五島列島は長崎県の西端に位置し、九州本土から西に約100kmの東シナ海に浮かぶ群島です。福江島・久賀島・奈留島・若松島・中通島などの大島と、無数の小島・岩礁から成り立っており、総面積は約690kmにおよびます。島の周囲は対馬暖流(日本海流)が力強く流れており、この暖かく豊かな潮流が五島列島を日本有数の魚影の濃いフィッシングパラダイスへと育てています。
対馬暖流は中国大陸と九州の間(東シナ海)を北上し、対馬海峡を通って日本海に抜ける海流で、黒潮の分支です。この暖流がもたらす豊富なプランクトンと餌場が、クロ(メジナ)・ヒラマサ・マダイ・アオリイカ・カンパチ・イサキなど多種多様な魚を集めています。水温は冬でも14〜16℃を保ち、魚の活性が年間を通じて高いのが特徴です。
五島列島の磯は波が荒く潮通しが良いため、クロ(メジナ)のフカセ釣りで有名です。特に「クロ釣りの聖地」として全国から磯師が訪れ、シーズンには長崎・福岡・大阪・関東からもアングラーが集まります。一方、ヒラマサや大型マダイ・カンパチを狙う泳がせ釣りやジギングも盛んで、5〜10kgクラスのヒラマサが磯や船から上がることも珍しくありません。
上五島(中通島)と下五島(福江島)の違い
五島列島は大きく「上五島(かみごとう)」と「下五島(しもごとう)」に分けられます。上五島の中心は中通島(なかどおりじま)、下五島の中心は福江島(ふくえじま)です。それぞれ渡船のルートや対象魚種、アクセス方法が異なります。
上五島(中通島)は長崎市から北西に位置し、有川港を拠点とします。対馬暖流の影響を強く受ける外洋に面した磯が多く、ヒラマサ・クロ・イシダイが主なターゲットです。波の荒い瀬場(離島の磯)も多く、磯釣り上級者向けのポイントが豊富です。下五島(福江島)は五島列島の南西端に位置し、福江港を拠点とします。こちらは比較的穏やかな内湾もあり、マダイやアオリイカ・チヌの釣り場も多いため、初中級者にも取り組みやすい環境です。
| エリア | 中心島 | 主なターゲット | 難易度 | アクセス(長崎市から) |
|---|---|---|---|---|
| 上五島 | 中通島 | クロ・ヒラマサ・イシダイ | 中〜上級 | 高速船 約90分(ジェットフォイル) |
| 下五島 | 福江島 | クロ・マダイ・アオリイカ・チヌ | 初〜中級 | 高速船 約85分・フェリー 約3時間 |
| 小値賀島(おぢかじま) | 小値賀島 | ヒラマサ・クロ・アオリイカ | 中〜上級 | フェリー 約3時間(佐世保港から) |
| 宇久島 | 宇久島 | ヒラマサ・クロ・イシダイ | 上級 | フェリー 約4時間(佐世保港から) |
五島列島の主要釣りスポットと狙える魚
福江島の主要ポイント:大瀬崎・黒瀬・姫島
福江島の最南端に位置する大瀬崎(おおせざき)周辺は五島随一の磯釣りポイントです。大瀬崎灯台を見渡す断崖絶壁の磯は潮通しが抜群で、クロ(メジナ)の50cmオーバーが連発することもある名磯地帯です。渡船で渡る離れ磯もあり、特に「沖の瀬」「大瀬」は大型クロの実績が高いポイントです。
黒瀬(くろせ)は福江島北部の岬状の磯で、ヒラマサの魚影が濃いことで知られています。春(4〜6月)と秋(9〜11月)のヒラマサシーズンには5〜10kgクラスが磯際でヒットすることがあり、ショアジギングやノマセ(泳がせ)釣りで狙う釣り師が多く訪れます。水深は磯際で急に10〜15mまで落ちており、潮流が速いため仕掛けの流し方にはテクニックが必要です。
姫島周辺は福江島から渡船で約20〜30分の無人島で、アオリイカの泳がせ釣り・エギングのメッカです。秋(9〜11月)には1〜2kgのアオリイカが数多く釣れ、春(3〜5月)には産卵前の親イカ(3〜4kg)も上がります。イカ専門の釣り師に人気のスポットです。
中通島の主要ポイント:赤島・頭ヶ島・奈留島
中通島の北西に位置する赤島(あかしま)は上五島を代表するヒラマサの磯です。外洋に直接面した荒磯で、春のヒラマサシーズン(4〜7月)には10kgを超える大型が上がることもあります。渡船料金は往復5000〜7000円程度で、乗船時間は中通島の有川港から約40〜60分です。波が高い日は渡れないことがあるため、事前に渡船屋に気象確認をするのが必須です。
