近年、海水温の上昇に伴い暖かい海に生息している生き物が少しずつ北上してきている事が問題視されています。
特に東北地方では伊勢エビやギマ、オニオコゼなどの本来ならばほとんど水揚げされない生き物が発見・水揚げされるようになったため、他の地域でも同じような事が起きるのは必然的です。
そこで今回は暖かい海を好む危険生物・ウツボについて皆様にご紹介させていただきます。
ウツボは「海のギャング」と呼ばれ、危険生物としてはかなりポピュラーな種類ではありますが、鋭い牙で噛みつかれると凄まじい裂傷を負う事になってしまいます。
1,海のギャング・ウツボの特徴について
①分類
ウツボは生物学上「ウナギ目ウツボ亜目ウツボ科」に分類されています。
ウナギに近い仲間ですが、遥かに太い体と丈夫な皮膚、鋭い牙を持つため危険生物として昔から恐れられてきました。
②生息地について
世界の暖かい海に広く分布しており、日本では南西諸島や黒潮が通る海域に多くの種類が生息しています。
比較的浅いサンゴ礁や岩礁を好んでおり、一部の種類はマングローブ林などの汽水域に生息する種類もいます。
③どのくらいの大きさなの?
ヒメウツボのような小型種は20cmほどですが、最長種である「オナガウツボ」は体長約4mという記録が残っています。
しかし、多くの種類が全長1m前後もある大型肉食魚である事に変わりはありません。
④どんな見た目をしているの?
ウナギに近い仲間らしく体は細長い円筒形をしていますが、ウナギやハモとは違い体が太い種類が多く、丈夫な皮を持っています。
この皮はかなりの柔軟性と防御力に優れており、一般的なナイフや包丁では簡単に切り裂く事はできません。
また、ハモやウナギとは違い、胸ビレはなく小さな鰓穴が見えています。腹ビレは退化し、背ビレ、尻ビレ、尾ビレが一体化している事もウツボの大きな特徴の1つです。
口は大きく目の後方まで達しており、多くの種類が鋭い牙を持っています。種類によっては鼻先がサケのオスのように湾曲して口を完全に閉じられなくなっているものもいます。
ウツボには匂いを感じる「鼻孔」という2対の器官があり、鼻先と目の近くについています。この鼻孔は管状になって伸びている種類もおり、中には花弁のようになっている珍しい種類もいます。
体色は種類とよって様々ですが、一般的なウツボは淡黄色の地色に黒褐〜褐色の不明瞭な帯模様をしており、他のウナギ目の魚と見分けるのは用意です。
⭐ウツボは皮膚呼吸もできる!
ウツボは陸に揚がってしまっても、他の魚のようにすぐ死んでしまう事はありません。
何故ならウナギやカエルのように皮膚から空気を取り込んで呼吸できるからです。
日本に生息しているウツボですら、体の表面が湿っていれば30分は陸地で活動できるというタフネスを見せつけてきます。
⑤どんな物を食べているの?
ウツボは肉食性でエビやカニなどの甲殻類やハギ、メジナなどの魚類を捕食しており、特にイカやタコなどの頭足類が大好物です。
そのためウツボは頭足類の天敵として知られており、大きなタコでもウツボからは足を犠牲にして逃げ回るほど恐れられています。
⭐ウツボは岩礁最強の生き物!
浅い岩礁やテトラポッドを主に根城にしているウツボは食物ピラミッドの「頂点捕食者」となっています。
分厚い丈夫な皮と粘液で全身を多い、大きな口と鋭い牙を持つウツボに敵う者はいないのです。
彼らのしつこい追跡や激しい攻撃の前に、狙われた獲物は大人しく捕食されるしかありません。
⑥昼行性?夜行性?
ウツボは基本的に巣穴から出ずに獲物を待ち伏せしていますが、夜になると巣穴から出て獲物を探しに行きます。
この時役に立つのが鋭い嗅覚であり、これを駆使して暗闇の中でも獲物を見つけ出す事ができます。
⑦名前の由来は?
