚が集まるホットスポット。特に秋の落ちアユシーズンは、産卵のために下流へ向かうアユが合流点付近に溜まるため、大型が期待できる。
- 川の特徴:合流点は水深があり、流れの変化が複雑。気田川からの清流と天竜川のやや濁った水が混じり合う境目が狙い目
- 狙える魚:アユ(落ちアユ)、ニジマス(天竜川からの流入)、ウグイ、オイカワ
- 注意:船明ダムの放流による急な増水に注意。サイレンが鳴ったら即座に河原を離れること
- 駐車:県道沿いの空きスペースに3〜4台程度
解禁日・遊漁券・漁協情報【2026年版】
気田川で釣りをするには遊漁券(入漁券・鑑札)が必要だ。管轄は天竜川漁業協同組合で、以下の規定に従う。
2026年の解禁日
| 魚種 | 解禁日 | 禁漁日 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アマゴ・イワナ | 3月1日 | 9月30日 | 一部区間でキャッチ&リリース区間あり |
| アユ | 6月上旬(年により変動) | 12月31日 | 友釣り・毛バリ・ドブ釣り・コロガシ |
| 雑魚(オイカワ等) | 通年 | なし | 遊漁券は必要 |
遊漁券の種類と料金
| 券種 | 対象魚種 | 料金(目安) |
|---|---|---|
| アユ年券 | アユ | 8,000〜10,000円 |
| アユ日券 | アユ | 2,000〜3,000円 |
| 渓流魚年券 | アマゴ・イワナ | 5,000〜6,000円 |
| 渓流魚日券 | アマゴ・イワナ | 1,000〜1,500円 |
| 雑魚年券 | オイカワ・ウグイ等 | 2,000〜3,000円 |
※料金は年度により変動する場合があるため、釣行前に天竜川漁協の公式サイトまたは電話で最新情報を確認してほしい。
遊漁券の購入場所
- 天竜川漁業協同組合事務所:浜松市天竜区内
- 春野町内のコンビニ・商店:気田周辺の個人商店で取り扱いあり
- 釣具店:浜松市内の大型釣具店(イシグロ浜松高林店、かめや釣具浜松店など)で購入可能
- オンライン:「つりチケ」アプリで一部券種の購入が可能(要事前確認)
遊漁券なしで釣りをすると現場徴収(割増料金)の対象となる。必ず事前に購入しておこう。遊漁監視員は解禁直後やハイシーズンに頻繁に巡回している。
アクセス・駐車場・周辺施設
車でのアクセス
気田川沿いには国道362号が並走しており、これが釣行時のメインルートとなる。
- 浜松市街地から:国道152号を北上→天竜区二俣で国道362号に入り春野方面へ。中流域(気田集落)まで約70分
- 新東名・浜松浜北ICから:国道152号→国道362号。中流域まで約50分
- 東名・浜松ICから:国道152号北上ルート。中流域まで約80分
注意点として、国道362号は山間部の曲がりくねった道が続く。特に二俣〜春野間はカーブが多く、対向車とのすれ違いに注意が必要だ。冬季は路面凍結の恐れもあるので、スタッドレスタイヤの装着を推奨する。
主要駐車スペース一覧
| ポイント名 | 駐車台数(目安) | 路面 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 石切・勝坂(上流域) | 2〜3台 | 未舗装(林道路肩) | 転回注意 |
| 犬居ダム上流 | 5〜6台 | 未舗装 | 集落内マナー厳守 |
| 秋葉神社下社 | 約20台 | 舗装 | 無料・トイレあり |
| 気田橋付近河原 | 5〜6台 | 未舗装(河原) | 増水時は移動必須 |
| 横川地区 | 3〜4台 | 未舗装(退避帯) | 国道362号沿い |
| 合流点付近 | 3〜4台 | 未舗装 | 県道沿い |
