この記事の結論(3行)
1. 「何cmから持ち帰れるか」を決めているルールは4層あり、罰則があるのは主に①都道府県の漁業調整規則と②海区漁業調整委員会指示の2層だけです。
2. 意外なことに、規則が全長や体長の数値を持っている魚は非常に少なく、ブリの幼魚(モジャコ)とウナギがほぼ全国共通、あとは瀬戸内海のマダイと広島県のボラ・スズキ類くらいです。マダイ・クロダイ・アジ・カサゴに全国一律の法定サイズはありません(ただし瀬戸内海側には、まだい12cm・くろだい10cmといった局所的な数値があります)。
3. しかも同じ「15cm」でも、神奈川県は全長、鹿児島県は体長で測ります。基準を取り違えると同じ魚が合法にも違法にもなります。
秋の釣りシーズンが近づくと、クーラーボックスの中で必ず一度は迷います。「この1匹、持ち帰っていいサイズだろうか」。SNSでは「メバルは15cm以下はリリース」「ソゲは持ち帰るな」といった声が飛び交いますが、そのうちどれが法律で、どれがマナーなのかを説明できる人はほとんどいません。
この記事では、水産庁および北海道・茨城県・千葉県・神奈川県・静岡県・新潟県・兵庫県・岡山県・広島県・鹿児島県の公式資料を直接確認し、規則の条文に書かれている数値だけを早見表にしました。裏が取れなかった数値は行ごと落としてあります。ネット上でよく見る「あの県はマダイ15cm」といった記述のいくつかは、実際に規則を開くと存在しませんでした。
結論:規制は4層ある。自分の魚がどの層かを3秒で見分ける
「持ち帰っていいサイズ」を決めているものは、性質のまったく違う4つの層に分かれています。ここを分けずに議論するから、釣り場でも掲示板でも話がかみ合いません。
第1層:都道府県漁業調整規則の「体長等の制限」
各都道府県が漁業法にもとづいて定める規則です。「この大きさの水産動物を採捕してはならない」という禁止規定で、漁業者だけでなく遊漁者にも等しくかかります。違反すれば罰則があります。多くの県では第34条から第39条あたりに「体長等の制限」「全長等の制限」という条名で置かれています。瀬戸内海だけは、これに加えて国の省令である瀬戸内海漁業取締規則が重なります。
第2層:海区漁業調整委員会指示
都道府県に置かれた海区漁業調整委員会が、漁業法第120条にもとづいて出す指示です。規則が「一般的・固定的」なルールを担うのに対し、委員会指示は緊急的・補完的な措置として発動されます。ヒラメのように資源状況で変わりやすい魚種のサイズ規制は、規則ではなくこちらに出てくることが多いのが実務上のポイントです。しかも有効期間が1年単位で更新されるため、去年の情報がそのまま使えるとは限りません。
第3層:漁協・自治体・遊漁船の協力要請や推奨ルール
千葉県では、水産振興審議会の海面利用調整部会が地区ごとの推奨ルール一覧を公表しています。館山市の船形・西岬・相浜布良地区では「利用客が全長20cm以下のマダイ、全長30cm以下のヒラメを釣った場合は必ず再放流させる」と定められています。これは法令ではありませんが、その船に乗る以上は守るべき約束です。
第4層:釣り人の自主基準
法的な裏づけはゼロ。ただし規則に数値がない魚については、実質的にここしか判断材料がありません。
3秒判定フロー——釣った魚を前にしたら、この順で降りてください。(1)その魚は自分がいる都道府県の規則の表に載っているか。(2)載っていなければ、その海区の委員会指示に出ていないか。(3)それもなければ、乗っている船宿や地元の掲示にルールがないか。(4)どれもなければ自主基準の出番です。第1層と第2層に該当するかどうかだけは、必ず釣行前に調べておいてください。
【本表A】魚種×都道府県 採捕禁止サイズ早見表
各県の規則を実際に開いて、条文に数値が書かれているものだけを並べました。対象は釣り人が迷いやすい魚類の代表例に絞ってあり、貝類・甲殻類まで含めた各県の収載種を網羅したものではありません。ある県がこの表に出てこないのは「その県に制限がない」という意味ではなく、「この表では扱っていない」という意味です。空欄を埋めるための推測は一切していません。