ウツボの名前の由来は諸説あり、住みかにする岩穴の古語「うつほら」に由来する説、長い体が矢を入れる道具「靫(うつぼ)」に似ている事に由来する説などがあります。
また、地域によっては「本ウツボ」「真ウツボ」と呼ばれたり、「ヘンビ」「ナマダ」「ジャウナギ」「キダカ」「キダコ」という地方名もあります。
⭐「キダコ」の意味は!?
神奈川県三崎地区や長崎県では「キダコ」、鹿児島県では「キダカ」と呼ばれるウツボ。この呼び名の意味は気性が荒い事を示す「気猛」に由来すると言われています。
頂点捕食者故に臆する事なく相手と対峙し猛々しく襲ってくるウツボをよく表した呼び名です。
2,ウツボが危険生物と呼ばれる理由とは!
夜になると巣穴を出て岩礁やテトラポッドを取り仕切っているウツボは正に「海のギャング」「岩礁の首領」とも呼べる魚と言えます。
ここではそんな彼らの危険性について皆様にご紹介させていただきます。
①武器は鋭い牙と「第二の顎」!
ウツボが恐れられている大きな理由としてよく挙げられるのが口に並ぶ鋭い牙です。
しかし、噛まれたという方の中には明らかに不自然な噛み跡が残ります。まるで「2匹の魚に同じ場所を同時に噛まれた」ような跡です。
この正体は、ウツボが喉に隠し持っている第二の顎「咽頭顎」です。
咽頭顎は獲物を仕留める武器であると同時にしっかりと食い込み、そのまま飲み込むための器官です。
大きな魚もこの噛みつきからは簡単に逃げ出す事はできず、丸飲みにされてしまいます。
この二段攻撃による裂傷こそ、遥か昔から多くの人々を恐れさせてきたものの正体と言えるのです。
②さらなる恐怖!とどめの「デスロール」!
「デスロール」と聞くとワニが獲物を仕留め、食い千切るための行動が思い浮かぶかも知れませんが、ウツボもこのデスロールを繰り出し獲物や敵対者を食い千切ります。
食らいついたまま激しく体を回転させたり、体を結んだように絡めて隙間から引き千切るなど苛烈極まりない攻撃をします。
この攻撃は釣り上げられたり陸に揚げられたりで気が立っている時に不用意に手を出してしまうと繰り出してくる事があり、この攻撃を受けてしまった方の中には傷跡が残るほどの裂傷や指を切断されてしまった方もおり、非常に危険な事が分かります。
■釣糸に絡まったギャング!
ウツボはハモやタイ釣りの外道として釣り上げられる事がありますが、釣り上げられたその姿は大抵釣糸に絡まっています。
これは釣り針がかかった際に怒り狂い、大暴れした結果です。ハモやウナギでも絡まる事はほとんどありませんが、それ以上に柔軟な体と闘争心を持つウツボはラインを引き千切ろうと躍起になっているのです。
無論、釣り上げた後のウツボは疲れているどころかさらに怒りを滾らせているので針を外す際は十分注意が必要となります。
3,ウツボに噛まれてしまうパターンについて
噛まれてしまうパターンと聞くと、釣り上げた時やウツボを捌く時のイメージが強いかも知れません。
もちろんどちらもウツボに噛まれてしまうパターンの1つですが、他にも意外な瞬間に噛まれてしまう事があります。
ここではそんなパターンを幾つかご紹介させていただきます。
①針を外そうとして「ガブリ」!
ウツボは外道として釣り上げてしまうパターンが多く、本命として釣り上げる方はまだまだ少ないです。
しかし、釣り上げられたウツボは非常に気が立っており、針を外そうとしたり絡まったラインをほどこうとした瞬間に噛みついてくる事があります。
実際にかかったウツボを逃がそうとして噛まれるパターンが多いので注意が必要です。
②魚の血抜きをしていたら「ガブリ」!
