結論から書くと、魚釣りと「IoT」を組み合わせることで、プロとアマと初心者の隔たりがゼロに近づく可能性があります。
「なにそれ便利じゃん?」
と思う人はいるかと。
平均が当たり前の世界を、望むか望まないかは別として、どのような世界が待っているのか、垣間見てみましょう。
IoTとはなんぞや?
『IoT(Internet of Things)』とは、様々なモノをインターネットに接続すること。
スマフォはもちろん、テレビにエアコンに冷蔵庫、カーテンや掃除機などなど、家庭にあるモノがネットを通じて情報交換または制御をすることができます。
これを提唱したのは「ケビン・アシュトン」で、理念は1999年に生まれました。
近年になってIoTという言葉を、よく目にしたり耳にしたりすると思いますが、ようやく時代が追いついたというわけです。
スマートフォンのような小さい端末ひとつで、この世にある全ての機器を操作または管理できるようになるのがIoTであり、IoE(Internet of Everything)の根幹を成す一部になります。
IoTがもたらすもの
IoT最大のメリットは、あらゆるモノのデータを収集できるところ。
それが何をもたらすかの代表をいうと──。
- 製品の品質向上
- アフターサービスの充実
- 遠隔医療や遠隔生産
- 自動運転
とても全ては紹介できないほど、様々なメリットがあります。
反対にデメリットは、セキュリティと膨大なデータを解析する人材が追いつかないところ。そして通信設備(インフラ)がまだ不十分です。
IoTが魚釣りにもたらすモノ
それではIoTが魚釣りに何をもたらしてくれるのか、少し考えてみましょう。
「ロッド」「リール」「ルアー」それぞれ、インターネットに接続されたと仮定します。
内蔵されたセンサーが製品の情報を集め、モバイル端末にリアルタイムで送信されるようになりますね。
企業にもデータが送られ、故障箇所が判断しやすくなり、アフターサービスの対処も早くなります。
人のいうことより、データは嘘をつきませんからね。
「……それの何がすごいのん?」
と思う方は、これからを生きるのは、少し面倒になるかも。
今のままで構わないなら、この先どうでもいい内容になるので、ブラウザを閉じた方が時間の節約になります。
IoTロッドはこうなるかも?
ロッド内に「ジャイロセンサ」を入れれば、しなり(軌道)をデータ化できます。
慣性センサを導入すれば、ルアーの飛距離も算出できるし、ロッドにかかる力も数値化できるため、限界点を見極めやすくなる。
ロッドの耐久テストですでにこれを行っている企業もあります。
ようは、デジタル機器を駆使したメーカーが行う製品テストを、ユーザーが誰でも行える感じになるわけです。
ロッドの曲がり・負荷・慣性速度をデータ化できれば……、プロアングラーのデータをとれば、それと同じ動きをすればいいだけだし、あこがれの人と同じスイングを実現することが可能です。
テスト段階で「このスピード・負荷で折れた」データがあれば、そこに到達する前に警告を出すこともできます。
補助ロボットが進化すれば、理想的なキャストをサポートしてくれるでしょう。
IoTリールはこうなるかも?
めざましく進化するのはベイトキャスティングリールでしょう。
今でもCPU制御されていますが、ツマミ設定のみの、機会的なプログラムにすぎない。
IoT化すれば、ベイトリールとモバイル端末を繋ぐことにより、より細かい数値設定がリニアで可能になるでしょう。
ロッドと連動して「◯m投げたい」希望も叶えてくれるかも。
写真から参照して、「ここへ投げたい」と指定すれば、最善のセッティングを提案してくれるようにも。
あとはルアーアクションの目処として重要な、リトリーブスピードを数値化できるところ。
「これはこうやって釣る!」、みたいな情報を提供する側からすれば、とても貴重なデータになります。
IoTルアーはこうなるかも?
まずデメリットの話から。
製品にセンサと受信機能を内蔵する必要があり、電力が不可欠で、重量が増します。
現在も小型化が進んではいるが、それらを小型に収めることは難しい。
今よりも重く大型になりやすいため、致命的な弱点になりえます。
人工知能(AI)で自ら魚を探して、自律アクションで食わせるルアーが出そうですね。
カメラをつければ簡単に水中を見ることができるし、魚が本当にいるのかもわかる。慣性センサがあれば流速スピードもわかるし、ジャイロがあれば深度もわかる。
──など、人間の曖昧な感覚が数値化されることで、良く釣る人を真似ることも可能に。
メソッドをデータ化すれば、テクニックの垣根が低くなるでしょう。
ということは──
”フィッシングガイド”をロボットがしてくれる未来も、そう遅くはないかもしれません。
IoTを利用したリアルタイム釣果情報
現在でも似たようなアプリは存在しますが、リアルタイムにはほど遠い。「聞いた時には時すでに遅し」が今の状況。
釣り人は”釣れた場所”を公開したがらないので、そもそも信頼性に欠けるのが、釣果情報だと思っています。
ロッドとリールに掛かる負荷を魚が掛かったと判断し、GPSにより居場所を伝え、アプリに「現在ファイト中!」とか表示されたら、ゲームみたいで面白くないですか?
釣り大会では実況する側としても重宝しそうなシステムが作れそうです。
ヒットルアーやパターンなど、データとして提供できるので、不正防止にも役立ちます。
IoTフィッシングがもたらすのは、曖昧さをなくしたフラットな世界
あらゆるデータが数値化されると、曖昧なことをいうメーカーの回し者をあぶり出すことができます。
また発表の数値も誤魔化しが効かなくなり、結果的に品質の向上にも繋がるわけです。
現在まで腕による釣果の差がありました。
しかし、データを駆使すれば、プロと同じことをするのも可能であると、わかってもらえたかと思います。
「そんなデータが何になるんだ。俺の経験と実績はデジタルだってひれ伏すぜ──」なんて意見もあるでしょう。
しかし”経験の差を埋めれる”ことが、とても重要なことです。データを基に動くプログラムは、言伝よりも確かで、教科書通りという意味で平均的になります。
よって、初心者とプロの垣根がゼロに近づいていくのが、これからのフィッシングの可能性です。
技術的には難しく聞こえると思いますが、それを誰でも使えるよう取り組んでいるのが、進行形のIoT技術。
あらゆる”モノ”同士を繋げるのが第一歩、ゆくゆくはあらゆる”概念”を繋げるのが最終目的地です。
リンク モノとインターネットの融合で新しい製品やサービスが出現|日経XTECH
仮に釣具のIoT化が完成したら、魚をかけるまでのハードルは下がるでしょう。
ですが、魚をかけてからは現在と変わらりません。
いくらIT技術が進もうが、全自動で魚を釣りあげるのは、魚釣りではなく、漁というのでは?
ロッドを立て、リールをゴリゴリ巻き、「人と魚のガチンコファイト」に楽しみを見出したのが、ゲームフィッシングなのだから。