海や河川には多くの魚達が生息しており、その見た目や生態も様々です。
タモを使ったガサガサなどでもヨシノボリやドジョウが捕れ、同じ環境に生息しながら見た目が全く違うのも興味深いです。
そして魚釣りであればより大きい種類や変わった魚との出逢いの幅も大きく広がります。
魚を食べるための獲物として、あるいは魚との駆け引きを楽しむために釣りを始めた方も多いと思いますが、予想外の大物との遭遇はかなりの衝撃と緊張を覚えるはずです。そして釣り上げた喜びは非常に大きなものでしょう。
今回のテーマはズバリ「海の大物」。
サメ・エイの仲間は巨大化しやすいため割愛させていただきましたが、世界には「海の主」を名乗るに相応しい魚達がたくさんいます。
その中でもトンでもサイズの種類をちょっとした小ネタと共にピックアップしてご紹介させていただきます。腕やタックルに自信がある方、大物を釣っていっぱい食べたい方は是非見ていってください。
1,岩礁に生息するモンスターフィッシュについて
①高級かつ最強クラスのサバイバー!「クエ」!
ハタの仲間であるクエは非常に美味しい魚として知られており、その美味しさから高級魚として君臨しつつ養殖もされています。
また、ハタの仲間の中では成長がかなり遅いため天然物のクエは希少価値が高いです。
そんなクエは、成長すると全長150cm以上、体重も約50kgという「岩礁の主」といっても過言ではない立派な姿になります。
これほどの巨体になるまでには相当な時間もかかりますし、まずお目にかかれません。
クエは昼間は岩陰に隠れていますが、夜になるとゆったりと泳ぎながら獲物であるイカやタコ、魚、イセエビなどの大型の甲殻類を探しにいきます。
成魚・老成魚になったクエは堂々とした見た目と巨体を活かしたパワーファイトから釣り人の「憧れの魚」の1つに数えられていますが、幼魚・稚魚の頃は小さくて少し華奢です。
しかし、クエは生まれつき非常に優れたサバイバル能力を持っているため自然界でも生き残れています。
稚魚は秋頃に塩溜まり(タイドプール)や内湾の藻場、などで見られます。
成長とともに少しずつ移動していき、最終的には水深50mかそれより深い場所で生活するようになります。
⭐クエの名前は不思議がいっぱい
クエの漢字表記として「九絵」があります。これは体表の大きな模様と体色変化から当てられていますが、本来の漢字表記は「垢穢」です。こちらは体色がキレイではない事に由来しています。
また、地方名として「モロコ」「マス」「クエマス」「アラ」などがあり、地方名だけ聞いたら色々と誤解が生まれてしまいそうです。
②キング・オブ・ハタ!「マハタ」!
パワーファイターが多いハタの中でも大きさ、美味しさ、パワーのバランスが凄まじい種類といえるのが「マハタ」です。
クエに隠れているようですが、名前の由来は「ハタの中で最も多く、最も美味い」というところから来ています。
体色は黒褐色に白のシマシマ模様、目にはエメラルドグリーンの輝きというシンプルな美しさも兼ね備えていますが、成長した個体はクエの大きさを軽々と超え、全長約180cm、体重は約100kgというモンスターフィッシュです。
クエより水深の深い場所を好んでおり、水深約100〜300mという場所に生息しています。
特に大物は100mより深い場所を好んでいるため手合わせ願いたいという方は深場を狙いましょう。
マハタは魚やイカ、タコ、イセエビなどを好んで捕食しますが、空腹であれば夜間でなくても餌を食べる事があるので船釣りでまさかの「マハタアタック」を食らう事も少なくありません。
⭐愛に種類は関係無い!?
マハタは自然界では上位捕食者なので貴重な存在であり、非常に美味しい魚なのでクエと同じように養殖されている魚でもあります。
そんなマハタですが不思議な性格をしており、近い仲間であれば自然界でも「簡単に交雑してしまう」という魚界のプレイボーイっぷりが有名です。
ヤイトハタ、キジハタ、クエなどとも繁殖行動を取りやすく、生息地をダイビングすると低確率ですが交雑個体を見る事もできます。
また、マハタやクエ、カスリハタなどのハタの仲間達は人懐こい性格をしておりダイビングの名所だったりすると餌付けられてダイバーを見ただけですり寄ってくるような個体も多いです。
釣りの時は非常にパワフルですが、それ意外ではひょうきんなマハタは色んな意味で強敵になりそうです。
③岩礁・サンゴ礁最強のモンスター!「タマカイ」!