| 都道府県 | 魚種 | 規則が使う基準 | 採捕できない大きさ | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | さけ・ます | 全長 | 20cm未満 | 通年 | 北海道漁業調整規則第39条 |
| 茨城県 | ひらめ | 全長 | 30cm未満 | 2026年4月1日から2027年3月31日まで | 茨城海区漁業調整委員会指示(第2層) |
| 茨城県 | うなぎ | 全長 | 23cm以下 | 通年 | 茨城県公表「海で釣りをするには」(茨城県海面漁業調整規則等) |
| 茨城県 | さけ・ます | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 茨城県公表「海で釣りをするには」(茨城県海面漁業調整規則等) |
| 千葉県 | ぶり(モジャコ) | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 千葉県漁業調整規則第37条 |
| 千葉県 | うなぎ | 全長 | 26cm以下 | 通年 | 千葉県漁業調整規則第37条 |
| 神奈川県 | ぶり | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 神奈川県漁業調整規則第38条 |
| 神奈川県 | うなぎ | 全長 | 24cm以下 | 通年(海面・内水面とも) | 神奈川県漁業調整規則第38条 |
| 静岡県 | ぶり | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 静岡県漁業調整規則第35条・36条・39条 |
| 静岡県 | うなぎ | 全長 | 13cm以下 | 通年 | 静岡県漁業調整規則第35条・36条・39条 |
| 新潟県 | うなぎ | 全長 | 40cm以下 | 通年 | 新潟県漁業調整規則第36条 |
| 兵庫県 | ぶり(もじゃこ) | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 兵庫県漁業調整規則第34条ほか |
| 兵庫県 | うなぎ | 全長 | 20cm以下 | 通年 | 兵庫県漁業調整規則第34条ほか |
| 兵庫県 | ぼら | 全長 | 20cm以下 | 4月1日から8月31日まで(淡路島沿海は4月1日から12月31日まで) | 兵庫県漁業調整規則 |
| 瀬戸内海(兵庫県・岡山県などが公表) | まだい | 全長 | 12cm以下 | 7月1日から9月30日まで | 瀬戸内海漁業取締規則第6条 |
| 岡山県 | うなぎ | 全長 | 20cm以下 | 通年 | 岡山県海面漁業調整規則第36条 |
| 岡山県 | あなご | 全長 | 15cm以下 | 通年 | 岡山県海面漁業調整規則第36条 |
| 岡山県 | めばる | 体長 | 7cm以下 | 通年 | 岡山県海面漁業調整規則第36条 |
| 広島県 | ぼら | 体長 | 15cm以下 | 2月1日から7月31日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | めなだ(しくち) | 体長 | 15cm以下 | 4月1日から10月31日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | すずき | 体長 | 10cm以下 | 3月1日から7月31日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | めばる | 体長 | 3cm以下 | 3月1日から9月30日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | さより | 体長 | 7cm以下 | 3月1日から9月30日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | このしろ | 体長 | 7cm以下 | 5月1日から9月30日まで | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 広島県 | うなぎ | 全長 | 30cm以下 | 通年 | 広島県漁業調整規則第35条・36条・40条 |
