船釣りのオモリ号数に、全国共通の正解は存在しない。正解は「その日乗る船宿が指定した号数」で、それ以外はすべて不正解になる。同じ東京湾のライトアジ(LTアジ)でも、金沢八景の蒲谷丸は公式サイトでビシカゴ30号、横浜・新山下の打木屋釣船店は40号を案内しており(いずれも2026年8月時点の公開情報)、同じ東京湾内、車で30分ほどの距離でも数字が揃わない。この記事では海域と釣り物ごとの相場観を早見表にまとめたうえで、なぜ全員で号数を統一する必要があるのか、指定から外れたい時にどう振る舞うのかまでを扱う。
この記事の結論(先に3行)
1. 船のオモリは船宿・船長の指定が絶対。予約時と乗船前の2回、必ず自分で確認する。
2. 号数指定はPEラインの号数とセットで効く。太糸だと同じ釣りでも重いオモリを指示されることがある。
3. 下の早見表は相場観であって指定の代わりではない。表の数字だけで道具を買い揃えて船宿に確認しない、という使い方は禁物。
なお、この記事は乗合船・仕立船(船釣り)に限定した内容だ。堤防やサーフからの投げ釣り・ちょい投げ・チニングなど陸っぱりのオモリ号数と形状の基礎は、オモリ(錘・シンカー)の種類・号数・使い方入門完全ガイドにまとめてあるので、そちらを先に読んでほしい。陸っぱりと船では「自分で号数を決められるかどうか」という前提そのものが違う。
結論:船のオモリは「船宿の指定が絶対」。自分で選べるのは形状と色だけ
陸っぱりの釣りでは、オモリの重さは自分で決める。風が強ければ重く、食いが渋ければ軽く、飛距離が欲しければさらに重く。号数選びは釣り人の腕の一部だ。ところが船釣りでは、この自由がほぼ全面的に取り上げられる。乗合船に乗った瞬間、オモリの号数は「船宿が決めるもの」に変わる。
これは理不尽なルールではなく、狭い船上に10人前後が肩を並べて糸を垂らすという物理的条件から必然的に導かれる運用だ。号数がバラバラだと仕掛けが絡み合い、全員の釣りが止まる。だから船宿は公式サイトや予約時の案内で号数を明示し、船長は当日の潮に合わせてそれを微調整する。
釣り人に残された自由は、おおむね次の範囲に限られる。
- オモリ・ビシの形状(六角、ナス、円錐、プラビシ、ステン缶など。ただし釣り物によっては形状も指定される)
- 色や塗装(夜光、赤、黒など。タチウオ釣りなどでは効くという説もあるが、号数ほど厳格な指定は少ない)
- 予備を何個持つか
逆に言えば、号数だけは自分の判断で変えてはいけない。「自分は繊細に釣りたいから軽くする」「よく沈めたいから重くする」という発想は、陸っぱりでは正しくても船上では周囲への迷惑に直結する。
レンタルで済む釣り物も多い
ビシ(オモリ内蔵型のコマセカゴ)を使う釣りでは、船宿がビシを無料で貸し出すケースが少なくない。蒲谷丸の公式「釣りもの詳細」ページでは、LTアジ船のビシカゴをレンタル無料とし、紛失・損傷時の弁償額を1,500円から2,000円と案内している。相模湾・福浦港の恵一丸も、アカムツ船・中深場五目船で200号オモリを無料レンタルとし、ロスト時800円と公表している。
つまり「号数がわからないから買えない」という理由で予約をためらう必要はない。むしろ初回は、レンタルの有無を確認したうえで手ぶらに近い状態で乗り、船上で実物のサイズ感を覚えてから買い揃えるほうが無駄がない。
なぜ全員で号数を統一するのか|沈下速度と流され方の物理でオマツリが起きる仕組み
号数統一の理由は一言でいえば「オマツリ防止」だが、その中身を分解しておくと、指定を守る意味が腹落ちする。
理由1:沈下速度が違うと着底のタイミングがずれる
水中で沈むオモリには重力と水の抵抗が働く。号数が重いほど沈下は速く、軽いほど遅い。水深60メートルの釣り場で、隣の人が40号、自分が80号を使っていたとすると、投入から着底までの時間に明確な差が生まれる。船は潮と風で常に動いているので、この時間差はそのまま「着底地点のずれ」になる。
理由2:潮に流される角度が違うと糸が交差する
