鳥取県・島根県を中心とした「山陰」エリアは、日本海に面した豊かな釣り場として全国の釣り人から高い評価を受けています。対馬暖流がもたらすプランクトンの豊富さ、複雑な海底地形、そして整備された港湾と磯が点在するこのエリアは、まさに釣り人のパラダイスといえます。
山陰の海の最大の特徴は「対馬暖流」です。朝鮮半島と対馬の間を抜けて日本海を北上するこの暖流は、豊富な栄養塩を含み、プランクトンを大量に育てます。それを食べる小魚が増え、それを狙う大型魚が集まるという食物連鎖が成立しています。ヒラマサ・マグロ・ブリ・サゴシなどの青物が日本海に多い理由がここにあります。
また、日本海は太平洋側と比べて潮汐差が小さく、潮の満ち引きが穏やかです。これは堤防釣りや磯釣りをする上では釣り場が安定している利点でもあり、初心者から上級者まで幅広く楽しめる環境を提供しています。
山陰と太平洋岸の海の違い:釣り人が知っておくべき日本海の特性
日本海の大きな特性の一つが「底質の豊かさ」です。リアス式海岸が発達した山陰沿岸は、岩礁・砂浜・砂利浜・藻場が入り組み、多様な魚種が棲み分けています。アオリイカは藻場に産卵し、カサゴ・ハタは岩礁に潜み、キスは砂浜を回遊します。
- 水温:夏は25〜28℃、冬は10〜14℃程度。太平洋岸より冬の冷え込みが強い
- 透明度:非常に高い(10〜30m以上見えることも)。魚が仕掛けを見切りやすい点に注意
- 潮汐差:0.3〜0.5m程度(太平洋の1/4〜1/6)。潮位変化が少なく安定した釣り場
- 荒波:冬の季節風による日本海のうねりは激しく、冬季は出船できない日も多い
鳥取県の主要釣りスポット
境港(さかいみなと):全国屈指の漁港で青物・根魚を狙う
鳥取県境港市にある境港は、日本海有数の大型漁港です。水木しげる記念館で有名な観光地でもありますが、釣りポイントとしても全国的に名高いです。港の外堤防・内堤防・護岸から様々な魚を狙えます。
境港で釣れる主な魚種:
- ヒラマサ・ブリ(7〜11月):回遊する青物を狙うルアー釣りが人気。堤防からジグで狙える
- アオリイカ(9〜11月・4〜5月):秋と春の2シーズン。エギングで堤防から狙える
- カサゴ・メバル(通年):根魚類は年間を通じて楽しめる定番ターゲット
- キス(6〜9月):砂浜でのキス釣りも人気。サーフや堤防際の砂地で釣れる
- サゴシ(春・秋):サゴシはサワラの幼魚。ジグやミノーで狙うルアー釣りが楽しい
境港には複数の遊漁船が拠点を置いており、沖のジギングポイントへ案内してくれます。ノドグロ(アカムツ)狙いの深海釣りも境港から出る遊漁船の人気メニューです。
浜村・鳥取砂丘周辺:キス・ヒラメのサーフフィッシング天国
鳥取砂丘に隣接する鳥取市〜岩美町にかけての砂浜は、キスとヒラメのサーフフィッシングに絶好のポイントが連続しています。鳥取砂丘の西側から浜村温泉近くまで続く砂浜は、遠浅のサーフが広がり、投げ釣りで遠投すると良型のキスが期待できます。
- 浜村海水浴場周辺:砂地のフラットなサーフ。6〜9月のキス釣りに最適。投げ釣りで20cm超えも狙える
- 岩美町(田後港・網代港):小磯と砂浜が入り混じる変化に富んだポイント。メバル・カサゴ・アオリイカが狙える
- 鳥取港(鳥取市):大型港。アジ・サバのサビキ釣りからメバル・ガシラ(カサゴ)まで多彩な釣りが楽しめる
日南・琴浦の磯:ウキ釣りでグレ・クロダイ
鳥取県中部の琴浦町・湯梨浜町周辺には、磯釣りの好ポイントが点在します。岩礁地帯ではグレ(メジナ)やクロダイ(チヌ)をウキ釣りで狙うクラシカルな釣りが楽しめます。
| スポット名 | 場所(市区町村) | 主なターゲット | 釣りスタイル |
|---|---|---|---|
