「サンマが不漁で今年も高い! 秋の味覚は庶民の味じゃなくなった!」
初競りの一報に合わせて、サンマに関する上記のような意図を含むニュースを見かけるようになった。正直いって、魚が関係するそれはもう聞き飽きた。生鮮の高騰を報じたところで、誰ひとり助からないんだよなぁ。何が狙いなんだろうなぁ……って。
サンマが高いと話題ですが、初競りのご祝儀価格じゃないの?
北海道のサンマ初水揚げで、その取引価格が話題なっていた。
北海道厚岸町の地方卸売市場で24日、サンマの初競りがあり、1キロ当たりで昨年の2516円を上回る1万1880円の値段が付いた。厚岸町内の店頭では1匹480~1200円で販売された。
https://www.sankei.com/life/news/200824/lif2008240016-n1.html
水揚げ量は900キロで昨年の2%程度。初競りでは1キロあたり11,880円。店頭販売価格は480~1200円とのこと……。やっべぇ……サンマがウナギに近づいているよ……、秋の味覚はもう食べられなくなるのかなぁ……(泣)。
──と思った人もいるのではないでしょうか。
初競りには「ご祝儀価格」がつきもの。だから初競りの価格がずっと続くかといえば、続くわけがない。だって普段は1匹100円の魚が、2倍、いや5倍以上の値段になったら、誰が買うんだい? あたしゃいやだよ。たとえ秋を象徴する魚であっても。
市場価格は生産数に対して敏感に反応します。でも購入側にとってはそうでもない。
消費税が2%上がることでキレるし、野菜が10円値上がりするだけで「買えない!」と喚いたりする。……でもこれらの声はごくごく一部。もともと食べない人もいれば、価格以上の価値を感じないから買わない人もいる。「秋といえば秋刀魚! やっぱこれだね!」なんて人は買うだろうし、秋刀魚定食がウリの店は買わざるをえない。
こういうニュースの時って必ず、”買いたいけど買えない”声を取り上げるんですよね。
「今年は我慢して来年に期待しよう…」が何故できないのか
”サンマが高値”のニュースを見ても、何を伝えたいのかがわからない……。
ただサンマが高いことをセンセーショナルにしたいのか。個体数の減少でこうなってるからなんとかしようよと言いたいのか。初競りのご祝儀価格だからこの値段で常に売るわけじゃないよと、理解る人だけに伝えたいのか。サンマが食べれなくなるかもしれない、だから今食べようと煽りたいのか。
──意図がわからない。
まあ何であれ、事実を伝えるのが報道の役目。でも政治の話題みたいに、裏の裏の裏まで意図を読もうとする発言が、こういうニュースに無いのが残念に思う。温暖化で生息域が変化しているのは確かですが、そもそも……水揚げ量を営業成績みたいに捉えるのは如何なものか。
漁師にとっては”成績”ですけど、ろくに個体回復期待値を調べてもないのに、生産数を常に右肩にすればどうだろう? 枯渇するのも当たり前だと思いませんか? 誰もが欲しい原油ですら生産管理して価格調整しているのに。
最高値で競り落とした丸弘水産=厚岸町=の沢田剛幸さん(41)は「頑張って買った」と笑顔で語る一方「今後の漁模様は分からないが、このままでは安くなることはなさそう。買う側としても難しい」と表情を曇らせた。
https://www.sankei.com/life/news/200824/lif2008240016-n1.html
ご祝儀価格は文化と捉えるか、初水揚げを完遂してくれた漁師へのボーナスと捉えるか、それぞれの考えがあると思います。ただこの”高騰した価格だけ”を強調するのはいただけない。事実を報じているだけだが、誰も救われないニュースでしょう。サンマを買う買わないの問題じゃなく、「これからも従来の価格で食べたいならどうすればいいか?」を想起させるようにして欲しいものです。
「高くても買うことで支えよう!」の無茶振りでもええんやで。毎年サンマがこれだけしか捕れなくなったら、この価格が当たり前になるかもしれないしね──。
ちなみに2020年の「目黒のさんま祭り」は中止みたいです。