タマカイは知る人ぞ知る最大級のハタの仲間で、その大きさは規格外ともいえる270cm!体重はなんと400kgというハタの仲間どころかサンゴ礁最大の硬骨魚類の1つとして君臨している魚です。
また、かつては3m級の超大物の存在も噂されていました。
そんなタマカイは海外の方が有名ですが、日本でもその存在が確認されており、和歌山県や沖縄県の海で確認されています。
稚魚や幼魚の時は黒褐色の体に黄色い水玉模様というファンシーな体色をしていますが、大人になるにつれて鮮やかな水玉模様は薄れていき、薄い斑模様と灰薄い斑模様と暗い灰色の燻し銀な体色になります。
尾ビレは丸みを帯びており、口はかなり大きいです。この大きな口で獲物であるイカやタコ、大型の甲殻類や1m級の魚などを丸飲みにしますが、空腹だと小型のサメすら餌と見なして丸飲みにしてしまいます。
その食べっぷりからか、海外では「人食いハタ」として恐れられている魚でもあります。しかし実際は人を襲う事は滅多にありません。
普段は岩礁やサンゴ礁の洞穴や亀裂に潜んでおり、縄張り意識が強いため見た目が似ている魚が縄張りに入ると追い出します。
この特徴からタマカイはまとまった場所にいないためヒットは非常に珍しいです。
タマカイは弾力のある旨味の強い肉質と皮や内臓などが薬になるとされているため海外では食材や漢方薬として非常に人気が高く、台湾では「ハタの王様」と呼んで珍重されています。
また、沖縄県ではレッドデータに記載されているため本格的にタマカイと戦ってみたい方は和歌山県や伊豆諸島、小笠原諸島かオーストラリア、台湾などで挑むのがオススメです。
⭐あの魚と接点が!?
圧倒的巨体とパワーと旨味で世界中の釣り人や漁師の憧れの魚となっているタマカイですが、生物学ではある魚に近い特徴があると言われています。
その魚はなんと「生きた化石」と呼ばれる古代魚・シーラカンスです。
現代で繁栄している魚の中でもタマカイはシーラカンスに近い性質や特徴を持つと考えられているため、釣り人や漁師だけでなく学者もタマカイから目が離せません。
⭐飼育されている事も!
タマカイは水族館でも飼育されており、泳ぎ回るというよりは底の方でドッシリと構えています。
その多くが成魚の体色ですが、飼育下という事もあってか大きい個体でも150〜170cmと平均か少し小さいサイズになっています。
稚魚や幼魚の頃は美しくファンシーな体色をしているため、かつてはマリンアクアリウムで飼育される事もありましたが、寿命も長く最大級の魚という特徴から専用の巨大水槽で飼育するのが富の象徴みたいな扱いになっていた事もあったそうです。
⭐新たな存在に注目が集まる!
ハタの仲間は美味しいため養殖されている事もありますが、クエの養殖にはかなり悩まされていたようです。
何故ならクエは成長が遅く、出荷や繁殖可能になるまでの飼養期間がかなり長かったからです。
この問題を解決するために、成長がおそいクエと成長が早いタマカイを掛け合わせ「クエタマ(またはタマクエ)」が誕生しました。
このクエタマは成長速度の問題を解決しつつも両親の肉質の良いとこ取りをしているため、最近では「桜クエ」という寿司ネタとして流通もしています。
しかし、数年前の台風でクエタマの生け簀が壊れてしまったため自然界にクエタマが流出してしまいました。
クエタマの被害は不明なところが多いですが、自然を守りながらパワーファイトを楽しみ、美味しく食べたいという覚悟ができている方はクエタマに挑んでみても良いと思います。
④岩陰に潜むウツボ界の重鎮!「ドクウツボ」!
