バードウォッチングというと「野鳥を見つけるのが大変そう」「観察が難しそう」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、大自然の中を自由に生きる野鳥達を見つけるのは種類によって難しかったり、ちょっとの物音で驚いて逃げてしまう種類もいるのは仕方ありません。
しかし、中には意外と人の近くにやって来て観察のしやすい野鳥もいるのです。
そこで今回は初心者でも観察しやすい野鳥・メジロについて皆様にご紹介させていただきます。
メジロは古来より「春を告げる小鳥」として愛されており、見た目の可愛らしさと鳴き声から人気も高く、民家にも訪れる事がある素敵な野鳥です。
そんなメジロについて、少しでも理解が深まっていただけたら幸いです。
1,意外と身近な野鳥・メジロの特徴について
①メジロの分類は?
メジロは「スズメ目メジロ科メジロ属」に分類されています。
見た目や羽の色は大分違いますが、スズメの親戚にあたる野鳥です。
②メジロの見た目は?
一口にメジロと言っても様々な種類がいるため、ここでは一般的に見かけやすいメジロ(学名:Zosterops japonicus)について挙げさせていただきます。
メジロはお腹側が淡褐色〜淡灰色をしており、背中側は暗色がかった若草色、胸から喉にかけてちょっと暗めの黄色い羽毛をしています。
そしてメジロ最大の特徴は目の回りをくるりと取り囲むように白い模様があります。この模様は「アイリング」とも呼ばれており、名前の由来になるほど特徴的でメジロの愛らしさを際立たせるチャームポイントの1つです。
また、メジロの嘴は黒く細長くなっており、これは大好きな「ある物」を食べるために役立っています。
③大きさはどのくらい?
メジロはスズメより小さく、その大きさは12cm前後で翼を広げても18cm前後しかありません。
大きさは小さいですが、落ち着いた色調の羽毛とアイリングが目立つので意外と見つけやすく、初心者でも探しやすい野鳥です。
④どこに生息しているの?
メジロの仲間は世界では日本の他に東ティモールや韓国、フィリピン、インドネシアなどのアジアの国々に生息しているとされています。
日本では北は北海道、南は九州地方まで広く生息しており、さらに南の屋久島や奄美大島などでは別種のメジロが生息しています。
山や平地、葦原だけでなく街路樹、公園にも生活しており、特に椿や梅の花が咲く時期になるとこれらの花を求めて里山から降りてくる個体までいるそうです。
⑤何を食べているの?
メジロは草の種や尺取り虫のような虫を食べる雑食性の野鳥ですが、野鳥の中でもかなりの甘党である事でも知られています。
特に梅の花の蜜が大好物なので、梅の開花が始まると機敏な動きで枝を渡りながら細長い嘴を上手く使って花の蜜を吸う様子を観察できます。
また、木の枝先に残ったトロットロに熟成した柿やミカンなどの甘い果実もメジロの大好物です。
とにかく甘い物が大好きなメジロは、その愛らしい姿を愛でるために昔は庭先の枝に半分に切ったミカンを刺して状態にしていたそうです。
もちろんメジロ達は甘いミカンに大喜びですが、そこにはメジロよりもずっと体の大きな甘党もやって来ます。
その甘党は「ヒヨドリ」で、シックな羽色に真ん丸ほっぺと興奮すると逆立つボンバーヘッドが特徴的な野鳥です。
ヒヨドリは「オレの物はオレの物。お前の物もオレの物!」と言わんばかりにメジロを追い立ててしまう事があるため、ちょっと困った訪問者だったようです。
⑥どんな鳴き声をしているの?
野鳥の鳴き声は「地鳴き」と「囀ずり」に分かれています。
「地鳴き」は普段からの鳴き声で、主に仲間とのコミュニケーションに使われる鳴き声です。一方「囀ずり」は主にオスが縄張りを示したり繁殖期にメスを誘う時に使われています。
メジロの地鳴きは「チー、チー」「ピー、ピー」といった高く長い鳴き方と「ピュピュピュル」「ピュルピュル」「キュキュキュ…」という少し控えめな鳴き方の2種類があります。
囀ずりは「チーチュル、チーチュル」と高く、どこか優しく甘い鳴き声です。
2,実際にメジロを観察しに行こう!