頭ヶ島(かしらがしま)は中通島の東側に位置し、外洋と内湾の潮が交わるポイントです。クロ(メジナ)の大型が多く、40〜50cmのメジナが頻繁に上がります。11月〜2月の「寒グロ」シーズンが最盛期で、水温が下がり脂の乗った良型が狙えます。クロのフカセ釣りには4〜5号の磯竿とウキ釣り仕掛けが基本です。
奈留島(なるしま)は上五島の南部に位置し、マダイ・チヌ・アオリイカの釣り場として人気があります。港周辺でもアジやメバル・カサゴが狙え、初心者でも楽しめるポイントがあります。奈留島には民宿もあり、1泊2食付きで7000〜10000円程度で宿泊できます。
五島列島の主要ターゲット魚と釣り方
| ターゲット | 最盛期 | 主な釣り方 | 期待サイズ | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| クロ(メジナ) | 10月〜3月(寒グロ最盛) | ウキフカセ | 35〜55cm | 中級 |
| ヒラマサ | 4〜7月・9〜11月 | ショアジギング・泳がせ | 5〜15kg | 上級 |
| マダイ | 4〜6月・10〜12月 | フカセ・エビ撒き・タイラバ(船) | 40〜80cm | 中級 |
| アオリイカ | 9〜11月・3〜5月 | 泳がせ・エギング | 0.5〜3kg | 初〜中級 |
| カンパチ | 7〜10月 | ジギング・泳がせ(船) | 3〜10kg | 中〜上級 |
| イシダイ | 6〜10月 | イシダイ釣り(固定仕掛け) | 40〜70cm | 上級 |
クロ(メジナ)のフカセ釣り:五島の主流スタイル
五島列島でクロ(メジナ)を狙うフカセ釣りは、全国から釣り師が集まるほど有名です。特に「寒グロ」と呼ばれる10月〜3月のシーズンは魚が脂を蓄えて身が引き締まり、最高の食べ頃でもあります。ターゲットの標準サイズは35〜45cmですが、50cmを超える「尺五寸(しゃくごすん)クロ」も夢ではありません。
タックルは磯竿1.5〜2号・5〜5.3mとスピニングリール3000番が基本です。ラインはナイロン2〜3号、ハリスはフロロカーボン1.5〜2.5号(大型狙いなら3〜4号)を使用します。コマセ(撒き餌)はオキアミ3kgにグレパワーVSPやグレパワー遠投などの配合材を混ぜるのが定番です。五島では潮流が速いため、重めのウキ(2B〜3B)を使うか、沈め釣り(仕掛けを沈めて流す)を駆使することが必要です。
ヒラマサ狙いのショアジギング・泳がせ釣り
五島のヒラマサはショアジギングで狙うことができ、磯からのキャスティングで8〜12kgクラスが上がることもあります。タックルはジギングロッド(ショアジギング対応 Mh〜H)10〜11ft、大型スピニングリール(ダイワ 5000〜6000番クラス)、PEライン3〜5号、フロロリーダー14〜20号が目安です。メタルジグ60〜130gをサラシ(白波)の中に投入して高速巻きでアピールするのが基本です。
泳がせ釣りでもヒラマサが狙えます。現地でアジやサバを調達し、大型の磯竿(5号5.3m)に大型スピニングリール5000番、PE4号のタックルで磯際を泳がせます。ヒラマサは根に突っ込む習性が強いため、ドラグは締め気味(5〜6kg程度)で魚の動きを止める力強いファイトが必要です。初めての人は地元の渡船屋や釣具店でアドバイスをもらうことを強くおすすめします。
渡船情報:費用・ルール・事前準備
五島列島の渡船システムと料金相場
五島列島の磯釣りは「渡船(とせん)」と呼ばれる小型漁船で磯に渡ります。渡船屋(渡船業者)は各島の港に数社あり、事前予約が必須です。年末年始・ゴールデンウィーク・シルバーウィークなどの連休は早期満船になるため、1〜2ヶ月前の予約が望ましいです。
| 渡船屋(島) | 営業エリア | 料金(1名往復) | 連絡先(目安) |
|---|---|---|---|
| 大瀬崎渡船(福江島) | 大瀬崎・黒瀬周辺 | 4000〜6000円 | 0959-72-XXXX(要確認) |
| 有川渡船(中通島) | 赤島・頭ヶ島周辺 | 5000〜7000円 | 0959-42-XXXX(要確認) |
| 小値賀渡船 | 小値賀島周辺離島 | 4000〜6000円 | 0959-56-XXXX(要確認) |
渡船には以下の持ち物・ルールが求められます。ライフジャケット(タイプA必須・自分で用意)、磯靴(スパイク付き)、撒き餌・釣り道具一式は自分で準備します。ゴミは必ず持ち帰り、磯を汚さないことがルールです。また、波が高い日(波高1.5m以上の目安)は渡磯中止になることがあります。事前に天気予報と渡船屋への確認が欠かせません。
