北海道でアキアジ(シロザケ)を狙うとき、最初に確認すべきは釣り場の実績ではなく「その河口が今、何メートル・いつまで禁止されているか」です。禁止区域は北海道漁業調整規則第42条の別表で河川ごとに個別指定され、さらに海区漁業調整委員会指示が期間を上乗せする2階建て構造になっています。左海岸と右海岸で距離が違う川、沖合だけ2,000メートルの川、9月に入ってから急に禁止が始まる川があり、「河口から300メートル」といった一律の覚え方は通用しません。この記事では北海道が発行する冊子「フィッシングルール2026 Rule&Manner」の一次情報をもとに、振興局別の距離と期間、そして出発前に5分で最新値を突き合わせる手順を整理します。
本記事は2026年8月時点で公開されている情報にもとづきます。数値の出典である冊子「フィッシングルール2026」は北海道が発行し、冊子表紙に「本冊子の内容は、令和8年1月時点のものです」と明記されています。掲載元である北海道水産林務部水産局漁業管理課のページは2026年4月27日更新です。実際の釣行では、後述のとおり最新の公式情報と現地の標柱表示が最優先になります。
早見表は3本に分けてあります。目的の川がある振興局から直接どうぞ。道央・日本海側(石狩・後志・檜山・留萌・宗谷)/道東・オホーツク(オホーツク・根室・釧路・十勝)/道南・太平洋(渡島・胆振・日高)。距離の起点と左右の向きの読み方は測り方のセクションにまとめました。
北海道の河口規制とは何か——根拠は「規則の別表」と「委員会指示」の2階建て
河口規制という言葉は釣り人の通称で、法令上の正式名称ではありません。実体は複数の根拠が重なった禁止措置で、これを1本の条文だと思い込むと確認漏れが起きます。北海道の公式冊子は、法制度として漁業法、水産資源保護法、漁業調整規則、委員会指示(海区漁業調整委員会・内水面漁場管理委員会)、遊漁規則を挙げています。なお北海道は令和2年12月1日に海面と内水面の調整規則を統合して「北海道漁業調整規則」を制定しており、旧・内水面漁業調整規則は廃止済みです。つまり海の規制も川の規制も、いまは1本の北海道漁業調整規則にまとまっています。そのうえで河口規制に直接効くのは、この北海道漁業調整規則と海区漁業調整委員会指示の2つだけです。規則という土台に委員会指示が年ごとに乗る2階建て——この形さえ押さえておけば、確認漏れはほぼ防げます。
1階部分——北海道漁業調整規則第42条の別表第4
海面側の土台になるのが北海道漁業調整規則です。同規則第42条(河口付近等におけるさけ・ますの採捕の禁止)は、道が公開する規則本文で次のように定めています。「何人も、海面のうち、別表第4の左欄に掲げる河川の河口付近及び湖沼の湖沼口付近であって同表の中欄に掲げる区域において、それぞれ同表の右欄に掲げる期間中、さけ及びますを採捕してはならない」。つまり距離も期間も条文本体には書かれておらず、すべて別表に丸投げされています。だから「第42条を読んだ」だけでは何の判断材料にもなりません。読むべきは別表であり、その別表を釣り人向けに整形したものが冊子P21以降の「河口付近等におけるさけ・ます採捕禁止区域一覧(第42条関係)」です。
この一覧は石狩・後志・檜山・渡島・胆振・日高・十勝・釧路・根室・オホーツク・宗谷・留萌の12の(総合)振興局にまたがり、100を超える河川・湖沼が個別に指定されています。列は「河川及び湖沼名」「河川口及び湖沼口沿岸の左海岸/右海岸(メートル)」「沖合方位の左方/右方(度分)」「沖合(メートル)」「禁止期間」という構成で、1河川あたり5つ以上の数値が並びます。距離を1つの数字に丸めて覚えられる構造ではない、というのがこの表の本質です。
2階部分——海区漁業調整委員会指示による上乗せ
規則の別表だけでは足りません。個別の河川では、その海域を所管する海区漁業調整委員会が委員会指示を出し、規則の期間の前後に禁止期間を継ぎ足していることがあります。冊子の一覧では、禁止期間欄の後ろに「海区」と記載された行がこれに該当し、冊子の注4は「禁止期間の後ろに『海区』と記載されているのは、『海区委員会指示』のことです」と明記しています。
具体例として、根室振興局が公開している植別川(羅臼町・標津町)の資料がわかりやすい構造を示しています。この資料は禁止区域欄を「令和5年」と明記した令和5年時点のもので、日付をそのまま当年に当てはめることはできませんが、2階建ての構造を示す例としては明快です。同資料は「北海道漁業調整規則第42条により、6月1日から9月30日までの間、さけ・ますの採捕が禁止されていますが、根室海区漁業調整委員会による委員会指示により、引き続き10月1日から11月30日までの間についても、さけ・ますの採捕を禁止します」と説明しています。規則で6月から9月、委員会指示で10月から11月。この2階建てを知らずに「規則の期間が終わったから解禁だ」と判断すると、そのまま違反になります。
早見表の「禁止期間」は過去年度の実績値である