意外と知られていないのですが、ウツボは自ら陸に揚がって獲物を探しに行くほどアグレッシブな魚です。
釣れた魚を持ち帰るために岩礁の低い場所で血抜きをしていると、血の匂いに誘われて陸地に揚がってくる事があります。
そして気付かぬうちにウツボに接近を許してしまい、釣った魚を奪われたり、足や手を噛まれてしまう事があります。
③磯遊びしていたら「ガブリ」!
ウツボはよく潮溜まり(タイドプール)に取り残される事がある他、自分から獲物を求めて浅瀬まで来る事があります。
そのため「磯は浅いから安心して遊べる」と思っていても、カニなどを捕まえようと手を伸ばした瞬間に岩陰に隠れていたウツボが飛び出し、噛みついてくる事があります。
とある有名人の方は、浅瀬で遊んでいた時にウツボに気付かず噛まれてしまった事があるそうです。
④捌こうとして「ガブリ」!
こちらもよくあるパターンの1つで、ウツボを食べようと捌く時や締める時に逆襲されてしまったという事もあるようです。
ウツボは生命力が強く、ただ陸地に揚げられただけでは対したダメージになりません。
むしろ怒りのボルテージが上がっており、何の対策もせずに締めようとすると暴れまわって噛みついてきます。
⑤ダイビングしてたら「ガブリ」!
ウツボは「とある理由」からダイビングでは根強い人気がある魚でもあります。
しかし、そこは海のギャング。距離が近すぎると大きな口を開けて噛みついてきます。
特に水中で噛みつかれると、痛みやパニックから口にあるレギュレーターを離してしまい、溺れてしまうという非常に危険な状態に陥りやすいため注意が必要です。
⑥餌をあげてたら「ガブリ」!
マリンアクアリウムの世界において、ウツボは比較的ポピュラーなペットとして知られており、飼育されている事もあります。
そんな中、餌を与えようとピンセットに餌を挟んで与えた時に勢い余って指や手に噛みついてしまう事もあります。
また、水槽掃除や飛び出しによって噛みつく事もあり、なかなかハードな飼育体験となります。
⑦ハモだと思ったら「ガブリ」!
どちらも暖かい海を好んでいるため、生息地域が被っている事が多いハモとウツボ。
そんな中、ハモ漁のための筒状の仕掛けにウツボが入り込んでしまい、仕掛けから出した瞬間に噛みつく事もあります。
ウツボの牙は鋭利で噛む力も強いため、長靴や胴長程度は簡単に貫通してしまうので漁師さんもかなり注意しています。
4,意外と律儀な魚?ウツボに噛まれないようにする方法について
「ウツボのどこが律儀なんだ」と思うかも知れませんが、ウツボは攻撃を仕掛けてくる前に「ある行動」を取っています。
この行動を知る事で噛みつかれる可能性を抑制できるので、釣りが好きな方もダイビングが好きな方も是非参考にしていただけたらと思います。
①口を大きく開ける
ウツボの代表的な行動の1つですが、これは噛まれないようにする上で重要な行動となります。
この「大きく口を開ける」という行動は「威嚇」です。
こちらに対してメンチを切っている状態という訳です。
ウツボが大きく口を開けていたら、口を閉じるまでそっとしておくと段々大人しくなっていきます。
②背ビレを激しく開閉する
これはかなり激怒している証拠です。海中で観察すると物凄い速さで背ビレを開閉し、牙を見せつけてきます。
私達に対して「自分は今機嫌が悪い」「それ以上近付いたら容赦しない」と伝えているのです。
この状態のウツボには流石のクリーナーシュリンプやホンソメワケベラもあまり近付こうとしません。
もし釣り上げてしまったり、ダイビング中にこの行動を取られたら、そっとしてあげると次第に落ち着きを取り戻していきます。
■大抵ウツボを刺激してしまうから噛まれる
ウツボの強力な噛みつきは捕食のためだけでなく、自衛のために使われます。
噛みつかれるのは主にウツボが身を守るためであり、大抵の場合は人間側が彼らを刺激した時のカウンターという事になります。
ある程度慣れている方だと野生のウツボを手懐ける事もできますが、彼らの事を理解できていないと行動そのものが裏目に出てしまい、ウツボ達の怒りを買ってしまうのです。
5,もしウツボを釣り上げてしまったら?
