キタマクラは、小さなフグの仲間でパッと見はおちょぼ口の可愛い魚です。
しかし、魚釣りでは餌泥棒をする外道であったり、知らずに触った手で何かを口にしてしまったら大変な事になってしまいます。
そんな可愛い厄介者の特徴や性質などを今回も盛りだくさんにご紹介させていただきます。
1,見た目は可愛い「キタマクラ」とは何者!?
①分類
キタマクラとは「フグ目フグ科キタマクラ属」に分類されているフグの仲間です。
学名では「Canthigaster」となっており「シマキンチャクフグ」や「ヒメキンチャクフグ」などもキタマクラの仲間となります。
②大体の大きさは?
フグの仲間の中では小型の種類で、成長すると全長20cm近くになります。時折5〜10cmほどの幼魚や若魚も見られます。
③生息地について
キタマクラの生息分布は広く、サンゴ礁や藻場、岩礁を好んでいて、ハワイ近海やインド洋、西太平洋などの暖かい海に生息しています。
日本では主に福島県より南方の太平洋沿岸に広く生息しており、伊豆諸島や小笠原諸島、琉球列島や九州・四国などでもよく見られます。
水深100m近くの深さでも見られますが、特に水深30m未満の浅い場所を好むため、海釣りではクサフグ並みの外道として釣り人の前に立ち塞がる事も少なくありません。
④どんな見た目?
マフグやトラフグと違い、キタマクラは口先が少し長く、体型も楕円形に近くシャープな感じです。
目は光の反射でメタリックブルーやグリーンに輝き、体の背中側は淡い褐色、エラの辺りでUターンして尾柄に戻る茶褐色のライン、お腹側は乳白色をしています。
また、背中側から頭部にかけて淡黄〜乳白色の細かな虫食い模様が入るため、よく見ると小さくてキレイな魚です。
フグの仲間の中では泳ぎが上手で、泳ぎ方は胸ビレと背ビレ、尻ビレを小刻みにはためかせてスィーッ泳ぎます。
尾ビレは基本的に使いませんが、ホバリングをする時や方向転換をする時に尾ビレを広げて体勢を整えたりブレーキをかけるために使われます。
⑤別名は?
基本的にキタマクラと呼ばれてはいますが、生息地の1つである八丈島では「イソネズミ」という地方名で呼ばれる事もあります。
また、他にも巾着袋のような見た目から「キンチャクフグ」や「オマンブフグ」と呼ばれたり、体色から「ギンフグ」「ギンバフグ」などもあります。
珍しい呼び名としては、モッチリした触り心地から「モチフグ」や後述する理由から「メクラフグ」という呼び名も存在します。
海外では「トビー」や「シャープノーズ・パファー」と呼ばれており、特にオーストラリアでは「トビー」と呼ばれる事が多いようです。
2,キタマクラが危険生物、厄介者と呼ばれる理由とは!?
特徴だけ見ると怖さというより可愛さが勝ってしまうような魚ですが、キタマクラは生息地では「外道」として知られているだけでなく、非常に危険な魚として有名です。
ここではそんなキタマクラの厄介者な面と危険生物としての面についてご紹介させていただきます。
①厄介者としての一面について
可愛らしい見た目のキタマクラですが、生息地では餌泥棒をしたり、針やラインを鋭い歯で噛み切ったり曲げてしまうため「外道」として知られています。
味の良さや難易度から人気が高い釣りの対象魚・カワハギと同じようにホバリングが得意でおちょぼ口なので、釣り針に仕掛けたオキアミなどの釣り餌をついばむように食べてしまいます。
また、好奇心も強いため、一度仕掛けを見つけるとお腹が満たされるまでしつこく追いかけるという性質があるのも釣り人にとっては厄介な特徴です。
🌀ずっと追いかけてくる!
