熊本県の天草は、穏やかな内海でファミリーが安心して竿を出せる漁港から、外洋の荒磯で青物・ヒラスズキを狙う本格派の磯まで、あらゆるタイプの釣り場が一つの島嶼群にそろう「釣りの楽園」です。結論から言うと、家族連れなら上天草市が公式に案内する樋合新港・鳩之釜漁港などの4港、アジ・アオリイカなら下島北部の通詞島周辺、磯の大物狙いなら天草西海岸〜牛深の渡船磯が定番です。天草は有明海・八代海(不知火海)・天草灘という性格の異なる3つの海に囲まれており、風向きや季節に応じて釣り場を選べるため「どこかでは必ず竿を出せる」懐の深さが最大の強みです。本記事では、上天草〜本渡〜牛深の主要ポイント、魚種別シーズン、熊本県特有のまき餌規制・漁業権ルールまで、2026年7月時点の公開情報をもとに整理します。
天草の3つの海を知る|有明海・八代海(不知火海)・天草灘の特徴
天草の釣りポイント選びは、まず「どの海に面した釣り場か」を意識するところから始まります。天草諸島は熊本県の西部に位置し、大小さまざまな島が宇土半島から天草五橋でつながっています。主要な島は天草上島(かみしま)と天草下島(しもしま)で、周囲を3つの海が取り囲みます。
- 有明海(北側):干満差が非常に大きい内湾で、干潟や砂泥底が発達。キス・ハゼ・カレイ・クロダイなど砂泥底を好む魚が中心で、潮位差を計算した釣行計画が釣果を大きく左右します。
- 八代海/不知火海(東側):九州本土と天草に挟まれた閉鎖性の高い内海。環境省の資料によれば北部は水深2〜10mと浅く、中南部は40〜70mまで深くなります。波が立ちにくく養殖イケスが多い静穏な海で、チヌ(クロダイ)・アジ・メバルなどの好フィールド。北西の季節風が強い日の逃げ場としても重宝します。
- 天草灘(西側):東シナ海に開けた外洋で、暖かい潮の影響を受けて魚種が豊富。磯やサーフが連続し、青物・ヒラスズキ・グレ(クロ)・マダイなど磯釣り師の憧れのターゲットが狙えます。そのぶん北西風が吹くと一気に波が上がるため、海況判断が必須です。
この「3つの海の使い分け」こそ天草の釣りの本質です。西の天草灘が荒れたら東の八代海側へ、内海で物足りなければ外海の磯へ。熊本の釣りスポットの中でも、天草がオールシーズン・オールジャンルで釣り人を集める理由がここにあります。
上天草エリア|大矢野・松島の橋脚周りとファミリー釣り場
熊本市方面から天草五橋を渡って最初に着くのが上天草市(大矢野島・松島エリア)です。熊本市中心部から車でおよそ1時間という近さに加え、足場の良い漁港が多く、上天草の釣りはファミリーフィッシングの入門地として絶大な人気があります。上天草市には「釣りを軸にしたブルーツーリズム推進委員会」という公式組織があり、市として釣り場を案内している全国でも珍しい自治体です。公式に紹介されているおすすめ4港を軸に紹介します。
樋合新港(ひあいしんこう)
樋合島の南端にあり、天草五橋の3号橋〜5号橋を望むロケーションが魅力の人気港です。港内側は足場が広く、サビキ釣りのアジ(夏〜秋)、クロダイ(通年)、シーバス、冬のメバルと季節ごとにターゲットが途切れません。公開されている釣り場情報では、サビキ・ウキ釣り・ルアーのいずれも高評価で、初めての天草釣行で迷ったらまずここ、と言える存在です。
鳩之釜漁港(はとのかまぎょこう)
南向きの広大な漁港で、北からの季節風に強いのが特徴。夏〜秋のアジは朝夕マヅメに手堅く、キス・クロダイ・冬のメバルも狙えます。港内には養殖用イケスのロープが張られている場所があるため、仕掛けを投げる方向には注意が必要です。ロープ周りは魚の着き場でもありますが、漁業者の生産設備なので絶対に引っ掛けないよう距離を取りましょう。
合津港(あいつこう)と岩谷港(いわやこう)
