フィッシュグリップを持っていない釣り人が、初めて使ったときの感想はほぼ共通しています——「もっと早く買えばよかった」。歯の鋭いシーバス、棘が危険なカサゴ、暴れるヒラメ、滑りやすいタチウオ。これらの魚を素手でつかもうとして怪我をした経験がある人は多いはずです。フィッシュグリップは単なる「あると便利な道具」ではなく、釣りの安全性と魚の鮮度管理を同時に向上させる必需品です。本記事では、フィッシュグリップの種類・素材・強度・選び方の全ポイントを解説し、価格帯別のおすすめ製品を徹底比較します。
フィッシュグリップの基礎知識——なぜ必要なのか
フィッシュグリップが必要な理由は主に3つあります。
1. 安全性の確保: 多くの海釣りのターゲット魚種は、針のような背ビレの棘(カサゴ・メバル・フグなど)や鋭い歯(シーバス・タチウオ・ヒラマサなど)を持っています。素手でつかむと怪我をするリスクがあり、特にタチウオの鋭い歯や毒を持つゴンズイ・ハオコゼなどは重篤な怪我につながることもあります。フィッシュグリップは魚の下顎や体をしっかり固定することで、これらのリスクを大幅に低減します。
2. 魚のダメージ軽減(リリース釣りに必須): キャッチ&リリースを行う釣りでは、魚を素手で触ることで体表の粘液(粘膜)が剥がれ、魚が病気になるリスクが高まります。フィッシュグリップで下顎のみを固定することで、体へのダメージを最小限に抑えてリリースできます。バス釣り・エギング・ライトゲームで特に重視されます。
3. 写真撮影の利便性: 釣り上げた魚を片手でフィッシュグリップに持ち、もう片手でスマートフォンを構えるという一人でも魚の写真が撮れるスタイルは、SNS時代の釣りのスタンダードになっています。魚体が安定するため、ブレなく美しい写真が撮れます。
フィッシュグリップの種類と分類
タイプ別の特徴
| タイプ | 特徴 | 向いている釣り | デメリット |
|---|---|---|---|
| クランプ式(はさみ型) | トリガーを引くと顎が開き、魚の下顎を挟んでロックする。最もポピュラー | シーバス・ヒラメ・チヌ・ロックフィッシュ | 小型魚には使いにくい場合がある |
| スケール付き(計量器内蔵) | 魚の体重を計れる計量器が内蔵。釣り記録の管理に便利 | すべての釣り・大会参加者 | 本体重量が増える。スケールの精度に差がある |
| ゴム製グリップ(ラバーグローブ型) | 手に装着するタイプ。滑り止め効果で魚を素手感覚でつかめる | 磯釣り・堤防釣り・エサ釣り全般 | 魚の棘や歯からの完全な保護には限界がある |
| プライヤー兼用型 | フィッシュグリップとプライヤー(ハリ外し)が一体化 | ルアーフィッシング全般 | それぞれの専用品と比べると機能が劣る |
| 大型魚用(ギャフ型) | フックを魚に引っかけて固定する。大型青物・オフショア向け | カツオ・マグロ・ヒラマサ・船釣り | 魚体にダメージが大きい。リリース釣りには不向き |
素材別の特徴と耐久性
| 素材 | 重量 | 耐腐食性 | 強度 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| ステンレス製 | 重め(150〜250g) | 高い | 非常に高い | 中〜高価格帯 |
| アルミ合金製 | 軽め(80〜150g) | 中程度(表面処理による) | 高い | 中価格帯 |
| 強化プラスチック(ABS樹脂) | 非常に軽い(50〜100g) | 高い(錆びない) | 中程度 | 低〜中価格帯 |
| チタン合金製 | 軽め(80〜130g) | 最高 | 最高 | 高価格帯 |
| カーボン繊維複合材 | 最軽量(50〜80g) | 高い | 高いが衝撃に弱い | 高価格帯 |
海釣りでは塩水による腐食(錆び)が最大の敵です。ステンレスまたはアルミ製で、表面がアノダイジング処理(陽極酸化処理)またはコーティングされているモデルを選ぶと長持ちします。プラスチック製は錆びませんが、大型青物の力に対しては破損リスクがあります。