メジロは木々の花咲く季節であれば、とても観察しやすい野鳥です。
椿や梅、杏の木が植えられている公園や各都道府県にある自然公園や植物園でも見られますし、お庭やベランダに遊びに来る事だってあります。
この項目では、そんなメジロを観察するためにオススメなアイテムや季節についてご紹介させていただきます。
①観察しやすい冬〜春がオススメ!
メジロはオールシーズン観察できる野鳥でもありますが、夏だと暗い緑色の体色が木葉に溶け込んでしまい見つけづらくなってしまいます。
また、秋は木に咲く花が少ないからか、見かける機会がかなり少なく感じました。
そこで筆者がメジロウォッチングにオススメしたい季節が冬〜春です。
冬といっても椿や梅が咲く頃が一番見つけやすく、枝や葉に止まって花の蜜を吸う姿を見る事ができます。
この時のメジロは花の色、葉の色、メジロの姿がとても映えるため、見る事ができればメジロの美しさにハマるかも知れません。
また、春は桜が咲く頃になると咲き乱れる桜の花を緑色の可愛らしい体で駆け回りながら蜜を吸う姿が見られます。
こちらは桜色の世界に緑色のメジロというファンシーな世界観が魅力的です。
②季節や環境にあった服装をしよう!
これはバードウォッチングの鉄則で、見に行く場所に合わせた服装にしましょう。
特に山の場合は天候が変わりやすいので、予備の服なども持っていく事をオススメします。
メジロの場合はかなり身近な野鳥という事もあり、公園や庭先でウォッチングできる事もあるので、山や平地に行くよりはラフな格好でも良いと思います。
③より細部も見たいなら「双眼鏡」を忘れずに!
メジロを見つけたら、その可愛らしい姿を余す事なく見たいはず!
そのためには「双眼鏡」は必須のアイテムでしょう。主に8〜10倍率の物が扱いやすくてオススメです。
④手元に図鑑があると便利!
少し前の項目で「別の種類のメジロがいる」事について触れていましたが、沖縄や大東島などにお住まいの方は特に図鑑があると便利だと思います。
九州地方以南に生息するメジロの仲間達はかなり珍しい種類が多いため、それぞれの見分けのためにも一冊用意しておくと良いでしょう。
⑤記念撮影用にカメラはいかが?
バードウォッチングしていると「この瞬間が、最高に良い!」という瞬間に出逢う事があります。
この一瞬を素敵な思い出として残すために、デジカメや一眼レフカメラがあるとより鮮明に残せると思います。
もちろんスマホでも問題はありませんが、スマホの一部機種には、より美しい写真が撮れるようにスマホ用のレンズも販売している事がありますので、スマホで美しく撮影したい方は是非一度ご検討してみてください。
3,メジロがバードウォッチング初心者にオススメの理由について
野鳥の中には探すのが難しかったり、ちょっとの物音で逃げ出してしまう神経質な種類もいるので難しそうなイメージがあるかも知れません。
しかし、メジロは見た目も鳴き声可愛らしく、条件さえ整っていれば公園などでも観察する事ができるのでバードウォッチング初心者にもオススメの野鳥です。
また、もう1つメジロがオススメな理由があります。
それはメジロが他の野鳥より「人間に対する警戒心が緩い」という事が挙げられます。
メジロは古来から人々に愛され大切にされていたからなのか、人に対する警戒心が緩いのです。
そのため、庭先に現れてもほんの数mの距離から観察する事も夢ではありません。
他にも「鉄腕DASH」という番組の「DASH島企画」ではTOKIOのメンバーがメジロの群れに遭遇し、一定の距離を保ちながらも野鳥にしてはかなり近くで観察できていました。
これらの理由が筆者がバードウォッチング初心者にメジロをオススメする理由です。
4,メジロを観察する時に注意すべきポイントについて
身近で観察しやすい野鳥・メジロですが、どんなに人間に対する警戒心が低くても気を付けなければならないポイントがあります。
特に最近は法律や条例が変わったりしているので、その辺りも注意しましょう。
①大きい声で騒がない事
いくらメジロであっても大きな声で叫ばれたり騒がれたりするとビックリしますし、かなりの恐怖を感じて逃げてしまいます。
そうなると回覧板のようにメジロ達の間で情報が共有されてしまい、最悪の場合は「その場所は危ない!」と判断されてメジロが遊びに来る頻度が落ちたり全く来なくなってしまうので静かに観察するようにしましょう。
②他者の土地に勝手に踏み込まない事!