好奇心旺盛で餌を見つけるとお腹が満たされるまで追いかけてくるキタマクラ。
1度狙われてしまうと、かなりしつこく追いかけてきます。
その様子が特に分かりやすいのが「繁殖期のアオリイカやコブシメ達」です。
アオリイカやコブシメは1年で寿命を全うすると言われており、繁殖期の彼らはメスに猛アピールをしたり、オス同士ケンカをして優位性を示したりします。
この時キタマクラの仲間達が現れると、イカのゲソ部分を先っぽから齧りついて食べてしまいます。
たまらず逃げても海中を滑るように泳いで追いつき、一瞬の隙をついて再び齧りつきます。
キタマクラの捕食はとにかくしつこいため、いざ産卵となった時にメスが傷付かないよう、オスのイカは自らの身を挺してメスを守り抜きます。
この間、弱点である眉間を齧られてもオスは決して逃げません。自分が逃げてしまえば、メスや卵が狙われてしまう事が分かっているからです。
産卵が終わり、メスが卵を隠し終わった頃には既にオスはボロボロになっていたり、ダメージのあまり事切れている事も少なくありません。
ちょっと悲しいかも知れませんが、これが自然の摂理であり、キタマクラ達の捕食行動なのです。
②危険生物としての一面について
どこかとぼけた表情をしている魚ではありますが、キタマクラは古くから恐れられる危険生物です。
何が危険なのかというと、毒薬として知られる青酸カリなど足元にも及ばないほどの猛毒「テトロドトキシン」を持っているからです。
テトロドトキシンは青酸カリの800倍以上の毒性を持ち、200度以上で加熱しても解毒されないため、キタマクラをそのまま焼いて食べようとする行為は非常に危険です。
この猛毒はキタマクラの皮や粘膜の他、肝や腸といった内臓に含まれています。
特に皮に多く含まれているとされており、そのまま食べるだけでなくキタマクラを触った手で傷口や目に触れてしまった場合、粘膜に含まれている猛毒が体内に入って悪影響を及ぼす可能性があります。
また、昔は誤食なども多かったため、キタマクラの猛毒によって多くの人々が亡くなっています。
■キタマクラの名前の由来は?
日本では亡くなった方を安置する時に北の方角に枕を設置するという習わしがあります。これを「北枕」と呼び、葬儀を表す言葉となっています。
キタマクラの名前もここから由来しており、食べてしまえば文字通り「北枕に寝かされる」事を意味しているのです。
■そもそもフグの名前は物騒なのが多い
葬儀の習わしに因むキタマクラもそうですが、フグの仲間の名前は結構物騒なものが多いです。
諸説ありますが、「ヒガンフグ」は食べれば「彼岸」を迎える事から、「ケショウフグ」は「死に化粧」を意味しているという説もあります。
また、全く包み隠してない名前もあり、「ドクサバフグ」はあからさまに「毒あります」と宣言しています。
フグの恐ろしさを知っている釣り人の方々には無用の心配だと筆者も考えています。
フグの調理師によってしっかり処理されれば食べられる種類もいますが、釣れたからといって自分で捌いて食べないようにしましょう。
■昔は間違えられていた!?
キタマクラはヒメキンチャクフグのような種類であれば判別は少々難しくなりますが、それ以外であれば判別は難しくありません。
しかし、かつては食用の「ウスバハギ」と間違われてしまい、誤食による死亡事故もあったそうです。
ウスバハギとキタマクラは見た目もヒレの形も全く似ていないので間違える事は無いと思いますが、疑わしい場合はリリースしましょう。
3,キタマクラの食性について
有毒なフグやハギの仲間は生まれつき体内に毒があるのではなく、摂餌した生物による「生物濃縮」によるものと考えられています。
キタマクラは雑食性で、食べる物も海藻やサンゴだけでなくイカやタコなどの軟体動物やヤドカリやカニといった甲殻類、さらにはヒトデやナマコなどの棘皮動物、ゴカイなども食べます。
このような食性から体内に毒が蓄えられたり、釣りの際に外道としてかかりやすくなってしまうのです。
4,もしキタマクラを釣り上げてしまったら
サビキ釣りや投げ釣りで外道としてかかりやすいキタマクラ。
もし釣り上げてしまったら、まずは素手で触らないようにしましょう。
ゴム手袋や使い捨て手袋をしてから触り、極力キタマクラの粘膜に触らないようにするのが大切です。
次にペンチで口の中の針を外し、海に返してあげましょう。
厄介者かも知れませんが、キタマクラも自然に生きる一員です。海に帰る事で自然界の抑止力としての役目を果たしてくれるのです。
⭐手袋が無い場合はこの方法を試してみて!