ここが最も見落とされやすい点です。冊子の一覧表は禁止期間欄の見出し自体に「実績」と注記しており、ページによって「令和7年度実績」「令和6年度実績」と年度表記が異なります。さらに注5は「委員会指示の内容は、令和7年度の実績です。令和8年度の委員会指示の内容については、釣行の前に関係する(総合)振興局もしくは海区漁業調整委員会(巻末参照)にお問い合わせください(令和8年8月頃にはホームページに掲載予定)」と書いています。
つまり、公式の早見表に載っている期間ですら、その年の確定値ではありません。委員会指示の部分は毎年設定し直されるため、前年と同じ日付で始まる保証はないのです。ネット上の一覧表は多くがこの「実績」表記を落としてコピーされており、そこが誤情報の発生源になります。個人ブログの一覧を根拠に釣行計画を立てるべきでない理由はここにあります。
対象はサクラマスだけではない——「さけ」と5種類の「ます」の合計6魚種
規制対象の魚種も誤解が多い部分です。冊子は「北海道漁業調整規則における『ます』とは、さくらます、からふとます、べにます、ぎんます、ますのすけです」と定義しています。ここに「さけ」(シロザケ、いわゆるアキアジ)が加わるため、河口規制がかかっている区域・期間で狙ってはいけないのは合計6魚種ということになります。渡島総合振興局のさけ・ます釣りルールのページでも、同じ5種の「ます」が列挙されています。
この定義が効いてくるのは、たとえば春先の日本海側です。サクラマスの本流ルアーは人気ですが、河口規制の期間は4月1日開始の河川が少なくありません。「アキアジのシーズンはまだ先だから関係ない」と考えると、サクラマス狙いのキャストがそのまま規制違反になります。魚種としてのサクラマスの生態や本州との違いはサクラマス(桜鱒)完全図鑑で整理していますが、北海道では「釣り方」の前に「その河口で今その魚種を狙ってよいか」が先に来ます。
キャッチアンドリリースでも「採捕」に当たる
冊子には釣り人向けの明快なQ&Aが載っています。「Q. キャッチ&リリースは採捕になるの?」に対する答えは「A. はい。キャッチ&リリースは採捕になります。『釣りをする』行為は採捕に該当しますので、リリースしたとしても、禁止魚種の場合は違法行為となり罰則の対象となることがあります」というものです。
禁止区域内で「掛かってしまったら丁寧に逃がせばよい」という自己流の解釈は成り立ちません。罰則についても、北海道漁業調整規則第62条は第41条から第44条までの違反を含めて「6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定め、同条第2項で漁獲物・その製品・漁船・漁具などを没収できる旨を規定しています(道が公開する規則本文の表記。刑法改正にともなう刑名の整理が進んでいるため、条文の最新表記は道のページで確認してください)。竿やリールが没収対象になり得る、というのが条文の書きぶりです。
【道央・日本海側】主要河川の禁止距離と期間 早見表
先に表の読み方をひとつ。冊子は掲載ページによって基準年度が違います。P21に載る石狩・後志・檜山と渡島の知内川までが令和7年度実績、P22とP23に載るそれ以降(渡島の亀川以降・胆振・日高・十勝・釧路・根室・オホーツク・宗谷・留萌)が令和6年度実績です。振興局の並び順とページの切れ目が一致しないため、下の3つの表はいずれも1つの表の中で基準年度が混在します。そこで行ごとに基準年度の列を設けました。いずれにせよ当年分は釣行前に振興局へ確認してください。
ここから振興局別の早見表です。数値はすべて冊子「フィッシングルール2026」の掲載値で、内容は令和8年1月時点です。禁止期間は冊子が「実績」と注記する過去年度の値で、前述のとおり令和7年度実績と令和6年度実績が混在します。距離のカッコ書きは冊子の注2に従い「標柱までの一応の目安」を意味し、カッコなしと意味が違います。掲載していない河川も多数あるため、自分の行く川が表にない場合は必ず一次情報にあたってください。
| 振興局 | 河川・湖沼名 | 左海岸 | 右海岸 | 沖合 | 禁止期間(冊子掲載の実績値) | 根拠 | 基準年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 石狩 | 石狩川 | (1,000)m | (1,000)m | 2,000m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 石狩 | 浜益川 | 100m | 200m | 300m | 9.6〜10.13 | 規則+委員会指示 | 令和7年度実績 |
| 石狩 | 厚田川 | (200)m | (100)m | 右100m/左200m | 5.1〜8.31 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 後志 | 尻別川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 4.1〜4.30/5.1〜11.30 | 規則+委員会指示 | 令和7年度実績 |