周辺施設
- コンビニ:春野町内にはコンビニがない(2026年現在)。天竜区二俣のセブンイレブンが最寄り。釣行前に食料・飲料は必ず買い込んでおくこと
- トイレ:秋葉神社下社、道の駅「いっぷく処横川」(営業時間内)、気田集落内の公衆トイレ
- ガソリンスタンド:気田集落にJAのスタンドあり(営業時間限定)。満タンにして向かうのが無難
- 温泉:釣りの帰りに立ち寄れる「やすらぎの湯」(春野町)や、天竜区二俣方面の「天竜の湯」がある
- 携帯電波:中流域の集落周辺はドコモ・auが通じるが、上流域は圏外になるエリアが多い
気田川で安全に釣りを楽しむための注意事項
山間部の渓流釣りには街場の釣りとは異なるリスクがある。以下の注意事項を必ず確認してほしい。
増水・鉄砲水への備え
- 気田川の上流域は集水域が広く、上流で降った雨が一気に流れ込むことがある。晴れていても上流に雨雲がかかっている場合は危険
- 水位の変化、水の濁り、流木の増加を感じたら即座に河原を離れる
- 特に船明ダム放流時は下流域で急激な水位上昇が起こる。放流警報のサイレンが聞こえたら、迷わず高台に避難
- 河原に駐車した車も増水で流される事例がある。少しでも不安なら護岸上の駐車スペースを選ぶこと
生き物のリスク
- マムシ:河原の石の間や草むらに潜んでいることがある。入渓時は足元をよく確認
- ヤマビル:梅雨時期の上流域に多い。長靴の上端にヒル除けスプレーを塗布しておくと効果的
- ツキノワグマ:上流域では目撃情報あり。クマ鈴の携帯は必須。早朝・夕方は遭遇リスクが高まる
- スズメバチ:秋口(9〜10月)は特に注意。河原の倒木や岩の隙間に営巣していることがある
装備チェックリスト
- ウェーダーまたは沢靴(フェルトソール推奨、上流域はフェルトスパイクが安心)
- 偏光サングラス(川底の石やポイントの確認、紫外線対策)
- ライフジャケット(腰巻き型でもOK、特に下流域のウェーディング時)
- 帽子・日焼け止め(河原は直射日光を遮るものがない)
- 飲料水2L以上(春野町内に自販機が少ない)
- クマ鈴・ホイッスル(上流域)
- スマートフォン用防水ケース(万が一の連絡手段確保)
- ヘッドライト(渓谷は日暮れが早い、帰路に必要になることも)
まとめ:気田川は「通い込むほど奥が深い」フィールド
気田川は天竜川の最大支流として、アマゴの渓流釣りからアユの友釣り、オイカワのフライフィッシングまで、多彩な釣りを1本の川で楽しめる贅沢なフィールドだ。
初めての人には、中流域の秋葉神社前〜気田大橋エリアをおすすめする。駐車場・トイレが整備されていてアクセスしやすく、アユもアマゴも狙えるオールラウンドなポイントだ。腕を上げたら上流域の天然アマゴに挑戦し、のんびりしたい日は下流域でオイカワのフライを楽しむ——そんな使い分けができるのが気田川の懐の深さだろう。
最後に、気田川の釣行計画を立てるうえでのチェックポイントをまとめておく。
- 遊漁券は事前購入:春野町内では購入場所が限られるため、浜松市内の釣具店かオンラインで
- 食料・飲料は二俣までに調達:春野町にコンビニはないので注意
- 天気予報は「上流域」もチェック:浜松市街が晴れでも山間部は別天候のことがある
- 解禁情報の最新確認:天竜川漁協のウェブサイトや電話で放流日・規制区間を事前確認
- 安全装備は省かない:沢靴・偏光グラス・クマ鈴は渓流釣りの三種の神器
浜松市街から約1時間で、これほどの清流と向き合えるのは気田川ならではの贅沢だ。次の休日、朝早く起きてハンドルを北に向けてみてほしい。きっと、リールのドラグ音と川のせせらぎだけが聞こえる、最高の1日が待っている。



