バードウォッチングの世界では美しさや可愛らしい見た目、素晴らしい鳴き声から人気を集めている野鳥がたくさんいます。
写真集が出るほど人気な種類としてエナガやスズメが有名ですが、スズメはともかくエナガなどは物音に驚いてすぐに逃げてしまったり小さすぎて見つけづらいという面があり、観察や撮影の難易度が高い事も少なくありません。
しかし、中には初心者にも観察しやすく美しいうえに小さいながら肝っ玉の据わっている野鳥もいます。
そんな夢の野鳥が今回皆様にご紹介する「ジョウビタキ」というヒタキの仲間です。
ジョウビタキはシーズンになると「ジョビ男さん」「ジョビ子さん」と呼ばれる事もあるほど初心者から熟練者まで高い人気があり、親しまれている野鳥です。
そんな人気者の特徴や生態について盛りだくさんにご紹介させていただきます。
1,冬の人気者!ジョウビタキの特徴について
・分類は?
ジョウビタキは「スズメ目ヒタキ科ジョウビタキ属」に分類されている野鳥の仲間です。
・どのくらいの大きさなの?
大きさはスズメより若干小さめで、体長は13〜15cm前後しかありません。
また、研究の一環で体重も計られた事があるようで、個体差があるものの13〜20gほどとされています。
重くても1円玉20枚分の体重しかないので、仮に指に留まられても重さはほとんど感じない事でしょう。
・どんな見た目をしているの?
ジョウビタキはオスとメスでは見た目が全く違うため、初めて見ると思わず「別種なのでは!?」と感じる方も多いと思います。
オスの個体は頭部が白〜銀色で、顔の周りが黒いです。また、羽毛の色も翼と背中、尾羽の背中側が黒褐色、腰と胸、お腹、尾羽のお腹側は鮮やかなオレンジ〜レンガ色をしています。
一方メスの個体はオスより大人しい色合いの羽毛をしており、全身が淡い茶褐色〜オリーブ色です。
翼と尾羽は黒褐色ですが、腰と尾羽のお腹側はオスのように鮮やかなオレンジ〜レンガ色をしています。
これは同じヒタキの仲間であり、メスだと見分けが難しい「ルリビタキ」と区別するための重要なポイントでもあります。
このようにオスとメスでは全く見た目が違うジョウビタキですがいくつか共通点があり、その1つとして黒褐色の両翼にはホワイトスポットが1つずつあります。
この白い羽はよく目立ち、ジョウビタキの佇まいをより美しいものにしています。
⭐ジョウビタキの漢字表記!
ジョウビタキは漢字では「尉鶲」「常鶲」と表記されます。
この内「尉鶲」の「尉」は「銀髪」や「白髪頭」を意味しており、ジョウビタキのオスの特徴的な頭部の色彩を表しています。
また、ヒタキは「鶲」という漢字表記以外にも「火焚き」という表記もあり、こちらは鳴き声が由来となっています。
・何を食べているの?
ジョウビタキは普段はイモムシやバッタなどの昆虫類やクモなどの節足動物を捕食していますが、木の実も好きなので実のなる木に訪れては枝先に実った木の実を食べる事があります。
特に餌の少ない冬場では木の実を求めて庭先に現れる事もあるため、ジョウビタキのために実のなる木を植えたり餌台を設ける事もあったそうです。
2,ジョウビタキの生息地について
バードウォッチングでは「冬鳥」であり「渡り鳥」として知られており、実際に非繁殖期は日本に渡って越冬する性質があります。
そんな彼らの本来の生息地は中国東北部やバイカル湖、チベットなどといわれています。
ジョウビタキは平地や林、里山の他にも木々があれば民家や公園でもその姿を見る事ができ、高い木の先に留まって鳴いたりフェンスに留まって休むなど様々な仕草を見せてくれるため「見て楽しい、会えて嬉しい」野鳥です。
⭐ジョビ夫婦「私達、日本に永住しマ〜ス!」
本来は越冬するために日本に渡ってくる野鳥でしたが、居心地の良さなのか1980年代にはすでに日本に定着して少数ながら繁殖している事が研究で明らかになっています。
また、彼らは年々全国的に繁殖している事も分かっているため近くに自然豊かな場所があれば野鳥の中では観察しやすい種類です。
3,ジョウビタキの性格、生態について
スズメより小さな体に綺麗な体色。性格はさぞ繊細だろうと思う方もいらっしゃると思いますが、ジョウビタキの性格はそんな優しいものではありません。
むしろかなりアグレッシブで、以前ご紹介させていただいたメジロすら霞んでしまいそうなくらい堂々とした性格をしています。
ジョウビタキは小さな体に似合わず縄張り意識がとても高い野鳥なのです。
ここではそんなジョウビタキの性格、生態の凄さについてご紹介させていただきます。
①縄張りアピールは欠かさない!