ドクウツボはウツボの仲間の中でも最大級の大きさを誇る種類で、その大きさは全長約3m、体重約30kgもあり貫禄たっぷりです。
甲殻類や魚類、タコやイカが大好物で、夜間の狩り以外でも昼間にお腹が空いている状態だと鋭い嗅覚を用いて探しだし捕食します。
主にハワイやニューカレドニアの海、インド洋などの岩礁やサンゴ礁に生息していますが、琉球諸島でも生息が確認されています。
その見た目は全身に褐色〜黒褐色の細かい斑模様とエラ穴に黒いスポットが入っており、口の中には鋭い牙が並んでいます。ワイヤーすら噛み切ってしまいそうな迫力があります。
ドクウツボは名前の通り、その身に毒性がある種類です。「シガテラ毒」を蓄積させる事が知られており、身や皮より内臓の方が毒性が強いとされています。
この特徴から食用には向きませんが、釣り上げるとなると非常に厄介な魚なので鋭い牙に注意しながら挑んでみてはいかがでしょうか。
⭐性格は意外とフレンドリー!?
巨大な体に鋭い牙、鋭い目付きで岩の隙間から睨みをきかせているドクウツボですが、野生の個体が人間と交流を取る姿も知られています。
岩陰から出てきてダイバーにすり寄ってきたり頭を撫でられたりしているだけでなく、ハグまでしてくれる個体もいるそうです。
ウツボの仲間はよく凶暴性が語られていますが、ウツボから噛み付く時というのは逃げ場がなかったり空腹でイライラしている場合が多いです。
基本的には理由がなければ自分から逃げようとします。
⭐実はとってもキレイ好き!
ウツボの仲間はキレイ好きで、自分の縄張りに「クリーナー」という生き物を住まわせる事もあります。
この「クリーナー」は体に付いた寄生虫や口の中の食べカスを食べてくれる習性を持っており、ウツボは定期的に掃除をしてもらっているのです。
ホンソメワケベラやオトヒメエビがクリーナーとして有名で、ウツボの巣穴にはオトヒメエビが一緒にいる事も多く、その写真は人気が高いです。
ちなみにクリーナー達は1度掃除を始めるとトコトンやろうとするためたまにウツボはむせます。
⑤大きさも見た目もビックリ!「コブダイ」!
コブダイは名前に「タイ」と付いていますが、実は大型のベラの仲間です。
大きさは1mを超える事もあり、大物にもなるとオスの特徴でもある頭部や下アゴにできる巨大な「コブ」もかなり盛り上がって貫禄があります。
その巨体とコブを持つオスの姿は釣り人もダイバーも驚きを隠せません。ちなみにメスにはコブが無いため別種に見えます。
口の中には大きな歯と咽頭歯があり、好物であるサザエやホラガイなどの巻き貝や二枚貝をバリバリと噛み砕いて捕食します。
「ハーレム」を作る習性があるため、1匹の強く大きなオスの近くにメスが泳ぎ回っています。
ベラの仲間なので泳ぎは上手く、噛み付く力も強いためコブダイを釣り上げるのはかなり大変です。
場合によっては釣り針やルアーもバキバキに折られてしまいますし、ラインも持たない可能性があります。
⭐名物コブダイの弁慶とゴルビィ
新潟県佐渡市の海にはかつて、コブダイのボスがいました。
そのコブダイは「弁慶」と名付けられ、地元民やダイバーにとても親しまれていました。
弁慶もサービス精神が旺盛な性格で、ダイバーが来るとその姿を見せに行ったり自慢のコブを触らせてくれたそうです。
また、弁慶にはライバルの「ゴルビィ」がおり、タイミングが良いと2匹のバトルが見られたため非常に人気がありました。
そんな2匹も現在は老衰で亡くなってしまいましたが、コブダイの寿命は20年前後といわれているため、成魚になってから長い間佐渡市を盛り上げてくれたスターフィッシュであった事は間違いありません。
⑥我が辞書に敗北の文字は無い!「ナポレオンフィッシュ」!
