天竜川が海と出会う場所──掛塚港・河口エリアが「釣れる」理由
浜松・磐田エリアで「大物が出る河口」と聞いて、多くのアングラーが真っ先に思い浮かべるのが天竜川河口だろう。南アルプスを源流とする全長213kmの大河が遠州灘へ注ぎ込むこのリバーマウスは、淡水と海水が激しく混ざり合い、ベイトフィッシュが年間を通じて溜まる一級のフィーディングゾーンだ。
その河口部の西岸に位置するのが掛塚港(かけつかこう)。磐田市駒場にある小規模漁港ながら、港内の穏やかなハゼ釣りから、導流堤先端部でのシーバス・ヒラメ狙いまで、ひとつのエリアで多彩な釣りが成立する。天竜川下流域(鹿島橋〜掛塚橋)の記事では上流側を紹介したが、今回はその下流──掛塚橋より河口側から遠州灘との合流点までを徹底的に歩いてみたい。
この記事を読めば、掛塚港・天竜川河口エリアの各ポイントの特徴、季節ごとのターゲット、潮流と地形変化の読み方、駐車場・トイレ・コンビニ情報まで、初めて訪れる人でも迷わず釣りを始められるはずだ。
掛塚港・天竜川河口エリアの全体像とアクセス
所在地と地理的特徴
掛塚港の所在地は静岡県磐田市駒場。天竜川の西岸に位置し、河口から約500m上流に港の入口がある。東岸は竜洋海岸(磐田市)で、対岸にはサーフアングラーが並ぶ。河口部には天竜川特有の導流堤(どうりゅうてい)が西岸・東岸それぞれ沖へ向かって伸びており、この構造物が潮流を集中させてベイトを寄せる大きな要因になっている。
車でのアクセス
- 東名高速・磐田ICから:国道1号バイパスを南下→県道343号(掛塚街道)を南進→「駒場」交差点を右折→約2km直進で掛塚港。所要約20分。
- 浜松市街から:国道150号を東へ→天竜川橋を渡り磐田市側へ→県道343号を南下。浜松駅から約40分。
- 東名高速・浜松ICから:国道152号を南下し天竜川沿いに→掛塚橋を渡って右折。所要約30分。
駐車場情報
| 駐車場 | 収容台数 | 路面 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 掛塚港東側空き地 | 約15台 | 砂利 | 港のすぐ横。早朝は漁師の車が出入りするので奥に停める |
| 天竜川河川敷駐車スペース(西岸堤防下) | 約20台 | 砂利・草地 | 導流堤方面へ徒歩5分。雨後はぬかるむので注意 |
| 掛塚灯台付近の路肩 | 5〜6台 | 舗装 | 灯台見学者と共用。週末は早い者勝ち |
周辺施設
- トイレ:掛塚港の公衆トイレ(簡易式、清掃は不定期)。河川敷には仮設トイレなし。
- コンビニ:最寄りはセブン-イレブン磐田駒場店(港から車で約5分)。エサの購入は不可なので事前に調達を。
- 釣具店:フィッシングショップ遠州(磐田市、車で約15分)でサーフ・河口向けのルアーと生きエサが揃う。イシグロ磐田店(車で約20分)も品揃え豊富。
電車でのアクセス
JR東海道本線磐田駅から遠鉄バス「掛塚」行きに乗車し約25分、「掛塚」バス停下車後徒歩15分。本数が少ないため車が現実的だ。
ポイント別攻略:掛塚港内
港内の特徴
掛塚港は天竜川河口に面した小さな漁港で、L字型の堤防と短い波除堤で構成される。港内は水深2〜3mと浅めだが、天竜川からの流れが常に入り込むため、ベイトの回遊がある。底質は砂泥で、ところどころに沈みテトラや係船ロープが絡む。
狙える魚種と釣り方
| ターゲット | 時期 | おすすめ釣法 | ポイント |
|---|---|---|---|
| ハゼ | 7月〜11月 | ちょい投げ(ジャリメ)、ミャク釣り | 港内奥の船揚場スロープ周辺 |
| クロダイ・キビレ | 4月〜11月 | 前打ち(カニ・イガイ)、フカセ | L字堤防の外向き、係留船の際 |
| セイゴ〜フッコ | 通年 | ワーム(ジグヘッド5〜7g)、小型ミノー | 常夜灯下、堤防の角 |
| カサゴ・メバル | 10月〜3月 | ブラクリ(オキアミ)、ジグ単 | テトラ帯の隙間、堤防基礎の捨て石 |
港内攻略のコツ