彼らの1日は「縄張りに始まり縄張りに終わる」と言ってもいいくらい縄張りアピールに余念がありません。
縄張り内や新たに訪れた土地にある一層高い木や見通しの良い枝に留まると尾羽を上下に振りながらお辞儀をするような姿勢で「ヒッヒッ」「ピッピッ」と鳴いたり「カチッカチッ」と硬い物を打ち鳴らしたように鳴いて自らの縄張りをアピールします。
この尾羽を「上下に振る」のと「お辞儀のような姿勢」という行動は同じように縄張りをアピールする「ルリビタキ」は取らない行動なので、ちょっと距離があって分かりにくい時の判別方法として活用する事ができます。
②オスもメスも度胸が凄い!
野鳥のケンカの写真として、よくスズメやメジロのケンカシーンを捉えた写真があります。
脚で取っ組み合ったり嘴でつついたりといった姿が写し出されていますが、最終的には和解している部分もあり、本鳥達には申し訳ありませんが微笑ましいシーンの1つだと思います。
しかし、ジョウビタキのケンカはそんな微笑ましいものではありません。縄張り意識が強くプライドも高い彼らは繁殖期以外の時に縄張りに侵入してきた同種と激しく争うという生態があるのです。しかもオスもメスも関係ありません。
「オスの方が強そう」と思う方もいらっしゃると思いますが、メスも縄張りのためなら非常に好戦的であり縄張りの持ち主や侵入者のオスをフルボッコに負かせ、縄張りを奪ったり守ったりする事も少なくないのです。
オスもメスも度胸満点!ちょっとやそっとの事では動じない強さがあるのも魅了です。
③小鳥なら恐ろしい「アイツ」も怖くない!
小鳥なのに肝が据わりすぎているジョウビタキは、小鳥ならば誰もが恐れる「アイツ」すら意に介しません。
その「アイツ」の正体とは「小さな殺し屋」とも呼ばれる「鳥界の串刺し公・モズ」です。
モズも縄張り意識が強い野鳥として知られていますが、特に知られているのが「モズの早贄」という習性です。
この謎多き習性は残虐性でも有名で、有刺鉄線などの尖った物に捕らえた獲物を生きたまま突き刺します。
モズの獲物として小さなトカゲやカエル、バッタの他にもスズメやメジロが選ばれる事があり、初めて見つけるとあまりの光景に言葉を失ってしまう事でしょう。
しかし、ジョウビタキはそんな串刺し公なんて気にしません。
むしろ「よう、座れよ兄弟!あんたもここで一鳴きするかい?」と言わんばかりに縄張りを共有して順番に縄張りアピールをする様子も確認されています。
心臓に毛どころかパピルスでも生えてるんじゃないかと思わせるその度胸。もはや尊敬に値します。
④ジョビ「今、確かに敵がいたんだ!」
縄張り意識が強いが故に仲間と激しく争う習性があるジョウビタキ。この激しい闘争本能は私達の身近にある「ある物」にも向けられます。
それは「鏡」で、ジョウビタキはカーブミラーや車のサイドミラーに写った自分の姿を「侵入者」と見なして攻撃するのです。
そしてちょっとでも鏡に自分の姿が写らなくなると「敵は去った」と言わんばかりに誇らしげに枝先に留まります。
筆者も鏡に写った自分と戦うジョウビタキを見た事があり、某漫画のネタですがポンペイで「M.I.T.M(マンインザミラー」に出くわしたギャングを思い出しました。
ちなみに鏡の自分を見分けられる能力を「鏡像認知」というそうですが、ジョウビタキはこの鏡像認知ができないため侵入者と勘違いしている事が研究で分かっています。
⑤近くに人間がいても気にしない!