より深刻なのはこちらだ。軽いオモリは横方向の潮に負けて大きく流され、道糸が斜めに払い出される。重いオモリは真下に近い角度で落ちる。船べりに並んだ10本の糸のうち、1本だけ角度が違えば、その糸は隣や2つ先の人の糸と必ず交差する。これがオマツリだ。
理由3:オマツリのコストは想像より大きい
絡んだ糸をほどくには数分から十数分かかる。その間、絡んだ2人は釣りができず、船長は操船の合間に対応を迫られる。ひどい場合は船長の判断で仕掛けを切ることになり、仕掛け代とコマセ代が消える。潮の速い時合に1回オマツリすると、その日の釣果を左右することさえある。号数統一は、乗客全員の時間を守るための仕組みだと考えたい。
理由4:号数だけでなく道糸の太さと仕掛け長も効く
沈下角度を決めるのはオモリだけではない。水中にある道糸の表面積が大きいほど潮を受けて流される。同じ80号でも、PE2号の人とPE4号の人では糸の受ける抵抗が違い、着底位置がずれる。だから船宿は「オモリ○号」と同時に「PE○号まで」を指定する。この連動については後の見出しで詳しく扱う。
【早見表】海域と釣り物ごとの標準オモリ号数(2026年8月時点の公表値)
表を読む前に必ず。下表は各船宿・釣具店が公開している数値をそのまま拾ったもので、相場観を掴むための資料であり、あなたが乗る船の指定の代わりにはならない。同じ海域・同じ釣り物でも船宿ごとに数字が違い、当日の潮と乗船人数で船長が変えることもある。最終的には船宿の最新の公式案内と船長の指示が最優先だ。
| 海域・港 | 釣り物 | オモリ・ビシ号数 | 道糸・ハリスの指定 | 出典(2026年8月時点) |
|---|---|---|---|---|
| 東京湾・金沢八景 | 午前/午後LTアジ | ビシカゴ30号 | 道糸:PE2号まで | 蒲谷丸 公式「釣りもの詳細」 |
| 東京湾・金沢八景 | 深場LTウィリー | ビシカゴ60号(FLサイズまで) | 道糸:PE2号まで | 蒲谷丸 公式「釣りもの詳細」 |
| 東京湾・金沢八景 | ショートタチウオ(テンビン) | 60〜80号(夏は40号) | 道糸:PE2号まで | 蒲谷丸 公式「釣りもの詳細」 |
| 東京湾・新山下 | LTアジ | ビシ40号(状況により40〜60号) | 道糸:PE2号・100m以上 | 打木屋釣船店 公式仕掛けページ |
| 東京湾・金沢八景 | ビシアジ(ノーマルタックル) | アンドンビシ130号 | 道糸:公式に記載なし(要確認) | 青田丸 公式サイト |
| 東京湾・富津 | タチウオ(テンビン) | PE1〜1.5号は60号/PE2号は80号/25m以浅は40号の場合あり | 道糸:PE2号以下厳守 | ひらの丸 公式サイト |
| 東京湾・富津 | タチウオ(テンヤ) | テンヤ40号・50号(25m以浅では30号使用の場合あり) | 道糸:PE1.5号 | ひらの丸 公式サイト |
| 東京湾・富津 | ショウサイフグ | カットウ仕掛け8・10・15・20号(底が取れる重さ)/喰わせ仕掛けは胴突き25号 ※過去の案内では「6号〜20号位」の表記もあり | 道糸:公式に記載なし(要確認) | ひらの丸 公式サイト |
| 東京湾・走水 | ショートタチウオ(テンヤ) | テンヤ40〜50号(PE1.5号以下は40号、PE2号は50号と使い分け) | 道糸:PE1.5〜2号 ※原文は「ラインは1.5号〜2号!※2号以上は使用厳禁です!」と表記。2号ちょうどの可否は要確認 | 教至丸 公式サイト |
| 相模湾・茅ヶ崎 | LTアマダイ | 浅場40〜60号/水深80m以上または潮が速い時は80号 | ハリス:3号(シロアマダイ狙いは4号以上) ※道糸の号数指定は公式に記載なし | まごうの丸 公式サイト |
| 相模湾・茅ヶ崎 | ライト五目(コマセ) | PE3号以下は40〜60号/PE4号以上は80号(カゴはFLサイズ以下) | 道糸:PE3号以下か4号以上かでオモリ号数が変わる | まごうの丸 公式サイト |
