「逃がしてあげた」——その行為が正しく行われていなければ、魚はその後まもなく死んでしまう可能性があります。キャッチアンドリリース(C&R)は「単純に逃がすだけ」ではない、技術が必要な釣り行為です。
遠州灘・浜名湖で資源保護の意識が高まっている今、正しいリリース技術を身につけることは釣り人の責任。技之助が、魚を生かして返すための全技術を解説します。
Contents
1. なぜキャッチアンドリリースが重要か
遠州灘・浜名湖での資源現状
- クロダイ(チヌ):浜名湖の個体群は安定しているが、大型個体(50cm超)は産卵への寄与が大きい
- シーバス(スズキ):遠州灘〜浜名湖の個体数は漁業の影響も受けており、大型の保護が重要
- ヒラメ:遠州灘の資源は漁業・釣りの両方から圧力を受けている。法定サイズ(静岡県:30cm以上)の遵守が必須
- アオリイカ:春の親イカ(大型)をリリースすることで次世代への産卵が維持される
リリースした魚の生存率調査
| 条件 | 生存率(推定) |
|---|---|
| 正しい方法でリリース(水中リリース・30秒以内) | 90〜95% |
| 空気中に出してから素早くリリース(60秒以内) | 70〜80% |
| 空気中に2〜3分以上出してリリース | 50〜60%(以下) |
| 水温差が大きい場所にリリース | 大幅低下 |
2. リリースすべき魚・食べてよい魚の基準
法定サイズ規制(静岡県・遠州灘エリア)
| 魚種 | 法定サイズ | 根拠 |
|---|---|---|
| ヒラメ | 30cm以上(静岡県内水面漁業調整規則等) | 漁業調整規則による小型魚保護 |
| マダイ | 漁業権区域によって異なる | 各漁協規則確認 |
| アユ | 禁漁期・禁止区域あり | 天竜川・各河川の規則確認 |
| アオリイカ | 法定なし(自主規制を推奨) | 多くのアングラーが春イカ保護 |
重要:法定サイズ以下の魚は必ずリリースが義務(漁業調整規則違反になる場合あり)。事前に各都道府県の規則を確認する。
釣り人として考えるべきサイズ基準
- シーバス:60cm以下は積極的にリリースを推奨(産卵への寄与を考えると大型の保護が重要)
- クロダイ:30cm以下は自主リリース推奨。大型(50cm超)も産卵親魚として価値が高い
- ヒラメ:40cm未満は自主リリース推奨(法定30cmより厳しめの基準)
- アオリイカ:春(4〜6月)の大型(1kg以上)は産卵親イカとして自主リリースを推奨
3. 正しいキャッチアンドリリースの技術
原則①:空気中の時間を最短に(30秒以内が理想)
魚は空気中では「溺れて」いる状態。エラから水中の酸素を得られない魚は急速にダメージを受ける。
- 写真撮影は1〜2枚に絞る:長時間ポーズを取ることは魚にとって拷問
- フックを外しながら撮影準備:手際よく行動を事前に計画する
- 水面ギリギリで撮影:手が滑っても魚が水に落ちるよう安全な場所で
原則②:ウェットハンドで扱う
- 手が乾いていると魚の体表粘液が取れてしまう(細菌感染・乾燥ダメージの原因)
- リリース前に必ず手を水で濡らす
- フィッシュグリップを使う場合も、魚体に当たる部分を濡らす
原則③:ランディング直後の扱い方
- 魚を網(タモ)から水中に戻しながらフックを外す(水中リリースが理想)
- フックが深く飲み込まれている場合はフォーセップ(細長いペンチ)で外す
- フックが取れない場合はハリスを切る(フックは腐食してやがて外れる)
原則④:フックの選択——バーブレスフックの活用
バーブレスフック(かえしのない針)は魚へのダメージを大きく減らす:
- フックを外す時間が短縮(数秒で外れる)
- 魚体への傷が最小化
- デメリット:バラシが若干増える(ただしロッドのテンションを維持すれば問題なし)
- バーブレス化方法:既存フックのかえしをペンチで潰せばバーブレス化できる
4. 蘇生(リカバリー)技術——弱った魚を元気に戻す
蘇生の手順
- 魚を水面に持っていく:タモに入れたまま水中に沈める
- 魚体を水平に保持:片方の手で魚の腹を下から支え、もう一方でテールグリップ(尾の付け根)を持つ
- ゆっくり前後に動かす:魚のエラから水を流してやるイメージ。強く動かしすぎない
- 自分から泳ぎ出すまで待つ:手の力を抜いても魚が自立して泳げるようになったらリリース完了
- 時間目安:30秒〜2分。急激なファイトをさせた魚ほど長く蘇生が必要
蘇生が必要なサイン
- 横になって浮いている(転覆状態)
- エラの動きが弱い・不規則
- 手を放しても泳げない
水温差への注意
真夏の炎天下でサーフ釣りをしている場合、海面近くの水温(28℃超)は魚にとって過酷な環境。できるだけ水温が安定した少し深めの場所でリリースする工夫を。
5. 釣り場別リリースの注意点
遠州灘サーフ(ヒラメ・シーバス)
- 波打ち際でのリリースは波に流されて魚がダメージを受けやすい
- できるだけ波が穏やかな場所まで移動してリリース
- 砂浜に置かない(砂が粘液に付着して魚体を傷める)
浜名湖護岸(クロダイ・シーバス)
- 護岸が高い場合、魚を水面まで降ろすタモが必要
- 高い護岸から魚を直接落とすリリースは×(着水ショックで死亡リスク)
船上(スロージギング・コマセ釣り)
- 深場から釣り上げた魚は「減圧症」(浮き袋の膨張)が起きやすい
- 腹が膨らんで水面に浮いてしまう状態では蘇生困難。専用ツール(ビートダウンなど)で浮き袋を刺すが、一般釣り人には難しいため船長に相談
6. C&Rの考え方——「食べる分だけ持ち帰る」の文化
遠州灘・浜名湖での釣り倫理
- 家族が食べられる量だけキープ:大量キープ・捨て魚は釣り文化の信頼を失う
- 大型魚の積極的リリース:大型の雌が産む卵は小型の数倍〜数百倍。大型雌を逃がすことが資源回復に直結
- 釣り仲間への啓発:「小さいから逃がそう」という文化を仲間内で広げる
まとめ——「リリースは技術。正しく返してこそ意味がある」
キャッチアンドリリースは「優しい行為」ですが、間違った方法では魚を死なせてしまいます。ウェットハンド・最短空気中時間・蘇生技術——この3つを身につけることで、遠州灘・浜名湖の魚たちを次の釣り人(そして自分)のために生かし続けることができます。
※各漁業調整規則による禁止サイズ・禁漁期は必ず確認してください。法定サイズ以下の魚のキープは法律違反になる場合があります。