ベラの仲間の中でも最大級の種類の1つがナポレオンフィッシュです。和名は「メガネモチノウオ」といい、名前のギャップが激しいです。
コブダイとは違った形で頭部が盛り上がり、ウロコの一枚一枚は大きくとても丈夫なので包丁では歯が立ちません。
そんなナポレオンフィッシュの全長は2mを超え、確認されている記録の中で最大の個体は全身229cm、体重191kg、年齢は32才とされています。
太平洋、インド洋などの海に広く生息しており、日本では和歌山県や南西諸島でも生息が確認されています。また、沖縄県では稀に漁獲されたものが食用として流通する事もあるようです。
比較的浅い岩礁やサンゴ礁を好んでおり、お腹が空くと海底付近を泳ぎながら好物の小魚や貝類を捕食しています。
性格は気が強く、繁殖期以外は単独行動をしている孤高の魚です。
ちなみに肉質は、ほどよい脂乗りと上品な旨味が特徴で、小さい個体は蒸し料理にすると脂やコラーゲンが溶け出してトロトロフワフワの食感になって人気があるそうです。
⭐「岩礁の総督」を銛一本で仕留める漁師がいる!
日本有数の南国・沖縄県では魚釣りや船釣り、延縄漁なども盛んですが、海中に潜って銛一本で魚を漁獲する銛突き漁も盛んです。
動画サイトでもその様子が投稿されており、アカジンやブダイなどを華麗に仕留める様子が視られます。
そんな中、軽トラの荷台いっぱいの大きさのナポレオンフィッシュを仕留めた動画が投稿されていました。
釣りでも非常に厳しい相手を海中というアウェイな環境で仕留める漁師さんの腕前と身体能力には脱帽です。
⑦北の海に住まう魚の神!「オオカミウオ」!
口から覗く大きな鋭い牙に魚とは思えない恐ろしい顔から「オオカミウオ」と名付けられました。
生息地はベーリング海や東北地方の北部、北海道の岩礁に生息しており、水深約50〜100mあたりの岩場に身を潜めています。
全長は稀に1mを超え、体色は黒〜赤褐色、暗い青色など岩場に身を隠すのに適した体色となっています。
オオカミウオはギンポの仲間で、性格は見た目の凶悪さとは真逆の臆病で大人しい性格です。
主に巻き貝や二枚貝、カニなどの甲殻類を捕食しており、鋭い牙と強力なアゴの力で獲物をバリバリと噛み砕いて食べます。
アイヌ文化では非常に重要な魚とされており、アイヌ語で「チップカムイ(「魚の神」の意味)」と呼んで大切にされていました。
⭐下処理が大変だけど味は美味!
オオカミウオは主に地産地消されているのでなかなか出回る事が少ない魚でもあります。
というのもオオカミウオは漁獲したらすぐに活け締めしないと生臭さが残ってしまったり、体表がかなりヌルヌルしているためヌメリの処理もしなければならないなど下処理にかなりの手間がかかってしまうからです。
そんなオオカミウオの身は淡白で旨味があり、油と相性が良いのでムニエルやフライ、天ぷらなどが美味しい食べ方として紹介されています。
2,仄暗い海の底から。深海のモンスターフィッシュについて
①アンコウの仲間の最大最強アングラー!「ニシアンコウ」!
日本ではなく地中海や黒海、ジブラルタル海峡やモーリタニアなどに生息しているアンコウの最大種です。
水深も浅ければ約20m、深ければなんと1000mもの深さに生息しています。
そんなニシアンコウの全長は2mを超え、体重も57kgを超える自然界が生んだトンでもアングラーです。
日本のアンコウのような見た目や生態をしており、海底の砂に潜んで獲物となる魚やイカ、タコなどを丸飲みにします。
待ち伏せ型ではありますが、体が大きい分体力も多く力も強いため、釣り上げるとなると非常に厄介な魚です。
また、アンコウの仲間あるあるとしてメスの方が大型化する特徴があります。
⭐海外では釣り上げるよりトロール漁
ニシアンコウは釣り上げられるというよりはトロール漁などで漁獲される事が多い魚です。
確かに深ければ水深1000mから引き上げるとなると釣りではかなり難しいのかも知れません。
そんなニシアンコウは日本のアンコウと同じ仲間なので肉質や味、肝も良いしいらしく、世界的にも重要な水産資源となっています。
②海底から布団が!「オヒョウ」!