| 相模湾・茅ヶ崎 | ビシアジ | ビシカゴ130号(予備必須) | 道糸:公式に記載なし(要確認) | まごうの丸 公式サイト |
| 相模湾・茅ヶ崎 | シロギス | 15〜20号 | ハリス:0.8号2本針(道糸の指定は記載なし) | まごうの丸 公式サイト |
| 相模湾・福浦 | コマセ五目 | ビシ80号(FLサイズ・Lサイズ) | ハリス:3号6m/5号6m(道糸の指定は記載なし) | 恵一丸 公式サイト |
| 相模湾・福浦 | アカムツ・中深場五目 | 200号(無料レンタル・ロスト800円) | 道糸:公式に記載なし(要確認) | 恵一丸 公式サイト |
| 遠州灘・駿河湾 | 船アマダイ | 100号・120号を船長の指示で使い分け(ライトタックルは70〜100号) | 道糸:PE3〜4号を300m程度 | 釣具店イシグロの釣り情報ページ |
| 遠州灘・福田港 | アジ・イサキ(かかり釣り) | 60〜120号 ※ミヨシ側から120・100・80・70・60・60号と釣り座別に指定(12名満船時) | 道糸:PE3〜4号・200m/ハリス:2〜3号 | 啓秀丸 公式「仕掛け図」 |
| 遠州灘・福田港 | アカムツ | 250号 | 道糸:PE3号・400m/ハリス:6号4.5m | 啓秀丸 公式「仕掛け図」 |
| 遠州灘・福田港 | マダイ(コマセ) | 100号 | 道糸:PE4号・200m/上ハリス:6〜7号10m | 啓秀丸 公式「仕掛け図」 |
| 外房・乙浜 | ヤリイカ/スルメイカ | 150号 | 道糸:PE3〜4号・300m以上 | しまや丸 公式「仕掛け図」 |
| 外房・乙浜 | オニカサゴ | 120〜150号 | 道糸:PE4〜5号・300m以上 | しまや丸 公式「仕掛け図」 |
| 外房・乙浜 | 半夜キンメ・ムツ | 150〜200号 | 幹糸:8〜10号 | しまや丸 公式「仕掛け図」 |
| 外房・乙浜 | キントキ | 120号 | 道糸:PE3〜5号・200m | しまや丸 公式「仕掛け図」 |
この表からわかる3つのこと
第一に、同じ海域・同じ釣り物でも船宿で号数が違う。東京湾のLTアジは、金沢八景の蒲谷丸が30号、新山下の打木屋釣船店が40号。どちらも正しく、どちらも「相手の船では不正解」だ。ネット検索で見つけた「東京湾のLTアジは40号」という記述を鵜呑みにして30号指定の船に乗ると、そもそも仕掛けが揃わない。
第二に、同じ魚でも釣法が変わると号数が一気に変わる。アジひとつ取っても、LTアジは30〜40号、ノーマルタックルのビシアジは130号。3倍以上の差だ。予約時には魚種だけでなく「LTなのか、ノーマルなのか」を必ず言語化して確認したい。コマセ釣りでのビシの号数と仕掛けの組み立て方はコマセマダイ完全攻略でも扱っているので、コマセ物に初挑戦するなら合わせて読んでおくと理解が早い。
第三に、水深が深くなるほど号数は跳ね上がる。浅場のシロギスは15〜20号、中深場のアカムツは200号。10倍以上の開きがある。号数はおおむね「水深と潮の速さ」の関数だと考えると当たりを付けやすい。
遠州灘・駿河湾については正直に書いておく
浜松発のメディアとして遠州灘・駿河湾の数字を厚くしたいところだが、この海域はタックル指定の公表状況が船宿によってかなり差がある。仕掛け図やタックル指定を専用ページで明記している宿もあれば、釣果と予約状況はこまめに更新していても号数には触れていない宿もある、というのが実情だ。
明記しているほうの代表例が、福田港の啓秀丸である。公式の「仕掛け図」ページで釣り物ごとに道糸とオモリを公開しており、しかもアジ・イサキ船については釣り座ごとに使うオモリ号数まで割り当てている。早見表に追加したとおり、アジ・イサキが60〜120号でPE3〜4号、アカムツが250号でPE3号、マダイが100号でPE4号。情報の粒度でいえば東京湾の船宿と比べてもむしろ細かい部類だ。表に載せた船アマダイの100号・120号のほうは、地元の釣具店イシグロが公開している遠州灘の釣り情報ページの記述にもとづく。