合津港は松島北部の小規模な港ながら、周囲にホテルや商店が立ち並び利便性は抜群。クロダイ・メジナ・アジ・冬メバルの実績があり、家族での観光釣行と相性の良い釣り場です。一方の岩谷港は山に囲まれて強風に強く、三角ノ瀬戸からの複雑な潮流が魚を寄せるため「釣果ポテンシャルが高め」と紹介される実力派。良型アジ・セイゴ・クロダイ・メジナ・ガラカブ(カサゴ)・アオリイカと魚種の幅が広く、ウキ釣り・ルアーの評価が高い港です。
大矢野島の穴場|江樋戸港・維和島
湯島への定期船が発着する江樋戸(えびと)港は、白灯波止の先端周りの足場が良く、周囲は砂地でアジ・キス・チヌ・コウイカが狙えます。また大矢野島と橋で結ばれた維和島の蔵々(ぞうぞう)漁港は、幹線道路から離れているため釣り人が少ない穴場として知られます。天草五橋周辺は全体に潮通しが良く、橋脚周りの地形変化にシーバスやクロダイが着きますが、橋の上からの釣りは危険かつ禁止です。必ず周辺の港や護岸から狙ってください。
天草下島北部エリア|本渡・五和・二江港のアジ・クロダイ
天草上島と下島の接続部にある本渡(ほんど)は天草市の中心市街地で、釣具店・宿・飲食店がそろう遠征釣行の拠点です。そこから下島北岸の五和(いつわ)方面へ進むと、アジングで全国区の知名度を持つ通詞島が控えます。
本渡港と市街地の河口部
本渡港は市街地至近ながら駐車場・トイレが整った釣り場で、チヌ(クロダイ)の好ポイントとして知られます。港周辺は砂地が広がり、6〜10月はちょい投げでシロギスも有望。市街地を流れる広瀬川や町山口川の河口部はシーバス・チニングの実績場で、公開されている釣果情報では河口の地形変化に着いた良型チヌ・70cm級シーバスの報告もあります。買い出しや食事のついでに短時間で竿を出せる、機動力の高いエリアです。
通詞島・二江港周辺(五和町)
下島北端の通詞島(つうじしま)は周囲約4kmの小島で、橋を渡って車で入れます。潮通しが抜群でアジの回遊が多く、アジング愛好家の間では「良型狙いの聖地」と評されるほど。メインの釣り場である新波止は足場がしっかりしており、地元釣り情報では一年を通してアジとミズイカ(アオリイカ)が狙えると紹介されています。通詞大橋周辺は流れが速く、底物から青物・イカまで多彩な魚が回ります。沖合5〜15分の海域に約300頭のミナミハンドウイルカが定住しイルカウォッチングで有名な海域でもあり、それだけベイトが豊富な証拠と言えます。アジの生態や釣り方の基本はアジ(マアジ)完全図鑑2026|浜名湖・遠州灘での釣り方・サビキ・アジングから締め方・南蛮漬けレシピまでで詳しく解説しています。
天草西海岸・苓北エリア|天草灘の磯で青物・ヒラスズキ
下島の西岸〜北西部の苓北(れいほく)町にかけては、東シナ海へ続く天草灘に面した外洋エリアです。天草灘へ開けた磯とサーフ、そして風待ちのできる港が混在し、魚種の豊富さは天草でも屈指。ルアーゲームの遠征先として近年注目度が上がっています。
富岡港・志岐漁港(苓北町)
富岡港は天草空港から車で約30分。公開されている釣り場情報では、アジは5〜11月、アオリイカは9〜11月、クロダイは4〜11月が目安とされ、特に10〜11月は狙える魚種が最も多くなります。常夜灯周りと足場の良い岸壁がポイントで、秋イカのシーズンには墨跡が目印になります。現役の漁港なので、漁船の係留ロープ・航路には十分な配慮が必要です。近隣の志岐漁港はちょい投げのキス釣りで知られ、家族連れにおすすめしやすい釣り場です。苓北周辺のサーフでは、釣果情報サイトにショアジギングでのスズキ・青物の報告も見られます。
西海岸の地磯・沖磯|大ヶ瀬・小ヶ瀬
天草西海岸を代表する沖磯が大ヶ瀬・小ヶ瀬です。渡船で渡る沖磯で、マダイ・ヒラスズキ・ヒラマサなどの実績が公開されています。釣りメディアの実釣記事では、天草エリアの磯でサラシを読んでヒラスズキを仕留めたレポートや、シャローのショアジギングで92cmのブリが上がった報告もあり、外洋磯のポテンシャルは折り紙付きです。春の終盤から秋口までは東寄りの風が多く西海岸が凪ぎやすい一方、北西風が吹くと一気に波が上がります。ヒラスズキはむしろ適度な荒れとサラシが出る時が勝負ですが、安全確保が最優先です。磯ヒラゲームの装備・サラシの読み方は磯ヒラスズキ完全攻略2026|遠州灘・御前崎の荒磯でサラシに突っ込む90cm超ランカーを仕留めるロッド・ルアー・サラシ攻略を参考にしてください。