| 後志 | 余市川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜6.30/8.20〜11.30 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 後志 | 朱太川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜8.31 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 檜山 | 後志利別川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 4.1〜11.30 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 檜山 | 厚沢部川 | (700)m | (700)m | 700m | 8.20〜11.30 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 檜山 | 石崎川 | 0m | (150)m | 300m | 4.1〜8.31 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 留萌 | 天塩川 | (1,000)m | (1,000)m | 2,000m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 留萌 | 遠別川 | (500)m | (500)m | 500m | 8.20〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 留萌 | 暑寒別川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 宗谷 | 徳志別川 | (900)m | (1,000)m | 2,000m | 4.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 宗谷 | 頓別川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
この表だけでも構造がよく見えます。石狩川は沿岸1,000メートルに対し沖合が2,000メートルで、沿岸と沖合の数字が一致しません。厚田川は沖合が「右100メートル、左200メートル」と左右で分かれています。石崎川は左海岸が0メートル、右海岸が150メートルですが、これとは別に沖合300メートルの規制がかかります。沿岸距離がゼロなのは左側だけの話で、左側なら規制がないという意味ではありません。徳志別川は左900メートル・右1,000メートルという端数の非対称で、沖合は2,000メートル。浜益川に至っては9月6日から10月13日という飛び地の期間が設定され、「海区」の注記が付きます。「河口から何メートル」という単一の数字で暗記できる対象ではない、と言い切れる根拠がここにあります。
【道東・オホーツク】主要河川の禁止距離と期間 早見表
道東は秋サケの主戦場であり、河川数も距離も大きくなる傾向があります。沖合1,000メートル以上の指定が並び、12月10日まで禁止が続く河川も珍しくありません。
| 振興局 | 河川・湖沼名 | 左海岸 | 右海岸 | 沖合 | 禁止期間(冊子掲載の実績値) | 根拠 | 基準年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| オホーツク | 斜里川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 5.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | 網走川 | 冊子の全道エリア別マップ42ページ図参照 | 6.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 | ||
| オホーツク | 常呂川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | 湧別川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | 渚滑川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 5.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | 興部川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | 藻琴川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜8.31/9.1〜12.10 | 規則+委員会指示 | 令和6年度実績 |