オヒョウはカレイの仲間の最大種で、冷たい海を好んでおり、オホーツク海やベーリング海、北極海などに生息しています。
水深も400〜2000mという深海に生息しており、カナダやアラスカではカヌー釣りでヒットする事も珍しくありません。
その大きさは1〜2mでもまだまだ小さい方で、最大級の個体は4m近い大きさに成長します。
ここまで来ると体重も200kgを超えてくるためまさしく深海のモンスターと言えます。
好物は魚やエビ、カニなどの甲殻類で、その見た目とは裏腹に活発に泳ぎ回る回遊魚でもあります。
オヒョウもアンコウと同じようにメスの方が大型化する種類で、オスは大きくてもメスの半分くらいの大きさにも届きません。
性格は非常に獰猛で、獲物を見つけると積極的に捕食するだけでなく、釣り上げると鋭い牙と巨体を用いて力任せに暴れまわるため釣り上げた後も〆るまでは油断を許さない魚なのです。
そんなオヒョウの肉は引き締まっており、脂も少ない淡白が味わいで人気が高い食材となっています。
ムニエルや刺身も人気でビタミン類も豊富なため世界的に愛されている魚なのです。
⭐オヒョウがダイエッターに希望を与えた!
海外在住のある男性の話です。
この方はかなり肥満が進んでいたため健康のためにダイエットを始めました。
苦手な運動をしたり野菜を多く食べて少しずつ体重を落としていったのですが、元々体重が120kgを超えていたため40kgの減量は実感が沸かずにダイエットを止めようとしたそうです。
そんなある日、魚釣りに行くと男性の竿にオヒョウがかかりました。そのオヒョウは子ども用ベッドくらいの大きさがある立派なサイズでしたが、計量してビックリ!なんとオヒョウは男性が減量した40kgジャストだったのです。
オヒョウという形で自分の頑張りを確認できた男性はその後もダイエットを継続し、健康的な体型を手に入れたそうです。
この話はテレビにも取り沙汰され、日本でも放送された事があります。
③食べたらアウト!「バラムツ」!
普段は水深数百mに生息している深海魚ですが、夜間になると浅場に上がってくるため夜の船釣りや延縄にかかる事があります。
全長2mを超える巨体を持つため釣り上げるのも大変ですが、その口には鋭い牙が並び、全身は素手で触れればズタズタにされてしまうほど鋭利なウロコに覆われているため釣り上げた後も扱いには注意が必要です。
ちなみにバラムツの名前の由来はウロコにあり、まるでバラのトゲのように鋭利なトゲ状のウロコから名付けられています。
深海魚なので引きが弱そうと思う方もいらっしゃると思いますが、バラムツがかかるとかなり引くため油断は禁物です。
⭐旨味の代償は「人間としての尊厳」!?
バラムツはアブラソコムツと同じように流通しない魚ですが、釣り上げた方が持ち帰って食べる事もあります。
鋭利なウロコは厄介ですが、身や骨は柔らかいようで捌きやすい部類とされています。
そんなバラムツは「全身トロ」と言われるほど脂っこい魚でそのこってりした味わいがクセになるという方もいるそうです。
しかし、バラムツはできれば食べない方が無難です。
というのもバラムツのこってり脂の正体は「ワックスエステル(いわゆる「蝋」)」なので、人体では分解できず皮膚から脂が染み出す「皮脂漏症」になったりお尻から脂が流れ出るといった人間の尊厳に激しく関わる状態になってしまいます。
一応オムツを履いて2切れまでならと言われていますが尊厳を失いたくない方はバラムツは釣るだけにしましょう。
3,広い海からの刺客!回遊系モンスターフィッシュについて
①海中の弾丸!「マグロ」!
クロマグロやキハダマグロ、ビンチョウマグロなど様々な種類がいるマグロは私達の食生活に潤いを与えてくれる存在です。
常に群れを作って広い海を泳ぎ回っており、世界中から食材&保護生物として注目を集めています。
そんなマグロの最大種は「タイセイヨウクロマグロ」で全長4.5m、体重は700kg近いというまさに「海の主」です。
普段泳ぐスピードはそこまで速くありませんが、獲物となるイワシやアジなどの群れを見つけると最高時速80kmで突撃し、大きく開けた口で捕食します。
近年では浅瀬で釣りをしていた方の竿に立派なクロマグロがヒットしてニュースになりましたので、超低確率ではありますが堤防釣りで大物を狙っていたら急にラスボス来たみたいな展開になるかも知れないので気を引き締めた方が良いかも知れません。
⭐近畿大学の偉業!
