この記事の結論(3行)
初めてテンヤを握る方、全国どこでも餌を調達したい方はキビナゴ。最大の弱点である身持ちの悪さは、前日の塩締めでほぼ埋められます。
餌交換の回数を減らして数を伸ばしたい方はドジョウ。1匹でタチウオ5尾から10尾という餌持ちが武器ですが、関西圏以外では店頭在庫が薄く、通販前提になりやすい餌です。
1晩(日没から約3時間)の餌代の目安は、釣具店の餌用キビナゴで約300円から400円、スーパー品を塩締めすれば約70円から100円、冷凍どじょうで約40円から140円です(どじょうの数字は本体価格のみの目安で、通販ではこれに冷凍便の送料が乗ります)。
9月に入ると、堤防のタチウオは日没直後から手前のタナまで差してきます。テンヤの引き釣りは、この短い時合いをどれだけ手数で叩けるかが勝負になる釣りです。そして手数を決めているのは、竿でもリールでもなく餌です。餌がボロボロになるたびに暗がりでワイヤーを巻き直していれば、それだけで一番おいしい30分が消えていきます。
タチウオテンヤの餌はキビナゴかドジョウか。この二択は関西の堤防で長く語られてきたテーマですが、検索して出てくる答えはたいてい「ドジョウの方が餌持ちがよい」の一行で終わります。それ自体は間違いではありません。ただし餌代、入手性、前日の仕込みができるかどうかまで含めると、正解は人によってはっきり割れます。この記事では両者の性質を分解し、1晩あたりのコストを概算したうえで、塩締めの手順と餌別のテンヤへの巻き方まで通しで整理します。なお本記事が扱うのは堤防の引き釣り、いわゆるライトテンヤです。同じテンヤでも船の深場で使う重量級の本体選びはタチウオテンヤおすすめ10選2026で40号から80号のヘッド重量やカラー別に比較していますので、船の釣りも視野に入れている方はそちらを参照してください。
結論——3つの分岐で餌は決まります
まず早見表です。ここでの「1晩」は、秋の堤防でタチウオを5尾前後釣る、日没から約3時間の釣行を想定しています。餌代はいずれも小売価格と消費量から組み立てた概算で、地域や店舗によって上下します。
| 餌の種類 | 集魚力の傾向 | 餌持ちの目安 | 1晩の餌代の目安 | 入手性 | 向いている方 |
|---|---|---|---|---|---|
| キビナゴ(釣具店の餌用・そのまま) | シルエットと反射で安定して誘える | 10投前後で交換の判断 | 約300円から400円 | 全国の釣具店に常備 | 初めての1本、仕込む時間がない方 |
| キビナゴ(スーパー品を塩締め) | 生と同等。食いに差はないと報告されています | 15投しても身崩れはほぼなしという検証あり | 約70円から100円 | スーパーで購入し前日の仕込みが必要 | 通う回数が多く餌代を抑えたい方 |
| ドジョウ(冷凍・生き) | 関西の引き釣りで実績が積み上がった定番 | 1匹でタチウオ5尾から10尾 | 約40円から140円(まとめ買い時・送料別) | 関西圏は店頭、それ以外は通販が中心 | 餌交換を減らしたい方、数釣り狙い |
| サンマ・イワシの切り身 | 匂いによる集魚力が武器 | サンマは身が柔らかく、皮目から針を入れると持ちが向上。イワシも身が弱く扱いに慣れが必要 | 船宿支給や自作で変わるため一概に示せません | 全国で入手可能 | 船テンヤ、渋い夜の切り札 |
迷ったら、この順番で自分に当てはめてください
判断の順番は3つです。第1に、住んでいる地域でドジョウが買えるかどうか。TSURI HACKでは活きドジョウについて、関西のテンヤ引き釣り専用の餌であり、関西圏以外では流通が限定的だと説明されています。がまかつの公式コラムでも堤防のライトテンヤは大阪湾の秋の釣りとして紹介されており、ドジョウという選択肢そのものが地域文化に強く紐づいています。静岡や関東で急に思い立って堤防に立つ場合、その日にドジョウを買える保証はありません。
第2に、釣行前日に30分の仕込み時間を取れるかどうか。取れるならスーパーのキビナゴを塩締めするのが、餌持ちと餌代を同時に改善する一番効率のよい手です。取れないなら釣具店の餌用パックを買うか、ドジョウを常備しておく形になります。
