東京湾は神奈川県・東京都・千葉県に三方を囲まれた「陸封湾(半閉鎖的な湾)」です。湾の出入り口(浦賀水道)は幅わずか6〜7kmと狭く、湾内の海水交換率が低いため、プランクトンが豊富に発生・集積する特殊な環境が生まれています。このプランクトンの豊富さが食物連鎖の底辺を支え、魚介類の驚異的な多様性と魚影の濃さにつながっています。
東京湾の面積は約1,320平方キロメートル、平均水深は約15mと比較的浅い湾です。特に東京湾奥(隅田川・荒川・多摩川などの河川が流れ込む北部エリア)は有機物が豊富で、シーバスやハゼ・イシモチなどの魚が集中します。一方、湾口に近い横須賀・観音崎周辺は外洋の影響を受けて水温が安定しており、大型の青物やマダイも回遊してきます。
水温は年間を通じて12〜28度の範囲で変動し、夏(7〜9月)の28度前後が最高値です。夏場はタチウオ・ウルメイワシ・コノシロなどの回遊が活発になり、冬(1〜2月)の12〜13度でもタコ・イシモチ・スズキなど低水温でも活性を保つ魚が釣れ続けます。365日、何らかの魚が釣れるというのが東京湾の大きな強みです。
シーバス(スズキ)の主要ポイント|東京湾を代表する魚を徹底解説
隅田川・東京湾奥のシーバスポイント
シーバス(スズキ)は東京湾を象徴する魚であり、都心の河川から湾奥のサーフまで幅広いエリアに生息します。特に有名なのが隅田川で、浅草橋・蔵前・両国・東京スカイツリー周辺の橋脚付近が好ポイントです。常夜灯の光が水面を照らす夜間、ベイトフィッシュ(コノシロ・イナ・ハゼ)を追ったシーバスが橋の明暗部に集まります。ルアーはシンキングペンシル・ミノー(90〜120mm)が有効で、ナイトゲームが基本です。
荒川は広大なフィールドを持つシーバスの聖地。特に水門周辺や干潟エリアでは夏場のデイゲームでも釣果が出ます。葛西臨海公園周辺は公園から直接エントリーできるため交通の便がよく、初心者にも人気の高いポイントです。沖側にシンキングペンシル(ジョルティ18g・ヘビーショット125など)をフルキャストし、ボトムから中層をスローリトリーブするのが葛西でのセオリーです。
多摩川のシーバスポイント
多摩川は東京湾に注ぐ最大級の河川で、スモールシーバス(40〜60cm)から大型(80cm超)まで実績のある一級フィールドです。特に注目すべきは「多摩川河口部」で、海老取川との合流点・弁天橋周辺が人気スポットです。干潮時はシャローエリアが広がり、シーバスが浅場に差してくるパターンが成立します。水門の下流側・橋の明暗部・テトラ帯がポイントになります。春(4〜5月)のバチ(ゴカイ)抜けシーズンは爆発力が高く、細長いシンキングペンシルへの反応が抜群です。
タチウオのシーズンと主要ポイント
東京湾のタチウオシーズン(8月〜11月が最盛期)
タチウオは東京湾の秋の風物詩ともいえる人気ターゲットです。例年8月下旬から回遊が始まり、9〜10月がピーク、11月末まで楽しめます。岸からの釣りはテンヤ釣りや電気ウキ釣りが主流で、横浜・本牧・富岡・金沢八景などが実績が高い釣り場です。遊漁船(LT船)では水深20〜30mのポイントで専用テンヤ(冷凍イワシを装着)を使った釣りが盛んです。
夜釣りが有効なのはタチウオが光に集まるプランクトン・小魚を追って浮き上がる習性があるためです。常夜灯周辺、港の出入り口付近が狙い目。水深は夜間に浅く(5〜10m)、昼間に深くなる(20〜40m)傾向があります。ルアーではメタルジグ・テンヤ・ワインドが有効で、シルバーカラーのジグへの反応が特によいとされています。
タチウオの主要岸釣りポイント
横浜の磯子海岸・金沢漁港周辺、釜利谷漁港(神奈川県横浜市金沢区)は交通の便がよく、夜釣りのタチウオ釣り師で賑わいます。電気ウキ+冷凍イワシの胴突き仕掛けが定番で、ウキ下2〜5mを基本に当たりのタナを探ります。京急金沢文庫駅・金沢八景駅からバスまたは徒歩でアクセス可能です。
アジング・サビキのポイント|横浜・横須賀・浦安・市川
横浜エリアのアジ釣りポイント