掛塚港内でもっとも安定して釣果が出るのはハゼだ。7月の開幕期は港内奥のスロープ周辺に5〜8cmのデキハゼが群れ、ジャリメのちょい投げで入れ食いになることも珍しくない。9月以降は型が15cm前後まで育ち、天ぷらサイズが揃う。仕掛けはナス型オモリ5号+袖針6号のシンプルなもので十分。竿は2.1〜2.7mのコンパクトロッドが取り回しやすい。
夜はL字堤防の根元にある常夜灯がキーポイント。灯りにプランクトンが寄り、それを追ってベイトフィッシュ、さらにシーバスやメバルが集まる。ジグヘッド1.5〜3gにコアマンのアルカリシャッドやエコギアのグラスミノーSをセットして、明暗の境目をゆっくりただ巻きするのが定番パターンだ。
ポイント別攻略:天竜川河口・西岸導流堤
導流堤の構造と立ち位置
掛塚港の南側から遠州灘に向かって約400m伸びる西岸導流堤は、このエリア最大の人気ポイントだ。コンクリートブロックと石積みで構成され、幅は約3〜4m。ただし先端部は波の影響が大きく、特にうねりのある日は波を被る。ライフジャケットの着用は必須で、スパイクシューズかフェルトスパイクを履かないと足元が危険だ。
導流堤は根元(港寄り)→中間部→先端部と性格が変わる。
- 根元(港寄り100m):水深2〜4m。流れが緩く、ハゼ・キビレの数釣りポイント。ファミリー向け。
- 中間部(100〜300m):水深4〜6m。河川流と潮流がぶつかるヨレが発生し、シーバス・クロダイの好ポイント。
- 先端部(300〜400m):水深6〜10m超。遠州灘の潮が直接当たり、ヒラメ・マゴチ・青物の実績あり。上級者向け。
シーバス攻略
天竜川河口のシーバスは年間を通じて狙えるが、特に熱いのは以下の時期だ。
- 春(3月〜5月):バチ抜けパターン。大潮〜中潮の下げで、導流堤の中間部にバチ(ゴカイ類)が流れ出す。にょろにょろ85mm(ジャクソン)やマニック95(DUO)で水面直下を引くと、70cm級のランカーが出ることも。
- 秋(9月〜11月):落ちアユパターン。天竜川を下ってきた落ちアユを追って大型シーバスが河口に集結する。ロングミノー120〜140mm(アイマ・コモモ130やメガバス・カゲロウ124F)をアップクロスにキャストし、流れに乗せてドリフトさせるのが王道。マズメ時は先端部でボイルが出ることもあり、その場合はトップウォーターにも反応する。
- 冬(12月〜2月):コノシロパターン。河口にコノシロが溜まると、80cmオーバーのランカーシーバスが着く。ビッグベイト(ジョインテッドクロー148など)やビッグミノーでリアクションバイトを狙う釣りになる。
潮のタイミングは下げ3分〜7分がベスト。天竜川の流れと下げ潮が合流して強い流れが発生し、ベイトが導流堤際に押し付けられる。逆に上げ潮はポイントが広がりすぎて絞りにくい。潮見表を確認してエントリー時刻を決めるのが鉄則だ。
ヒラメ・マゴチ攻略
導流堤先端部は河口から流出する砂が堆積してシャローフラット(水深1〜3m)が形成される箇所があり、そこがヒラメ・マゴチの一級ポイントになる。特に5月〜10月がハイシーズンだ。
導流堤から遠州灘側にキャストする形になるが、正面だけでなく河口側(東向き)にキャストして流心のブレイクラインを通すのが掛塚ならではのテクニック。ジグヘッド14〜21gにパワーシャッド5インチ(エコギア)やハウル4インチ(DUO)をセットし、ボトムから30cm以内をスローに引く。着底→2〜3回トゥイッチ→テンションフォールのリフト&フォールで、フォール中のバイトを逃さないこと。
ヒラメは朝マズメ(日の出前後1時間)に集中する傾向が強い。前日の夕方に現地を下見し、離岸流や地形変化を把握しておくと翌朝の勝率が上がる。
ポイント別攻略:西岸堤防上〜掛塚橋下
堤防上のランガンコース
掛塚港から掛塚橋まで、天竜川の西岸には約1.5kmにわたってコンクリート護岸の堤防が続く。堤防上は舗装された遊歩道になっており、足場は良好。自転車や徒歩でランガンしながらポイントを探る釣りに向いている。
この区間の魅力は、護岸際に点在する消波ブロック(テトラ)と排水口だ。テトラの隙間にはカサゴ・メバルが居着き、排水口からは生活排水混じりの淡水が流入してベイトが集まる。クロダイ・キビレは排水口周辺の濁りに着くことが多く、前打ちやヘチ釣りでテトラ際を丁寧に探ると良型が出る。