| 境港 赤碕堤防 | 境港市 | ヒラマサ・ブリ・アオリイカ | ジギング・エギング |
| 鳥取港 | 鳥取市 | アジ・サバ・メバル | サビキ・ライトゲーム |
| 浜村海水浴場サーフ | 鳥取市(気高町) | キス・ヒラメ | 投げ釣り・サーフルアー |
| 田後港・網代港 | 岩美町 | メバル・カサゴ・アオリイカ | ライトゲーム・エギング |
| 琴浦町磯 | 琴浦町 | グレ・クロダイ | ウキ釣り・フカセ釣り |
島根県の主要釣りスポット
松江・宍道湖:汽水湖での独特の釣りを楽しむ
宍道湖は日本最大規模の汽水湖(淡水と海水が混じる湖)で、シジミの産地として有名ですが、釣り場としても独特の魅力があります。海とつながっているため、スズキ(シーバス)・クロダイ・マハゼが宍道湖内に入り込んできます。
宍道湖での釣りの特徴:
- シーバス(スズキ):ルアーフィッシングで狙う。サイズは60〜90cmクラスも珍しくない
- クロダイ(チヌ):ウキ釣りまたはチニングルアーで狙う。湖の汽水域ならではの魚
- マハゼ:夏から秋にかけてのファミリー釣りの定番。ちょい投げで楽しめる
- ワカサギ:冬の風物詩。エリアを絞って氷上または岸からの釣りが楽しめる
出雲(十六島・鷹島):磯の王者グレに挑む
出雲市周辺の磯は山陰の中でも特に磯釣りのクオリティが高く、全国から磯師(磯釣りの達人)が訪れます。十六島(うっぷるい)・鷹島・大社付近の磯では大型のグレやクロダイ、そして運が良ければ大型のヒラスズキが狙えます。
- 十六島(うっぷるい)の磯:出雲の秘境感ある磯。クロダイ・グレの良型が多い
- 鷹島:ヒラマサの一級磯。ショアジギングで狙う釣り師が集まる
- 大社海岸:出雲大社近く。サーフのヒラメ・キス釣りが人気
浜田港・江津港:サゴシ・ノドグロの宝庫
島根県西部の浜田市・江津市は、深い海に面した山陰有数の釣りエリアです。浜田港は県内最大の漁港で、遊漁船が充実しています。特に「ノドグロ(アカムツ)」釣りは浜田を代表する沖釣りで、全国屈指の漁獲量を誇ります。
| スポット名 | 場所 | 主なターゲット | おすすめ時期 |
|---|---|---|---|
| 松江市内(宍道湖) | 松江市 | シーバス・クロダイ・ハゼ | 通年(夏〜秋が最盛期) |
| 十六島(うっぷるい)磯 | 出雲市 | グレ・クロダイ | 9〜5月(夏は渡礁制限あり) |
| 鷹島 | 出雲市(沖磯) | ヒラマサ・グレ | 4〜11月 |
| 浜田港 | 浜田市 | ノドグロ・ジギング全般 | 通年(深場釣りは年中可) |
| 大社海岸 | 出雲市 | キス・ヒラメ・サーフルアー | 6〜9月(キス)/ 秋冬(ヒラメ) |
山陰で釣れる主要ターゲット魚の攻略法
ヒラマサ・サゴシ:日本海の青物キング
山陰エリアでのルアーフィッシングといえばヒラマサとサゴシ(サワラの幼魚)が双璧です。ヒラマサはブリと並ぶ青物の王者で、日本海ではブリより先に登場することが多く、春〜初夏が特に狙い目です。
ヒラマサの攻略法:
- ショアジギング:30〜80gのメタルジグを遠投してシャクる。磯からは100gクラスも使う
- ポッパー・ペンシル:水面直下を攻めるトップウォータープラグ。飛び出すアタリが最高の興奮
- タックル:ロッド10〜11ft / PE2〜4号 / リール6000〜8000番
サゴシ(サワラ)は金属系のルアーへの反応が抜群で、鋭い歯でラインを切られることも多いためスナップ・リーダーに注意が必要です。メタルジグ20〜40g、またはバイブレーションプラグで狙います。
アオリイカ:春大型・秋数釣りの二毛作