横浜・横須賀エリアはアジ釣りのメッカとして知られます。横浜港内の大さん橋・象の鼻公園周辺では、サビキ釣りで20〜30cmのアジが年間を通じて狙えます。ただし、大さん橋周辺は入場制限や時間規制があるため事前確認が必要です。横須賀市内では横須賀港・走水港・大楠浜などが有名で、特に走水港(横須賀市走水1丁目)はアジの魚影が濃いことで定評があります。走水産のアジは「走水のアジ」として市場価値が高く、脂乗りが抜群です。
アジングルアー(ジグヘッド+ワーム)で狙う場合は、1〜3gの軽量ジグヘッドにガルプSW(2インチベビーサーディン等)を組み合わせるのが東京湾の定番セットです。暗い時間帯は表層〜中層、昼間は底層(ボトム)付近を重点的に探ります。
浦安・市川エリアのサビキポイント
千葉県側では浦安市の日の出公園・市川市行徳港周辺が親子サビキ釣りの人気スポットです。特に浦安・日の出公園の親水護岸は足場がよく、柵も設置されているため小さなお子さんを連れたファミリーにも安心です。5〜7月のサッパ(ママカリ)の大群接岸時期は入れ食いになることもあります。電車でのアクセスはJR京葉線「新浦安駅」から徒歩15分程度です。
本牧・大黒埠頭と周辺の合法ポイント
本牧・大黒埠頭の現状と注意点
横浜の本牧埠頭・大黒埠頭はかつて釣り師に大人気のポイントでしたが、現在は大部分が立入禁止区域となっています。横浜港湾局の管理下にあり、無断立入は港湾法違反となるため絶対に侵入しないでください。SNSなどで「大黒埠頭で釣れた」という情報が流れることがありますが、これは不法侵入によるものの可能性が高く、トラブルのもとです。
周辺の合法的な釣りポイント
本牧・大黒埠頭の代替として、以下の合法的な釣りスポットが挙げられます。本牧海釣り施設(横浜市中区本牧ふ頭1番地)は横浜市が管理する公認の海釣り施設で、利用料金(大人800円程度)を支払えば安全に釣りができます。設備が充実しており、竿の貸し出しサービスもあるため初心者にも最適です。
また、三浦半島の小網代湾・剣崎・城ヶ島周辺は東京湾口に位置し、外洋の魚も回遊する本格フィールドです。城ヶ島磯(神奈川県三浦市城ヶ島)は根魚(カサゴ・メバル)やアオリイカの好ポイントで、こちらは無料でアクセスできます。
遊漁船(LT船)の乗り方と主要ターゲット
LT船(ライトタックル船)とは
東京湾の遊漁船で特徴的なのが「LT船(ライトタックル船)」です。LTとはLight Tackle(ライトタックル)の略で、比較的軽量な仕掛けで気軽にターゲットを狙う釣り船スタイルです。2〜3時間の短時間コースも設定されており、仕事帰りのナイトゲームや半日コースで楽しめます。釣り具レンタルが充実している船宿も多く、手ぶらで乗れる入門者向けコースも存在します。
LT船の主要ターゲット
東京湾のLT船で狙える主要ターゲットはアジ・イシモチ・タコ・タチウオ・シロギス・カサゴなど多彩です。特に「LTアジ」は最もポピュラーで、乗船料5,000〜7,000円程度で手軽にアジの数釣りが楽しめます。使用する仕掛けはビシ(コマセカゴ)天秤仕掛けが標準で、コマセ(アミエビ)を船宿で購入できます。
タコ釣りは東京湾の名物で、特に夏(7〜9月)が最盛期。専用のタコ仕掛け(タコエギ・タコテンヤ)を使い、ボトムを這わせる独特の釣り方です。食べておいしいタコが複数釣れることも多く、家族連れにも人気が高いターゲットです。乗船時間は3〜4時間と短く、初心者でも釣果が出やすいのが特徴です。
| ターゲット | ベストシーズン | 釣り方 | 主な船宿(所在地) |
|---|---|---|---|
| LTアジ | 通年(4〜11月が盛期) | ビシ天秤コマセ釣り | 竹岡丸(千葉・金谷)、幸丸(神奈川・走水) |
| タコ | 7〜9月 | タコエギ・タコテンヤ | 新山下・本牧エリアの各船宿 |
| タチウオ | 8〜11月 | テンヤ・ジグ | 浅草・葛西・富岡エリアの船宿 |
| シロギス | 5〜9月 | 投げ・船釣り | 木更津・富津の船宿 |
| シーバス | 通年 | ルアー(ジグ・ミノー) | 若洲・新木場エリアの船宿 |
東京湾の釣り規制・ベストシーズンとアクセス情報
東京湾の主な釣り規制