選び方の重要ポイント5つ
1. 対象魚のサイズと重量に合わせたグリップ強度
フィッシュグリップの最重要スペックが「最大保持重量(耐荷重)」です。これは「何kgの魚まで安全に保持できるか」を示す数値で、対象魚の想定最大サイズより余裕を持ったものを選ぶ必要があります。
| 対象魚・釣り | 推奨耐荷重 | 理由 |
|---|---|---|
| アジ・メバル・カサゴ(〜500g) | 5kg以上 | 小型魚でも棘への安全対策として必要 |
| シーバス・クロダイ(1〜3kg) | 10kg以上 | シーバスは激しく暴れるため余裕が必要 |
| ヒラメ・マゴチ(1〜5kg) | 15kg以上 | 大型座布団ヒラメを安全に扱うため |
| ショアジギング青物(3〜8kg) | 20kg以上 | ヒラマサ・カンパチの暴れに対応するため |
| オフショア・大型青物(10kg超) | 30kg以上 | マグロ・GT級には専用の重量級グリップが必要 |
2. グリップのロック機構の信頼性
フィッシュグリップは「魚の下顎を挟んだ後にロックが外れない」ことが絶対条件です。安価なモデルではロック機構が甘く、大型魚が暴れた際にグリップが外れて魚が落下したり、逆に魚の棘や歯が露出して怪我をするケースがあります。実際に店頭でトリガーを引いてみて、ロックのカチッという感触と、ロックを外すために一定の力が必要かを確認してください。
3. ランヤード(落下防止コード)の有無
船の上や磯でフィッシュグリップを落とすと回収できない場合があります。ランヤード(ストラップ)が付属しているか、または取り付け穴があるモデルを選ぶことを強くお勧めします。波止場・オフショアでは特に重要です。
4. 握りやすさ(グリップのエルゴノミクス)
グローブを着用した状態でも操作しやすいか、濡れた手でもすべりにくいか、長時間使用しても疲れにくい形状かを確認します。特に冬場の釣りではグローブ着用が前提になるため、大きなトリガーと広いグリップが使いやすいです。
5. スケール(計量機能)の必要性
大会参加者・釣り記録をつけている方・SNSに釣果を投稿する方にはスケール付きモデルが便利です。ただしスケール付きは本体重量が増えるため、ライトゲームやメバリング・アジングでは重さがマイナスになることもあります。用途を考えて選んでください。
おすすめ製品レビュー——価格帯別徹底比較
入門・コスパ重視(3,000〜6,000円)
第一精工 ガーグリップ MC コンパクト: 日本の老舗釣り具メーカー・第一精工の定番モデル。コンパクトなボディながら耐荷重20kgを実現し、ショアゲームから船釣りまで幅広く対応。トリガーの操作感が滑らかで、初心者でも直感的に使えます。本体素材はABS樹脂製で軽量。スケールなし。実売価格3,500〜4,500円程度。
プロックス フィッシュキャッチャー: プロックスの入門向けフィッシュグリップ。全長35cmと長めで、歯の鋭い魚(タチウオ・シーバス)に手が触れにくい設計。耐荷重15kg。実売価格2,800〜3,500円。入門機としてコストパフォーマンスが高い。
中級・バランス重視(6,000〜15,000円)
ダイワ フィッシュグリップ ワニグリップ MC: ダイワの主力モデルで、アルミ合金製ボディと強力なロック機構を採用。耐荷重30kgで青物まで対応可能。グリップ部分のラバーコーティングが滑りにくく、長時間の釣りでも疲れにくい。スケール付きモデルも展開。実売価格7,000〜9,000円。
バス釣り・エギング向け:ラパラ フィッシュグリップ: フィンランドの老舗ブランドRapalaのフィッシュグリップ。バスフィッシング起源だが、アオリイカ・メバル・シーバスにも幅広く使用されている。ステンレス製で海釣りでも錆びにくく、軽量(約115g)で携帯性に優れる。実売価格6,500〜8,000円。
上級・プロ仕様(15,000〜30,000円以上)