| 鹿児島県 | ぶり(もじゃこ) | 体長 | 15cm以下 | 通年 | 鹿児島県漁業調整規則第34条 |
| 鹿児島県 | うなぎ | 全長 | 21cm以下 | 通年 | 鹿児島県漁業調整規則第34条 |
この表を眺めて、多くの方が驚くはずです。ウナギの数値が県ごとにまったく違うのです。静岡県は全長13cm以下が禁止、兵庫県と岡山県は20cm以下、鹿児島県は21cm以下、茨城県は23cm以下、神奈川県は24cm以下、千葉県は26cm以下、広島県は30cm以下、そして新潟県は40cm以下。同じ35cmのウナギが、新潟県では採捕禁止の対象になり、表に挙げた他の県では対象外になります。これは各県が稚魚の遡上時期や資源状況に合わせて独自に線を引いた結果です。
もうひとつ重要なのは、マダイ・クロダイ・アジ・カサゴ・アイナメ・サワラといった人気魚種に、全国一律の法定サイズが存在しないことです。瀬戸内海のマダイに全長12cm以下・7月から9月という制限がありますが、これは瀬戸内海に限った国の省令であり、しかも12cmという数値は釣り人が実際に迷うサイズ帯とはかけ離れています。ヒラメについては規則ではなく委員会指示に出ている県が多く、地域差の実像はヒラメのリリースサイズは何cm?定番40cm以下と地域ルールを解説で地域別の早見表と、委員会指示と自主規制の強さの違いを整理しています。
地方ブロック別に読む:規制のかかり方はこう違う
瀬戸内海:国の省令が重なる唯一の海域
瀬戸内海に面する府県では、県の規則に加えて国の瀬戸内海漁業取締規則が適用されます。まだいの全長12cm以下・7月1日から9月30日という制限はこの省令によるもので、兵庫県も岡山県も自県の資料に同じ数値を掲載しています。加えて広島県は、ボラ・メナダ・スズキ・メバル・サヨリ・コノシロといった沿岸魚へ体長基準で細かく網をかけています。さらに同県の公表ページには、この県独自の表とは別に瀬戸内海漁業取締規則・広島県漁業調整規則にもとづく表が掲げられており、まだい12cm・くろだい10cm・くるまえび10cm・がざみ13cmという数値が並びます(この表は県ページ上では図版で示されているため、計測基準と禁止期間の詳細は県の水産課に確認するのが確実です)。岡山県海面漁業調整規則第36条にも、うなぎ全長20cm以下・あなご全長15cm以下・めばる体長7cm以下・くるまえび全長5cm以下・はまぐり殻長3cm以下という数値があります。
太平洋南岸:規則は薄く、委員会指示と船宿ルールが効く
千葉県・神奈川県・静岡県の規則を並べると、魚類のサイズ制限はブリの幼魚とウナギだけで、あとはイセエビ・クルマエビと貝類が中心です。裏を返せば、この海域で釣り人が実際に守っているマダイ20cm・ヒラメ30cmといった線は、規則ではなく第2層・第3層のルールだということになります。静岡県・浜名湖まわりの規制の全体像は2026年最新版|釣り人が知っておくべき漁業法・遊漁規制・禁止区域・サイズ制限まとめで、県の遊漁規制と浜名湖の特別ルール、違反した場合の罰則まで整理しています。
日本海側:魚類のサイズ規定がさらに少ない
新潟県漁業調整規則の体長等の制限は、うなぎ全長40cm以下とあわび殻長9cm以下の2行だけです。海面の魚類については、条文レベルのサイズ制限が事実上ないに等しい状態です。だからといって小型魚を持ち帰り放題という話ではなく、判断が完全に釣り人側に委ねられているということです。
北海道:対象が寒流性の資源に振り切っている
北海道はさけ・ますの全長20cm未満、ほっきがいの殻長7.5cm未満、ウニ2種の殻径、そしてケガニは雌の採捕禁止と雄の甲長8cm未満禁止、ハナサキガニは雌禁止と雄の甲幅8cm未満禁止という構成です。カニで雌雄を分け、甲長と甲幅を使い分けている点が本州の規則と大きく違います。遊漁者が使える漁具も竿釣・手釣・たも網(網口および網の長さの最長部が40cm未満のもの)・徒手採捕に限られており、他県より狭い設計です。
【本表B】計測基準の早見表——規則が採用する「ものさし」は9種類ある