ウツボはかなり貪食な面があり、サバやアジなどを泳がせ釣りに使ったり、切り身にして打ち込みをしても空腹であれば昼夜問わずかかってしまう事も少なくありません。
ここではウツボを釣り上げてしまった時の対処方法についてご紹介させていただきます。
①釣り上げたら、まずは陸地に揚げる事
ウツボがかかったら絶対にやってはいけないのが海中に浸ける事です。
ビックリして海に落としてしまうかも知れませんが、そういう事をすると、絡まったラインにただでさえ苛立っている彼らをさらに煽ってしまう事になりかねません。
怖いかも知れませんが、まずは一度陸地に揚げてウツボの針を外す事に専念しましょう。
②少しそっとしておく
絡まり方にもよりますが、大抵ウツボの口元を見ると大きく開いて威嚇しています。
釣った側もビックリですが、釣られた側はもっとビックリしているので少しだけそっとしておきます。
すると少しずつ口を閉じるので、口を閉じるのを確認してから針を外してあげましょう。
③ウツボの頭にタオルを被せて掴む
あまり絡まっていなかったり、ウツボが小さい場合は首を強く踏みつけてペンチなどで針を外せますが、大きい個体だと力も桁外れなので取り押さえるのはなかなか難しいです。
大きいウツボがかかってしまった場合は、落ち着いてきた頃を見計らって、乾いたタオルをウツボの両方の目と鰓穴を塞ぐように被せます。
そしてタオルの上からしっかりとウツボを掴み、口を開いた時にペンチなどを使って針を外してあげましょう。
魚釣りの世界ではあまり使われない物で、どちらかというとヘビなどを扱う方が使う事が多い代物です。
「防針」の通り、鋭く尖った物から手を守る効果が高いため、防刃手袋や防寒手袋よりはずっとウツボの牙から手を守ってくれる心強いアイテムとなります。
また、ウツボだけでなくハモやアナゴ、オニカマス(バラクーダ)のように歯が鋭い魚にかかった針を安全に外す事にも向いています。
見た目が怖い魚ではありますが、ウツボは食用とされており、キチンと下処理ができればとても美味しい魚です。
そんなウツボを持ち帰りたい、安全に絞めたいという方はクーラーボックスにたくさんの氷を持っていきましょう。ウツボは暖かい海に生息している分寒さにはあまり強くないからです。
釣り上げたウツボを氷と海水が入ったクーラーボックスに入れると、いわゆる「氷締め」となり動きが鈍くなっていきます。
動きが鈍くなったら慎重にラインをほどき、包丁やキッチンバサミを鰓穴に刺し込んだり、頭部の後ろから包丁を入れて締めます。ワイヤーがある場合は鼻孔や目から入れても締める事ができます。
上手く絞めれたら血抜きをし、再び冷たいクーラーボックスの中にウツボを入れれば新鮮な状態で持ち帰れるので、ウツボ料理に挑戦したい方は是非試してみてください。
6,もしウツボに噛まれてしまったら!
