クーラーボックスの魚臭が取れない原因と落とし方|生臭さは酸・カビは重曹という使い分けと乾燥の順序

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クーラーボックスの魚臭が取れない原因と落とし方|生臭さは酸・カビは重曹という使い分けと乾燥の順序

クーラーボックスの魚臭が取れないのは、洗剤の力が足りないからではなく、においの正体を取り違えているからです。魚の生臭さの主因であるトリメチルアミンはアルカリ性の物質なので、同じくアルカリ性の重曹やオキシ系(酸素系漂白剤)では中和の力がほとんど働かず、洗っても生臭さだけが残ります。逆に、カビやぬめり側の汚れにクエン酸を吹いても落ちません。原因を「生臭さ」と「カビ・ぬめり」の2系統に切り分け、酸とアルカリを別々の工程で使い、最後に完全乾燥まで持っていく——これが取れない臭いを落とす順序です。

臭いが取れない理由|においの正体が2種類あることを知らない

「中性洗剤で洗った」「重曹をスプレーした」「消臭剤を入れて閉めておいた」。それでも蓋を開けた瞬間にあの臭いが立ち上がるとき、ほぼ例外なく起きているのは薬剤の選択ミスです。クーラーボックスの中に発生するにおいは、性質がまったく違う2系統が同居しています。

ひとつめが、魚由来の生臭さです。宝酒造の調味料技術解説や九州大学の魚食に関する解説によれば、海産魚が浸透圧調節のために体内に持つトリメチルアミンオキシドが、死後に微生物の働きで還元分解されてトリメチルアミンになります。これが揮発性のアルカリ性物質で、あの独特のにおいの主犯です。ルアマガプラスも、魚に付着した微生物が繁殖する過程でアルカリ性のトリメチルアミンが発生する、と同じ機序を挙げています。

ふたつめが、カビ・ぬめり・腐敗の系統です。釣具のイシグロの手入れ解説では、クーラーボックスの臭いの原因を「魚の血液や海水、汚れに雑菌が増殖したもの」としています。こちらは魚油や体液の油汚れ、雑菌のぬめり、パッキンに根を張った黒カビが混ざった複合臭で、性質としては酸性寄りの汚れとカビが中心です。

ここが分岐点です。アルカリ性の生臭さには酸性の薬剤(クエン酸・酢)が効き、酸性寄りの油汚れやぬめりにはアルカリ性の薬剤(重曹・酸素系)が効きます。世間で一番よく見かける「重曹で洗えばいい」という通説は、油汚れとぬめりには正しいのに、生臭さに対しては中和の力が桁違いに弱く、実用上は的外れなのです。しかも両方を同時に使うと、酸とアルカリが打ち消し合ってただの塩水に近づき、洗浄力も消臭力も落ちてしまいます。良かれと思って「重曹もクエン酸も入れた」人ほど、においが取れずに悩む構図になっています。

症状(においの出方)正体効く側やってはいけないこと
魚の生臭さ。蓋を開けた瞬間ツンと来るトリメチルアミン(アルカリ性・揮発性)酸性側。クエン酸水・酢の希釈液で中和重曹や酸素系だけで済ませる。酸と塩素系の同時使用
ぬるっとする。指で拭くと油膜が残る魚油・体液由来の汚れと雑菌のぬめりアルカリ性側。中性洗剤で落とし切り、重曹水で仕上げ酸だけで追い打ちする。すすぎ不足で膜を残す
カビ臭い。パッキンや隅に黒い点カビ(真菌)の菌糸と胞子消毒用エタノールで拭き取り。残るなら酸素系。最終手段が塩素系酸性剤と同時に使う(塩素ガス発生の危険)
ドブ臭い。水抜き栓や継ぎ目のあたりが臭う抜け切らなかった残留水の中で増えた雑菌分解して内部まで洗浄し、完全乾燥まで持っていく表面だけ拭いて蓋を閉める
洗ったのに翌週また臭う乾燥不足。または継ぎ目・内部への水の浸入上蓋を外して逆さ排水。長時間の陰干し。パーツ交換湿ったまま密閉保管する