マグロは減少傾向にあるといわれており、その結果漁獲量が減ったりしています。マグロ大国日本の緊急事態です。
そんな中、近畿大学水産研究所はなんと世界初の偉業、マグロの中でも最も需要が高いクロマグロの完全養殖に成功したのです。
それ以降、この研究所で養殖されたクロマグロは「近大マグロ」と呼ばれ親しまれるようになりました。
⭐監視カメラに写ったのは!?静寂なる海の王!
海外のとある海中の動画です。
その動画には白っぽい塔のような建造物が写り混んでいます。その横を1匹の大きなマグロが横切っており、静寂の美しさがあります。
しかし、ある事を知ってしまうとトンでもない事実に気付いてしまうのです。この塔のような建造物の直径は約4m、それを遥かに上回る大きさのマグロが写っていたのです!
写っているマグロの大きさは建造物の大きさとの比較から約6mと推測されており、実際にいるのであれば世界最大級の硬骨魚類の1つとなります。
6mのマグロとなるとパワーも爆発力も桁違い、小型船では電気ショックが使える距離まで引き寄せる前に、逆に引っ張られてしまうかも知れません。
②魚類最速最強のランサー!「カジキ」!
クロカジキやバショウカジキ、メカジキなどが含まれるグループです。
どの種類も上顎の先が槍のように長く鋭く伸びており、その全身は魚界のトップアスリートの呼び声も高く、スピードは魚類最速を叩き出します。
カジキの最大種は「クロカジキ」で全長は約4.5m、体重は700kgという巨体です。
尖っている「吻」という部分は餌となるニシンやイワシ、アジなどの群れを襲い捕食する時に振り回して弱らせるために使われている他、サメなどの天敵に突撃して撃退するのにも使われています。
そんなカジキの最高速度は時速100km以上といわれており、このスピードで獲物の群れや天敵に突撃するのです。
主にトローリングでカジキ漁を体験できますが、カジキはかなり好戦的な性格をしているため、釣り上げられる直前に道連れ精神で吻を振り回す凶悪さがあります。
また、この振り回しは非常に危険で怪我人や死者も出ているため、カジキ釣りの際はカジキの攻撃に十分注意しましょう。
⭐残酷、残忍!メカジキの凶暴性!
世界中の海を回遊するメカジキはあらゆる魚類の中でも非常に気性が荒く、気に食わないものに対してとにかく攻撃する凶暴性があります。
自分より大きなイルカやクジラ、天敵のはずのサメ、さらには人間が乗っている船やボートにまで突進する超危険生物です。
その威力は相手を死に至らしめるには十分すぎるほどで、鋼鉄でできた軍艦にも穴を開けてしまいます。
カジキを狙っている時にメカジキと出会った場合は、より攻撃に注意しなければ釣り上げる事は難しいです。
ちなみにメカジキは英語で「ソードフィッシュ」と呼ばれています。
⭐カジキなのに「ハーモニカ」!?
世界中の海を回遊し漁獲されるカジキですが、宮城県気仙沼市ではメカジキの「ある部分」の事を「ハーモニカ」と呼び食材として親しんでいます。
その部分とはなんとメカジキの「背ビレの付け根」!
背ビレを動かすためのしなやかな筋肉にトロトロプルプルのコラーゲン、旨味たっぷりの脂という旨味の爆弾のような超希少部位なんです。
主に塩焼きや煮付けで食べられる事が多いですが、香草焼きやムニエルにしても美味しい部位なので気になる方は是非メカジキとの戦いに勝利するか通販で購入して食べてみてください。
③超巨大アジ!「ロウニンアジ」!