こちらがどんなに注意していても、相手は野生の生き物です。不測の事態は付き物であり、当然噛みつかれる可能性もあります。
ウツボの歯は鋭くギザギザした歯並びをしているため、噛まれると深い裂傷を受けてしまいます。
ここではウツボに噛まれた時の対処方法についてご紹介させていただきます。
①ウツボに噛まれても相手が離すまで耐える事
ウツボに噛まれると激痛に襲われますが、個体によっては一瞬だけ噛んですぐ離してくれる事があります。
むしろ危ないのは「噛んだまま離さない」という状態で、噛まれた事に驚いたり痛みに耐えかねて無理矢理引き剥がそうとすると、ウツボはさらに顎に力を入れたり、最悪の場合デスロールに移行する事もあります。
また、無理矢理引き剥がせたとしても、噛まれた箇所が無惨に引き裂かれてしまい、場所が悪ければ動脈を傷付け危険な状態に陥ってしまいます。
これらを回避するためには、ウツボを海水に浸けながら離してくれる事を待ちましょう。
また、近くに友人や人がいる場合は助けも呼んでください。
とはいえウツボが何故か長時間離してくれない、または噛まれたのがお子さんの場合は非常に危険です。
切れ味の良い包丁やナイフでウツボの頭を落とし、口を開いてしまいましょう。そうすれば、最低限の怪我で済みます。
しかし、相当小さな個体でない限り深い傷になるのですぐに応急処置が必要です。
②真水で傷を洗い、止血する事
ウツボによる裂傷は酷く、場合によっては傷跡が消えずに残ってしまうほどです。
また、傷口から海水が入るとかなり滲みる他、危険なバクテリアが入る事もあるため真水で傷口を洗い、タオルなどで傷口を押さえて止血します。
運悪く動脈を切ってしまったり、かなりの出血がある場合は患部から少し離れた心臓に近い箇所(例:出血箇所が手首なら腕)を紐などで固く縛り、血液が流れすぎないようにします。
その間は救急車に連絡を入れ、焦らず状況を伝えましょう。
③止血できたら傷口にゴミが入らないように包帯や三角巾を巻く
傷口に砂や塵などのゴミが入ってしまうと痛みますので、少しでも痛みの持続を和らげるために包帯や三角巾を巻きます。
深い傷を負うと僅かに腫れたり痺れたりしますので、可能なら周りの人にお願いして巻いてもらった方が無難です。
④包帯も巻けたら病院に行こう!
無事包帯も巻けたら、治療のために病院に行きましょう。電車やバスを使ったり、仲間内で来たなら友人にお願いしてみても良いでしょう。
病院に来たら裂傷の理由をキチンと説明し、処置を受けてください。
ウツボによる裂傷は、深さや範囲にもよりますが縫合が必要な事もあるため覚悟はしておいてください。
7,めちゃウマ!?ウツボ料理について!
見た目がグロテスクと言われる事も多いウツボですが、最近はよく漁獲される事から食用としてジワジワと広まって来ています。
ウナギ目の魚なので血液には毒が含まれており、生食に適してはいませんが、しっかりと火を通せば安全に食べる事ができます。
また、骨が複雑に入っているためハモと同じように「骨切り」される事も多いです。
そんなウツボの身は白身ですが、脂が乗っていて美味しいとされており、漁獲される地域では様々な料理にされています。
ここではウツボ料理について5つ、ご紹介させていただきます。
①骨も取りやすくて美味しい「煮付け」
ウツボの身には骨が複雑に入るため、骨切りをしてようやく食材にできると言われています。
しかし、甘辛いタレでコトコト煮込んだウツボの煮付けは皮に豊富に含まれる甘くてトロトロなコラーゲンとホロホロと崩れる身が美味しい一品です。
身が取れやすいので小骨も簡単に取れるため食べやすくなっています。
②ウナギより食べ応えあり!「蒲焼き」
ウナギより骨が強いので骨切りが必要ですが、ウツボも蒲焼きにして食べられています。タレを重ねて塗ってこんがりと焼けたウツボは特大の蒲焼きに変身!