シマノ フィッシュグリップ CT-981P: シマノが展開する本格派フィッシュグリップ。ステンレス製で高い耐腐食性と剛性を両立。クランプ部の開口幅が広く、大型魚の下顎もしっかりホールド。スケール付きで最大30kgまで計量可能。実売価格12,000〜15,000円。
BOДE(ボーデ)アルミフィッシュグリップ: 航空機用アルミ合金を採用した高剛性・軽量グリップ。重量わずか90gながら耐荷重25kg。アノダイジング処理による高い耐腐食性は海水環境に最適。釣り具専門店・上級アングラーに支持される信頼性の高さが特徴。実売価格15,000〜20,000円。
スペック比較表——全モデル一覧
| 製品名 | 素材 | 重量 | 耐荷重 | スケール | 実売価格 | おすすめユーザー |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第一精工 ガーグリップMC | ABS樹脂 | 約95g | 20kg | なし | 3,500〜4,500円 | 入門・ライトゲーム |
| プロックス フィッシュキャッチャー | ABS樹脂 | 約120g | 15kg | なし | 2,800〜3,500円 | 入門・タチウオ対策 |
| ダイワ ワニグリップMC | アルミ合金 | 約160g | 30kg | あり(別売) | 7,000〜9,000円 | ショア〜ライトオフショア |
| ラパラ フィッシュグリップ | ステンレス | 約115g | 25kg | なし | 6,500〜8,000円 | エギング・バス・シーバス |
| シマノ CT-981P | ステンレス | 約180g | 30kg | あり(30kg) | 12,000〜15,000円 | 中〜上級・記録管理 |
| BODEアルミグリップ | 航空機用アルミ | 約90g | 25kg | なし | 15,000〜20,000円 | 上級・軽量重視 |
釣り別・用途別の選び方ガイド
初心者・これから始める方
まずは第一精工「ガーグリップ MC コンパクト」から始めることをおすすめします。価格が手頃で扱いやすく、ほとんどの堤防・ショアゲームに対応できます。使っていくうちに「もっと軽いものが欲しい」「スケールが欲しい」という要望が出てきたらステップアップする流れが合理的です。
シーバス・ヒラスズキ狙いのアングラー
シーバスは激しく暴れ、口周りの棘やエラが危険です。耐荷重20kg以上・ロック機構が確実なモデルが必要です。ランヤード付きも必須(磯やテトラからの釣りでは落下リスクが高い)。ダイワ「ワニグリップMC」が実績・コスパのバランス優秀です。
エギング・アオリイカ専用
アオリイカはフィッシュグリップで下顎をつかまず、エンペラ(胴)をつかむか、専用のイカ用グリップを使います。アオリイカ専用のラバーコーティング付きグリップも存在し、墨が飛び散りにくい設計のものもあります。ラパラのコンパクトモデルが持ち運びやすく人気です。
ショアジギング・青物狙い
ヒラマサ・カンパチ・ブリは8kg超になることも珍しくなく、暴れたときの力は相当です。耐荷重30kg以上・アルミまたはステンレス製のモデルが必須です。グリップが大きく、グローブ着用でも操作できるものを選びましょう。
船釣り・オフショアゲーム
船上では落下防止のためランヤードが必須。大型青物にはギャフと組み合わせることも多いですが、キャッチ&リリースが原則の釣り場ではフィッシュグリップのみで対応します。耐荷重30〜50kgの本格モデルが安心です。
よくある選択ミスと回避策
| よくある失敗 | 回避策 |
|---|---|
| 耐荷重が足りず大型魚でグリップが外れた | 対象魚の想定最大体重の2倍以上の耐荷重を選ぶ |
| 安価な金属製品が錆びて1シーズンで廃棄 | ステンレス製またはアノダイジング処理済みアルミを選ぶ |
| ランヤードなしで磯から海に落とした | 購入時にランヤード付属か確認。なければ別途取り付ける |
| グローブをしたままでは操作できない | 実際に手袋をして試着・操作確認してから購入する |
