結論:下巻きは「総容量−メイン糸量」のすき間を埋めるだけ
新品のPEを丸ごと巻くと、スプールに対して足りなかったり余ったりします。これは新品PEの巻き量(150mや200m)が、使うリールのスプール容量とぴったり一致しないからです。下巻き量の決め方は意外とシンプルで、「スプール総容量」から「巻きたいメイン糸の量」を引いた“すき間”を、安い糸で埋めるだけです。計算式は「下巻き量 = 換算した総糸巻量 − 使うPEの長さ」。この一行が分かれば、PEを買い足さずに飛距離もトラブル耐性も両立できます。
| 疑問 | この記事の答え |
|---|---|
| 下巻きは何mが正解? | 「総容量−メイン糸量」のすき間ぶん。リールと号数で毎回変わる |
| ツールがないと無理? | 号数比でナイロン換算すれば暗算で概算できる(後述の早見表) |
| 多めと少なめどっち? | 迷ったら少なめ。スプール上端から1〜2mm下げて止める |
| 下巻きに使う糸は? | メインと同等か少し細いナイロン(太いとめり込む) |
| 巻く手順そのものは? | 本記事は「量の決断」に集中。手順は別記事へ |
糸を巻く具体的な作業手順(テンションのかけ方・結束・カラ回り防止)はリールへのライン巻き&下巻きの手順をまとめた記事に分けています。本記事は「では何mの下巻きを入れればいいのか」という量の決断だけに絞って解説します。なお、本文の号数換算・糸巻量はすべて目安です。糸の銘柄やテンションで実際の巻き量は前後するため、最終的には現場合わせで微調整してください。
なぜPEを丸ごと巻くと足りない・余るのか
スプールには糸を巻ける容量の上限があり、メーカーは「ナイロン2号なら何m」といった糸巻量をカタログに記載しています。一方で市販のPEは150m・200m・300mといった切りのいい長さで売られています。この「スプール容量」と「PEの販売単位」がそろっていないことが、足りない・余るの原因です。
たとえば、あるスプールがPE1号を220mほど巻ける容量だとします。ここにPE1号を150mだけ巻くと、70m分のすき間がスプールに残ります。糸が浅く巻かれた状態(浅溝に対してさらに浅い)になると、キャスト時に糸が出る勢いが落ちて飛距離が伸びにくくなります。逆に容量ぎりぎりまで太いPEを詰め込むと、今度はあふれてライントラブルの温床になります。
下巻きは「すき間を埋める安い糸」
そこで、メインのPEを巻く前に、スプールの底に安い糸(ナイロンが定番)を入れてかさ上げします。これが下巻きです。下巻きでスプールの“底面”を持ち上げておけば、高価なPEは必要な長さだけで済み、しかもスプール上端ぎりぎりの理想的な位置まで糸を持ってこられます。下巻き=節約と性能の両立テクニックと考えると分かりやすいです。
「買い足さない」がいちばん効くコスパ効果
下巻きの最大のうまみは、高価なメインラインを必要な長さだけで済ませられる点です。PEは号数や銘柄によって価格に幅がありますが、いずれにせよ下巻き用の安いナイロンより割高です。スプールを満タンにするためだけにPEを2巻き買う、あるいは長尺のPEを丸ごと巻いて余らせる——こうした“もったいない使い方”を、底上げのひと工夫で避けられます。実釣で実際に使う糸はスプール上層の数十mほどなので、底の方はトラブル時の予備として残しつつ、コストは安い下巻きで賄う、という発想がコスパハックの核心です。
基本の計算:総容量からメイン糸量を引くだけ
計算の土台になるのは、カタログに載っている糸巻量です。ただしカタログは「ナイロン2号で何m」のように特定の号数で書かれていることが多く、自分が巻きたい号数とは違います。そこで号数換算を1ステップ挟みます。手順は3段階です。
- 換算の元を作る:カタログの「号数 × 糸巻量(m)」を計算する(これをAとする)
- 使う号数で割る:A ÷ 使いたい号数 = 換算後の総糸巻量(これをBとする)
- すき間を出す:B − 実際に巻くメイン糸の長さ = 下巻きに必要な長さ(これをCとする)
このA・B・Cの3ステップが、下巻き量の計算原理です。出典のTSURINEWSやジギング魂でも、同じ考え方(カタログ号数×糸巻量を使用号数で割る)で総糸巻量を出してから引き算する方法が紹介されています。文章だと固く感じますが、やっていることは「すき間の体積を、糸の長さに置き換えているだけ」です。
具体例:ナイロン基準のスプールにPEを巻く
カタログに「ナイロン2号-150m」と書かれたスプールを例にします(数値は説明用の目安です)。ここに同じナイロン2号を100mだけ巻きたい場合、すき間は単純に 150 − 100 = 50m 分です。この50mぶんを下巻きで埋めます。号数が同じなら換算は不要で、引き算1回で終わります。
| ステップ | 計算(目安) | 意味 |
|---|---|---|