山陰のアオリイカは透明度の高い日本海を活かした視覚的な釣りが楽しめます。春(4〜6月)は大型(1〜3kgクラス)の産卵期アオリイカ、秋(9〜11月)は数釣りができる新子(小型)シーズンです。
- 春アオリ:産卵床(アマモ・海藻帯)の近くを丁寧にエギを通す。エギ3.5〜4号
- 秋アオリ:数は多いが小さい。エギ2〜3号でテンポよく探る
- 境港・鳥取港周辺の堤防:秋のエギングでよく釣れる実績ポイント
ノドグロ(アカムツ):山陰が誇る高級魚
「のどの奥が真っ黒」から名前がついたノドグロ(アカムツ)は、山陰を代表する高級魚です。脂の乗った白身は一度食べると忘れられない美味しさで、産地では1匹3,000〜10,000円以上の値がつくこともあります。
水深100〜400mの深場に棲むため、遊漁船での電動リール釣りが主流です。浜田・境港から出る遊漁船が主なアクセス手段で、1日乗船2万円前後が相場です。
ハタハタ:冬の日本海の風物詩
ハタハタは秋田が有名ですが、山陰(鳥取・島根)でも11〜12月に漁獲される冬の風物詩です。山陰のハタハタは産卵期に接岸するため、岸から釣れることがあります。ただし近年は資源減少が懸念されており、漁獲量は減少傾向にあります。
山陰へのアクセスと釣りの計画
大阪・名古屋・東京からのアクセス方法
山陰は関西から比較的アクセスしやすい釣りエリアです。各都市からの主なアクセス手段をまとめます。
| 出発地 | 交通手段 | 目的地 | 所要時間・費用目安 |
|---|---|---|---|
| 大阪 | 車(中国自動車道経由) | 鳥取市 | 約2.5〜3時間 / 高速代2,500円程度 |
| 大阪 | 高速バス(WILLER等) | 松江・鳥取 | 約3〜4時間 / 3,000〜5,000円 |
| 名古屋 | 車(中国・米子道経由) | 境港・米子 | 約4〜5時間 / 高速代4,000円程度 |
| 東京 | 飛行機(ANA・JAL) | 鳥取砂丘コナン空港または出雲空港 | 約1時間20分 / 15,000〜35,000円 |
| 広島 | 車(国道54号または中国道) | 浜田・益田 | 約2〜2.5時間 / 高速代1,500円程度 |
山陰釣りのよくある質問(FAQ)
Q: 山陰は関西から日帰りで行ける釣りスポットですか?
大阪〜鳥取間は高速道路を使えば約2.5〜3時間で到着できます。夜明け前に出発して早朝から釣りを始め、夕方に帰宅する日帰り釣行は十分可能です。ただし移動疲れを考えると1泊2日が釣りをたっぷり楽しむには最適です。釣り宿(素泊まり)や温泉宿が各地に点在するため宿の確保は容易です。
Q: 山陰でのエギングに適した時期はいつですか?
アオリイカのエギングは秋(9〜11月)と春(4〜6月)が2大シーズンです。秋は数が狙え、春は大型が狙えます。透明度が高い日本海では昼間でもよく釣れますが、朝夕のマズメ時(日の出・日没前後1時間)が特に釣果が出やすい時間帯です。
Q: ノドグロ釣りに行くにはどうすれば良いですか?
ノドグロ(アカムツ)は水深100〜400mの深場に棲むため、遊漁船への乗船が必須です。浜田港・境港に複数の遊漁船が拠点を置いており、電話またはウェブで事前予約が必要です。料金は1日2万円前後が相場で、電動リール・深海仕掛けは船宿でレンタルできる場合もあります。秋〜冬が釣果が高い傾向にあります。
Q: 山陰のヒラマサは何月ごろ釣れますか?
山陰のヒラマサは春(4〜6月)と秋(9〜11月)が最盛期です。特に春のヒラマサは岸から狙えることもあり、ショアジギングで狙う釣り人が多く集まります。夏場も表層で青物の回遊が見られますが、水温が高くなりすぎると沖へ移動する傾向があります。
Q: 山陰では渡船(磯渡し)は利用できますか?