第3に、その夜に何を優先するか。1尾でも確実に手にしたい日はキビナゴ、時合いの2時間で数を伸ばしたい日はドジョウ、という切り分けが実務的です。秋の時合いとタナの入り方は季節でかなり動くため、秋(9〜11月)の浜名湖・遠州灘タチウオ堤防テンヤ・ワインド完全攻略2026のタナの探し方と時合いの項も併せて確認しておくと、餌の消費ペースの読みが立ちやすくなります。
キビナゴの強みと弱み——1晩の消費量とコストを概算する
強み:どこでも買えて、シルエットで誘える
キビナゴは大阪湾のタチウオ釣りで最もポピュラーな餌とされ、リアルなシルエットと反射で誘える点が評価されています。ウキ釣りでもテンヤでも同じ餌が使えるため、その夜の状況に応じて釣り方を切り替えても餌を買い直す必要がありません。全国の釣具店の冷凍ケースにほぼ常備されているという入手性も、旅先や思いつきの釣行では大きな武器になります。
弱み:身が柔らかく、投げるほど崩れる
弱点は明確で、身持ちです。釣具店で売られている餌用キビナゴはある程度加工されていますが、それでも1回のバイトでボロボロになってしまうという声は多く、引き釣りのようにキャストと回収を繰り返す釣りでは消耗が速くなります。実際、釣りぽが行ったテンヤでの検証では、生のキビナゴは5投で目玉が取れ、10投で腹が裂けて内臓が露出し、15投では頭が取れて身も崩れ、交換が必要な状態になったと報告されています。つまり生のまま使う限り、体感としては10投前後が交換の目安ということになります。
コスト概算:1晩でパック1つが消える計算
ここから餌代を組み立てます。釣具店の餌用キビナゴは、1パック300円から400円で20尾前後という価格帯が一般的です。10投前後で交換していくと、日没から3時間のあいだに15尾から20尾は使う計算になり、1パックをほぼ使い切ります。したがって釣具店の餌をそのまま使う場合、1晩あたりの餌代は約300円から400円が目安です。
一方、スーパーの生鮮キビナゴを使う手があります。ある実践記事では、180グラムで約38尾入りのパックが特売時に250円程度だったのに対し、釣具店の餌用は300円から400円で20尾ほどだったと比較されています。単価にすると1尾あたり7円前後まで下がる計算です。ただしスーパー品は釣具店の加工品よりさらに柔らかく、そのまま投げると崩れが早いので、次の章の塩締めとセットで初めて意味を持ちます。
ドジョウの強みと弱み——餌持ち最強の理由と、関西圏に偏る入手性
なぜドジョウは餌持ちがよいのか
ドジョウが引き釣りで支持される理由は、皮の丈夫さです。キビナゴが1度のバイトで身崩れするのに対し、ドジョウは皮を切られても身が非常に丈夫で残ると説明されています。ハヤブサのWEBマガジンでも、ドジョウは餌持ちがよく1尾のドジョウで数尾のタチウオを釣ることも可能だと紹介されています。実釣ベースの記述では、タチウオ5尾から10尾に対してドジョウ1匹程度が消費の目安とされ、狙うサイズが大きいほど消費が速くなるとされています。
この差は、単に餌代の話では終わりません。タチウオの時合いは日没直前から2時間から3時間、朝は日の出前後のごく短い時間帯とされています。この濃い時間に、キビナゴなら10投ごとに手が止まり、ドジョウなら1匹で数尾ぶん投げ続けられる。餌持ちの差は、そのまま時合い中の有効キャスト数の差になります。
生きと冷凍の差、そしてサイズ調整
ドジョウには活きたものと冷凍品があります。餌持ちや動きの面では活きたものが望ましいとされる一方、がまかつの公式コラムでは現在は冷凍ドジョウが主流で、皮が硬く取られにくいと説明されています。管理の手間を考えると、堤防の引き釣りでは冷凍を解凍して使う運用が現実的です。未使用ぶんについては、冷凍状態かそれに近い状態で保存されていれば数回程度は再利用できるという実践者の記述もあります。ただし解凍と再凍結を繰り返すほど身は緩みますので、小分けにして必要ぶんだけ解凍するのが無難です。
サイズはテンヤに合わせて調整します。テンヤに対してドジョウが長すぎると尻尾だけ噛みちぎられるため、長すぎる個体はカットして長さを合わせます。頭を切るかどうかは流儀が分かれ、頭は切らないという実践者もいれば、食いが渋いときは頭と内臓をカットしてテンヤヘッドの高さに合わせるという上級者の使い分けも紹介されています。ハヤブサの解説では、フックサイズに対して大きすぎる場合は頭部をカットし、フック後端から尾ビレが出る程度に調整するとされています。
入手性の壁と、コストの実際