当たり前の事といえば当たり前の事なのですが、メジロや野鳥を追って気付かぬうちに他人の敷地内に入り込んでしまう場合があります。
この他人の敷地内に勝手に入っていって問題となったケースとして有名なのは熱狂的な撮り鉄の方々がいます。
バードウォッチングではそこまで酷い話はそうそう聞きませんが、場合によっては警察を呼ばれたりする場合があるので気を付けましょう。
③撮影はフラッシュを使わない事
私達人間以上に視力の良い鳥達にとってカメラのフラッシュを使われる事は、いきなり目の前でスタングレネードを使われたのと同じくらいのダメージになってしまいます。
中にはフラッシュの強い光にビックリして気絶したりショック死してしまう場合もあるので撮影の時はモデル鳥様のために優しい撮影を心がけてあげてください。
④季節によっては近付く木に気を付ける事
これはバードウォッチングに限った事ではありませんが、山中や公園では季節によって近付くのに警戒が必要な木があったりします。
その身近な植物として代表的なものが「サザンカ」です。これは植物が危険という訳ではなく「その植物を食べる生物が危険」という意味です。
サザンカは危険な昆虫・ドクガの幼虫が付く事でも有名であり、しっかり管理されている公園であれば殺虫剤散布によって対策されています。
しかし、人の手が入らない山や公園だったりすると気付かずに触れてしまい被害にあってしまう事もあるのです。
ドクガの幼虫が大量発生する頃にはあまりメジロが積極的に公園に現れるという事は少ないとは思いますが、進む場所やその周辺にある植物をちょっと確認して「危なそうだ」と思ったら諦める事も大切です。
ちなみにドクガ幼虫・成虫に刺された時のための応急処置グッズとして「セロハンテープ」を用意しておくと、ある程度毒針を抜く事ができます。
⑤餌を与えない事
コレ、結構論争が絶えなかったりします。
最近はドバトや野良猫などに餌を与えた結果、問題が発生してしまいニュースに取り上げられるようになりました。
そこで一部の法律が改正されたり地方自治体によって新たに条例ができたりもしています。
野鳥に餌を与えてはいけない理由としては、「餌付けによって生存能力に支障が出る可能性がある」「一部の鳥類だけが生存率が高まって自然のバランスが崩れる」「餌に釣られた野鳥を狙って野良猫や野犬、アライグマなどが来るようになってしてしまう」などが挙げられます。
しかし、一部では「餌の少ない冬だけなら良い」「海外では餌を与える方が動物愛護とされている」という意見も出ており、その根拠として「動物愛護法第25条および同施行規則第12条」の規制が公園にいるハトやカラスへの給餌とその被害対応ついてなので、野鳥は含まれていないという事などが挙げられているようです。
個人的には餌付けは控えていただきたいところですが、もし庭先にメジロやシジュウカラなどの野鳥を呼びたいのであれば、花や実のなる木を育てれば自然と来る可能性は出てくるのではないかと思います。
5,メジロがもっと好きになる!?メジロの豆知識について!
可愛らしい緑色の小さな体に白いアイリング、高い鳴き声で初心者からベテランまで幅広く愛されているメジロ。
ここではメジロのちょっとした豆知識についてご紹介させていただきます。
①ぎゅぎゅっとメジロ!