とはいえ、この海域のすべての船宿が同じように公開しているわけではない。公式サイトに号数の記載が見当たらない宿に乗るなら、推測せず電話またはメールで直接聞くのが唯一確実な方法になる。他海域の数値を流用して「たぶん80号だろう」と当たりを付けるのは、この記事がいちばん避けてほしい行動だ。日本海側のイカ船についても事情は似ていて、釣り情報媒体では120号または150号のどちらかを指定する船宿が多いと紹介されているが、本記事の表には公式ページで実際に確認できた数値だけを載せている。
号数指定は「PEの号数」とセットで効く|細糸有利・太糸不利になる理由
船宿のタックル案内を読むと、オモリ号数の隣に必ずと言っていいほど「PE○号まで」という記載がある。これは単なる推奨ではなく、号数指定の一部だと考えたほうがいい。
太い糸は「水中の帆」になる
水深80メートルの釣り場では、道糸が80メートル以上水中にある。この糸が潮から受ける力は、糸の断面積ではなく「横から見たときの投影面積」、つまり直径×水中に入っている長さにほぼ比例する。
ここで多くの人が誤解するのが、PEの号数と直径の関係だ。PEラインの号数は、直径ではなく重さ(線密度)で定義されている。日本の太さ標準規格ではデニール表示を使い、1号=200デニール(長さ9000メートルあたり200グラム)と決められている。PEは極細の原糸を複数本編んだ組糸で直径を正確に測りにくいため、重さを基準にしているのだ。
号数が重さ=断面積の側にほぼ比例するということは、直径のほうはその平方根でしか増えない。実際、標準直径はPE2号が約0.242ミリ、PE4号が約0.342ミリで、比は約1.4倍にとどまる(理論値の√2=1.41とほぼ一致する)。号数が2つ分太くなっても直径は2倍にはならない、という点をまず押さえたい。
それでも影響は小さくない。水中に80メートル入った道糸の投影面積は約1.4倍に増え、受ける横方向の力もその分だけ大きくなる。結果、太糸の人の仕掛けだけが余分に払い出され、着底が遅れ、隣とオマツリする。なお同じ号数でもメーカーや編み本数・コーティングで実際の直径には差が出るため、上の数値はあくまで標準規格上の目安である。
だから船宿はPEを基準に号数を変える
この現象を運用に落とし込んでいるのが、まごうの丸のライト五目船の案内だ。公式サイトでは「PE道糸3号以下は40〜60号オモリ、4号以上は80号」と、PEの太さでオモリ号数を明確に分けている。富津のひらの丸のタチウオ・テンビン釣りも同じ構造で、「PE1号・1.5号は60号、PE2号は80号」と公表しつつ、PE2号以下厳守という上限を設けている。
ここから読み取れるのは、細い糸を使えるほど軽いオモリで釣れるという原則だ。軽いオモリは仕掛けの動きが自然になり、アタリも取りやすい。船釣りで細いPEが推奨されるのは、飛距離のためでも強度のためでもなく、この「軽く釣れる」というメリットのためだ。
PE上限が設けられる理由
走水の教至丸は、ショートタチウオ船の道糸を「ラインは1.5号〜2号!※2号以上は使用厳禁です!」と明記している(原文の表記どおり。2号を含むか否かは読み取りづらいので、実際に使うなら予約時に確認したい)。あわせてテンヤも「PE1.5号以下は40号、PE2号は50号」と道糸連動で指定している。上限がないと、太糸の人に合わせて全員が重いオモリを使うはめになり、船全体の釣趣が落ちるからだ。1人の太糸が船全体の号数を引き上げる、と考えるとルールの意味がわかる。
なお号数という単位はライン(釣り糸)とオモリで意味がまったく違う。ライン側の号数と、lb(ポンド)・mm(直径)の関係は釣り糸の号数からlb・mmへの換算にまとめてあるので、PE指定を読み解く際にはそちらを参照してほしい。オモリの号数は重さ、ラインの号数は太さを表す、という点だけは混同しないようにしたい。
指定より重い・軽いを使いたい時の作法|船長への確認と釣り座の位置差