ドジョウ最大の弱点は入手性です。前述のとおり関西圏以外では流通が限られるため、東海や関東の方は通販の冷凍どじょうを事前に取り寄せておく前提になります。通販では釣り餌用として100グラム単位の真空パックが流通しており、中サイズで約12匹、小サイズで約20匹、最小の小小サイズなら約50匹、逆に大サイズは約4匹といった内容量表記が見られます。サイズ名と匹数の対応は店ごとに固定されていますので、注文前に匹数表記を必ず確認してください。価格は100グラムあたりおおむね500円から800円前後で、これに冷凍便の送料が乗ります。
この数字で1晩を計算してみます。100グラム約12匹で500円から800円なら、1匹あたり約42円から67円です。タチウオを5尾釣るのに1匹から2匹という消費ペースなら、1晩の餌代は約40円から140円に収まります。単価だけを見ればキビナゴより高い餌ですが、消費量が桁違いに少ないため、まとめ買いができるなら1晩あたりでは最安クラスになるという逆転が起きます。ここが「ドジョウは高い」という第一印象と実際がずれる部分です。ただしこの約40円から140円は本体価格だけを見た数字です。関西圏以外で1パックだけ取り寄せる場合は冷凍便の送料が丸ごと乗るため、1晩あたりの実効コストはキビナゴと変わらない水準まで上がります。安さが効いてくるのは、送料無料ラインまでまとめ買いをするか、秋のあいだ何度も通って1パックを使い切る場合です。1パック単位でしか買えないことも含め、年に1回か2回しか行かない方には向きません。
塩締めキビナゴ——前日の仕込みで身持ちを底上げする
キビナゴの弱点である身持ちは、塩で締めるだけで大きく改善します。塩で水分を抜くと身が締まり、投げても外れにくくなるという原理で、餌の交換回数が減るぶん手返しがよくなり、餌の節約にもなります。前日に仕込んでおけば、当日の準備は解凍だけです。
手順
- スーパーの生鮮コーナーで生のキビナゴを買います。特売の日を狙うと、180グラムで約38尾が250円前後という価格帯も現実的です。
- プラケースやバットにキッチンペーパーを敷きます。ペーパーが抜けた水分を吸ってくれるので、身が水に浸かったままになるのを防げます。
- キビナゴに塩をまぶし、ケースに並べます。容器に塩を敷いてキビナゴを並べ、さらに上から塩をかぶせるやり方も紹介されています。市販の釣り餌用の締め塩を使うと、着色やアミノ酸の付与も同時にできるとされています。
- 冷蔵庫で水分を抜きます。約2時間で実用域に入り、6時間ほど置くと釣具店の餌用に匹敵する硬さになるという記述があります。長く置くほど身は硬くなりますので、狙いの硬さで止めてください。
- キッチンペーパーを新しいものに交換し、使うぶんごとに小分けして冷凍庫で保管します。小分けにしておくと、釣り場への携行と次回への持ち越しが楽になります。
どれくらい変わるのか
釣りぽの検証では、生と塩締めを同条件でキャストと回収にかけ、5投目、10投目、15投目の状態を比較しています。生は10投で腹が裂けて内臓が出て、15投では頭が取れ身も崩れていました。対して塩締めは、10投の時点で目玉と腹は裂けても内臓は腹の中に留まり、15投でも身崩れはほぼなく、まだフルキャストに耐えられる状態だったと報告されています。食いつきそのものには変わりがなかったとも書かれています。
ここで一点、数字の扱いに注意してください。この検証が実際に確認しているのは15投までで、20投、30投と投げ続けた場合のデータはありません。したがって実測ベースの交換の目安は、生で10投前後、塩締めで15投前後。塩締めは15投時点でまだフルキャストに耐えていましたので、状態がよければ20投前後まで伸びる見込み、という位置づけになります。実測どおり15投で交換する前提なら、1晩の消費は15尾から20尾ではなく10尾前後で済み、1尾7円前後のスーパー品なら餌代は約70円から100円。冒頭の早見表の数字はこの計算から出ています。なお、食用として売られている魚を餌に転用する形になりますので、餌用に加工したものは食用と保存容器を分けておいてください。
第3の選択肢——サンマ・イワシの切り身が効く条件
キビナゴとドジョウの二択で語られがちなテーマですが、テンヤの餌には第3の系統があります。サンマとイワシの切り身です。サンマの切り身は全国の釣具店で入手しやすく、強烈な匂いによる集魚力が最大の武器とされ、身が柔らかいため皮目から針を入れると餌持ちが向上すると説明されています。イワシは古くから使われ、大型を狙うならイワシと言われることもあります。