牛深・南部エリア|九州屈指の魚影を誇る港と渡船磯
下島最南端の牛深(うしぶか)は、古くから漁業のまちとして栄えた天草最大級の漁港エリアです。鹿児島県の長島との間の海峡は潮通しが抜群で、「天草で青物を狙うなら牛深の地磯」と言われるほど回遊魚の実績が豊富。本渡から国道266号で南下しておよそ1時間の距離です。
牛深港・ハイヤ大橋周辺
シンボルであるハイヤ大橋のたもとに広がる牛深港は、エギングの定番ポイントとして知られ、潮通しの良さからアオリイカの回遊が多く、時合が合えば良型が期待できます。公開されている釣り場情報では、アジは5〜11月、クロ(メジナ)は4〜11月が目安で、10〜11月ごろが最も魚種豊富。港内の常夜灯周りはサビキ釣り・アジングの一級ポイントで、橋周辺の敷石・アンカー部はガラカブ(カサゴ)の穴場と紹介されています。港のすぐそばには物産館・レストラン複合施設「うしぶか海彩館」があり、釣りの合間の食事・土産調達に便利です。
牛深の沖磯渡船
牛深沖には渡船で渡る磯が多数点在し、フカセ釣りのクロ(メジナ)・尾長、石鯛、青物キャスティングの好フィールドとして九州各地から釣り人が集まります。牛深沖磯一帯を受け持つ「はいや丸」をはじめ複数の瀬渡し船が営業しており、港から15分前後で渡礁できる磯もあります。地元渡船店の釣果情報では、秋〜春に30cm台後半〜40cm級のクロの報告が続いており、磯フカセ入門の遠征先としても魅力的です。メジナ狙いの基礎はメジナ(グレ・クロ)完全図鑑2026|遠州灘・御前崎の磯を制する「磯の王者」の生態・フカセ釣り・グレ料理にまとめています。
魚種別シーズンカレンダー|アジ・クロダイ・アオリイカ・ヒラメ・青物
天草で狙える主要ターゲットの時期の目安を一覧にまとめます。◎=ベストシーズン、○=狙える、△=場所・条件次第、−=オフシーズンの目安です。海域や年による変動があるため、直前の釣果情報との併用をおすすめします。
| 魚種 | 春(3〜5月) | 夏(6〜8月) | 秋(9〜11月) | 冬(12〜2月) | 主な釣り場 |
|---|---|---|---|---|---|
| アジ | ○ | ◎ | ◎ | △ | 通詞島・富岡港・牛深港・上天草各港 |
| クロダイ(チヌ) | ◎(乗っ込み) | ○ | ◎ | ○ | 本渡港・上天草4港・河口部 |
| アオリイカ | ◎(親イカ) | △ | ◎(数釣り) | △ | 通詞島・牛深港・岩谷港・富岡港 |
| キス | ○ | ◎ | ○ | − | 本渡港周辺・志岐漁港・江樋戸港 |
| 青物(ブリ・ヒラマサ) | ○ | △ | ◎ | ◎ | 牛深地磯・西海岸沖磯 |
| ヒラスズキ | ◎ | △ | ○ | ◎ | 西海岸の磯(荒れ後のサラシ) |
| ヒラメ・マゴチ | ○ | △(マゴチ◎) | ◎ | ○(ヒラメ) | 苓北サーフ・港の砂地周り |
| メバル・ガラカブ | ○ | △ | ○ | ◎ | 上天草各港・牛深港の敷石周り |
| グレ(クロ・メジナ) | ○ | △ | ◎ | ◎(寒グレ) | 牛深沖磯・西海岸の磯 |
春は乗っ込みチヌと産卵前の大型アオリイカ、夏はサビキのアジとキスでファミリー向け、秋は全魚種の最盛期、冬は根魚と磯のグレ・ヒラスズキ・青物と、一年を通して主役が入れ替わります。特に秋の天草は、港でも磯でも「何かしら釣れる」最良のタイミングです。アオリイカの生態・エギングとヤエンの使い分けはアオリイカ完全図鑑2026|浜名湖・遠州灘のエギング・ヤエン釣り・生態・料理で詳しく解説しています。