長崎市へのアクセスと五島列島への行き方
東京・大阪・浜松から長崎へのアクセス
浜松・静岡から長崎への主なアクセス方法は以下の3通りです。最も一般的なのは長崎空港へのフライトです。東京(羽田)から長崎は約1時間45分で、ANA・JALが運航しています。大阪(伊丹)からは約1時間です。浜松からは名古屋または東京経由が便利で、所要時間は乗り継ぎ含め約3〜4時間です。
長崎空港から長崎市内へはリムジンバスで約40分(800円)、またはタクシー(4000〜5000円)です。長崎港(大波止ターミナル)から五島列島の船が出港するため、長崎市内に1泊してから早朝の船に乗るのが定番の旅程です。
長崎港から五島列島への高速船・フェリー
長崎港(長崎ターミナル)から五島列島への船便は大きく「高速船(ジェットフォイル)」と「フェリー」の2種類があります。九州商船と五島産業汽船が運航しており、高速船は福江島まで約85分(片道5000円前後)、フェリーは約3時間(片道3000円前後)です。釣り道具(クーラーボックス・大型バッグ)は手荷物として持ち込めますが、フェリーの方が荷物の取り扱いが楽です。大量の撒き餌(オキアミ3〜6kg程度)は匂いが強いため、密封してフェリーの荷物置き場に置くのがマナーです。
上五島(中通島・有川港)への便は長崎港から約90〜150分。佐世保港からも上五島へのフェリーがあり(約3時間)、佐世保経由の場合は博多から佐世保へのアクセスが便利です。旅程によって長崎発か佐世保発かを選んでください。
磯釣りに必要な装備と難易度
磯釣りに必須の安全装備
五島列島の磯釣りは潮通しが良い反面、波が高く足場が滑りやすい危険な環境です。以下の安全装備は絶対に欠かせません。ライフジャケット(桜マーク付きのタイプA)は遊漁船法で義務付けられており、着用していない場合は乗船できない渡船屋もあります。磯靴はスパイク付きのフェルトソールが最適で、ラジアルソールは滑りやすく危険です。替え服・防水バッグも必須で、波しぶきや急な雨に備えましょう。
初めて磯釣りをする場合は、地元の釣り具店(福江島の釣具屋など)で現地情報を聞き、安全なポイントを教えてもらうのが一番安全です。「渡磯券(としょうけん)」を購入する際に渡船屋が磯の状態を説明してくれます。単独での磯釣りは危険なため、必ず2人以上で渡るようにしてください。
長崎市周辺の釣りスポット(五島以外)
長崎港・野母崎の釣り場
長崎市内からアクセスできる釣り場も豊富です。長崎港周辺の岸壁では、アジ・メバル・カサゴ・ウミタナゴが手軽に釣れます。特に夜のアジングやメバリングでは良型が釣れることがあり、観光旅行の合間に楽しめるポイントです。
野母崎(のもざき)は長崎市の最南端に位置し、長崎市街地から車で約40分です。野母崎の磯はクロ(メジナ)・カサゴ・アオリイカの実績が高く、アクセスしやすいことから地元アングラーに人気があります。野母崎海岸公園周辺には無料の堤防釣り場があり、家族連れでも楽しめます。釣れる魚はサバ・アジ・イワシの青物から、チヌ(黒鯛)まで多彩です。アオリイカのエギングは秋(9〜11月)が最盛期で、1〜2kgクラスがヒットします。
五島列島の釣り旅行・宿泊情報
宿泊先と釣りプランの組み方
福江島には「つばき宿」「五島第一ホテル」「民宿しまや」など複数の宿泊施設があります。釣り宿(民宿)タイプの宿なら、釣り客向けに活魚を保管するバッカンの貸し出しや、釣った魚を調理してくれるサービスを提供しているところもあります。1泊2食付きで7000〜12000円が相場です。
五島釣り旅行の標準的な旅程は「1泊2日の磯釣り」プランです。初日早朝の便で渡り、その日の午前中に渡磯→夕方まで釣り→島の民宿泊。2日目早朝から再び渡磯→昼に撤収→夕方の便で長崎市に戻る、というスケジュールです。2泊3日ならより余裕を持って釣りを楽しめます。
五島列島の釣り情報は「五島市観光情報サイト」や地元の釣具屋のブログが参考になります。現地の釣り具店は福江島に数店舗あり、最新の釣果情報やコマセ・エサの購入が可能です。出発前に電話で確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q: 五島列島への釣り旅行は初心者でも大丈夫ですか?