彼らはとても身近な野鳥の一種であり、あまり物怖じしない性格から民家の庭先や公園にも姿を現してくれます。
中にはほぼゼロ距離の場所に降りてくる事もあり、野鳥好きからすればサービス精神旺盛な野鳥としか思えません。
⭐ジョウビタキと人の絆
これは7〜8年ほど前、たまたま訪れた土地で野生のジョウビタキと遊ぶお年寄りに出会った時の事です。
その方は庭先にまだ小さな苗木を植えていたのですが、その苗木の先にはいつもオスのジョウビタキが訪れるのだと教えてくださいました。
その頃は今のように野鳥への餌付けについての議論があまり無く、その方は毎日来てくれるオスのジョウビタキに食パンをちぎって与え、小鳥の方も手から直接パンをもらい苗木の上でその味を堪能しています。
そんなお年寄りとジョウビタキには確かな「絆」があり、その方が近く座ると指に乗ったりお辞儀をしたり、さらには手の動きに合わせて宙返りや八の字飛行などのアクロバティックな芸を披露していました。
今でもその方とジョウビタキ君が仲良く過ごしている事を願いたいものです。
4,ジョウビタキの観察方法について
先述したとおりかなり堂々としている野鳥なので、見つけてもすぐに逃げ出す事はなく冷静にこちらの様子を見てきます。
この間は彼らも留まったまま動かないのでこちらも観察や写真を撮る大チャンスです。
そんな彼らを観察するためのポイントについてご紹介させていただきます。
①季節や天気に合わせた服装をする事
バードウォッチングは山奥などの特殊な場所に行かない限りは服装は自由です。季節や天気に合わせた服装で彼らの姿を探しに行きましょう。
ジョウビタキは日本に定着して繁殖している個体もいますが基本的には冬の渡り鳥なので冬に観察する場合は暖かい服装を心がけましょう。
⭐「服装が厚くなるのが嫌!」という方必見!
冬のバードウォッチングは野鳥の生息地を訪れ彼らを探し、観察するとなると時間がかかる事があります。
そうなると必然的に服装も重ね着で分厚くなりますし荷物も増えてしまいます。これが冬のバードウォッチングの大変なところの1つです。
そんな「もっと身軽でいたい!」と思う方にオススメの商品が「バッテリー式ベスト(電熱ベスト)」です。
このアイテムは充電式バッテリーを装着する事で手軽に暖を取れるため身軽に活動できるという優れものです。
お値段は商品によって差がありますが、高いものだと自分で温度をある程度指定できるのでバッテリーの消費を抑える事もできます。
また、バードウォッチング以外でも冬場に活動するのであれば、かなり強い見方になってくれるのでオススメです。
②鳴き声を探そう!
ジョウビタキは自分の縄張りをアピールするために大きな声で「ヒッヒッ」「ピッピッ」「キッキッ」などと鳴いた後、何か硬い物を打ち付けたように「カッカッ」と鳴きます。
これはヒタキの仲間の特徴であり、この独特の鳴き声が聞こえたら近くの梢や木のてっぺんにいる可能性が高いです。
鳴き声が聞こえたら周囲を注意深く探しましょう。
③餌を探そう
これは「餌付け」ではありません。
生息地が点在している野鳥をよりしっかり観察するためには、鳴き声だけでなくその種類が好む餌がある場所を把握する必要があります。
ジョウビタキはイモムシやミミズ、クモの他にヤマブドウやハゼの実、松の実などの木の実を食べているので観察する前にそれらの餌が実る場所を見つけておくと木の実をついばむ可愛らしい姿を見られる可能性が高まります。
④双眼鏡や望遠鏡を用意しよう!
ジョウビタキは公園や民家にも現れ、運が良いと至近距離でその姿を拝む事もできます。
しかし、基本的には薮の中や蘆原の中、高い木の先に留まって餌を探したり縄張りをアピールしていたりするので肉眼で彼らを捉えるのは難しいです。
そんな彼らを観察するために双眼鏡や望遠鏡を用意しましょう。双眼鏡は商品によってデザインや倍率が違うので、皆様のお気に入りの双眼鏡を是非探してみてください。
また、望遠鏡もバードウォッチングに使う事ができます。
最近ではデジカメやスマホに装着できる望遠鏡も販売されており観察や撮影もしやすくなっているため、一眼レフ風に写真を撮りたい方にもオススメです。
⑤観察できそうなポイントに着いたら騒がない事
ジョウビタキは人間に対してもあまり物怖じしない野鳥ではありますが、警戒していないという訳ではありません。
公園や観光名所などの人の出入りが多い場所の場合は仕方ありませんが、林や自然公園、里山などで観察する場合は静かに待つようにしましょう。
⑥庭先で実のなる木や植物を育てよう!
様々な理由から外で長時間活動するのが難しいという方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか?