| オホーツク | ホロベツ川 | (100)m | (100)m | 100m | 8.1〜12.10 | 規則+委員会指示 | 令和6年度実績 |
| 根室 | 標津川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,500m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 根室 | 西別川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,500m | 6.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 根室 | 忠類川 | 500m | 500m | 500m | 8.3〜11.4 | 規則+委員会指示 | 令和6年度実績 |
| 根室 | 植別川 | (500)m | (500)m | 500m | 6.1〜9.30/10.1〜11.30 | 規則+委員会指示 | 令和6年度実績 |
| 根室 | 風蓮湖 | 冊子の全道エリア別マップ43ページ図参照 | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 | ||
| 釧路 | 新釧路川 | 冊子の全道エリア別マップ41ページ図参照 | 6.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 | ||
| 釧路 | 幌戸川 | (150)m | (150)m | 150m | 8.20〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 十勝 | 十勝川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 十勝 | 歴舟川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 6.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 十勝 | 楽古川 | (300)m | (300)m | 300m | 8.20〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
注目すべきは網走川・風蓮湖・新釧路川の3件です。これらは距離が数値で書かれておらず、冊子は「全道エリア別マップの該当ページ図参照」としています。河口の形状が複雑で、直線距離では区域を表現できないためです。この種の河川では、数値をメモしても意味がありません。地図と現地の標柱でしか区域を確定できないので、必ず冊子の該当マップページか振興局の掲示図を手元に用意してください。道東の釣り場全体の地理感は北海道の海釣りスポット完全ガイドも参考になります。
【道南・太平洋】主要河川の禁止距離と期間 早見表
渡島・胆振・日高は本州からのアクセスがよく、道外からの遠征も多いエリアです。同時に、左海岸と右海岸で距離が大きく食い違う河川が集中しており、確認を誤りやすい場所でもあります。
| 振興局 | 河川名 | 左海岸 | 右海岸 | 沖合 | 禁止期間(冊子掲載の実績値) | 根拠 | 基準年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 渡島 | 知内川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 9.1〜12.10 | 規則 | 令和7年度実績 |
| 渡島 | 遊楽部川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 5.1〜6.30/9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 渡島 | 茂辺地川 | (600)m | (700)m | 1,000m | 9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 渡島 | 汐泊川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜6.30/9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 渡島 | 尻岸内川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜6.30/9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 鵡川 | (300)m | 700m | 500m | 5.1〜6.30/9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 安平川 | (1,000)m | (1,000)m | 500m | 5.1〜9.