この表の使い方は単純です。まず自分のクーラーボックスがどの行に当てはまるかを決め、その行の薬剤だけを使う。複数該当するなら、工程を日ごとに分けて順番にやる。同時にやらないことが、そのまま失敗回避になります。道具全体の手入れの位置づけについては釣り具メンテナンス完全ガイド|ロッド・リール・ライン・フック・クーラーの手入れと保管方法も合わせて確認しておくと、釣行後ルーティンの中にクーラー洗浄を組み込みやすくなります。

生臭さ=トリメチルアミン|酸(クエン酸・酢)で中和する手順

生臭さの化学的な仕組みは単純です。アルカリ性のトリメチルアミンに酸を合わせると中和が起き、揮発しにくい塩に変わります。においは「鼻に届く分子が揮発すること」で成立しているので、揮発しなくなれば臭わなくなる、という理屈です。同じ原理を手の生臭さに適用した話は釣った後の手の生臭さが石鹸で落ちない理由|酸とステンレスで消す正解で詳しく扱っているので、化学の背景を知りたい方はそちらを参照してください。ここではクーラーボックス側の実務に絞ります。

まず公式手順で土台を作る

いきなり酸を吹いても効きません。表面に油膜とぬめりが残っていると、酸が臭いの元まで届かないからです。ダイワの公式アフターサービスであるSLP PLUSの解説では、基本は真水での流水洗浄とされ、上蓋からシャワーをかけて汚れと塩を洗い流し、汚れが目立つ場合は中性洗剤を希釈してスポンジで洗う——ここまでが公式の標準手順です。釣具のイシグロも同じ順序を採り、水抜栓を外して大まかな汚れと砂を流し、中性洗剤を含ませたスポンジで内外を洗い、すすいだあとはタオルやウエスで全体の水滴を拭き取る、と明記しています。この土台を飛ばさないことが第一条件です。

酸で中和する

中性洗剤の工程まで終わったら、酸性の液を作ります。公開されている手順で共通しているのは、酢なら水で2倍程度に薄める(水と酢を1対1程度)、クエン酸なら水100ミリリットルに小さじ1杯程度を目安に溶かす、という濃度感です。これをスプレーで庫内全体に吹き付け、30分から1時間ほど置いてから拭き取るか、真水で流します。においが強く残る個体には、ルアマガプラスが挙げている漬け置き方式が効きます。クーラーボックスに水を張ってクエン酸を溶かし、数時間放置してから内部をしっかり水で洗い流す、という手順です。

注意したいのが酢のにおい残りです。ルアマガプラスも、酢は庫内ににおいが移る可能性があるため濃度を調整するなどの工夫がいる、と釘を刺しています。においに敏感な方や、食材も入れる兼用ボックスなら、においが残りにくいクエン酸のほうが扱いやすい選択になります。

最後に酸を残さない

酸の工程で最も重要なのは、終わったあとに真水で徹底的にすすぎ切ることです。理由はふたつあります。ひとつは、酸が残ったまま次にアルカリ性の薬剤を使うと打ち消し合って無駄になること。もうひとつは——こちらが本命ですが——酸が残った状態で塩素系漂白剤に進むと、有毒ガスが発生する危険があることです。これについては次の章で改めて扱います。

カビ・ぬめり=アルカリ側で落とす|重曹・酸素系の使い方

重曹は生臭さの中和には力不足ですが、無用の長物というわけではありません。弱アルカリ性の重曹は、酸性側の汚れである油汚れやぬめりを中和し、吸湿性でにおい分子を吸着します。使い方の目安は、水100ミリリットルに小さじ1杯程度を溶かした重曹水をスプレーするか布に含ませて庫内を拭き、30分から1時間ほど置いてから水でしっかりすすぐという流れです。この分量は守ってください。重曹が水に溶ける量は20度で100ミリリットルあたり10グラム弱しかなく、大さじ1杯のように入れすぎると溶け残って庫内に白い粉が残り、スプレーのノズルも目詰まりします。濃くすれば効くという性質のものではありません。イシグロは、乾燥後に重曹水をスプレーして防臭加工とする使い方も勧めています。つまり重曹の出番は「油とぬめりの除去」と「乾いた庫内の防臭仕上げ」であって、生臭さの中和ではありません。

