アウトドア向けで-16℃設定の保冷剤はありますが、SHARPの社内ベンチャーが「-22℃」で保温する蓄冷材を開発した模様。なんとドライアイスの代用になるレベル。
冷凍輸送に革新が訪れそう。でも一般には関係なさそう。
TEKION LABが開発した-22℃の適温蓄冷材
エグい蓄冷材を開発したのは、SHARPの社内ベンチャー「TEKION LAB(テキオンラボ)」。開発の経緯は後述しますが、偶然の産物でした。
現在の冷凍輸送に使われるのはドライアイスか-40℃の保冷剤。これらが抱えるのはコスト面の問題。
ドライアイスは低温輸送で効率の良い選択ですが、製造元から買取る必要があるし、必要な量を貯蔵しておく手間もあります。-40℃の冷凍庫は電力も使うし、凍結までのコストもかかります。
適温蓄冷材なら、-25℃環境下で48時間、-30℃設定なら11時間で凍結するため、従来の保冷剤よりも短時間で凍るし、消費電力も少なくなります。
新たに開発された蓄冷材を使うことで、輸送コストの削減に、温室効果ガスの削減など、地球環境への配慮が実現されるわけですね。
家庭で使うのは難しい
-22℃の蓄冷材は、釣り人にとって嬉しい製品かもしれない。
でも家庭用の冷凍庫で凍らせるのは難しい。
家庭用の冷凍室は、JIS規格で-18℃以下と決められています。最大でも-22℃くらいが精一杯。-16℃の保冷剤が多い理由は、家庭用の冷凍庫でも十分凍らせれる限界だからですね。
もし-22℃以下で凍らせたいなら、業務用を買う道もあります……が、電気代もかかるけど本体も高いです。参考に-30℃もいける冷凍庫のページを置いておきます。
それを凍らせることで、なんらかの利益を生むなら別ですけどね。
保冷剤と蓄冷材の違い
SHARPの適温蓄冷材は、剤ではなく「材」を使っています。保冷剤とは別に蓄冷”剤”もあるわけで、「もしかして誤字?」と思えなくもない。
それは日本語が難しいせいもあります。
保冷剤の「剤」は薬剤のことで、「保冷」は物体が温まるのを防ぐ作用をしめしています。蓄冷剤は簡単にいうと、保冷剤の中に入っている液体(’水とゲル剤)のこと。
保冷剤と蓄冷剤……言葉は違いますが、ぶっちゃけ同じです。
「不思議な氷」は冷凍輸送の問題解決へ
適温蓄冷材とあえて「材」を使ったのは、初期に開発された「蓄冷材料」から発展した製品だからかも。
これを利用した保冷バッグはすでに製品化されています。
-任意の温度管理(-2℃から25℃で5段階)ができる保冷バッグで、特に飲食店で温度管理が厳しめの飲料(ワインや日本酒とか)を提供する時に役立ちます。
これを使えば、テーブルに置いてある状態でもベストを維持できるため、サービスを追求する店にとっては救世主となりうるかも。