ここが本記事の核心です。規則は魚介ごとに測る場所を変えており、その定義を知らないまま「15cm」だけを覚えても意味がありません。実際に条文および県の公表資料で使われていた基準を整理します。
| 基準 | どこからどこまで測るか | この基準を使っている実例 |
|---|---|---|
| 全長 | 口先(吻端)から尾びれの後端まで | ぶり、うなぎ、さけ・ます、まだい、ひらめ |
| 体長(魚類) | 口先から尾びれの付け根まで。尾びれの長さを含めない | 広島県のぼら・めなだ・すずき・めばる・さより・このしろ、鹿児島県のぶり |
| 体長(甲殻類) | 神奈川県・静岡県は「眼の付根から尾端まで」、鹿児島県は「眼窩後縁から尾節の末端まで」と条文で定義 | いせえび、くるまえび |
| 殻長 | 貝殻の長い方向の径 | あさり、はまぐり、あわび、とこぶし、みるくい、ほっきがい |
| 殻高 | 貝殻の高さ方向 | たいらぎ(神奈川県・千葉県)、さざえ(千葉県) |
| 殻蓋長径・殻蓋の径 | サザエの「ふた」の径。身の大きさではなく蓋を測る | さざえ(神奈川県・静岡県・兵庫県) |
| 殻径 | ウニの殻の直径 | えぞばふんうに、きたむらさきうに(北海道) |
| 甲長 | カニの甲羅の前後方向の長さ | けがに(北海道。雌は大きさに関係なく採捕禁止) |
| 甲幅・全甲幅 | カニの甲羅の左右方向の幅 | はなさきがに(北海道。雌は採捕禁止)、ガザミ(岡山県は全甲幅15cm未満を禁止。これは規則の条文ではなく岡山海区漁業調整委員会指示による) |
| 体重 | 重さ | まだこ(兵庫県は100g以下) |
同じサザエでも県によって測る場所が違う
計測基準がいかにバラバラかを示す最良の例がサザエです。
| 県 | 基準 | 採捕できない大きさ | 禁止期間 |
|---|---|---|---|
| 千葉県 | 殻高 | 7cm以下 | 6月1日から6月30日まで |
| 神奈川県 | 殻蓋長径 | 3cm以下 | 通年 |
| 静岡県 | 殻蓋の径 | 3cm以下 | 通年 |
| 兵庫県 | 殻蓋の径 | 2.5cm以下 | 通年 |
「7cm」と「3cm」では倍以上の差に見えますが、測っているものが殻全体と蓋という別物なので、そもそも比較できません。数値だけを転記した早見表がネット上に多いのは、この構造を理解しないまま表を作っているからです。
なお、サザエ・アワビ・イセエビ・ワカメ・タコなどは、多くの海域で第1種共同漁業権の対象になっています。サイズ以前に、漁協の組合員でない釣り人が採ること自体が漁業権侵害になり得ます。さらにアワビ・ナマコ・シラスウナギの3種は漁業法第132条の「特定水産動植物」に指定され、一般の人の採捕そのものが禁止されています。
イカの胴長とタコの重量
今回確認した10道県の漁業調整規則等の条文には、イカの胴長に関するサイズ制限は見当たりませんでした。アオリイカの新子を何cmから持ち帰るかは第4層の自主基準の世界です。判断の物差しについては【秋イカ】アオリイカ新子は何センチから持ち帰る?リリースサイズの目安が胴長で決める早見表と、そもそも法的な決まりがあるのかという論点をまとめています。タコについては兵庫県が体重100g以下を禁止しており、重量で線を引く珍しい例です。
メジャーの当て方で1cm変わる:測り分けの実務
全長と体長は数cm違う
全長は尾びれの先端まで、体長は尾びれの付け根までです。ブリの幼魚のように尾びれが大きく張り出した魚では、この差が全長の1割を超えることもあります。鹿児島県が「体長15cm以下のぶり」と定め、神奈川県・千葉県・静岡県・兵庫県が「全長15cm以下のぶり」と定めているのは、数値は同じでも実質的に鹿児島県の方が厳しいということです。自分の県の規則がどちらの語を使っているかは、必ず条文で確認してください。
「以下」と「未満」は境界が1個ずれる
見落としやすいのがここです。北海道は「さけ 全長20センチメートル未満」、千葉県は「ブリ 全長15センチメートル以下は採捕禁止」と書きます。「未満」なら、ぴったり20.0cmは適法。「以下」なら、ぴったり15.0cmは違法です。境界ぴったりの個体は、規則の語尾で結論が反転します。茨城県のヒラメも「全長30センチメートル未満」の禁止なので、ちょうど30cmは対象外という書き方です。