黒カビが出ているとき

パッキンや隅に黒い点が出ている場合は、カビ側の処理に切り替えます。段階を踏むのが安全です。

第1段階は消毒用エタノールでの拭き取りです。水分をほとんど残さずに済むため、ポリプロピレンやポリエチレン製の庫内やゴムパッキンには比較的使いやすく、軽度のカビ臭ならこれで収まることがあります。ただし、樹脂全般に安全という意味ではありません。国民生活センターは2021年4月8日、「アルコール消毒で合成樹脂製のドアノブが破損」(相談解決のためのテストからNo.153)として、アクリル樹脂製のドアノブに亀裂が入った事例を公表しています。アルコールに弱い樹脂ではソルベントクラック(溶剤が浸透して分子間の剥離が進み、ひび割れに至る現象)や白化が起こり、アクリル、ポリスチレン、AS樹脂などがこれに該当します。クーラーボックスも、外殻がポリプロピレンやポリエチレンだからといって全部品が同じ素材とは限らず、ハンドル、ロック爪、投入口の透明な窓、ヒンジまわりには別の樹脂が使われていることがあります。素材が確認できない部品には使わないか、必ず目立たない場所で試してから広げてください。第2段階が酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム系)で、塩素系ほど漂白力は強くないものの、塩素臭が苦手な場合の選択肢になります。取り外せるパッキンなら、酸素系漂白剤を溶かした40度から50度程度のぬるま湯に30分ほどつけ置きし、よく洗い流して乾かす——これが一般的な使い方です。

第3段階が塩素系漂白剤ですが、これは最終手段です。プラスチックやゴムを劣化させるリスクが指摘されており、クーラーボックスへの常用は勧められません。使うとしても、ジェルタイプをパッキンの黒カビにだけ塗布するなど、範囲を限定するのが現実的です。屋外や換気の良い場所で、ゴム手袋を着用し、目立たない場所で試してから広げてください。

お湯の温度に上限がある

酸素系漂白剤は温度が高いほど反応が活発になりますが、クーラーボックスでは温度を上げすぎてはいけません。熱湯は本体の変形につながる恐れがあり、40度から50度程度までにとどめるのが安全側の判断です。断熱材を樹脂の外殻と内殻で挟む構造上、外側だけ熱で伸びると密着が崩れ、保冷性能そのものを損ないかねません。「におい取りのために熱湯を張る」は、やってはいけない部類の我流です。

やってはいけない組み合わせと、素材を痛める薬剤

【危険・必読】クエン酸や酢などの酸性洗浄剤と、塩素系漂白剤を混ぜてはいけません。有毒な塩素ガスが発生し、家庭の掃除中に死亡事故も起きています。同時使用は絶対に避けてください。

塩素ガスは強い刺激臭を持ち、吸い込むと喉・目・肺を刺激し、濃度が高い場合は中毒症状や呼吸困難を引き起こします。消費者庁告示の雑貨工業品品質表示規程では、塩素ガス発生試験で1.0ppm以上のガスが発生する製品に「まぜるな危険」の表示を義務づけています。国民生活センターも、住宅用塩素系洗浄剤の混合による事故について繰り返し注意を呼びかけています。ガスが発生したらその場を離れ、吸い込んでしまった場合は医師に相談してください。

クーラーボックスの掃除でこの事故が起きやすいのは、工程が連続するからです。生臭さのためにクエン酸を吹いた直後、「まだカビ臭いから」と塩素系に手を伸ばす。あるいはクエン酸をすすぎ切らないうちに塩素系を投入する。密閉性の高い箱の中で反応が起きれば、蓋を開けた顔面にガスが向かいます。順序は次のとおり固定してください。

酸で処理する→真水で完全にすすぎ切る→乾かす→どうしても必要なら日を改めて塩素系を使う。同じ日に両方をやらない、これだけで事故の芽はほぼ潰せます。なお、重曹とクエン酸を同時に使うのは危険ではありませんが、互いに中和して洗浄力・消臭力がほぼゼロになるため無意味です。