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 錦多峰川 | (300)m | (200)m | 200m | 9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 白老川 | 500m | 500m | 500m | 5.1〜6.30/8.20〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 登別川 | (150)m | (300)m | 300m | 5.1〜6.30/9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 胆振 | 貫気別川 | (300)m | (700)m | 500m | 9.1〜12.10 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 日高 | 沙流川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 日高 | 静内川 | (1,000)m | (1,000)m | 1,000m | 5.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 日高 | 新冠川 | (700)m | (700)m | 700m | 9.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
| 日高 | 三石川 | (500)m | (500)m | 500m | 5.1〜6.30/9.1〜11.30 | 規則 | 令和6年度実績 |
貫気別川は左300メートル・右700メートル、登別川は左150メートル・右300メートル、鵡川は左300メートル・右700メートルと、いずれも左右で2倍以上の開きがあります。「右岸側に入ればセーフだと思っていた」というのが、この地域で起きやすい誤認です。錦多峰川のように左300メートル・右200メートルで左のほうが長い川もあり、規則性はありません。なお胆振エリアの釣り場全般については苫小牧の釣りポイント完全ガイド2026で港湾側の禁止エリアを整理していますが、河口規制はこれとはまったく別系統の規制です。港で釣りが認められていることは、近くの河口で釣ってよいことを一切意味しません。
「河口から何メートル」の起点はどこか——測り方を間違えて摘発される典型パターン
距離の値をメモしても、起点と向きを取り違えれば無意味です。冊子の注記は、この点をかなり具体的に書いています。
左海岸は「河口から海に向かって左側」
冊子の注1は「左右海岸の規制区域は標柱などで示されています。沖合距離は最大高潮時の海岸線からの距離です」とし、括弧書きで「左海岸とは河口から海に向かって左側の海岸です」と定義しています。ここが最大の落とし穴です。河川用語の「左岸・右岸」は上流から下流を見たときの左右を指しますが、河口規制の「左海岸・右海岸」は逆に、河口に立って海を向いたときの左右です。川の常識で読むと左右が入れ替わり、非対称な河川ではそのまま区域外だと思い込んで区域内に入ることになります。
カッコ付きの数字は「標柱までの目安」であって規制値そのものではない
冊子の注2は「この表で示している距離のうち、( )内の数字は、標柱までの一応の目安として利用してください」と書いています。つまりカッコ付きの数値は、現地に立つ標柱の位置をおおよそ示す参考値にすぎません。規制区域を確定しているのは標柱であって、表の数字ではないということです。さらに冊子は「河川によっては、測量等の結果、標柱・看板の位置が昨年と異なっている場合があります」とも注記しています。去年の記憶で「あの電柱のあたりが境界」と判断するのは危険です。
沖合は「最大高潮時の海岸線」から測る
沖合距離の起点は、干潮時の水際ではなく最大高潮時の海岸線です。干潮で砂浜が広く出ているときに水際から測ると、実際より沖まで規制がかかっていることになります。ボートやカヤックで沖に出る場合は、この起点のずれが数十メートル単位の誤差になり得ます。
| 確認項目 | よくある誤解 | 公式資料の記載 | 現場での判断 |
|---|---|---|---|
| 左右の向き | 上流から見た左岸・右岸 | 河口から海に向かって左側が左海岸 | 海を向いて立ち、左右を決め直す |
| 距離の意味 | 表の数字が規制の境界 | カッコ内は標柱までの一応の目安 | 標柱・看板の位置を優先する |
| 沖合の起点 | そのときの水際 | 最大高潮時の海岸線からの距離 | 満潮線を基準に余裕を取る |
| 期間の確定 | 表の日付がその年の確定値 | 冊子は過去年度の実績として掲載 | 振興局か海区委員会に当年分を確認 |
| 標柱の位置 | 毎年同じ場所にある | 測量等で昨年と異なる場合がある | 到着時に必ず現物を目視する |