東京湾では魚種によってサイズ制限・禁漁期・漁獲量制限が設けられています。スズキ(シーバス)については全長30cm未満のリリースが推奨されており、特に東京都内河川では30cm未満は放流を呼びかけています。マダイは全長20cm未満のリリースが推奨されます(各都県の水産系規制を要確認)。なお、遊漁(釣り)は基本的に漁業規制とは別の扱いですが、地域の漁業協同組合のルールや立入禁止区域のルールは必ず守ることが大前提です。
ふぐ類については東京都内で調理・販売には免許が必要ですが、釣り自体は可能です。ただし釣れたフグは種類の判別が難しく、毒を持つ種類もいるため、素人がさばくことは絶対に避けてください。
月別・ターゲット別ベストシーズン
| 月 | 主要ターゲット | 釣り方・ポイント |
|---|---|---|
| 1〜2月 | タコ・カレイ・ヒラメ | 船釣り中心。湾奥は低水温で苦戦 |
| 3〜4月 | シーバス(バチ抜け)・カレイ | 夜の表層シンキングペンシルが有効 |
| 5〜6月 | アジ・シロギス・シーバス | 陸釣り・船釣り共に活発化 |
| 7〜8月 | タコ・ハゼ・サバ・青物 | 夏の最盛期。早朝青物ショアジギ |
| 9〜10月 | タチウオ・シーバス・青物 | 秋の最も釣れる季節。各魚が活性最高 |
| 11〜12月 | タチウオ・ハゼ・カワハギ | 水温低下前の荒食い。カワハギ船が人気 |
主要ポイントへのアクセス情報
電車でのアクセスは各路線が充実しています。若洲海浜公園(東京都江東区)はメトロ・バスでのアクセスが可能で、釣り可能な護岸が300m以上整備されています。葛西臨海公園(東京都江戸川区)はJR京葉線葛西臨海公園駅から徒歩5分。城南島海浜公園(東京都大田区)はバスでのアクセスとなります。
車でのアクセスは首都高湾岸線各ICが便利で、若洲は辰巳IC、葛西は葛西ICが最寄りです。東京湾岸は駐車場料金が高め(1日500〜1,500円程度)のため、早朝到着を心がけましょう。
東京湾の大型青物|カンパチ・ワラサを岸から狙う
湾口エリアの青物ショアジギング
東京湾の湾口エリア(三浦半島・房総半島南部)では、夏〜秋にカンパチ(ショゴ)・ワラサ・ソウダガツオなどの青物がショアから狙えます。特に三浦半島の城ヶ島・剣崎・宮川港周辺は青物の回遊が期待できる一級磯ポイントです。早朝(日の出〜1時間)の時間帯に、30〜60gのメタルジグ(ショアジグ)を沖に向けてフルキャストし、高速リトリーブで青物を誘います。
ルアーはシマノ「コルトスナイパー」、ダイワ「ショアスパルタン」シリーズのメタルジグ(フラッシュブースト系)が東京湾口での実績が高いモデルです。狙うタナは表層から中層が基本で、ナブラ(鳥山)が立っている場所を優先的に狙います。ナブラがない時は「サーフェスでジグをスキッピングさせる」トップウォーター的な誘いも有効です。
FAQ:東京湾の釣りでよくある疑問
Q: 東京湾の魚は食べられますか?食べても安全ですか?
A: 現在の東京湾の水質は大幅に改善されており、多くの魚は食べることができます。特にアジ・シロギス・タコなどは問題なく食用になります。ただし、東京都が発表している「東京湾の魚介類のダイオキシン類等の調査結果」を定期的に確認することをおすすめします。シーバス(スズキ)については過去に一部エリアで汚染が報告されていたことがあるため、特に湾奥・河川で釣れたものは小型魚の過度な摂取を避けることが無難です。
Q: 東京湾で釣りをするのに遊漁券は必要ですか?
A: 東京湾の海での釣りには基本的に遊漁券は不要です。ただし、一部の漁港内・管理釣り場・個人所有地では入漁料が必要な場合があります。公園や護岸など、行政が整備した釣り場は基本無料ですが、本牧海釣り施設のような有料施設もあります。
Q: 東京湾で釣れる魚のサイズはどの程度ですか?
A: シーバスは60〜80cmが標準的で、90cm超のランカーサイズも狙えます。アジは20〜35cmが標準で、35cm超の「尺アジ」も十分に狙えます。タチウオはF3〜F5(フィンガー3〜5本分の幅)が標準で、F7以上の大型も釣れます。
Q: 夜釣りでの安全対策はどうすればよいですか?