食べ応えと旨味を兼ね備えた一品へと生まれ変わります。
また、「いきなり黄金伝説」という番組では無人島で濱口様がモリ突きをして捕まえたウツボを有野様が蒲焼きやピザにしています。
③おつまみにも最適!「たたき」
最近では購入もできるようになったウツボの身を薄切りにして炙った物です。
こんがりと焼けた部分からは脂が滲み出し、ポン酢や七味などをかけて食べればお酒好きにも堪らない一品になります。
④正月に欠かせない!?「干物」
ウツボの干物は千葉県でも食べられていますが、和歌山県すさみ町では正月料理に欠かせない一品となっています。
ウツボの干物を千切りにして唐揚げにした後、醤油と水飴でできたタレを絡ませた「揚げ煮」にして食べるそうです。
⑤プリっプリの食感!「湯引き」
皮と身に分けられている物と、一体型の2パターンがあります。
熱湯をかけた事で火が入り、プリっプリの弾力を楽しむ事ができます。
ウツボは皮にコラーゲンが豊富に含まれているため、美容も気にしている方は食べてみてはいかがでしょうか。
食用にされる種類として、ウツボ、トラウツボ、ドクウツボなどが挙げられます。皆様、お気付きいただけたでしょうか?「ドクウツボ」です。
ドクウツボは筋肉や内臓に「シガテラ毒」という毒を持つ事でも知られており、このシガテラ毒は環境によって体内に濃縮されるため全てのドクウツボが毒化している訳ではありません。
シガテラ毒にあたった場合は吐き気や筋肉の麻痺や痛み、幻覚症状が出るとされています。
厚生労働省ではドクウツボの毒性は「猛毒」に指定しており、シガテラ毒魚の中でも毒の量が多く集団食中毒の危険性を指摘しています。
8,ウツボの危険以外の一面について
「海のギャング」と呼ばれ忌み嫌われているウツボですが、その見た目に似合わない意外な一面があります。
そんなウツボの危険性以外の一面についてご紹介させていただきます。
①実はとっても臆病!
信じられないかも知れませんが、普段のウツボは繊細で臆病な性格をしています。
そのため巣穴や隠れる場所がないと、ダイバーが近寄っただけで逃げてしまう事もあります。
釣り上げた時の激しい攻撃性は臆病さの裏返しなのかも知れません。
②ウツボ同士仲が良い!
怖い見た目をしているかも知れませんが、ウツボは仲間同士仲が良い事が知られています。
巣穴には他の個体が一緒に暮らしていたり、マリンアクアリウムでは別種のウツボと混泳させてもケンカする事なく同じ隠れ家を使う事もあります。
③ウツボ同士の小競り合いは平和的!
鋭い牙と攻撃性を持つためウツボ同士のケンカは互いに傷だらけになるほど激しいのではないかと思った方も多いのではないでしょうか。
ウツボも確かにケンカをするのですが、意外にも傷付け合わない方法を取っています。
その方法は何と「口を大きく開ける事」です。
ウツボにとって大きな口は強さのバロメーター。どちらの口が大きいのか競い合っているのです。
ちなみに繁殖期にメスにプロポーズする時も口を大きく開けて「オレは強いぜ!」とアピールします。
④ハタは狩り友!
岩礁の頂点捕食者でもあるウツボは1匹だけで獲物を追い詰めますが、時には岩礁の大食漢・ハタと協力して獲物を仕留める様子が確認されています。
ウツボに驚いてパニックになった魚をハタが捕食し、ハタが岩場に追い詰めた獲物をウツボが捕食するという「狩り友」のような関係性があるため、意外と慕われているようです。
また、小さいハタはウツボの食べ残しを食べに来る事もあります。
⑤美しい種類が多い!
淡黄色に褐色の不明瞭な帯模様というのがウツボの体色として有名ですが、世界に生息しているウツボの仲間には体色が美しい種類も多く、マリンアクアリウムで人気があります。
「ハナヒゲウツボ」は鮮やかな黄色の花弁のような鼻孔を持ち、ヒレも黄色。体色は幼魚は黒、オスは青、メスは黄色と違いがあり「リボンイール」と呼ばれる事があります。
また、優しい薄ピンク色の体色に透明感のある白いヒレの「モヨウタケウツボ(ホワイトリボンイール)」や細かな縞模様が特徴的な「ゼブラウツボ」などがおり、根強い人気を獲得しています。
⑥2024年の顔!?
2024年は辰年、龍の年です。龍といえば長い体に堂々とした姿の幻獣で、魚だと小さな「タツノオトシゴ」が思い浮かぶかも知れません。
しかし、ウツボにも「龍」の名を冠した種類がいます。それが「トラウツボ」です。
「虎じゃないか!」とツッコミたくなったでしょうが、トラウツボは「ドラゴンモレイ」という呼び名があります。
湾曲した口からは鋭い牙が覗き、鼻孔は伸びて龍の角や髭を思わせます。また、赤黒い地色に白い水玉模様など派手な体色が魅力的です。
⑦魚より貝やエビが好きな種類がいる!