掛塚橋の橋脚周り
掛塚橋(県道343号)の橋脚はシーバスとクロダイの超一級ストラクチャーだ。橋脚が流れを遮ることで下流側にヨレ(反転流)が生まれ、そこにベイトが溜まる。特に夜釣りでは橋の照明が水面を照らし、明暗パターンが成立する。
攻め方は橋脚の上流側(アップストリーム)に立ち、ルアーを橋脚の脇を通るようにドリフトさせるのが基本。ルアーはシンキングミノー(ダイワ・スイッチヒッター85Sやシマノ・サイレントアサシン80S)が流れの中でもレンジをキープしやすい。フッキングしたらすぐに橋脚から引き離さないとラインが擦れてブレイクする。PEライン1.0〜1.2号+リーダー20lb以上を推奨。
季節別カレンダーとターゲット早見表
| 月 | 主なターゲット | ベストポイント | 釣法 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜2月 | シーバス(コノシロ付き)、カサゴ | 導流堤中間〜先端 | ビッグベイト、ブラクリ | 防寒必須。北西風に注意 |
| 3〜4月 | シーバス(バチ抜け)、メバル | 導流堤根元〜中間、港内 | シンペン、ジグ単 | 大潮下げが◎ |
| 5〜6月 | クロダイ、キビレ、ヒラメ | 導流堤全域、堤防テトラ際 | 前打ち、ワーム | 乗っ込みチヌ狙い目 |
| 7〜8月 | ハゼ、キス、マゴチ | 港内、導流堤先端 | ちょい投げ、ジグヘッド | ハゼ開幕。暑さ対策を |
| 9〜10月 | シーバス(落ちアユ)、ヒラメ | 導流堤中間〜先端 | ロングミノー、ワーム | 年間最高の時期 |
| 11〜12月 | シーバス、クロダイ(落ち)、カサゴ | 掛塚橋下、導流堤 | ミノー、前打ち | 落ちパターンで良型 |
潮流と地形変化の読み方──掛塚攻略の核心
天竜川河口特有の「二枚潮」
天竜川河口では、表層を淡水(河川水)が、底層を海水(潮)が流れる二枚潮が頻繁に発生する。これが釣りにどう影響するかというと、ルアーやエサが想定と異なるレンジに流されてしまうのだ。「表層は下流に流れているのに、底では上流に引っ張られる」という現象が起きる。
対策としては:
- ルアーのウエイトを通常より1〜2段階重くする(ジグヘッド7g→10〜14g)
- PEラインを水面に浮かせず、ロッドティップを下げてラインを水中に入れる
- フカセ釣りでは水中ウキやガン玉を追加して仕掛けを安定させる
地形変化の見つけ方
天竜川は大量の砂を運ぶ河川で、河口の地形は台風や大雨のたびに変化する。前回来たときと砂州の位置が変わっていることは珍しくない。釣行前に以下を確認しよう。
- Google Earthの衛星画像:河口の砂州・流心の位置を事前に確認。ただし撮影日が古い場合があるので参考程度に。
- 現地の水色:白波が立つ場所はシャロー(浅場)、深緑〜紺色は深場。この境目がブレイクライン。
- 引き波のパターン:波が沖へ引く「離岸流」のラインは砂が掘れて溝になっている。ヒラメ・マゴチ・シーバスの通り道だ。
- 潮目:河川水と海水の境に泡や漂流物のラインが出る。この潮目に沿ってベイトが帯状に集まる。
大雨後の増水に注意
天竜川は上流に佐久間ダム・秋葉ダム・船明ダムがあり、大雨時にはダム放流で急激に増水する。増水時の河口は流木やゴミが大量に流れ、水も茶色に濁って釣りにならない。増水後3〜5日経って笹濁り程度まで回復したタイミングが、実は大型シーバスの狙い目になる。濁りに乗じてベイトを追い込むため、通常よりもシャローに大型が入ってくるのだ。バイブレーション(コアマン・IP-26やダイワ・モアザンミニエント57S)の早巻きでリアクションバイトを取る釣りが効く。
安全対策と釣り場のルール
ライフジャケットは絶対
天竜川河口は毎年のように水難事故が報道されるエリアだ。特に導流堤の先端部は、うねりが高い日に不意の大波が来ることがある。膨張式でも固形式でも構わないので、ライフジャケットは必ず着用してほしい。ウェーディングは河口の流心付近では絶対にやめること。見た目以上に流れが速く、腰まで浸かると身動きが取れなくなる。
