釣り人は皆、『ボラ』を過小評価している。食性から表皮に独特の臭いがあるのが、釣り人に嫌われる理由かと思う。
「臭くない魚なんているかい?」といいたい。
ボラは身まで臭いわけじゃないです。その刺身は甘みがあって絶品! 知らない人に食べさせると、「なにこれめっちゃ美味いやん!」というでしょう。そしてボラを見せつけるのです。
ボラの刺身は一度食べると記憶に残る魔性の味
あまり知られていない事実ですが、ボラはなんと、出世魚なんです!
……はいどうでもいいですね。海釣りメンなら”見ないほうがおかしい魚”ですし、詳しい説明は他所に丸投げします。今記事は、釣り人に蔑まれる存在のボラを敬おうとする内容です。

ボラを使った有名料理といえば……?
ボラを使った有名な料理といえば「カラスミ」でしょう。これは卵巣を塩漬けしたもので、珍味として重宝されています。ちなみに世界の珍味は、文字通り”珍しい味”なだけで、必ずしも美食家が唸る美味ではないと教えておきます。
他には「ボラのヘソ」など、余す所なく食べようとする姿勢を感じる料理もあります。
その文化から知れるのは、かつては庶民に近かった大衆魚だったことが伺えます。海と川にいますし、今でもドブ川に棲んでいたり、「なんでここに魚が?」……なんて場所にもいるのがボラさんです。
そんな身近な存在が嫌われはじめたのは、飽食の時代が訪れてから──。
クサイ魚の認識が強くなったのは「水質汚染」のせい
ボラの食性はプランクトンに海藻類が主体です。下気味に開く口で水底を撹拌し、砂泥とエサを同時に取り込んで、体内の消化器官で上手に分別して食べます。賢い。
魚の臭いは食性によるものがほとんど。人間も同じですよね。
高度経済成長期になると、工場排水が垂れ流しになって、海が栄養過多の状態になります。すると微生物の生死サイクルが活発化して、死骸が砂底に溜まります。微生物が多くなると、水中は低酸素状態になるため、魚類が生息するのも難しくなる……。そうして大量死に繋がります。
──で、有機物の沈殿した砂泥は「ヘドロ」になり、いや~な臭い(ガス)を発生します。水質悪化すると、大半の魚類はさよならバイバイしますが、耐性が強いごく一部が残ります。
それがクロダイ(チヌ)・ボラ・スズキなど、釣り人にとって身近な魚。
これらは沿岸で捕りやすい魚ですし、漁師にとっても身近な魚。ですが、水質汚染で記憶よりも臭い状態で釣れるようになりました。中でも群を抜いて臭かったのが「ボラ」です。平成初期までは、食べれる魚と教えられなかったほど。
しかし現在、全国の水質はあの時代以前よりも綺麗になっています。だからボラも美味しくいただきやすい環境になったわけです。
ボラの刺身を食べるなら西日本がおすすめ!
魚の生食文化は西日本が強い。特に瀬戸内に面した地域は、昔から鮮度の良さと引き締まった身を存分に味わえる「刺身」がメインです。
関東圏でもボラは食べられますが、平成初期までのクサイ東京湾を知る年代にとって、「ボラは臭い」の先入観が未だ抜ききれていません。なのでボラの刺身を食べに行くなら関西ですね。浜名湖でも刺身用がスーパーで売っていたりします。
昔から「浜名湖のボラは刺身でも美味い」とか、深く意味も知らず教え込まれた気がします。
冷静に考えると、沿岸に工業地帯があるわけでもないし、浄水場ができるのは早かったし、水質汚染する理由があまりなかったおかげではないだろうか。
ボラさんは郷土料理でも人気!
ボラは砂泥を食べるため、消化器官の一部が異様に発達しています。それが「ボラのへそ」と呼ばれる部位。これは胃の出口が発達したもので砂肝みたいな触感。てか、役割的に砂肝だよね?
その他にも「カラスミ」があります。でも店頭に並ぶことはあまりなく、一般が気軽に──とはいきません。さす珍味。そして”ボラ飯”は全国で楽しむこともできる。
香川県の「ボラ飯」は、ボラを使った炊き込みご飯。
……聞いただけで「ウッ(卒倒)」しかねない臭いがしそうですが、臭いの元となる血合いと皮を入れずに、身と中骨を入れる程度なので、それほどヤバイ臭いはしないでしょう。
石川県には「ボラ茶漬け」があります。
これは鯛茶漬けみたいなもの。新鮮な刺身を使ったり、カラスミを使うことも。それを白飯に乗せて出汁をかけていただく。……シンプルだけど美味しそうですね。
愛知県には郷土料理として「ボラ雑炊」があります。
伊勢湾でも奥になる海部南部の料理で、川の流れ込みもあって干潟になりやすく、ボラがたくさん集まりそうな地域です。だからこそボラを使った料理が産まれたのかもしれません。
ボラの郷土料理が楽しめる飲食店も、探せば多少なりともありますね。江戸前で握られてた頃もあったし、「今のボラは大丈夫ですよ~」と美味しさが浸透すれば、めちゃウマなボラ料理が楽しめる店も増えるかもしれません。
飲食店にボラが食べれないなら釣ればいいじゃない
ボラはその辺に群れているけど、いざ釣ろうとしても、難易度が高めの魚です。
その理由は食性がプランクトンだから。通常の釣りエサに見向きもしないのはこのためです。だからコマセには寄るけど、大きめのエサは食わないし、ルアーを追ってくるわけでもない。だから釣るのが難しい……。
でも、チョロく釣る方法が一応あって、それは2種類あります。
- チヌのダンゴ釣りをやれば”ついでに”よく釣れる
- サビキならエサいらずで釣れるが……
(1)は王道ルート。鯉の吸い込み釣りと要領は同じで、専用の仕掛けが販売されていたり。(2)はプランクトンを食う組を釣る最終兵器のサビキを使います。ただし、相手がデカく引きが強いため、1匹に耐える仕掛けを選ぶ必要があります。
……チョロと簡単を選ぶならサビキ釣りです。仕掛けは最低でも「幹糸3号・ハリス1号以上」を選ばないと、40cm上のボラには速攻ハリスが切られるでしょう。あとタモを忘れないように。
ボラさんはよく水面から飛び出していますが、なぜあそこまで派手に飛んでいるかは、実はよくわかっていません。体についた寄生虫を落とすためとか、空気を吸うためとか、諸説あります。
解明するには、ボラさんと脳波で繋がるしかないですね。