A: 磯釣りは安全面で注意が必要ですが、福江島の港周辺の堤防や波の穏やかなポイントであれば初心者でも楽しめます。アジ釣りやアオリイカのエギングなら堤防から十分に楽しめ、釣り慣れていない方にもおすすめです。磯への渡磯(沖の磯に渡ること)はライフジャケットと磯靴が必須で、初心者だけで渡ることは避け、必ず経験者と同行してください。地元の釣具屋や渡船屋に相談すると適切なポイントを教えてもらえます。
Q: 五島列島の釣りに最適な季節はいつですか?
A: ターゲットによって異なりますが、クロ(メジナ)は10〜3月の「寒グロ」シーズン、ヒラマサは4〜7月と9〜11月、アオリイカは9〜11月と3〜5月が最盛期です。年間を通じて何かしら魚が釣れますが、気候が穏やかで多くのターゲットが狙える春(4〜6月)と秋(9〜11月)が特に人気シーズンです。冬は荒天が多く渡磯中止になることもありますが、寒グロの大型が狙えるため磯師にとっては特別なシーズンです。
Q: 五島への釣り旅行の総費用はどれくらいですか?
A: 東京発で1泊2日の標準的な釣り旅行の費用は以下の通りです。往復航空券(羽田〜長崎):20000〜30000円、長崎〜福江島の船代(往復):10000〜12000円、渡船代(1日往復):5000〜7000円、宿泊1泊2食:8000〜12000円、釣り道具(エサ・仕掛け・コマセ):3000〜5000円。合計で概ね46000〜66000円程度が目安です。釣り友達と複数人で行くと交通費の分担ができてコストを下げられます。
Q: 渡船をキャンセルした場合、キャンセル料はかかりますか?
A: 渡船屋によって異なりますが、天候による中止はキャンセル料なしが一般的です。一方、釣り客都合のキャンセルは前日以降から30〜50%のキャンセル料が発生する場合があります。予約時にキャンセルポリシーを確認してください。台風や強風で渡磯中止になるリスクを考え、旅程は「1泊余分に取る」バッファを設けておくと安心です。
Q: 五島列島で釣った魚を自宅に持ち帰ることはできますか?
A: できます。クーラーボックス(35〜45Lサイズ推奨)に氷を詰めて持ち帰ります。飛行機の場合は「生魚」として手荷物として預けられますが、事前に航空会社に確認してください。通常は釣った魚を丸ごと入れたクーラーボックスを手荷物として預けることができます。長崎市内で氷の補充が可能です(コンビニや釣具店)。五島からの便の所要時間は90分以内なので、適切に氷詰めしておけば鮮度は問題ありません。
Q: 五島列島で釣り禁止のエリアはありますか?
A: 漁港内や養殖施設周辺は釣り禁止の場所があります。また、一部の磯や離島は私有地の場合があるため、必ず渡船屋の案内に従ってください。長崎県は一部エリアでアワビ・サザエなどの密漁取締りを強化しており、これらを採捕することは絶対に禁止です。ルール・マナーを守り、地元の漁業者や渡船屋と良い関係を築くことが長期的に釣り場を守ることにつながります。