ここまで「指定が絶対」と繰り返してきたが、現場ではもう少し柔軟な運用がなされている。重要なのは、変えるかどうかを自分で決めないことだ。
船長が号数を上げる典型パターン
釣り情報サイトORETSURIが東京湾・相模湾の適合表記事のなかで、船宿のホームページに「オモリ50号指定」とあっても、実際は潮流が速かったり釣り客が多くて仕掛けを真下に落とす必要があるときに60号から80号を使っている、というアマダイ釣りの例を紹介している。公表値と当日の運用がずれるのは珍しいことではない。
号数が上がる条件はおおむね決まっている。
- 潮が速い日(二枚潮のときは特に)
- 乗船人数が多く、船べりの間隔が狭い日
- ポイントが予定より深い日
- 風と潮が逆方向で、船が横に流される日
逆に、凪で潮が緩く、乗船人数が少ない日は軽いほうを指示されることもある。だから予備は「指定の号数」だけでなく「1段階上」も持っておくと安心できる。
聞くタイミングは3回ある
号数について船宿に聞く機会は、予約時・乗船前・釣り中の3回だ。それぞれ聞くべき内容が違う。
- 予約時(電話・メール):標準の号数、PEの上限、レンタルの有無。買い物の判断に必要な情報をここで取る。
- 乗船前(受付・桟橋):当日の号数。「今日は何号ですか」と一言聞くだけでよい。ここが最重要のタイミングだ。
- 釣り中:手持ちの号数と違うものを使いたいとき。現物を見せて「これを使ってもいいですか」と聞く。口頭だけより現物のほうが早い。
やってはいけないのは、黙って号数を変えることだ。オマツリが起きてから「実は号数を変えていた」と発覚すると、船中の空気が悪くなる。
釣り座(ミヨシ・胴の間・トモ)で条件が変わる
同じ船でも、座る位置で潮の当たり方が変わる。船首側をミヨシ、中央を胴の間、船尾側をトモと呼ぶ。船が潮に対してどう立つかによって、潮の流れを先に受ける「潮先」の釣り座と、後から受ける「潮ケツ」の釣り座が生まれる。潮先の人の仕掛けが流れて潮ケツの人と絡むのがオマツリの典型パターンなので、潮先側にいるときほど号数指定を守る意味が大きい。
この構造をそのまま運用に落とし込んでいる船宿もある。福田港の啓秀丸は、アジ・イサキ船をアンカーを打つ「かかり釣り」で行う関係上、公式の仕掛け図でミヨシ側から120号、100号、80号、70号、60号、60号と、釣り座ごとに使うオモリ号数を割り当てている(12名満船時)。潮を先に受けるミヨシ側ほど重く、潮下に向かうほど軽くなる並びだ。
この一次情報が示しているのは、号数指定の目的は「全員が同じ数字を使うこと」そのものではなく、「全員の道糸が同じ角度で立つこと」だという点である。潮を強く受ける釣り座ほど重いオモリを持たせれば、船全体で仕掛けの角度が揃う。多くの船宿が単一の号数を指定するのは、それがいちばん簡便に角度を揃える方法だからであって、条件が釣り座で大きく変わる釣りでは、こうして号数のほうを配分するわけだ。
実務上の注意もある。ここまで細かく指定する船宿では、オモリを忘れると釣り座に合った号数が用意できない。啓秀丸も仕掛け図のなかで、忘れた場合は船長に申し出るよう案内している。釣り座は当日の受付順やくじで決まることが多いので、釣り座別指定の船に乗るなら該当しそうな号数を幅で持っていく心づもりが要る。
また揺れの大きさは一般にミヨシがいちばん大きく、胴の間がもっとも小さいとされる。船酔いが不安な初回は胴の間を選び、周囲の号数と釣り方を観察するのが無難だ。カワハギのように誘いのテンポと号数が結果に直結する釣りでは、隣の人の動きを見られる位置に座るだけで学習速度が変わる。
予備は何個持つか|根掛かりロスト前提の必要数
オモリは消耗品だ。とくに根魚系や中深場では、根掛かりで海底に置いてくることを前提に数を用意する。
| 釣り物のタイプ | 底質・根掛かりリスク | 予備の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|