船テンヤと堤防の引き釣りでは、餌の常識が違います
ここで押さえておきたいのが、同じ「タチウオテンヤ」でも船と堤防で餌文化がまったく違うという点です。東京湾を中心とした船のテンヤタチウオではイワシを丸ごと巻くのが基本とされ、船宿で餌が用意されることも一般的です。一方、関西の堤防の引き釣りではドジョウとキビナゴが主役になります。ただし切り身が締め出されているわけではなく、メーカーの波止ライトテンヤ入門解説でも、ワイヤーで固定する餌としてドジョウ、キビナゴと並べてサンマの切り身が挙げられています。切り身は堤防でも定番の選択肢のひとつです。ネットの情報が食い違って見えるのは、たいていこの二つの文化が混ざって語られているためです。自分がどちらの釣りをするのかを先に決めてから情報を読むと、迷いが減ります。船の釣りを検討している方は、竿の選び方から釣法別に整理した船タチウオロッド専用竿おすすめ10選2026が参考になります。
堤防の引き釣りで切り身がとくに生きるのは、匂いに頼りたい渋い夜です。潮が動かず、シルエット主体のキビナゴにも反応が出ない時間帯に、匂いの立つ切り身を1本だけ試してみる。そうした切り札としての持ち込み方が現実的です。全部を切り身に替えるのではなく、テンヤを2セット用意して片方だけ餌を変える形なら、比較しながら夜を進められます。
餌別のセット手順——テンヤへの巻き方とやってはいけない3つ
餌選びと同じくらい釣果を左右するのが、テンヤへのセットの精度です。ハヤブサの解説では、餌はテンヤフックの軸に沿わせて真っ直ぐセットすることが必須で、少しくらい歪んでいても大丈夫だろうと高をくくると釣果が大きく低下すると明記されています。ここは横着が最も高くつく工程です。
キビナゴの巻き方
まずテンヤのケン(固定用のピン)にキビナゴを刺してセットします。次にワイヤーを頭側から巻き始め、隙間を作らないよう斜めに密に巻いていきます。針が曲がる位置、つまり針の懐(ふところ)のあたりを目安に折り返し、前方へ巻き戻します。最後にワイヤーの端を後方のラインアイやテンヤ本体に差し込んで固定します。尻尾は針の後端から2センチほど出るくらいが目安で、出しすぎると尻尾だけ噛み切られます。
巻き回数は餌の大きさとテンヤの長さで変わるため、回数を覚えるより「隙間を作らない」を基準にしてください。巻き幅が広かったり巻きが緩かったりすると、タチウオが噛んだときに歯がワイヤーを引っ張り、いわゆるワイヤー掛かりの状態になってバレやすくなります。使うステンレス線の太さは0.3ミリ前後から0.55ミリ前後まで幅があり、テンヤ付属品をそのまま使うか、ホームセンターの線材を好みの太さで用意するかは流儀が分かれます。
ドジョウの巻き方
ドジョウは冷水で解凍し、テンヤの針金を伸ばしておくところから始めます。テンヤの長さに合わせて尻尾側をカットし、フック軸に沿わせて真っ直ぐ乗せてから巻きます。フック後端から尾ビレが少し出る程度が目安です。実践者の記事では、カットの際に肛門から体液が勢いよく飛び出すことがあるので向きに注意する、といった現場ならではの注意点も挙げられています。尻尾の向きを上下どちらに調整するかは好みの範囲とされています。
やってはいけない3つ
- 餌を曲げたまま巻くこと。軸に沿っていない餌は泳ぎが破綻し、追ってきたタチウオが見切ります。
- ワイヤーを粗く緩く巻くこと。歯がワイヤーを拾ってワイヤー掛かりになり、乗ってもバレます。
- 針の後端から餌を出しすぎること。尻尾だけを噛み切られ、アタリはあるのに掛からない夜になります。
手巻き餌と既製装着システムの損益分岐
ワイヤーを自分で巻く従来型のテンヤに対して、餌をワンタッチで固定できる既製のシステムがあります。代表がシマノの太刀魚ゲッター系の時短テンヤで、公式の説明ではドジョウではなくキビナゴを取り付けるために開発されたテンヤとされています。装着はフェイスガードの穴にキビナゴの目を合わせ、アゴに腹固定ピンを刺し、キビナゴの背筋の黒い線に沿って頭から順に背固定ピンを刺すという流れで、アームストッパーで押さえて固定します。ワイヤーを巻く工程が丸ごと消えるのが最大の価値です。
どちらが得かは、その夜の餌交換の回数で決まります。判断軸は3つです。