薬剤・手法クーラーボックスでの扱い理由
中性洗剤基本。メーカー公式が案内する標準手順樹脂・ゴム・パッキンへの負担が小さく、油汚れも落ちる
クエン酸・酢(希釈)生臭さ専用。使用後は必ず完全にすすぐアルカリ性のトリメチルアミンを中和して揮発を抑える
重曹・酸素系漂白剤油汚れ・ぬめり・軽度のカビ。ぬるま湯まで弱アルカリで酸性汚れを中和。高温は本体変形の恐れ
塩素系漂白剤最終手段。範囲を限定し、単独・別日・換気・手袋酸性剤との併用で塩素ガス。樹脂やゴムの劣化リスク
高温の湯(目安として50度超)避ける。つけ置きは40度から50度程度まで外殻の変形、断熱構造の密着崩れにつながる
研磨剤・メラミンスポンジ・金属たわし内面には使わない微細な傷に汚れと菌が入り込み、においが再発しやすくなる
強アルカリ洗浄剤・溶剤系クリーナー使わない樹脂の白化・ひび割れ、パッキンのゴム痩せの原因になる

見落とす溜まり場|パッキンの溝・水抜き栓・ハンドル取付部

ここからがクーラーボックス固有の話です。庫内の平らな面をいくら磨いても臭いが消えないとき、においの発生源は「洗っていない場所」に残っています。クーラーボックスは箱ではなく、蓋・パッキン・ヒンジ・水抜き栓・ハンドル・投入口といった部品の集合体です。汚れは必ず段差と隙間に溜まります。

パッキンの溝

最大の容疑者が蓋のパッキンです。取り外せる構造なら外して、パッキン本体だけでなく、パッキンが収まっていた溝の中まで洗います。歯ブラシで溝をなぞると、黒っぽいぬめりが出てくることが珍しくありません。ここが臭っていると、洗浄直後は無臭に感じても、蓋を閉めて数日置いた瞬間ににおいが庫内へ戻ります。パッキンはゴム製でカビが根を張りやすい部位でもあるため、カビ側の処理を優先します。

水抜き栓とその内部

次が水抜き栓です。栓そのものを外して洗うのは当然として、見落とされるのが穴の周辺と、栓の内側にある水路です。潮氷を排水した後、この経路には必ず水が残ります。歯ブラシで穴の周囲と栓の溝を洗い、洗浄後は栓を外したままにして水を抜き切ってください。SLP PLUSの解説でも、水栓に使われるパッキンの消耗が水漏れの原因になると説明されており、この部位は汚れと劣化の両方が集中します。

ヒンジ・ハンドル取付部・投入口

ヒンジ(蝶番)の可動部、ハンドルやショルダーベルトの取付金具まわり、ロック爪の付け根、そして投入口(小窓)付きモデルならその蓋の裏側とヒンジ部。いずれも構造上、水と汚れが入って出てこない形をしています。ゴムの滑り止め部分はブラシでこする、というのがイシグロの手順にも明記されています。

継ぎ目の中に入った水

やっかいなのが、外殻と内殻の継ぎ目から入り込んでしまった水です。イシグロは「継ぎ目に水を強く当てないように気を付けます」と、洗浄時の当て方そのものに注意を促しています。すでに入ってしまった場合、SLP PLUSは、上蓋を外して箱を逆さにし、入り込んだ水を排水して乾燥させる必要がある、と説明しています。この状態を放置すると、断熱層の周辺で水が腐り、洗っても洗っても数日で臭いが戻る慢性化パターンに入ります。「表面はきれいなのに臭う」個体は、まずここを疑ってください。

部位溜まるもの使う道具見落としのサイン
蓋のパッキンと溝ぬめり・黒カビ・魚の体液パッキンを外して歯ブラシ洗った直後は無臭。閉めて数日で復活する
水抜き栓・穴の周囲・水路残留した潮氷とその中の雑菌栓を外して歯ブラシ、流水下部から腐敗臭。栓のあたりだけ臭う
ヒンジ・ロック爪砂・鱗・血の乾いたもの細ブラシ、綿棒開閉時にジャリつく。黒い筋が残る
ハンドル・ベルト取付部海水と汗、そこに繁殖した菌ブラシ、外せるベルトは分離して洗う持ち手が近づくと臭う
投入口の裏・小窓のヒンジ投入時に飛んだ体液歯ブラシ、拭き上げ小窓を開けたときだけ臭う
外殻と内殻の継ぎ目侵入して抜けない水上蓋を外し逆さにして排水、長時間乾燥洗っても数日で臭いが戻る。振ると水音がする