| スケールの精度が悪くサイズを過大評価 | 計量精度±50g以内のモデルを選ぶ。大会参加時は公式スケールを使用 |
メンテナンスと長持ちのコツ
フィッシュグリップは塩水・魚の血・粘液にさらされるため、使用後のメンテナンスが製品寿命を大きく左右します。
毎回の釣行後:
- 真水でグリップ全体をしっかり洗い流す(特に可動部・ロック機構の隙間)。
- 柔らかいブラシで汚れを落とす。
- 水気を拭き取り、直射日光を避けた通気性の良い場所で自然乾燥させる。
- 可動部に軽くシリコンスプレーを吹きかけると動きが滑らかに保てる(油は魚の臭いが残るのでシリコン系がおすすめ)。
定期メンテナンス(月1回目安):
- ロック機構を分解できるモデルは内部の塩分・砂を除去する。
- スケール部分の電池確認・ゼロ点調整を行う。
- グリップ部分のラバーコーティングが劣化・剥がれていたら補修または交換を検討。
保管方法: 釣り用品収納ボックスに密閉して保管すると湿気による腐食を防げます。長期保管前には必ず乾燥を確認してから収納してください。
フィッシュグリップ・魚つかみをAmazonでチェック
よくある質問(FAQ)
| よくある質問 | 回答 |
|---|---|
| フィッシュグリップは必ず必要? | タチウオ・シーバス・ロックフィッシュなど棘・歯が危険な魚を釣るなら必須。安全投資として必ず用意してほしい |
| 安い中国製フィッシュグリップは使えるか? | 耐荷重の実測値が表記と大きく異なるものがある。無名ブランドは信頼性に疑問があり、大型魚には向かない |
| タチウオに使えるグリップはどれ? | タチウオは歯が非常に鋭くグリップをかじることがある。全長35cm以上の長めのグリップを使い、口に近づけないことが重要 |
| アオリイカにフィッシュグリップは必要? | 墨吐き対策と滑り止めに有用。イカ専用モデルかラバーコーティングのついたものを選ぶ |
| 子供に使わせるのに適したモデルは? | トリガーが軽くて操作しやすいプラスチック製の軽量モデルがおすすめ。第一精工ガーグリップMCコンパクトが定番 |
| スケールの精度はどれくらい必要? | 趣味レベルなら±100g程度でも問題なし。大会・公式記録なら±20g以内の精度が必要 |
| グローブをしたまま使えるか? | モデルによる。購入前にトリガーサイズとグリップ形状を確認する。冬釣りが多い人は店頭で実際に試すべき |
| フィッシュグリップで魚は死なない? | 下顎のみを支点にして縦に持つと脊椎に負担がかかり内臓損傷のリスクがある。体を水平に支えるか、縦にする時間を最小限に |
| ランヤードは別に買う必要がある? | 製品によっては付属しない。磯・船釣りでは必ず取り付け、落下防止を徹底すること |
| 錆びてしまったらどうする? | 軽度ならサビ取り剤+防錆コーティングで対応可能。可動部が錆びてロック不良になったら安全のため買い換えが必要 |
まとめ——予算別おすすめ3選で迷わず選ぼう
フィッシュグリップは一度揃えれば数年以上使える投資効率の高い道具です。最後に予算別のおすすめを整理します。
- 3,000〜5,000円(入門・まず試したい): 第一精工「ガーグリップ MC コンパクト」。ほとんどのショアゲームに対応でき、操作性・コスパとも優秀。最初の一本として迷ったらこれを選べば間違いなし。
- 7,000〜10,000円(中級・長く使いたい): ダイワ「ワニグリップ MC」。アルミ製で錆びにくく、耐荷重30kgで青物まで対応。釣りの幅が広い中級アングラーに最適なバランスモデル。
- 15,000円以上(上級・本気で使いたい): シマノ「CT-981P」またはBODEアルミグリップ。スケール精度・剛性・耐久性がすべて高次元。大会参加や大型魚専門のアングラーはここから選ぶべき。
釣りの安全は道具から始まります。今まで素手で魚をつかんでいた方は、次の釣行前にぜひフィッシュグリップを一本用意してみてください。安全に、そして魚にも優しく——フィッシュグリップは釣り人としての成熟を示す道具でもあります。