アジの仲間の中には「ギンガメアジ属」という大型種がひしめくグループがいます。
そのグループに含まれるカスミアジ・ギンガメアジ・オニヒラアジ・ロウニンアジはまさに「アジ四天王」であり、中でもロウニンアジは最大最強の種類として君臨しています。
ロウニンアジの全長は180cmを超える事もあり、体重は80kgになる事もあるモンスターフィッシュです。
かつてハワイでは体重が86.6kg以上の個体が捕獲された事もあるそうです。
ハワイやアフリカ東岸、オーストラリア北部、インド太平洋、南日本などの暖かい海に生息、回遊しています。
未成魚は群れを作って泳ぎ回り、意外と浅い場所や汽水域に現れる事もあるので比較的狙いやすいですが、成魚になると単独で水深約100mまでの沿岸域を回遊するようになるという特徴があります。
また、体色は淡い灰色ですがオス個体は黒ずんだり黒くなります。
アジの仲間なのでシャープな顔つきかと思いきや、アジにしてはのっぺりとした顔をしておりどちらかというとイシダイやヒゲソリダイに近いです。
主な獲物はイカやタコ、エビ、カニ、口に入るサイズの魚達ですが、時には海鳥さえも捕食する事があります。
海鳥を捕食する際は大きな水飛沫を上げたり海面から飛び出す事もあり、ロウニンアジの秘めたるパワーが垣間見られる瞬間です。
また、海外ではサメやアザラシから餌を横取りするなどの行動も確認されています。
ヒットした時の引きや走りも凄まじく「リールから煙が出た」「釣り上げるまでに1時間かかった」などの逸話を持つかなりの強敵ですので全力で挑んでください。
⭐名前の由来は?
「ロウニンアジ」のロウニンの部分は漢字で表記されると「浪人」となります。
これは特定の主を持たない「浪人武士」の事を指しており、成魚の迫力満点な顔と前鰓蓋骨の線が向こう傷を負った浪人武士のようなのでロウニンアジと名付けられました。
また、釣りだけでなくダイビングでも人気の魚であり、英名である「ジャイアント・トレバリー」の頭文字を取って「GT」とも呼ばれています。
⭐食べるなら小さめがオススメ!
ロウニンアジは食材としても親しまれており、刺身や唐揚げ、塩焼きなどで食べられています。特に4〜5kgの個体が美味しいそうです。
一方で巨大サイズの成魚は生息地によっては「シガテラ毒」を体内に溜め込んでしまうため食用にされない事も少なくありません。
巨大ロウニンアジを釣り上げ美味しく食べたいと思っている方は、釣りのポイントを厳選してロウニンアジに挑んでみてください。
④幻のサケ!「マスノスケ」!
まるで初代鬼武者の主人公みたいな名前をしていますが、実際に存在するサケの仲間です。
サケの仲間の中では日本三大怪魚「イトウ」とともに最大級の種類で全長は150cm以上、体重は50kg以上という堂々たる大きさをしています。
しかし、食用として漁獲されている個体の多くは90cm止まりの個体がほとんどなのだそうです。
冷たい水を好むサケの仲間の中でも最も冷たい水を好んでおり、アラスカやカムチャッカ半島、北太平洋、オホーツク海、日本海などに生息しています。
気になる餌ですが、エビやイカナゴなどを捕食していると考えられています。
日本では北海道で漁獲されますが数は少なくとても希少です。これには日本にマスノスケの産卵に適した河川が無いからと考えられます。
アラスカのユーコン川はマスノスケの産卵場所として有名ですが、マスノスケはこの川を遡上して産卵場所に辿り着くまで1000km以上も泳ぐ個体が確認されており、体の大きさと圧倒的体力、遊泳力から「キングサーモン」と呼ばれています。むしろこちらの呼び名の方が有名かも知れません。
体色は腹側は白銀色、頭部〜背中側は暗い青緑色に細かい黒のドット模様、尾ビレは黒いドット模様に白銀色のラインが入ります。
婚姻色は体の後半部分が濃いピンク色に染まり、前半部分は部分的に染まります。
また、他のサケの仲間より目が小さいのもマスノスケの特徴です。
⭐味もまさにキング!