| 迷ったとき | グレーなら投げてみる | キャッチアンドリリースも採捕に該当 | 境界から十分離れた場所へ移動する |
この表の最終行が実務上いちばん重要です。境界が曖昧なまま竿を出すことに得はありません。掛けてから逃がしても採捕に当たる以上、「疑わしいときは離れる」以外の正解はないと考えてください。
規制期間外・規制区域外でもサケを持ち帰れない場合
河口規制の表をクリアしても、それだけで自由に釣れるわけではありません。冊子が挙げている制約は複数あります。
全長20センチメートル未満は持ち帰れない
冊子は海面のさけ・ます釣りについて「河口付近の規制や体長制限のほか、船釣りに制限が設けられている海域があります」と3点を挙げています。このうち体長制限は最も忘れられやすい項目です。北海道漁業調整規則第39条(体長等の制限)は、海面において全長20センチメートル未満のさけ及びますを採捕してはならないと定めており、同条はあわせて、内水面でさけ及びますの産んだ卵を採捕することも禁じています。アキアジ狙いで20センチ未満が掛かる場面は多くありませんが、規制区域の外・規制期間の外であっても持ち帰れない個体があるという事実は、区域と期間だけを見ていると抜け落ちます。
河川内は通年で全面禁止
まず大原則として、川の中では時期を問わずさけ・ますを釣れません。冊子は「内水面でのさけ・ますの採捕は全面的に禁止されています」と明記し、冊子の一覧表の注3も「河川内でさけ・ますを採捕することは、水産資源保護法及び北海道漁業調整規則で禁じられています」としています。水産資源保護法第25条は、内水面においてさく河魚類のうちさけを採捕してはならない旨を定めており、例外は漁業の免許を受けた者または都道府県知事の許可を受けた者が当該免許・許可に基づいて採捕する場合に限られます。「河口規制の距離の外だから川に入ってもよい」という理屈は成立しません。
例外は増殖事業と有効利用調査の2系統だけ
冊子が挙げる内水面の例外は2つです。1つは各地区の「さけ・ます増殖事業協会」が行う増殖用の採捕。もう1つが「有効利用調査」で、冊子はこれを「釣り資源や環境教育の場として河川内でのさけ・ますを活用する可能性を調査するもの」と説明しています。釣り人が事前に事務局へ申し込み「採捕従事者」として登録されると、調査を実施している河川内でさけ・ますを釣ることができます。冊子には事務局として忠類川(標津漁業協同組合内の実行委員会事務局)と浜益川(石狩観光協会浜益事務所内の実行委員会事務局)の2河川が記載されています。
ただし実施の可否は年ごとに決まります。冊子は「令和8年度の実施については7月頃に決定します。詳細は事務局にお問い合わせ下さい」と書いており、実施するかどうかも募集の締切も、事務局に直接聞く以外に確かめる方法がありません。冊子が案内している連絡先は、忠類川が標津漁業協同組合内の「忠類川さけ・ます有効利用調査実行委員会事務局」(TEL 0153-82-2341)、浜益川が石狩観光協会浜益事務所内の「浜益川さけ有効利用調査実行委員会事務局」(TEL 0133-79-5700)です。
漁業者の自主規制期間中の自粛要請
法令とは別に、協力を求められる場面もあります。冊子は「人工ふ化に用いるサケを確保するため、漁業者の努力で定置の網入れを自主規制している地域がありますので、漁業者の取組中は海岸などでのサケ釣りを自粛するなどご協力よろしくお願いします」と呼びかけています。取組内容の問い合わせ先として北海道さけ・ます増殖事業協会が案内されています。これは罰則を伴う禁止ではありませんが、資源を残すための実務的な要請であり、地元との摩擦を避けるうえでも無視すべきではありません。
船釣りライセンス制とローカルルール
船から狙う場合はさらに別の制度が重なります。冊子によれば、斜里・網走およびウトロ海域では9月上旬から下旬にかけて「さけの船釣り」をする際、ライセンス証(承認)を受けた船舶に乗船する必要があります。サクラマスの船釣りライセンスは胆振が12月から翌年3月、後志が3月から5月、檜山が1月から5月と海域ごとに時期が異なります。加えて渡島および根室管内の沖合海域では、さけやますの船釣りを制限している期間・区域があるとされています。
陸っぱりでも、市町村単位のローカルルールが設定されている地域があります。冊子は「美しい海浜や豊かなサケ・マス資源の持続的な活用を目指すため、ルールが定められている地域があります」として、網走市・斜里町・小清水町の情報を案内しています。場所取りや車両の乗り入れなどに関する取り決めは自治体ごとに違うため、遠征前に自治体サイトを確認しておくと安心です。
なお、持ち帰った後の扱いも念のため触れておきます。天然のサケは生食に向かない理由が寄生虫の観点から明確にあり、この点は天然サケの刺身がNGでサーモンが生OKな理由で詳しく整理しています。釣り上げた個体を刺身で食べる前提で計画を立てないでください。
出発前5分でできる最新確認フロー(道庁ページ→振興局ページ→委員会指示→現地標柱の4点照合)