メジロには休息をとる時に枝に並んでピッタリとくっつくようにして休むという習性があります。
これがペアや小規模な群れならまだまだ余裕がありますが、大きな群れとなると枝にキレイに並び、ぎゅうぎゅう詰めになっている事も!
その時のモフモフ感はぎゅうぎゅうしている隙間に思わず指を入れたくなるほど魅惑的です。
このぎゅうぎゅうに詰まっている様子から、「目白押し」という言葉が生まれたそうです。
②ケンカは激しいぞ!
厳しい自然界で生活している事もあって、水場や餌の取り合いの時にはメジロも激しくケンカします。
か細い脚で掴み合ったり嘴で何度もつついたり、中にはそのまま縺れ合いながら枝から落ちてしまう事もあるのです。
このケンカは結構激しくメジロ達も必死なのですが、モフモフしまくるので見てる人間側からすれば「モフモフレスリング」みたいで色んな意味で記憶に残るかも知れません。
③風情は大切に
「梅に鶯」という言葉は、春の訪れを告げる意味があります。
成り立ちとしては、梅の花とウグイスの鳴き声から来ており、和歌や絵画で愛されてきました。
しかし、現在では「梅に鶯は梅にメジロの間違いだろ」という謎の説が流れており、色々とマゼコゼしている風潮が見られます。
これは持論ですが、日本画ではよく「梅とメジロ」が描かれるので、そこから謎説が生まれたのではと考えています。
一応補足ですが、メジロと比べてウグイスは超が付くほどの神経質な野鳥です。
そのため人目に付きやすい梅の木にメジロが来る事はあってもウグイスが来る事はほとんどありません。聴こえるのは有名なあの鳴き声だけです。
④メジロの漢字が難読過ぎる!
メジロと聞くと「目白」という漢字が出てくると思いますが、実は「繍眼児」もメジロを表しています。
どちらの漢字もメジロのアイリングを表していますが、後者の方はもっと特徴を出しており「目の回りに刺繍したような白い羽毛がある小さいもの(「児」が「小さいもの、子」を指している)」という意味があるのです。
そうそう書く機会が無いであろう漢字ですが、雑学として覚えておいても良いと思います。
⑤地方名からも分かる甘党!
甘い物がとにかく大好物なメジロは、柿やミカンを食べたり花の蜜を吸う様子からいくつかの地方名があります。
「花露(はなつゆ)」「花吸い」などがその代表的な呼び名で、風情がありながらも甘党である事が分かるナイスネーミングセンスです。
⑥君は仲間なの?
今でもやっている方がいるかは分かりませんが、メジロは頻繁に鳴く事で仲間と綿密なコミュニケーションをとっています。
そこで慣れたメジロに口笛でなるべく高めの音を出すようにして呼び掛けると、口笛を吹いた人を「仲間」と思い込んで自分の群れを呼んでくれるようになるという技もあるそうです。
⑦準絶滅危惧種に指定された「幻のメジロ」がいる!
沖縄県のレッドリストには準絶滅危惧種としてあるメジロの仲間が記載されています。
その名も「ダイトウメジロ」。南大東島と北大東島にしか生息しておらず、森林伐採によって住みかを失い、ネコやネズミによって捕食されたりして数を減らしてしまったそうです。
特徴として、額にはハッキリとした黄色い部分があり、喉の黄色もアイリングに達するほどとされています。
現在は落ち着いているのか分かりませんが、大東島にお住まいの方々は気付かぬうちに幻の小鳥を見れているのかも知れません。
まとめ
今回はバードウォッチング初心者にもオススメの甘党な野鳥・メジロについてご紹介させていただきました。
メジロはメジャーな野鳥として知られていますし、もしかしたら皆様もどこかで見た事があるかも知れません。
そんな身近ながら美しく、鳴き声も良く、観察しやすい野鳥をこれからバードウォッチングをしてみたいけどちょっと不安があるかも知れない方々のために執筆させていただきました。
メジロの特徴や可愛らしさを実際に見て、感じていただければとても美しい思い出になると思いますので、是非見に行ってみてはいかがでしょうか。