特にジョウビタキを観察しやすい冬はお年寄りや昔結構な怪我をした事がある人にとってはキツイ事もあると思います。実際筆者もスポーツでやらかしたり車に轢かれて結構な怪我をしているので、この季節はなかなかキツイです。
それでも身近な場所である庭先などで自然を感じたい、野鳥を見たいという場合は庭先に実のなる植物や木を植えて育ててみましょう。
「ナンテン」や「ムラサキシキブ」「ピラカンサ」の実も好んで食べますし、夏の花の代名詞「ヒマワリ」も花が終われば種を残します。この種を食べるためにジョウビタキやヤマガラなどが来る事もあります。
ジョウビタキが庭先を気に入ってくれればお気に入りの場所で縄張りアピールをしてくれるようになりますし、すぐ近くでその仕草を楽しむ事ができるようになります。
5,観察する時にやってはいけない事について
ジョウビタキは身近な野鳥であり、発見や観察の難易度が比較的低いためバードウォッチング初心者にもオススメの野鳥です。
しかし、私達の観察するマナーが悪いと縄張りの中であっても姿を現さなくなり鳴き声だけしか聞こえなくなってしまう事もあります。
また、ジョウビタキに迷惑がいかなくてもマナーが悪ければ通報されてしまう可能性もあります。
ここではバードウォッチングでやってはいけない事についてご紹介させていただきます。
①イタズラをしない事
ジョウビタキは街中では低木やフェンスに留まっている事もありますが、公園に高い木がある場合はその上から縄張りを見ながら鳴いていたりします。
そのため騒いでいるだけなら飛んで行くか、それすら意に介さず枝の上に佇んでいます。
しかし、そんなジョウビタキを見つけて石を投げたり留まっている木を蹴ったりしてしまうと、流石のジョウビタキも逃げてしまいます。
しかも「あの場所は安心できない」と判断されて縄張りから除外、あるいは優先度が低くなってしまうとその場所でジョウビタキを見る事が難しくなってしまいます。
②フラッシュは使わない事
綺麗な写真を撮るためにフラッシュを使うという方は少なくありません。それが遊園地や食べ物なら良いのですが、野生動物相手にもフラッシュを使おうとする方もいるというのですから驚きです。
野鳥にとって強烈な光はかなりダメージが大きく、気絶したりパニックになるだけでなく、最悪ショック死してしまう場合もあります。
フラッシュは人でも嫌がる方もいるほど強烈に眩しいので野鳥含め野生動物相手には使わないようにしましょう。
■フラッシュがもたらす被害
写真も綺麗に撮るのに欠かせないツールとして認知されているフラッシュですが、これを普段と同じ感覚で野生動物にしてしまい大変な事になってしまったケースがいくつもあります。
野鳥以外の被害として、ダイビング中に寄ってきたゴンドウクジラやスナメリに対して記念撮影をしたところ、カメラのフラッシュを「攻撃された!」と受け取ったゴンドウクジラに足を噛まれて海底に引き込まれかけたという方もいます。
また、豊富な海藻や特殊な環境によって暗くなっている海に生息している稀少で大型のヨウジウオの仲間「シードラゴン」をダイバーや水族館の観客達が珍しがってフラッシュをたいて写真を撮りまくった結果、次々にショック死してしまったというケースもあります。
ちなみにアクアリウムの世界では「ウィーディーシードラゴン」1匹でバイクが買えますし、「リーフィーシードラゴン」1匹で場合によっては家が建ちますし新車も買えるくらい超高価です。損害賠償請求されたら人生詰みます。
そうでなくても野生のゴンドウクジラやクマなどが襲ってくる場合もあるので、人間界の文化を野生動物に押し付けないようにしましょう。
③捕まえようとしない事
法が整備された現在ではそんなに聞きませんが、一昔前はジョウビタキやメジロ、ウグイスなどの野鳥を捕獲して飼育していたそうです。
その時代は鳴き声を楽しむためだったり鳴き声の大会に出すために刺し網やトリモチなどの罠で多くの野鳥が捕獲されました。
今はそんなに無謀な事をする方はいないと思いますが、見た目が美しいからといって捕獲しないようにしましょう。
Q,ペットショップに野鳥がいた!まさか密輸!?