落ちない色移り・シミは諦めていいか|保冷性能への影響

庫内の黄ばみ、魚の血が残した茶色いシミ、内側全体のくすみ。ここまでの工程をやり切っても、これらが残ることはよくあります。結論から言えば、においが消えているなら見た目のシミは無理に追わなくて構いません。

理由は、色の変化とにおいの発生源が別だからです。庫内の黄ばみは、汚れというより樹脂そのものの経年劣化であることが多く、汚れとして落とせる対象ではありません。血の色素沈着も同様で、有機物が分解されて色素だけが樹脂表面に残っている状態なら、においの元は既に無くなっています。「色が残っている=菌が残っている」ではないのです。

この切り分けの判断基準はシンプルです。乾燥させて丸1日置いてから蓋を開け、においが立たなければ処置は完了。においが立つなら、色ではなく前章の溜まり場か乾燥不足を疑い直す。この一点で判断してください。

シミ取りのために研磨する、オキシドールで漂白するといった手法も紹介されていますが、内面については慎重に考えるべきです。表面を荒らすと微細な傷に汚れと菌が入り込み、次からのにおい移りがむしろ悪化します。見た目のために将来の再発リスクを買う取引になりかねません。

保冷性能への影響と、寿命の見極め

色移りやシミそのものが保冷力を落とすことは基本的にありません。保冷性能を決めるのは断熱材と密閉性です。断熱材の劣化を見極めるポイントは、氷の持ちが目に見えて落ちたかどうか。逆に言えば、保冷力が保たれているなら、内側が多少みすぼらしくても道具としては現役です。

むしろ実害が出るのはパッキンの劣化です。ゴムが痩せて密閉が甘くなると、氷の持ちが落ちるうえ、隙間に汚れが入り込んでにおいも取れなくなります。ここで大事なのは、「臭いが取れない=買い替え」ではないということです。ダイワの公式アフターサービスであるSLP PLUSの案内では、クーラーボックスはボックス本体と断熱材を除いて、パッキン・投入口・水栓部など、ほとんどのパーツが供給可能とされています。シマノも公式のアフターサービスでパーツ注文の窓口を用意しています。パッキンと水抜き栓は消耗品であり、部品単位で交換できる前提で設計されているのです。

ただし部品供給には年限があります。販売店の案内では、各メーカーとも初回生産から6年程度はパーツ生産を行い、その後は徐々に供給が細っていくとされています(この供給方針や公式手順は2026年7月時点の公開情報に基づくもので、実際の在庫や取り扱いは最新の公式情報とお近くの販売店の案内が最優先です)。においとカビが慢性化した個体でも、パッキン交換という出口が残っているうちに手を打つのが得策です。

仕上げは乾燥が9割|開けて干す・立てる・乾燥剤の使い方

ここまでの薬剤の話は、正直に言えば全体の一部にすぎません。においが再発するかどうかを決めるのは、最後の乾燥です。水が残っていれば菌はまた増え、数日後には同じにおいが戻ります。

メーカー公式が示す乾燥の形は具体的です。SLP PLUSは、洗浄後は直射日光を避けた風通しの良い場所で乾かすこと、そして上蓋を外し、箱本体は逆さまにして、壁に斜めに立て掛けるようなかたちで乾燥させることを指定しています。イシグロの手順でも、風通しの良い日陰で十分に乾燥させ、水抜栓は外したまま、蓋が分離できるモデルは蓋も外して乾かす、とされています。

この形にはそれぞれ意味があります。上蓋を外すのは、蓋の裏とパッキン溝を空気にさらすため。逆さにするのは、庫内の底や継ぎ目に溜まった水を重力で落とすため。斜めに立て掛けるのは、開口部を床に密着させず空気を通すため。日陰を選ぶのは、直射日光による樹脂の劣化と変形を避けるためです。「蓋を開けて日向に置いておいた」は、乾きはしても本体を痛める置き方になります。

拭き上げてから干す

洗剤を十分にすすいだら、タオルで水滴を完全に拭き取ってから干す。この一手間で乾燥時間が大きく短縮します。特にパッキン溝、水抜き栓まわり、ヒンジは、乾いた布や綿棒で物理的に水を取ってから風に当ててください。