| コマセ物(マダイ・アジ・イサキ) | 中層をタナ取りするため低い | 本番1個+予備1個 | ビシは高価なので無料レンタルの有無を先に確認 |
| 砂泥底の底物(シロギス・アマダイ) | やや低い | 本番1個+予備2個 | 捨て糸を入れる仕掛けなら消耗は減る |
| 根魚・中深場(オニカサゴ・アカムツ) | 高い | 本番1個+予備3〜5個 | 船上販売の有無を予約時に確認 |
| タチウオ(テンビン・テンヤ) | 中層主体で低い | 本番1個+予備1〜2個 | テンヤは歯によるライン切れでロストすることがある |
| カワハギ | 根周りを攻めるため中〜高 | 本番1個+予備2〜3個 | 号数が軽いぶん総重量の負担は小さい |
予備の数を決めるうえで見落としがちなのが、船宿のロスト弁償ルールだ。レンタルのビシやオモリを失くした場合の金額は公表されている船宿が多く、たとえば恵一丸のアカムツ船は200号オモリのロストで800円、蒲谷丸のLTアジ船はビシカゴの紛失・損傷で1,500円から2,000円と案内している。頻繁に根掛かりする釣りであれば、レンタルより自前で複数持ち込んだほうが結果的に安く済むこともある。
予約時に聞くべき5項目|そのまま使える確認テンプレート
号数の確認は、他の確認事項とまとめて一度で済ませるのが効率的だ。電話が苦手な人でも、以下の5項目を順に読み上げれば要件は満たせる。
| 項目 | そのまま使える聞き方 | 確認できると何が決まるか |
|---|---|---|
| 1. オモリ・ビシの号数 | 「オモリは何号を用意すればいいですか。形状の指定はありますか」 | 買うオモリの号数と個数 |
| 2. 道糸PEの上限 | 「PEは何号まで使えますか。何メートル巻いておけばいいですか」 | リールの選定と糸巻き量 |
| 3. 貸道具の範囲と料金 | 「竿・リール・オモリのレンタルはありますか。紛失時はいくらですか」 | 初期投資をどこまで抑えられるか |
| 4. エサ・コマセ・氷の有無 | 「エサとコマセと氷は料金に含まれますか。持ち込みは必要ですか」 | 当日の買い出しとクーラーの容量 |
| 5. 集合時間と受付場所 | 「何時までに受付を済ませればいいですか。駐車場はどこですか」 | 出発時刻の逆算 |
この5項目は、公式サイトに載っている情報とも重複する。だが公式サイトの更新が止まっていることもあるため、最終的には最新の公式案内と、当日の船宿の口頭説明・現地の掲示が優先だと考えておきたい。とくに料金・集合時間・貸道具の条件は改定されやすい。この記事に載せた数値も2026年8月時点で公開されていた情報であり、乗船の判断材料としては必ず自分で最新版を確認してほしい。
号数×3.75グラムで荷物を設計する|タックルバッグの重量計算
換算式は1行で済む。オモリの号数は重さの単位で、1号=1匁(もんめ)=3.75グラム(尺貫法の名残で、5円玉1枚とほぼ同じ重さ)。号数に3.75を掛ければグラムが出る。ここで重要なのは数字そのものより、この掛け算を荷造りの前にやっておくことだ。
| 号数 | 1個の重さ | 3個 | 5個 | 主な用途の例 |
|---|---|---|---|---|
| 20号 | 75g | 225g | 375g | シロギス・カワハギ |
| 30号 | 112.5g | 337.5g | 562.5g | LTアジのビシカゴ |
| 40号 | 150g | 450g | 750g | LTアジ・タチウオテンヤ |
| 60号 | 225g | 675g | 1.13kg | タチウオテンビン・LTウィリー |
| 80号 | 300g | 900g | 1.5kg | 相模湾コマセ五目・アマダイ |
| 100号 | 375g | 1.13kg | 1.88kg | 遠州灘の船アマダイ |
| 120号 | 450g | 1.35kg | 2.25kg | オニカサゴ・キントキ |
| 130号 | 487.5g | 1.46kg | 2.44kg | ビシアジ(アンドンビシ) |