A: 東京湾岸の夜釣りは、ライフジャケット着用と転落防止対策が最重要です。護岸からの転落事故が毎年発生しているため、複数人での釣行を心がけ、単独での深夜の釣行は避けましょう。ヘッドライトは常に携帯し、周囲の明かりに頼りすぎないことも大切です。
Q: 遊漁船に一人でも乗れますか?
A: 東京湾の遊漁船は「乗合船(合い乗り)」スタイルが主流で、一人でも乗ることができます。乗合船の場合、見知らぬ釣り客同士が同じ船に乗り合わせる形式です。船宿によっては「仕立て(チャーター)」も可能で、グループ5〜10人でまとめて借りることで割安になります。予約は各船宿の電話またはウェブサイトから行います。
東京湾の磯・サーフ・堤防釣り入門|初心者に優しいポイント選び
初心者向けの足場がよい釣りスポット
釣りを始めたばかりの方や家族連れには、足場がよく安全に釣りができるポイントを選ぶことが最重要です。東京湾周辺では以下のような管理釣り場・公園護岸が整備されています。
若洲海浜公園(東京都江東区若洲3丁目)は東京都が管理する無料の海浜公園で、300mを超える護岸が整備されています。岸壁からのサビキ・ちょい投げ釣りが楽しめ、春から秋にかけてはアジ・サバ・イワシ・サッパなどの回遊魚が釣れます。また、沖向きにキャストすればシーバスも狙え、幅広い釣り方に対応できます。最寄り駅はJR京葉線「新木場駅」でバスを利用するかレンタサイクルが便利です。
江東区の「夢の島公園マリーナ」周辺護岸や葛西臨海公園(江戸川区)の護岸も定番の釣り場です。葛西臨海公園では特にハゼ・セイゴ(スズキの幼魚)・アジが護岸沿いで釣れることが多く、家族釣行に適したポイントです。管理事務所に届け出不要で釣りができ、公園のトイレ・駐車場も完備されています。
千葉県側の人気スポット(館山・木更津・富津)
東京湾の千葉県側にも優れた釣りスポットが多数存在します。木更津市の盤洲干潟・金田漁港周辺は、春のシーバス(バチ抜けパターン)と秋のクロダイが人気ターゲットです。干潟が広がる環境でウェーディング(胴長を着て干潟に立ち込む釣り)も楽しめます。富津市の富津岬周辺は東京湾口に近い立地で、ショアジギングで青物(ワカシ・ソウダガツオ)を狙う釣り師に人気があります。
館山湾(千葉県館山市)は東京湾最南端の湾口部に位置し、外洋性の魚も回遊してきます。特に夏〜秋(7〜10月)はソウダガツオ・ワカシ・サバなどの青物に加え、秋にはブリクラスの大型青物が来ることもあります。那古海岸・北条海岸のサーフからショアジギングで狙うのが館山スタイルです。東京からはJR内房線で最寄りの館山駅まで約2時間。高速バスも充実しており、日帰り釣行が可能な好アクセスを誇ります。
カワハギ釣り|秋の東京湾の名物船釣り
秋(10〜12月)の東京湾で人気が高い船釣りターゲットがカワハギです。カワハギは「エサ取り名人」とも呼ばれる難易度の高いターゲットで、餌(アサリ)をさりげなく盗む高度なエサ取り技術を持ちます。これを逆手にとって超繊細なアタリを感知し、エサを取られる前にフッキングするのがカワハギ釣りの醍醐味です。肝(キモ)が大きくなる11〜12月は「肝パン」と呼ばれる状態で、旬の味覚として非常においしい時期です。カワハギ船は横浜・金沢八景・走水・上総湊などの船宿から出船しており、1日乗合船で6,000〜8,000円程度が相場です。
| 釣り場名 | 所在地 | 主なターゲット | アクセス |
|---|---|---|---|
| 若洲海浜公園 | 東京都江東区 | アジ・サバ・シーバス | 新木場駅バス10分 |
| 葛西臨海公園 | 東京都江戸川区 | ハゼ・アジ・セイゴ | 葛西臨海公園駅5分 |
| 本牧海釣り施設 | 神奈川県横浜市 | アジ・タコ・クロダイ | 根岸駅バス20分 |
| 走水港周辺 | 神奈川県横須賀市 | アジ・サバ・メバル | 馬堀海岸駅バス10分 |
| 富津岬 | 千葉県富津市 | 青物・タコ・ヒラメ | 君津ICから車20分 |
| 館山北条海岸 | 千葉県館山市 | 青物・シロギス | 館山駅徒歩15分 |