ここまでの内容を、釣行前の実行手順にまとめます。所要は5分程度です。ポイントは、上流の情報源から下流の現物へ順に降りていき、食い違いがあれば必ず現地表示を優先することです。
手順1 北海道庁のフィッシングルールのページを開く
北海道水産林務部水産局漁業管理課の「フィッシングのルールとマナー」ページで、冊子のWeb版が全ページPDFで公開されています。「河口付近等におけるさけ・ます採捕禁止区域一覧」はP21からP23に掲載されています。冊子の海面の章も「詳しい箇所などは、21ページ以降に掲載しておりますので参照してください」と案内しています。まずここで自分の河川の行を見つけ、左海岸・右海岸・沖合・期間の4項目を控えます。冊子表紙のとおり内容は令和8年1月時点であることを頭に置いてください。
手順2 該当する(総合)振興局の水産課ページを見る
次に、その河川を所管する振興局のページを確認します。渡島総合振興局はさけ・ます釣りルールのページで河口規制の図を掲げつつ「河川口沿岸の距離は目安です。標識で確認して下さい」と明記しており、後志総合振興局は河口規制一覧のPDFを個別に公開しています。振興局ページと冊子が食い違ったら、双方の更新日(振興局ページは末尾の更新日、冊子は表紙の基準時点)を比べて新しい方を採ります。更新日で決着しないときは、より広い距離・より長い期間の側(厳しい方)を選び、必要なら振興局へ電話で確認してください。
手順3 海区漁業調整委員会指示の当年分を確認する
3点目が最も忘れられやすく、最も効きます。冊子の注5が示すとおり、委員会指示の内容は年度ごとに設定され、冊子掲載分は過去年度の実績です。釣行前に関係する(総合)振興局または海区漁業調整委員会へ問い合わせるか、公表を待って各振興局のサイトを確認します。根室振興局が植別川の資料を単独ページで出しているように、個別河川の委員会指示は振興局サイトに掲載されることが多いので、「河川名+委員会指示」で振興局サイト内を探すのが早道です。なお冊子は令和8年度の委員会指示について「令和8年8月頃にはホームページに掲載予定」としています。ちょうど当年分が出そろう時期にあたるので、本記事や冊子の期間欄で代用せず、必ず令和8年度分そのものを確認してください。
手順4 現地の標柱・看板を必ず目視する
最後は現物です。規制区域は標柱などで示されており、表の距離はその標柱までの目安にすぎません。しかも測量等の結果、標柱・看板の位置が昨年と異なっている場合があると冊子が注意喚起しています。駐車してすぐ竿を出すのではなく、まず海岸線沿いを歩いて標柱を確認し、そこから十分に離れた位置に入る。この一手間が、規制違反と没収リスクを実質的にゼロにします。地元の釣り場マナーについても、初めての土地では周囲の様子をよく観察してから入るのが基本です。
補足 2026年秋の資源状況——なぜここまで細かい規制なのか
最後に、なぜこれほど細かい規制が敷かれているのかという背景に触れておきます。北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場が2026年6月24日に公表した資料によれば、令和8年(2026年)の全道への秋サケ来遊数は365万尾と予測されています。地区別の予測値は、オホーツクが2,108千尾、根室が331千尾、えりも以東が564千尾、えりも以西が251千尾、日本海が390千尾で、総計3,645千尾。前年比53.1パーセントという数字です。
前年の令和7年(2025年)は全道来遊数686万尾で前年比39パーセント、平成以降で過去最低の水準でした。年齢別では3年魚が49万尾と過去最低にまで減少し、平均目廻りも2.91キログラムと近年で最も小型の部類です。資源が細っている局面で河口に集まる親魚を獲れば、翌年以降の来遊はさらに減ります。河口規制は釣り人を締め出すための制度ではなく、産卵のために母川へ戻ってきた個体を通すための最低限の措置だと考えると、確認の手間も納得しやすいはずです。
まとめ——確認すべきは「距離」ではなく「4点の突き合わせ」
北海道の河口規制は、規則の別表という土台の上に委員会指示が年ごとに積まれる構造で、河川ごとに左海岸・右海岸・沖合・期間の4つの値が独立して設定されています。左右の向きは河口から海を向いたときの左右であり、表の距離のうちカッコ付きの値は標柱までの目安にすぎず、沖合は最大高潮時の海岸線が起点です。そして冊子に載る期間は過去年度の実績であって、しかも掲載ページによって令和7年度実績と令和6年度実績が混在しており、その年の確定値ではありません。
したがって釣行前にやるべきことは、距離の暗記ではなく、道庁ページ・振興局ページ・当年の委員会指示・現地標柱という4点の突き合わせです。本記事の数値は2026年8月時点で公開されている資料にもとづく参考値であり、実際の判断は必ず最新の公式情報と現地の表示を優先してください。境界が曖昧なら、迷わず離れる。それが結果的にいちばん釣りを長く楽しめる選択になります。