測るときの実務的な作法
- 魚は平らな面に置き、メジャーは魚体に沿わせず直線距離で測ります。曲げ尺で背中のカーブをなぞると、実際より長く出ます。
- 口は自然に閉じた状態にします。無理に開いて吻端を伸ばすのは論外です。
- 尾びれは自然な形のまま。全長規定の魚で尾びれをすぼめて長く見せるのは、自分に有利にするための操作です。
- 尾びれが欠けている個体や、尾を噛み切られた個体は、本来の全長より短く出ます。境界付近では「短く出る測り方」で判定して、それでも足りなければリリース——これが一番安全な運用です。
- 船上でメジャーが出せない状況を避けるため、ロッドのグリップやクーラーの内寸に基準位置をテープで印しておくと迷いません。
尾叉長という第3の基準について
魚のサイズには、口先から尾びれ中央のくぼみ(叉)までを測る「尾叉長」という基準もあり、資源研究や一部の大会規定で使われます。ただし、今回確認した都道府県漁業調整規則および瀬戸内海漁業取締規則の条文で採用されていたのは全長と体長の2つだけで、尾叉長は見当たりませんでした。大会や船宿の規定に「尾叉長」と書いてあった場合は、法令の基準とは別物だと認識してください。
「規則に数値がない魚」をどう決めるか
メバル・カサゴ・アジ・カワハギ・クロダイ。釣り人が最も頻繁に迷うこれらの魚には、ほとんどの県で法定サイズがありません。ここで注意したいのは、「規則に数値がないから小さくても持ち帰ってよい」でも「ネットで見た15cmが正解」でもないということです。
広島県の規則がメバルに与えている数値は体長3cm以下、岡山県でも体長7cm以下にすぎません。つまり法令は、メバルについて15cmリリースなどまったく求めていません。よく見かける「メバル15cm」は、資源への配慮から釣り人と地域が育ててきた自主基準であって、法令の写しではないのです。この区別を曖昧にしたまま他人を注意すると、根拠のない取り締まりごっこになります。
自主基準を自分で組み立てる4ステップ
- まず第1層と第2層を潰す。県の規則の表にその魚がいないか、海区の委員会指示に出ていないかを確認します。ここに載っていれば自主基準の議論は不要です。
- 同じ県の規則が他魚種に付けている水準を見る。広島県がスズキに体長10cm、ボラに体長15cmを設定しているように、規則の水準は「当歳魚を守る」という発想で組まれています。県が守ろうとしている段階を知る材料になります。
- 近隣の第3層ルールを借りる。千葉県の推奨ルールが遊漁船に対して全長20cm以下のマダイ、全長22cm以下のキンメダイ、全長30cm以下のヒラメの再放流を求めているように、地域の合意はどこかに文章化されています。乗る船宿の規定があるならそれが最優先です。
- 最後は「食べ切れる量と大きさ」で決める。三枚おろしにして食べるところがない大きさは、資源にとっても食卓にとっても損です。自分の中で1本の物差しを決め、その日の気分で動かさないことが実務上いちばん重要です。
リリースすると決めたなら、返し方の技術がそのまま生存率になります。キャッチアンドリリース完全攻略2026|釣った魚を生かして返すための正しい扱い方で、正しいリリース技術と弱った魚を戻す蘇生の手順を解説しています。せっかく規制を守っても、扱いが雑で死なせてしまっては意味がありません。
違反したらどうなるか:層ごとに重さがまったく違う
| 違反の種類 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 漁業調整規則の体長等の制限に違反 | 各都道府県の規則 | 県ごとに定めがある。例として神奈川県漁業調整規則第59条は6月以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金、またはその併科 |
| 海区漁業調整委員会指示に従わない | 漁業法第120条第11項・第193条 | 指示そのものに罰則はない。委員会の申請を受けて知事が裏付命令を出し、なお従わない場合に1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、または拘留もしくは科料 |