完全に乾くまで蓋を閉めない

乾燥途中で蓋を閉めるのが最悪手です。庫内は断熱構造ゆえに密閉性が高く、閉じた瞬間から湿気がこもり、カビの温床になります。保管時も蓋を少し開けたままにするか、パッキンを外した状態にして空気を出入りさせるのが定石です。乾燥剤を庫内に入れておく、小皿に入れた重曹を吸湿と防臭のために置いておく、といった方法も併用できます。イシグロの手順にある「乾燥後に重曹水をスプレーして防臭加工」も、この段階で行う仕上げです。

保管場所も臭いの原因になる

車のトランクに積みっぱなしにするのは避けたほうが賢明です。夏場の車内は高温になり、樹脂の劣化を早めるうえ、わずかな残留水と高温の組み合わせは菌にとって好条件になります。屋内の風通しの良い場所に、蓋を半開きにして置く。これが最も再発しにくい保管形です。

次から臭わせない運用|潮氷・ビニール・魚を直入れしない

最後は予防です。洗浄の手間は、そもそも汚さない運用でほぼ消せます。

魚を庫内に直入れしない

最も効果が大きいのがこれです。厚手のビニール袋や専用の魚袋に魚を入れてからクーラーへ収める。庫内に血・体液・ぬめりが直接触れなければ、においの元がそもそも付着しません。防臭素材の袋も市販されており、クリロン化成とルアマガのコラボによる釣り用の防臭袋は、一般的なポリ袋が結び目だけでなく袋の表面からもにおいを通すのに対し、袋全体からの臭気の漏れを抑える設計だと公表されています。血抜きを済ませた魚をキッチンペーパーや新聞紙で包んでから袋に入れると、体液の広がりをさらに抑えられます。

潮氷は現地で抜いて帰る

潮氷は魚を素早く冷やすうえで有効な手段ですが、魚の体液が溶け込んだ状態の水を自宅まで運ぶと、その間ずっと庫内が漬け込み状態になります。現場で十分に冷やし込んだうえで、帰路に入る前に水抜き栓から潮氷の水を抜き、魚はビニール袋に入れるか新聞紙で包んで、氷と一緒に持ち帰るのが定石です。このとき、温度が上がりやすい蓋の裏に魚が触れないようにしておくと安心です。潮氷そのものの作り方と使いどころは釣りのクーラーボックス選び・魚の持ち帰り方完全ガイド2026|保冷力・サイズ選びから潮氷の作り方まで初心者向け解説に、真夏に必要な氷の量については真夏の氷は容量×100gでは足りない|潮氷の量と1.5倍ルールにまとめてあります。海水を抜けば魚に冷たさが伝わる面積は減るので、冷やし込みが終わる前に抜いてしまうのは逆効果です。逆に、芯まで冷えたあとであれば、袋と氷で冷却を保ったまま汚れだけを減らせる——順序さえ守れば両立する、というのがここでの狙いです。

帰宅したその日に洗う

翌日に回すと、体液が乾いて樹脂に固着し、菌も一晩で増えます。釣行後の疲れた体で全工程をやる必要はありません。真水で流す、水抜き栓を開けたままにする、蓋を開けて立てかける——この3つだけでも当日中にやっておけば、翌日の本洗浄が格段に楽になります。逆に、蓋を閉めたまま一晩置くのが最も臭う運用です。

チェックの習慣を作る

釣行のたびにパッキンを外して溝を見る必要はありませんが、月に一度、あるいはシーズンの節目には分解して溝と水抜き栓を点検してください。汚れが浅いうちなら中性洗剤と歯ブラシで済み、酸も塩素系も出番がありません。においが慢性化してから薬剤に頼るより、圧倒的に手間が少なくて済みます。

クーラーボックスのにおいは、正体を2つに分けて、薬剤を混ぜず順序を守り、最後に乾かし切る。この3点さえ外さなければ、たいていの個体は元に戻ります。それでも戻らないなら、原因は薬剤ではなくパッキンか継ぎ目に入った水です。買い替えの前に、部品交換という選択肢が残っていることを思い出してください。なお本記事で挙げた薬剤の扱いや乾燥方法は2026年7月時点で公開されている各社の案内をもとにしています。実際の作業時は、お手持ちのモデルの取扱説明書と最新の公式情報、洗浄剤の製品表示を最優先で確認してください。

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