| 150号 | 562.5g | 1.69kg | 2.81kg | ヤリイカ・スルメイカ |
| 200号 | 750g | 2.25kg | 3.75kg | アカムツ・中深場五目 |
重量設計の考え方
この換算表が効いてくるのは、荷造りの段階だ。たとえば中深場のアカムツ船に200号を5個持つと、それだけで3.75キロになる。小型電動リールが400グラムから700グラム程度(機種差が大きいのであくまで目安)、専用バッテリーが1キロ前後、仕掛け類とクーラーを足すと、駅から歩く距離次第では現実的でない重量に達する。
逆にLTアジの30号なら、5個持っても562.5グラム。ライトタックルの釣りが人気を集めている理由の一端は、この持ち運びやすさにもある。号数が軽い釣りを選ぶことは、当日の体力配分を選ぶことでもある。バッグ側の容量と背負い方の選び方については釣り用タックルバッグおすすめ10選にまとめてあるので、船釣り用の1個目を選ぶ際の参考にしてほしい。
鉛オモリの取り扱いで気をつけたいこと
船釣りのオモリの多くは鉛製だ。鉛は素手で触れても直ちに健康被害が出るものではないとされるが、扱ったあとに手を洗ってから飲食する、口に入れない、子どもに触らせたまま放置しない、といった基本的な注意は守っておきたい。欧州では釣り用鉛オモリの規制が進んでおり、日本でも代替素材(タングステン・鉄・スズなど)の製品が増えている。鉛とタングステンの比重差が実際の釣りでどう効くかはメタルジグはタングステンと鉛どっち?で比較しているので、素材から見直すならそちらも参考になる。将来的に船宿の指定が非鉛素材に切り替わる可能性もあるため、規制動向は頭の片隅に置いておくとよい。
最後に:早見表は地図、船長の指示はコンパス
船釣りのオモリ号数について、この記事で押さえてほしいのは次の点だ。
- 正解は「船宿が指定した号数」であり、海域や魚種から機械的に決まる数字ではない
- 号数を統一するのは沈下速度と流され角度を揃えてオマツリを防ぐため。指定を破ると被害を受けるのは自分ではなく隣の人になる
- 指定はPEの号数とセットで効く。細い糸を使えるほど軽いオモリで釣れる
- 同じ東京湾のLTアジでも船宿によって30号と40号に分かれる。ネット上の一般論では足りない
- 遠州灘・駿河湾や日本海側は公表資料が薄い。推測せず直接聞く
- 1号=3.75グラム。号数×3.75で総重量を試算してから荷造りする
早見表は、初めての釣り物でおおよその見当をつけるための地図だ。だが実際に舵を切るのは船長で、その日の潮と乗船人数を見ているのは船長しかいない。地図とコンパスの両方を持って、まずは1回、指定通りの号数で乗ってみてほしい。全員の仕掛けがきれいに真下へ落ちていく船は、驚くほど快適に釣りができる。
この記事で参照した船宿公式ページ
表の数値を自分で検証したい人のために、本文中で号数を引用した船宿のうち、公式ページのURLが確認できたものを挙げておく。号数の指定は改定されることがあるので、乗船前には必ず最新版を見てほしい。
- 啓秀丸(遠州灘・福田港)公式「仕掛け図」 — アジ・イサキ/アカムツ/マダイの道糸・オモリ、釣り座別の号数配分
- ひらの丸(東京湾・富津)公式サイト — タチウオのテンビン/テンヤ、ショウサイフグのカットウ・喰わせ
- 教至丸(東京湾・走水)公式サイト — ショートタチウオのライン規定とテンヤ号数
- まごうの丸(相模湾・茅ヶ崎)公式サイト — LTアマダイ/ライト五目/ビシアジ/シロギス
このほか蒲谷丸・打木屋釣船店・青田丸・恵一丸・しまや丸の数値は各船宿の公式サイト、遠州灘の船アマダイは釣具店イシグロの釣り情報ページによる。
※本記事に掲載した号数・料金・レンタル条件は、各船宿および釣具店が2026年8月時点で公開していた情報にもとづく。料金改定・釣り物の入れ替え・タックル指定の変更は随時行われるため、実際の釣行にあたっては各船宿の最新の公式案内と、当日の船長の指示を最優先で確認してほしい。