マスノスケの身はサケの仲間の中でも脂乗りが良いため、とても美味しいと言われています。
国内でもスーパーなどで稀にキングサーモンの名前で食材として流通していますが、アラスカやロシアから輸入されています。
脂も美味しい魚なので燻製にされたり刺身、塩焼きなどで食べられる他、イクラも他のサケの仲間と同じように醤油漬けや塩漬けに加工されているので気になる方は是非食べてみてください。
4,魚じゃないけど巨大過ぎるモンスターについて
①世界最大のタコ!「ミズダコ」!
ミズダコは冷たい海に生息している種類で、カナダやアラスカの海や北太平洋、オホーツク海などに広く分布しています。
その大きさは、全長約3〜5m、体重は50kg近くなります。最大級の個体の記録として全長約10m、体重272kgという驚異的な記録が残っており、まさに「海の怪物」の名が相応しいです。
主な獲物はカニやエビなどの甲殻類や二枚貝、巻き貝などの貝類、魚などを捕食しますが、時にはサメすら捕食してしまう貪欲さもあります。
タコやイカなどの軟体動物は全身が柔軟かつ強靭な筋肉であり、これを用いて獲物を捕らえたり外敵を襲います。
ミズダコの生息地ではダイバーが襲われる事もあり、死亡事故に繋がってしまった事もあります。
⭐水中最強クラスの力を得た代償?
ミズダコは大きさ、筋力などから海洋生物の中でも上位の存在です。
襲われてしまえばどんなに力自慢の生き物であろうが、硬い殻を持つ生き物であろうが逃げ出す事は不可能に近いです。
そんなミズダコですが、釣り上げるまでは非常に厄介なのに、一度陸に上げてしまうと巨体と体重を支える事ができず動けなくなってしまうそうです。
②怒れる赤い悪魔!「アメリカオオアカイカ」!
東部太平洋やカリフォルニア、ペルー、アルゼンチンなどの海に生息している大型のイカの仲間です。
その大きさは約170〜200cm、体重は50kgに達する事もあります。触腕には大きな吸盤が4列に並んでおり、その1つ1つには鋭い爪のようなものがついています。
性格は非常に凶暴で、先述したミズダコが近付き過ぎたり驚かせたりしなければ基本的に襲わないのに対し、アメリカオオアカイカは視界に入った瞬間に体色を赤白に点滅させながら触腕を絡み付けて襲いかかってきます。
この異様な攻撃性の高さからアメリカオオアカイカがいる海域でダイビングする場合は鎖帷子が必要だったり、現地の漁師さんですら襲われてケガをする事も少なくありません。
そんな怒れる巨大イカを人々は「レッドデビル」と呼び恐れています。
主な獲物は小魚やオキアミ、他のイカなどを餌として捕食しています。
捕食の時はたくさんのアメリカオオアカイカが集まって来るのですが、時には共食いする事もあり、自然界の厳しさを垣間見せられます。
⭐日本に来るかも!?
突然ですが、皆様は「バラスト水」というものをご存知でしょうか?
簡単に説明すると、大型船舶が運航する時にバランスを取るために船内に取り入れる水の事です。
この水は港に着くと排出されるのですが、本来その海域にいない生き物を持ち込んでしまう事があるため国際的に解決が急がれていたりします。
アメリカオオアカイカは、このバラスト水に紛れている事があるため日本だからと油断ならない存在です。
⭐性格は獰猛だけど味は美味!
視界に入った者を襲いまくり、「人食いイカ」とまで呼ばれるアメリカオオアカイカですが、その味は美味しいため日本にはペルーなどから食材として輸入されています。
元々イカを食べる文化がある日本にとっては食べ応えのある良い食材で、イカリングやイカフライなどに加工されて食卓に並んでいるのです。
まとめ
今回は世界の海のモンスターフィッシュ達について皆様にご紹介させていただきました。
世界にはまだまだたくさんの魚達がおり、リアル海の主に溢れています。
重量とパワーのハタ系、根に潜って持久戦になるウツボやオオカミウオ、瞬発力と重量の大型ベラの仲間、持久力とスピードが武器のマグロやカジキなど、どれをとっても強敵揃いです。
しかも美味しい種類も多いので、釣り上げて魚拓などで記録を残したらその味に舌鼓を打つのも釣り人の特権だと思います。
この記事が、まだ見ぬ強敵への知識になれれば私も嬉しいです。