A,海外から輸入される種類もいますので早まってはいけません。
先ほど日本の野鳥は基本的に飼育できないという事に触れましたが、鳥類に強いペットショップだと野鳥が販売されている事もあります。
それを見て「密輸か!」と早まってはいけません。方向性を見失った独り善がりの正義は誰も幸せにできない愚かな思想に他なりません。
ペットショップで販売されている野鳥はウズベキスタンやカザフスタンなどである事が多く、販売されている野鳥も日本には生息していない「キムネルリガラ」や「ヒゲガラ」などです。
また、ジョウビタキやコマドリ、メジロであったとしてもプロフィールを見れば、種類が微妙に違っていたり、捕獲された国が違ったりしているので分かりやすいです。
むしろ気を付けるべきは、そういった外国産の野鳥を日本で逃がさない事です。
場合によっては「ワカケホンセイインコ」のように日本で野生化し、害鳥になる事もあります。
ペットショップで野鳥を見つけても冷静にプロフィールを読んで早とちりだけはしないようにし、むしろ動物愛護を拗らせて「野鳥可哀想!自由にする!」と言って逃がそうとするような人を止めた方が、社会的にも自然的にも良い事だと筆者は思います。
④他人の敷地に侵入しない事
いくらジョウビタキが見たいとはいえ、他人の敷地内に侵入したり双眼鏡でガン見しないようにしましょう。
よくあるのが山を所有している方がいたり、気付いたら他人の畑や田んぼに入ってしまうパターンです。
その場合はちゃんと土地の所有者に謝りましょう。
また、バードウォッチングに行く前に、その土地に所有者がいるかなども確認しておき、事前に揉め事を回避するようにするのも大切です。
他にもジョウビタキは民家の屋根の上にあるアンテナの先などで縄張りアピールをする事があり、長時間見ていると民家の方から通報される場合があるので自然豊かな住宅地の近くでバードウォッチングをする場合は住民トラブルには十分に注意しましょう。
6,ヒタキについて筆者が思った事について
ジョウビタキやルリビタキなどのヒタキの仲間は昔から親しまれている野鳥で、中には民家の瓦屋根の隙間や蔵などに巣を作る事もあったそうです。
そんなヒタキの仲間は「カチッカチッ」という独特の鳴き声が、昔火起こしに使われていた「火打ち石」を打ち鳴らす音に似ていたため、その名を付けられたそうです。
そこで筆者は思いました。日本昔話の「カチカチ山」の話で一瞬名前だけ出てくる「カチカチ鳥」はヒタキの事ではないのかと。
カチカチ山の話を要約すると、ウサギに親切にしてくれた老夫婦を悪ダヌキが騙してお婆さんを殺したためウサギが敵討ちする、という物語です。
この物語の中でウサギは何度かタヌキを騙すのですが、最初に騙した時にタヌキが背負った薪に後ろから火打ち石で火を着けていました。
タヌキは「変わった音がする」とウサギに訪ねますが、ウサギは「あれはカチカチ鳥の鳴き声だ」と答え、それを受けてタヌキは「カチカチ鳥はよく鳴く鳥なんだなぁ」と納得します。
この「カチカチ鳥」がヒタキの仲間だと色んな意味で納得できるのです。
鳴き声が「カチカチ(火打ち石を打つ音に似ている)」「よく鳴く」などはヒタキの特徴ですし、ヒタキの漢字表記である「火焚き」にも通じます。
実際物語でもタヌキの背負った薪は燃え上がり、カチカチ鳥(ヒタキ=火焚き)としてこれから起こる惨状を表していたのではと今になって思います。
カチカチ山ではヒタキ自体は出ていませんが暗示するようなところがあるので物語が気になる方は是非見てみてください。
まとめ
今回はヒタキの仲間であるジョウビタキについて皆様にご紹介させていただきました。
ジョウビタキは見た目の美しさに加え鳴き声や仕草も美しい野鳥であり、中には人を覚え懐く個体もいます。
そんな彼らが縄張りを一望できる場所で誇らしげに鳴く姿や縄張りを守るために戦う姿は小さい鳥であるはずなのに、生き生きとした命の輝きには感動を覚えます。
また、ジョウビタキは自然が豊かな場所であれば公園や住宅地でも見る事ができ、特に何もしなくても気に入ってくれれば庭先の木々やベランダの手すりに留まって過ごしてくれる一面もあり、身近な野鳥でありながら観察のしやすさで初心者にもオススメなのです。
もし気分転換に自然とふれあってみたくなったら小さな体に美しさ、可愛さ、闘争心と誇りを持つ野鳥・ジョウビタキを観察してみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、普段をより良く過ごすための新たな発見があるかも知れませんよ。