手袋は持っていても指先まで覆っているタイプでなかったり、そもそも手袋を持っていない場合もあると思います。
そんな時にキタマクラが釣れてしまった場合は、素手では触れず、海水を入れられる容器にそのまま入れて何度か上下に動かしてみてください。
キタマクラも何度も口をパクパクさせてくれるので、上手くいけば針がポロッと外れてくれます。
針が外れたら容器の海水ごとキタマクラを海に返します。
容器も無い場合は「フィッシュグリップ」や「トング」、または靴でキタマクラの体を挟み、ペンチなどで口の針を外してあげましょう。
キタマクラは「食べる」という行為以外を除けば、直接粘膜に触れなければ被害を減らす事ができるので冷静に対処するようにしましょう。
5,もしキタマクラを食べてしまったor触ってしまったら
キタマクラの誤食による事故は最近聞きませんが、何らかの理由で口にしてしまったという可能性は0ではありません。
キタマクラを食べてしまったら
もしキタマクラを口にしてしまった場合、部位や量によりますが、数時間以内に体の痺れや倦怠感、吐き気、頭痛などの症状が現れます。
フグ系の魚、または白身魚を食べてこの症状が出たらすぐに救急車に電話しましょう。
また、体調が急変して動けなくなっても救急隊員がすぐ室内に入れるように、玄関の鍵は開けておくようにしてください。
キタマクラは筋肉は無毒とされており、ほんの一部の人が釣れたり採取できた時に自分で捌いて食べる事があるそうです。
自分でやったら「自己責任」で終わりですが、面白がって仲間内で食べてしまうという最悪なパターンもあるので、何となくフグっぽい白身魚を貰ったら種類くらいは聞いておくと食中毒を避けられる可能性は高くなります。
この「種類を聞く」という行動はかなり大切な事で、アジやヒラメなど見れば分かる種類や状態であれば、そのまま「ありがとう」と感謝できます。
しかし、種類を濁して「美味しい白身魚」と言った場合は注意した方が無難です。
また、ビニール袋にそのまま入って「フグだけど調理師の知り合いが捌いた」なども注意が必要です。
フグの調理師に捌かれたフグの身は大体干物に加工されていたり、パックに詰められている事が多いです。
受け取る場合はフグの購入場所(パックや干物だと加工会社が記載されている)や捌いた人の名前を聞いておくと「もしも」の事が起きた場合に役立ちます。
■貰い物のフグで食中毒!証拠があれば相手を罪に問える!
キタマクラなどのフグによる食中毒は、死亡事故に繋がるほど危険です。
しかし、食べた量や処置の速さによっては助かる場合もあります。
そんな命の危機を乗り越え退院ができたら、病院から発行される「診断書」と「貰い物のフグ」という証拠があれば、警察に被害届けを出して渡してきた人を罪に問える事ができます。
フグの調理には専門の資格が必要なので、無免許で捌いたフグを渡した、あるいはキタマクラのように一般的に食用ではない種類を捌いて種類を明かさずに食べさせたと分かれば流石に警察も黙ってはいないはずです。
また、テトロドトキシンは非常に強力なので後遺症が残る可能性もあります。色々とキッチリ償って欲しい場合は弁護士も雇って問題解決に挑むのがオススメです。
「知り合い」だとか「悪ふざけ」などで済まないのがフグ毒。
これから魚釣りや採取を趣味として始める方は、フグが釣れても個人で捌いて配るなどの愚かな行為には手を染めないように願いたいものです。
■動画で見ても真似しちゃダメ!
動画配信を手掛ける方の中には一般的に食用としない種類を捕獲して食べるという動画を配信している方もいらっしゃいます。
身に付けた知識から実行に移し、中にはキタマクラを捌いて食べるという動画もあります。
キタマクラは皮膚や腸などに毒を持ちますが、筋肉には毒が無いとされており、ごく一部の方が捕獲して捌き、食べているそうです。
完全に自己責任なので、動画を見ても真似しないようにしましょう。
また、海水温上昇の結果「ハイブリッドフグ」という存在も生まれています。
フグは種類によって毒が含まれている部位が違うため、ハイブリッドになった事で毒の部位が不明になってしまい問題になっています。
特に、キタマクラの仲間の多くは昔から食用にされなかった事から毒が無い部位が詳しく解明されていません。
もし、毒の部位が分かっているキタマクラと、キタマクラに「良く似た別種」のヒメキンチャクフグが交配して生まれたハイブリッドフグを食べてしまったら非常に危険なので食べないように気を付けてください。
キタマクラを触ってしまったら
キタマクラを触ってしまった場合は、手を洗剤を使ってしっかり洗いましょう。
手が荒れてしまうかも知れませんが、できれば2〜3回ほど洗って手に着いたキタマクラの粘膜を落としきる必要があります。
逆に、キタマクラを触った後にやってはいけない事が「手をそのままにしてしまう事」です。
手を洗わずにいると、キタマクラを触った事など忘れて目を擦ってしまったり、その手で直接食べ物を触って食べてしまうと粘膜に含まれる猛毒が体内に入ってしまう危険性が高まります。
■消えぬ毒性!不用意に触らない事!