| カタログ容量 | ナイロン2号-150m | このスプールの基準値 |
| 巻きたい量 | ナイロン2号-100m | 実際に使うメイン糸 |
| すき間(下巻き) | 150 − 100 = 50m | 下巻きで埋める長さ |
| 割合の目安 | 100 ÷ 150 ≒ 0.67 | 容量の約7割をメインが占める |
号数が違う場合(カタログはナイロン2号だが、自分はPE1号を巻きたい等)は、いったん同じ糸種・号数に換算してから引き算します。換算が面倒に感じる人のために、次章で「ツールなしで暗算する近道」を用意しました。号数の選び方そのものに迷っている場合は、PEラインとリーダーの選び方ガイドで釣りものごとの推奨号数を確認してから戻ってくると、計算がスムーズになります。
ツールに頼らずナイロン換算で暗算する方法
オンラインの計算ツール(シマノ公式やルアーバンク等)を使えば正確ですが、釣り場でスマホが使えない・サッと概算したい場面もあります。そこで覚えておきたいのが号数比による近似です。糸が太いほど同じ長さでもスプールを多く埋めるので、号数の比がそのまま“かさ”の比になる、という考え方を使います。
PEとナイロンの太さの違いを先に補正する
PEは同じ強度ならナイロンよりかなり細い糸です。逆に言うと、同じ号数表記でもPEのほうがナイロンより細い傾向があります。TSURINEWSの解説では、巻き量を見積もるときの目安として「ナイロンはPEの約1.2倍の太さ」として換算する方法が紹介されています。つまり、ナイロン基準のスプールにPEを巻くなら、PEの実長を1.2倍して“ナイロン換算の長さ”に直してから引き算すると近づきます。
| 換算の向き | ざっくり係数(目安) | 使う場面 |
|---|---|---|
| PE → ナイロン換算 | PE長 × 約1.2 | ナイロン基準のスプールにPEを巻く |
| 太い号数 → 細い号数 | 太号数 ÷ 細号数 倍ほど長く巻ける | 同じ糸種で号数が違うとき |
| 細い号数 → 太い号数 | 逆数ぶん短くなる | 太いメインに変えるとき |
例として、ナイロン2号換算で総容量150mのスプールに、PE1号相当を巻くケースを考えます。PE1号はナイロンでいうと細い側なので、同じ150mのすき間にはより多く入ります。ここは厳密さより「足りない側に倒す」のが安全です。暗算では“少なめに見積もる”ほうが事故が少ないと覚えておいてください。あふれて巻き直すより、1〜2m足りないほうがリカバリーが楽だからです。
早見表:割合から下巻きのざっくり量をつかむ
細かい号数換算をしたくない人は、「巻きたい量 ÷ 総容量」の割合だけ押さえれば十分です。割合が分かれば、残りが下巻きのざっくり量になります。下表は総容量を100とした場合の早見です(あくまで目安で、銘柄差・テンション差で前後します)。
| メインが占める割合 | 下巻きの割合 | スプール底の見え方の目安 |
|---|---|---|
| 約7割 | 約3割 | 溝の半分くらいまで下巻き |
| 約5割 | 約5割 | 溝の3分の2あたりまで下巻き |
| 約3割 | 約7割 | かなり厚めに下巻きが必要 |
多くの両軸リールのスプールには、最大糸巻量の3分の1・3分の2の位置にマーク(溝)が入っており、そこまで下巻きを入れると残りが2/3・1/3になる、という目安に使えます。スピニングでもスプールの溝を「半分で約1/3、3分の2で約半分」と読む方法が現役釣具店員の解説で紹介されています。割合さえつかめれば、ツールなしでも“だいたいの当たり”はつけられます。
ツールが無い現場での「合わせ方」
計算はあくまで目安です。最後にものを言うのは現場合わせ。ツールも電卓もない状況で、ぴったりに仕上げる実測の考え方を紹介します。手を動かす作業手順そのものはライン巻きの手順記事に譲り、ここでは「量を見極める目線」に集中します。
少しずつ巻いて、上端から1〜2mmで止める
最終的に糸を止める位置はスプール上端(フランジ)から1〜2mm下げたところです。ここがぴったりの基準。下巻きを入れすぎると、この基準を超えてメインがあふれます。逆に下巻きが足りないと、メインを巻き切ってもスプールが浅いままになります。だからこそ下巻きは「一気に巻かず、少しずつ巻いて様子を見る」のが安全です。
いちばん確実なのは「逆巻き実測法」
計算が不安な人に最も確実なのが、TSURI HACKやTSURINEWSでも紹介されている逆巻き実測法です。考え方はこうです。先にメインのPEを目的の長さだけスプールに巻き、その上から下巻き用のナイロンをスプール上端いっぱいまで巻きます。すると、いま巻いた下巻きの量が「ちょうど必要な下巻きの量」として実測で分かります。あとは全体をボビンに移し替えて巻き直せば、計算ゼロでぴったり仕上がります。