天草の釣り規制と安全・マナー|まき餌ルール・漁業権・禁止看板の確認
天草全域を対象とした大規模な釣り禁止は2026年7月時点で確認されていませんが、熊本県には他県からの遠征者が見落としやすい独自ルールがあります。以下は熊本県の公式情報に基づく要点です。
- 土砂を使ったまき餌釣りの禁止:熊本県海区漁業調整委員会の指示により、県内の漁港・港湾の内部、防波堤の外縁から30m以内の区域では、土砂を使用して釣りをすることが禁止されています。配合エサに土や砂を混ぜて比重を調整する釣り方は、漁港・港湾周りでは行えません。
- アミ団子(ばくだん釣り)の制限:熊本有明海を除く熊本県地先海面では、ばくだん釣りの餌料としてアミ団子を使用することが禁止されています。
- 使用できる漁具・漁法の限定:熊本県の海面遊漁で認められるのは、竿釣り・手釣り、たも網・さで網、船を使わない投網、発射装置のないやす、徒手採捕など一部に限られます。
- 漁業権対象種は採らない:サザエ・ウニ・アワビ・ナマコ・ヒジキなどは共同漁業権の対象で、遊漁者が採ると漁業権侵害・密漁になります。特にアワビ・ナマコ・シラスウナギは「特定水産動植物」に指定され、違反には3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金という重い罰則があります。磯遊びの延長で貝を拾う行為も絶対にやめましょう。
そのうえで大原則として、立入禁止・釣り禁止の判断は、現地の看板・掲示と、自治体・漁協が発信する最新の公式情報が常に最優先です。本記事で紹介した釣り場も、漁業活動や工事、マナー悪化により状況が変わる可能性があります。ロープや係留船周りを避ける、漁業者の作業を妨げない、駐車は指定場所のみ、ゴミと残しエサは必ず持ち帰る、といった基本マナーの徹底が釣り場の存続に直結します。安全面では、ライフジャケットの常時着用、磯では単独行動を避けスパイクシューズを履くこと、外洋に面した天草灘側ではうねりの急変に警戒することを徹底してください。
渡船・釣り船・アクセスと宿泊拠点
沖磯へは渡船(瀬渡し船)を利用します。牛深エリアの「はいや丸」など複数の渡船店が営業しており、西海岸の大ヶ瀬・小ヶ瀬方面へも渡船で渡れます。公開されている料金表では、瀬渡しの料金は1人4,000〜5,000円前後が目安ですが、店・磯・時期で変わるため、予約時に必ず最新の料金・出港時間を確認してください(2026年7月時点の公開情報)。また富岡港や本渡・牛深の各港からはマダイ・青物・イカ狙いの遊漁船も多数出ており、御所浦島など離島周りの船釣りも盛んです。
アクセスは、熊本市中心部から天草五橋経由で大矢野島まで車で約1時間、本渡までは一般道でおよそ84km・2時間弱が目安です。途中の松島有料道路(延長3.3km)を使えば約6分、接続する松島有明道路まで併せて利用すれば約12分の時間短縮になります(熊本県道路公社の公表値)。空路は天草空港があり、本渡市街まで車で15分程度、富岡港へは車で約30分と、遠方からの釣り遠征では有力な選択肢です。海路では、長崎・島原半島の口之津港から下島北岸の鬼池港へ、鹿児島・長島の蔵之元港から牛深港へフェリー航路があり、九州周遊釣行のルートに組み込めます。当サイトの拠点・浜松からは陸路でおよそ1,000km前後と遠いため、空路で熊本・福岡に入りレンタカーを借りる行程が現実的です(いずれも2026年7月時点の公開情報。運賃・ダイヤは各社の最新案内で要確認)。
宿泊拠点は、上天草なら合津港周辺の松島温泉のホテル群、下島なら釣具店・飲食店がそろう本渡市街、南部攻めなら牛深市街が便利です。エサ・仕掛けの調達は本渡・牛深の釣具店が頼りになります。3つの海と多彩な釣り場を持つ天草は、初心者の初釣りから磯師の遠征まで、あらゆる釣り人の期待に応えてくれるフィールドです。ルールとマナーを守って、九州屈指の魚影を体感してください。