釣り上げてしまった場合はやむを得ず素手で触ってリリースする事も少なくありません。
しかし、中には砂浜に打ち上げられていたり、外道として釣られたキタマクラが防波堤などにそのまま捨てられている事があります。
特に後者の場合は完全に釣り人としてのモラルが問われる事なので、改めて考えさせられる事でもあります。
キタマクラはアウトドアに強い方であればその危険性が分かるのですが、初見だったり存在をよく知らない方々からすれば「興味深い何か」です。
しかもキタマクラの毒性は死してなお消える事はありません。
その結果、面白がって触ってしまい被害が出てしまう可能性があるのです。
思わぬ被害を避けるためにも、キタマクラの死骸を見つけても触らないように注意しましょう。
6,キタマクラの厄介者や危険生物以外の一面について
小さな体ととぼけた表情で餌泥棒をしたり強力な毒を持つフグの仲間・キタマクラですが、意外な一面があったりもします。
ここではそんなキタマクラの意外な一面についても皆様にご紹介させていただきます。
①歯の長さを調整する!
キタマクラなどのフグの仲間には鋭く強力な歯があります。
この歯はラインや針を切ってしまうため煙たがられる原因になっていますが、フグ達にとっては大切な武器でもあるのでキタマクラ達は定期的に自分の歯を「メンテナンス」する様子が確認されています。
そのメンテナンス方法とは、「硬い物を齧る事」です。
フグの歯はハムスターやウサギなどの齧歯類と同じように伸び続けるため、小石や貝殻、サンゴの骨などの硬い物を齧って歯の長さを調節しているのです。
②ヒトデやナマコなどの天敵!
高級食材や珍味として好まれるナマコやヒトデ、ウニですが、毒を持つ種類がいたり、殖えすぎた結果として海藻や二枚貝などを食べ尽くしたりする事があります。
そんな棘皮動物達の人間を除いた数少ない天敵こそが、キタマクラなどのフグの仲間なのです。
キタマクラ達には棘皮動物が持つ毒が効かないどころか積極的に狙ってくるため、自然界の抑止力として彼らの増殖し過ぎを防ぐ役割を果たしてくれます。
また、小さなウミケムシ程度であればキタマクラは捕食対象にするため、こちらの殖えすぎも抑えてくれていると言えます。
③マリンアクアリウムでは人気者!
水族館や自宅で飼育するマリンアクアリウムでは、キタマクラの仲間達は高い人気を誇ります。
滑らかな体表やカラフルな体色、見る角度で変わる目の色、そして人懐こい性格はアクアリストやダイバーにも人気があるのですが、釣り上げてしまった方でも可愛さのあまり持ち帰って飼育してしまうほどハートキャッチに定評があります。
飼育難易度はフグの中では簡単な方で、海水とライブロック、飼育セットがあれば飼育できますし、餌も市販の海水魚用人工飼料や市販のアサリの剥き身の他に時々ワカメやアオサといった海藻を与えればおちょぼ口で食べてくれます。
また、人懐こいので指先や人影を追いかけたり、中には餌の催促やかまって欲しさに水鉄砲をしてくる事もあります。
気を付ける事と言えば、後述する性質と環境に慣れるまでは病気にかかりやすい事、齧れるものが無いと稀にコードや水温計を齧る場合がある事くらいです。
日本ではキタマクラ以外にもシマキンチャクフグやヒメキンチャクフグも釣りなどで採取できますが、販売されている外国産の種類として「インドパシフィック・トビー」や「カリビアン・シャープノーズパファー」なども美しく人気があります。
④実は団体行動が嫌い!