はい、出雲市の十六島(うっぷるい)・鷹島など主要磯エリアでは渡船を運航する業者があります。料金は1人2,500〜4,000円程度で、磯の上に上礁して釣りをするスタイルです。天候や波の状況によって出船が中止になることもあるため、前日に渡船店へ確認の電話を入れることが必要です。また磯釣りはライフジャケット着用が必須です。
Q: 山陰の堤防釣りで家族向けのおすすめスポットはありますか?
境港・鳥取港・浜田港などの大型港の護岸や堤防は柵が整備されており、ファミリー向けの釣り場として人気があります。夏のアジ・サバのサビキ釣りは子供でも楽しめる釣りで、数釣りが期待できます。鳥取砂丘近くの浜村周辺のサーフでは投げ釣りのキス釣りが楽しめます。注意として、一部の港は立入禁止区域があるため事前に確認が必要です。
山陰の遊漁船・渡船情報と季節別カレンダー
境港・浜田の遊漁船:沖のジギング・深海釣りを楽しむ
山陰エリアには遊漁船が充実しており、岸からでは届かない沖のポイントへ案内してくれます。特に境港(鳥取県)と浜田港(島根県)は遊漁船の拠点として有名です。
境港の遊漁船で狙える主なターゲット:
- ノドグロ(アカムツ):水深100〜300m。電動リール必須。料金:15,000〜25,000円/1名
- ヒラマサ・ブリのジギング:水深20〜60m。PE2〜3号のジギングタックル。料金:10,000〜15,000円/1名
- マダイのタイラバ:水深30〜80m。タイラバ40〜100gを使用。料金:10,000〜13,000円/1名
浜田港の遊漁船はノドグロ専門船が多く、日本一のノドグロ漁港としての名声を保っています。深海に棲むノドグロは釣り上げるだけで価値があり、船上で即食べる刺身は格別です。予約は釣り船検索サイト(釣り船.jp、船宿ドットコムなど)から各船宿に直接連絡するのが一般的です。
山陰・季節別ターゲットカレンダー
山陰は1年を通じて釣りが楽しめるエリアです。季節ごとの主なターゲットを整理します。
| 季節 | 月 | 主要ターゲット | 推奨釣り方 |
|---|---|---|---|
| 春 | 3〜5月 | 春アオリイカ(大型)・マダイ乗っ込み・キス | エギング・タイラバ・投げ釣り |
| 初夏 | 6〜7月 | ヒラマサ・アジ・キス・カレイ | ショアジギング・サビキ・投げ釣り |
| 夏 | 8〜9月 | ブリ・サゴシ・タコ・アジ | ジギング・タコエギ・サビキ |
| 秋 | 10〜11月 | 秋アオリイカ・ヒラマサ・カレイ | エギング・ショアジギング・投げ釣り |
| 冬 | 12〜2月 | ノドグロ・カレイ・ハタハタ・メバル | 深海釣り(遊漁船)・投げ釣り・ライトゲーム |
山陰釣行の注意点とマナー
山陰エリアで釣りを楽しむ際に、必ず守るべき注意点をまとめます。
- 磯での安全対策:山陰の磯は波が高くなることが多く、特に冬は低気圧接近時に急激に波高が上がります。天気予報と波高予報(Windyや気象庁波浪予報)を必ず確認し、ライフジャケット着用を徹底してください
- 漁港内のルール:境港・浜田港など大型漁港は漁業関係者の作業スペースがあり、立入禁止区域への侵入は厳禁です。看板・ロープの指示に従ってください
- ゴミの持ち帰り:釣り場ゴミ問題は山陰でも深刻化しており、釣り禁止になった港も出ています。コンビニ袋を必ず持参し、使用した仕掛け・エサの残りも全て持ち帰りましょう
- 禁漁サイズ・シーズン:ヒラメ(25cm未満リリース目安)、アオリイカ(胴長10cm以下は逃がす)など、資源保護の観点から小型魚のリリースを心がけましょう
- 冬季の波・風対策:山陰の冬は日本海特有の北西の強風が吹きます。防風・防水性能の高いウェアを準備し、濡れた岩場では転倒に十分注意してください
山陰の釣り場は都市部から少し離れていますが、その分釣り人のプレッシャーが少なく、大型魚が狙いやすい環境が維持されています。日帰りでも1泊2日でも、日常を忘れられる絶景の中で最高の釣り体験ができるエリアです。ぜひ山陰の豊かな日本海に足を運んでみてください。