- 長所:計算不要で、リール実物に対して必ずぴったりになる
- 短所:空ボビンへの移し替えが必要で、ひと手間多い
- コツ:移し替えの間もテンションを切らさない(緩むと量がずれる)
テンションを一定にしないと量がずれる
下巻きでも本巻きでも、巻くときのテンションを一定に保つことが量の正確さを左右します。ゆるく巻いた糸はかさばり、強く巻いた糸は締まって薄くなるため、同じ長さでもスプールの埋まり方が変わってしまうからです。TSURINEWSでは目安として「回収時のテンションと同じくらい」の張りで巻くと、実釣で使うときと同じ巻き上がりになるとされています。指やタオルで軽く糸を挟み、終始同じ力で巻きましょう。
少なめに巻くほうがいい理由(損益分岐)
下巻き量で迷ったときの結論は「迷ったら少なめ」です。多すぎと少なすぎでは、起きるトラブルの“治しやすさ”がまったく違うからです。両者を損益で比べてみます。
| 状態 | 起きること | リカバリーの手間 |
|---|---|---|
| 多すぎる(あふれ気味) | キャストでドバッと糸が出てバックラッシュ・ライントラブル増 | 大。糸を引き出して巻き直し |
| ぴったり(上端−1〜2mm) | 飛距離もトラブル耐性も良好 | 理想 |
| 少なすぎる(浅い) | キャスト性能がやや低下(飛距離が伸びにくい) | 小。下巻きを少し足すだけ |
多すぎはトラブル、少なすぎは性能ロス
多すぎる側のリスクは「ライントラブル」です。スプール上端からあふれるほど巻くと、キャストの瞬間に糸が一気に放出され、スピニングなら糸がループ状に飛び出すバックラッシュ、ベイトならバックラッシュの原因になります。トラブルが出るたびに釣りが中断し、最悪ラインを切って捨てる羽目になります。
一方、少なすぎる側のリスクは「キャスト性能の低下」です。スプールが浅いと糸の放出抵抗が増え、飛距離が伸びにくくなります。ただしこれは性能が少し落ちるだけで、釣り自体は成立します。しかも対処は「下巻きを数m足す」だけで済みます。
損益分岐は「上端−1〜2mm」
つまり損益分岐点は、スプール上端から1〜2mm下げた位置。ここを超えるとトラブルという“高い代償”、ここに届かないと性能ロスという“低い代償”になります。代償の重さが非対称である以上、狙うなら分岐点の少し手前(やや少なめ)が合理的です。新品PEを無駄なく使い切る観点でも、少なめスタートで後から微調整するほうが、糸を切って捨てるリスクを避けられます。
下巻きの太さは「メインと同等か少し細く」
量と並んで大事なのが下巻きの太さです。現役釣具店員やTSURI HACKの解説では、下巻きにはメインと同等か、少し細いナイロンが推奨されています。下巻きが太すぎると、その上に巻いた細いメインが下糸の凸凹(糸と糸のすき間)にめり込み、糸噛み(食い込み)トラブルの原因になるためです。余った安いナイロンを活用するのが定番で、コスパの面でも理にかなっています。号数の基準そのものを整理したい場合は、PEライン・リーダーの選び方ガイドもあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 下巻きはナイロンとPEどちらがいい?
コスパ最優先ならナイロンが定番です。安価で、余り糸を流用しやすいのが理由です。PE同士で巻くと滑って結束が解けやすいこともあり、下巻きにはナイロンが扱いやすいとされています。太さはメインと同等か少し細くを目安にしてください。
Q. 計算が合っているか不安です
計算はあくまで目安なので、不安なら前述の「逆巻き実測法」を使えば計算ゼロでぴったり合わせられます。あるいはシマノ公式やルアーバンクの糸巻量計算ツールに、リール機種・号数・上糸量・下糸の号数を入力すれば、下巻き必要量の数値が出ます。最後はスプール上端−1〜2mmで止める、という現場基準で確認しましょう。
Q. リール選びの段階から知りたい
そもそものリールの番手選びや基本操作から固めたい場合は、スピニングリールの選び方・使い方入門ガイドから読むと、号数選びと下巻き量の話がつながって理解しやすくなります。
まとめ:すき間を測り、少なめに倒す
下巻き量の決め方は、突き詰めれば「スプール総容量 − メイン糸量 = 下巻き量」の引き算です。号数が違えばナイロン換算(PE長×約1.2が目安)で号数をそろえてから引き、ツールがなければ割合(メインが容量の何割か)で当たりをつけます。現場では少しずつ巻いて上端−1〜2mmで止め、迷ったら少なめへ。多すぎはトラブルという重い代償、少なすぎは性能ロスという軽い代償で、リカバリーは少なすぎ側のほうが圧倒的に楽だからです。この“非対称”を理解しておけば、PEを買い足さずにスプールをぴったり仕上げられます。具体的な巻き作業はリールへのライン巻き&下巻きの手順記事へどうぞ。