キタマクラの仲間は見た目からは想像もできないほど団体行動が大嫌いです。
どのくらい嫌いかと言うと、同種どころか体型や見た目が似ている同属を見つけると体当たりや噛みつきなどの大喧嘩をしてしまうほどです。
実はキタマクラの仲間達は縄張り意識がとても強く、基本的に単独行動をしています。
この特徴から、外道として釣り上げられる事があってもクサフグのように連続で大量に釣り上げられるという事は少なく、むしろ同じ場所でキタマクラ達が数匹釣れる事は、珍しい方だったりします。
飼育する時は相当広い水槽でない限りは1匹だけにするか、キタマクラとは全く別種のスズメダイやハナダイ、泳ぎが得意なアジなどと泳がせるのがセオリーだったりします。
⑤おや?キタマクラの様子が!
キタマクラは他のフグと同じように身を守るため、体内に空気や海水を取り込んで膨らむ事ができます。
しかし、近くに同属がいたり外敵が近付いたりすると、体色を濃くして虫食い模様を目立たせるようになります。
さらに、皮膚が縦に伸びて体を大きく見せて威嚇する行動も取り始めます。
この時の姿は皮膚が伸びる事で確かにカワハギに近い感じはしますが、模様や顔付きはやっぱりカワハギとは違うので間違える事はほとんど無さそうです。
⑥むしろ向こうから似せてきた!
かつてはカワハギの仲間と勘違いされて誤食され、被害者を出してきたキタマクラの仲間達。
その身に宿す猛毒は海の世界でも効果はテキメンで、獰猛な肉食魚ですらキタマクラ達の体色を見るだけで逃げ出したり、捕食を避ける様子が確認できます。
そして、海の中には彼らに擬態する事で身を守っている種類がいます。
それが「ノコギリハギ」という魚です。まさかのカワハギの仲間がキタマクラ達に寄り添っています。
ノコギリハギはシマキンチャクフグの仲間に擬態しており、体色の配色パターンや体の大きさもそっくりです。
さらに擬態の精度を上げるため、2つある背ビレの内、第1背ビレを背中にピッタリとつけて泳ぐ事でシマキンチャクフグになりきっています。
こちらもマリンアクアリウムで人気の魚ではありますが、悲しい事に、本物と混泳させると擬態の精度が高すぎて執拗に攻撃されてしまうという事故も少なくなかったりします。
⑦猛毒が効かない!?その意外な天敵とは!
最強クラスの猛毒で身を守るキタマクラ達。
多くの肉食魚すら忌み嫌うその力は高い防御率を誇ります。
しかし、やはり自然界です。猛毒を持つ彼らにも恐ろしい天敵がいるのです。
1つ目はサイショウフグやマフグなど、キタマクラ達より大型のフグ達です。
フグは積極的に毒を摂取しようとする種類が多く、この大型のフグ達も毒と餌を求め、そのどちらも得ることができるキタマクラ達を積極的に狙います。
2つ目はカエルアンコウの仲間です。
水槽内ではカエルアンコウが苛められるので、やってはいけない組み合わせとして有名です。
しかし、自然界となると岩場や海藻に擬態したカエルアンコウが、まだ小さなキタマクラ達を罠にかけて捕食します。
3つ目はキタマクラ達にとって一番恐ろしい存在です。
その正体は、なんと「エソの仲間達」です。
こちらも外道として名高い魚ですが、エソの仲間は体内にフグ毒を分解、あるいは無効化できる酵素を持っていると考えられています。
実際にエソ達はキタマクラ達が近付くと素早く大きな口で噛みついて捕食してしまいます。
どんな猛毒を持っていても、必ず抑止力が存在する自然の厳しさと神秘が感じられます。
まとめ
今回は可愛いけど危険な魚・キタマクラについてご紹介させていただきました。
キタマクラは身に宿す猛毒が非常に危険かつ外道として釣られてしまう魚ですが、食べようとしたり素手で触ってそのままにしなければそこまで恐ろしい魚ではありません。
むしろ餌泥棒や釣具を噛み切りさえしなければ、とってもフレンドリーで可愛い海水魚です。
心に余裕があれば、プラケースなどに入れて観察してみても面白いと思います。
また、キタマクラは海流の影響を受けて磯や浅場に100円玉サイズの可愛い幼魚が回遊してくる事があります。
危険な一面がある事は理解しつつ、実はキタマクラの可愛さに惹かれているという方は、磯採集などでネットやプラケースで幼魚を捕まえて飼育を始めるのも良いと思います。
この記事が食べたり触ってそのままにしたら危ないキタマクラの仲間達と上手く付き合いながら魚釣りや磯採集が楽しめる助力になれれば筆者も幸いです。