ウツボと言えば、大きな口で獲物を捕食するイメージが強いかも知れませんが、中には魚より貝類や甲殻類が好きな種類がいます。
クモウツボやゼブラウツボなど頭部が丸みを帯びている種類は魚よりも貝類などを好んでおり、牙もそこまで鋭くありません。
貝やカニを見つけると発達した顎で噛み砕いて食べます。
⑧エビとは共生関係!
エビを食べる事もあるウツボですが、実は多くのエビの仲間達と「相利共生」の関係にあります。「相利共生」とは互いにメリットがある共生関係の事で、理想的な関係性です。
「オトヒメエビ」や「アカシマシラヒゲエビ」などのクリーナーシュリンプはウツボの体に付いた寄生虫や食べ残しを食べてキレイにし、ウツボはクリーナーシュリンプ達を狙うフグなどの魚を追い払ってくれます。
自分の命を助けてくれるクリーナーシュリンプは積極的にウツボの体を掃除しますが、たまに積極的になりすぎてウツボがむせる事もあります。ちなみにそれでウツボが怒る事はありません。
また、意外かも知れませんが高級食材・伊勢エビやその仲間達とも共生関係があり、伊勢エビがウツボの巣穴に居候させてもらう様子も観察されています。
ウツボとしては、伊勢エビがいるとそれを狙って大好物のタコやイカが来るので良い事しかなく、伊勢エビにとってもウツボが近くにいれば自分の天敵であるタコやイカを食べてくれるので、これほど頼りがいのあるボディーガードはいません。
たまに「ウツボが伊勢エビを食い荒らす」という見解がありますが、この場合は彼らの共生関係を破綻させた「何か」があるという事を忘れてはいけないと思います。
⑨厄介な外道の天敵!
海のギャングと呼ばれながら、実は岩礁の兄貴的な存在でもあるウツボ。
彼ら自身が外道としてかかる事もありますが、サビキ釣りやカワハギ釣りを邪魔する厄介なアイツの天敵でもあります。
その厄介なアイツとは「クサフグ」の事で、餌泥棒したと思ったらラインを噛み切り連続で大量に釣れる事もある、釣り人にとって好ましくない魚です。
ウツボはフグ毒に耐性があるため、強力な毒を持つクサフグも積極的に捕食します。
クサフグが産卵するために岸辺に集まる時は近くでスタンバっているほどなので、ある意味ありがたい魚なのです。
⑩実は人懐こい!
信じられないかも知れませんが、ウツボは人懐こい魚でもあります。
実際にダイビングでは餌の魚やエビ、魚肉ソーセージを与えてられて人に懐いたウツボがおり、餌をねだったり自分からすり寄ったりする行動が見られます。
また、マリンアクアリウムでも餌を与えられるうちに人に慣れ、飼い主が来ると隠れ家から体を伸ばして餌をねだったり観察してくる事もあります。
怖い見た目とは裏腹に、実は気さくな性格なのです。
まとめ
今回は言わずと知れた海のギャング・ウツボについて皆様にご紹介させていただきました。
ウツボは確かに危険生物であり、噛まれれば裂傷は避けられません。また、ラインや漁具の網などを噛み切る事もあるため、その攻撃性は注意すべきです。
しかし、野生の生き物は正しく恐れるべき者達でもあります。
こちらからちょっかいを出したり、気が立っている時に刺激しなければ、ウツボは意外と大人しく針を外させてくれたり見過ごしてくれる事もあります。
また、彼らは多くの生き物に怖れられながら、その分多くの生き物と共生関係を築いており、自然界の大切な存在の1つになっています。
この記事が、そんな強面な彼らの危険性、対処方法、意外な一面を皆様に知っていただく助けになれれば筆者も嬉しく思います。