- 交換回数。生のキビナゴを使い、活性が高くて15回以上餌を替えるような夜は、装着の速さがそのまま有効キャスト数に変わります。時合いが日没から2時間から3時間しかないことを考えると、1回あたり1分の短縮でも効きます。
- 使う餌。既製の装着システムはキビナゴを前提に設計されています。ドジョウを使いたい、あるいは切り身も併用したいなら、餌を選ばない手巻きのテンヤに分があります。
- 単価とロスト。ワンタッチ型はテンヤ1個あたりの単価が上がります。根掛かりの多い場所で数を失う釣り場では、単価の安い手巻きテンヤを数多く持ち込むほうが結果的に安く上がります。
実務的な落としどころは併用です。塩締めキビナゴをワンタッチ型に載せて時合いの2時間を手数で叩き、時合いが落ち着いたらドジョウを巻いた手巻きテンヤに替えて拾っていく。餌の性質とシステムの性質を掛け合わせると、1晩の中で役割分担ができます。なお本稿は餌を使うテンヤに絞っており、ワームを使うワインド系の釣りは別ジャンルとして扱っています。
現場での餌ローテーション判断と、夜の安全装備
餌だけ取られる、乗らないとき
アタリはあるのに掛からない夜は、まず餌の状態を疑ってください。尻尾が長すぎないか、巻きが緩んでいないか、身が崩れて軸から浮いていないか。この3点を直すだけで乗り出すことがあります。それでも変わらないなら、アワセのタイミングです。ツンツン、コツコツというアタリからグーンと竿を引き込むアタリに変化するまで待ち、引き込みが出たら一呼吸置いてアワセるとフッキングが決まりやすいとされています。ただし待ちすぎると餌をボロボロにされたうえで逃げられるため、アタリに変化がなければ思い切って合わせてみる判断も必要です。アタリの種類ごとの対処はタチウオ釣り完全攻略のアタリの取り方の章で釣法別に整理しています。
アタリが続かないとき
反応が完全に止まったときのローテーションは、餌よりも先にタナと速度を疑うのが順番です。日没前は深め、暗くなるにつれてタチウオは浅いタナまで浮上し、時合いのピークではテンヤの数十センチ上に付けたケミカルライトが見え隠れするほど浅いタナで食ってくるとされています。重めのテンヤしか手元にない場合は、竿先を高く構えてライン角度を上向きにすると、その分だけテンヤが持ち上がって浅いレンジを保ちやすくなります。段引きで引くとストップアンドゴーの状態になり、バイトのきっかけが生まれるとも説明されています。
タナと速度を変えても沈黙が続くなら、そこで初めて餌を替えます。キビナゴから匂いの立つ切り身へ、あるいはドジョウのサイズを1段落とす。順番を守らずに餌だけを何度も替えると、何が効いたのか分からないまま時合いが終わります。
夜の堤防と船で外せない装備
タチウオ釣りは日没からの釣りです。ヘッドライトは、餌を巻く手元を照らす意味でも必須になります。ワイヤーを巻く作業は指先の細かい仕事ですので、両手が空くヘッドライトと、予備の電池をセットで持ってください。水面を照らすとタチウオが散るとされますので、点灯は手元に向けるのが基本です。
ライフジャケットも忘れないでください。特に船の釣りでは、平成30年2月から小型船舶の乗船者に原則として着用が義務づけられており、国土交通省の型式承認品である桜マーク付きのものが必要です。船長が着用させなかった場合は違反点数2点が付され、再教育講習の受講が求められます。堤防でも、暗い足場で滑ればそのまま落水につながります。フローティングベストは釣り具ではなく安全装備として扱ってください。タチウオ自体も歯が鋭い魚ですので、フィッシュグリップとプライヤーは餌以前の必需品です。
まとめ
キビナゴとドジョウは、優劣ではなく制約で選ぶ餌です。ドジョウが買える地域に住み、餌交換の手間を減らしたいならドジョウ。全国どこでも手に入る手軽さを取るならキビナゴで、前日に30分だけ時間を作って塩締めすれば、身持ちも餌代も同時に改善します。1晩の餌代は釣具店の餌用キビナゴで約300円から400円、塩締めしたスーパー品で約70円から100円、冷凍どじょうで約40円から140円(本体価格のみ・通販の送料別)。この差を知ったうえで、自分の釣行頻度と仕込みの余力に合わせて選んでください。
そして餌をどれにしても、テンヤへのセットは軸に沿わせて真っ直ぐ、ワイヤーは隙間なく密に。この2点だけは餌の種類を問わず共通の基本です。秋の時合いは短く、準備の差がそのまま釣果の差になります。9月の第1投までに、餌の答えを自分の中で決めておきましょう。