漁業者への配慮
掛塚港は現役の漁港であり、早朝はシラス漁の船が出入りする。船道(港の中央水路)にルアーをキャストしない、係留ロープに仕掛けを絡ませない、漁具に触らないのは最低限のマナーだ。漁師さんに挨拶すると、「今日はシラスが寄ってるよ」といった貴重な情報をもらえることもある。
駐車マナーと立入禁止区域
- 漁港内の作業スペースには絶対に車を停めない。荷降ろし用のスペースは漁業関係者専用。
- 導流堤の根元付近に「立入禁止」の看板が出ている場合がある。工事中や波浪警報時は従うこと。
- 河川敷の草地に停める際は、スタックに注意。雨後はぬかるみで四駆以外は出られなくなることがある。
ゴミは必ず持ち帰る
近年、天竜川河口は釣り人のゴミ問題で地元住民との軋轢が増えている。ラインの切れ端、ワームの袋、飲みかけのペットボトル──自分のゴミは当然、落ちているゴミもひとつ拾って帰るくらいの意識でいたい。釣り場を守れるのは釣り人だけだ。
おすすめタックルセッティング
シーバス(導流堤・掛塚橋)
- ロッド:9〜9.6ftのシーバスロッド(ML〜M)。ダイワ・ラテオR 96ML、シマノ・ディアルーナ96Mなど。導流堤は足場が高いので9.6ftが取り回しやすい。
- リール:3000〜4000番(シマノ・ストラディック、ダイワ・カルディア)
- ライン:PE1.0〜1.2号+フロロリーダー20〜25lb。橋脚周りはリーダー太めに。
- ルアー:ミノー80〜140mm、シンペン、バイブレーション。秋は大きめ、春は細身を意識。
ヒラメ・マゴチ(導流堤先端)
- ロッド:10〜10.6ftのサーフロッド(M〜MH)。足場の高さを考慮して長めが有利。
- リール:4000番
- ライン:PE1.0〜1.5号+フロロリーダー25lb
- ルアー:ジグヘッド+ワーム(14〜28g)、メタルジグ30〜40g、ヘビーシンペン
ハゼ・ちょい投げ(港内)
- ロッド:2.1〜2.7mのコンパクトロッドまたは万能竿
- リール:2000番の小型スピニング
- 仕掛け:ナス型オモリ3〜5号+袖針5〜7号、ハリス0.8〜1号
- エサ:ジャリメ(石ゴカイ)が万能。アオイソメでも可
混雑状況と釣行プランニング
平日と休日の差
掛塚港は新居海釣公園や弁天島のような観光型釣り場ではないため、平日はほぼ貸し切りになることも多い。地元のベテランが朝夕にふらっと来る程度だ。一方、秋の落ちアユシーズン(10月〜11月)の土日は導流堤に10人以上が並ぶこともある。この時期は早朝4時台にエントリーしないと先端部は取れない。
おすすめの釣行プラン
【半日プラン・朝マズメ】
- 4:30 現地着。河川敷駐車スペースに駐車。
- 4:45 導流堤を歩いて中間部〜先端部にエントリー。
- 5:00〜7:00 朝マズメにシーバスまたはヒラメを狙う。
- 7:00〜8:30 反応が薄くなったら導流堤根元〜港内に移動してハゼ・キビレ狙い。
- 9:00 撤収。帰りにセブン-イレブンでコーヒーを買って帰宅。
【夕マズメ〜夜釣りプラン】
- 16:00 現地着。掛塚橋下に入り、明るいうちに地形を確認。
- 17:00〜18:30 夕マズメに橋脚周りでシーバスを狙う。
- 18:30〜20:00 暗くなったら港内の常夜灯下でメバル・セイゴ狙いに切り替え。
- 20:00 撤収。
まとめ:天竜川河口は「通い込み」で真価がわかるフィールド
掛塚港・天竜川河口エリアは、正直なところ「行けば必ず釣れる」タイプの釣り場ではない。潮のタイミング、川の水量、風向き、ベイトの有無──複数の条件が噛み合ったときに爆発的な釣果が出るフィールドだ。だからこそ、通い込んで条件の重なりを体で覚えた人が強い。
初めてなら、まずは港内のハゼ釣りから入るのがおすすめ。足場が良く、道具も簡単。ハゼを釣りながら河口の潮の動き、風の向き、水色の変化を観察するだけで、次にシーバスやヒラメを狙うときのヒントが山ほど見つかる。
天竜川という大河のパワーと遠州灘の潮が出会うこのダイナミックなフィールドを、安全に、マナーを守って楽しんでほしい。きっと、浜松の釣りの奥深さを実感できるはずだ。