| 漁業権または組合員行使権の侵害 | 漁業法第197条 | 100万円以下の罰金(2020年12月1日施行の改正で20万円以下から引き上げ) |
| 特定水産動植物(アワビ・ナマコ・シラスウナギ)の採捕 | 漁業法第132条・第190条 | 3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金。個人に対する罰金としては最高額 |
| 船宿・大会の規定サイズ違反 | 契約・大会規程 | 法的な罰則はない。ただし記録の無効、下船、以後の乗船拒否などの措置はあり得る |
| 自主基準を下回るサイズの持ち帰り | なし | 法的な罰則はない |
ここで押さえておきたいのは、委員会指示は「違反した瞬間に罰金」ではないという構造です。指示自体には罰則がなく、知事の裏付命令を経てはじめて罰則が働きます。だからといって守らなくてよいわけではありません。委員会指示は漁業者と遊漁者の双方に向けて出されており、破る釣り人が増えれば、次に来るのは規則への格上げか釣り場の閉鎖です。
逆に、法定サイズを下回る魚を持ち帰ったことよりはるかに重いのが、漁業権侵害と特定水産動植物の採捕です。磯で見つけたサザエやアワビをつい採ってしまう行為は、サイズの問題ではなく罰金100万円あるいは3000万円のレンジに入る話です。シラスウナギについては2023年12月1日から特定水産動植物への指定が適用されています。
釣行前3分の確認手順
最後に、この記事を毎回読み返さなくて済むように、自分で調べる手順を残します。水産庁には全国の体長制限を集約した一覧表は存在しません。水産庁の「瀬戸内海漁業取締規則・都道府県漁業調整規則」のページにあるのは規則の例を示すPDFと漁具・漁法の索引だけで、魚種ごとの数値表は用意されていません。したがって、県ごとに自分で取りに行くしかありません。
- 都道府県名と「漁業調整規則 体長等の制限」で検索する。多くの県では水産課のページに「遊漁のルール」「海で楽しむ皆さんへ」といった見出しで表が置かれています。条名は県によって「体長等の制限」「全長等の制限」と揺れます。
- 規則本体の条文にも当たる。解説ページは要約されていることがあり、「全長」「体長」の別や「以下」「未満」の別が落ちている場合があります。例規集の条文まで確認できれば確実です。
- 海区漁業調整委員会のページを別に開く。ここは規則とは別ページです。「現在出ている委員会指示」の一覧に有効期間が書かれているので、自分の釣行日が期間内かも見ておきます。ヒラメなど魚類のサイズはここに出ていることが多いのが実情です。
- 共同漁業権の対象種を確認する。貝類・海藻・イセエビ・タコを狙うなら、サイズより先にこちらです。県のマップや漁業権一覧で対象種が公開されています。
- 遊漁船に乗るなら船宿の規定を聞く。第3層は現地でしか分からないことが多く、乗船前の一言が確実です。
あわせて、秋の釣行では安全装備の確認も同じ3分の中に入れてください。船釣りでは甲板上でのライフジャケット常時着用が求められますし、日没が早まる9月から11月は堤防でもヘッドライトと予備電池が必須です。持ち帰りサイズの判断は明るいうちなら簡単ですが、暗い足元でメジャーを当てる場面こそミスが起きます。
まとめ:数値ではなく「層」と「基準」を覚える
持ち帰りサイズをめぐる混乱の正体は、法令・委員会指示・地域ルール・自主基準という強さの違う4層が、同じ「何センチ」という顔をしてネット上に流通していることです。そして数値そのものよりも、全長なのか体長なのか、以下なのか未満なのかという基準の側に、判定を反転させる力があります。
覚えるべきは表の暗記ではありません。自分がよく通う都道府県の規則と、その海区の委員会指示。この2つのページをブックマークしておくこと。それだけで、クーラーの前で迷う時間はほぼ消えます。残りは、自分で決めた1本の物差しに従うだけです。
※本記事は2026年8月時点で各都道府県および水産庁が公開している資料にもとづいています。委員会指示は年度単位で更新され、規則も改正されます。実際の釣行前には必ず各都道府県の最新の公表内容をご確認ください。



