筆者の経験上、海川問わず、魚釣りや磯遊びが好きな方はよく「飼えないのかなぁ…」「生きたまま保てないかなぁ…」と口にします。
確かにご自宅で料亭の生け簀のように飼育維持できればいつでも新鮮な魚が食べられますし、磯遊びしたお子さん特有の「この子飼いたい!」という願いも叶える事ができます。
筆者もよく知り合いに「ナマコ飼いたい」「ヤドカリ飼いたい」などとお願いされ水槽を立ち上げた事がありますし、後々食べる予定だったアジやマハタに愛着が湧いてペットにしていた方にもお会いした事もあります。
このように、自然と触れあっていると気付いたら別世界への扉を開いていたというのは珍しい事ではないので、今回は理由はともあれマリンアクアリウムに必要なアイテムについて皆様にご紹介させていただきます。
マリンではなく熱帯魚や川魚を飼育してみたい方は別ブログ「日淡といっしょ」を是非閲覧してみてください。
1,ハマる人続出!?マリンアクアリウムとは?
「マリンアクアリウム」とはその名の通り、「海の生き物を水槽で飼育する事」を指しています。
熱帯魚や川魚などの「淡水魚」を飼育する場合は「アクアリウム」と呼んで分ける事が多いです。
海水と淡水が混ざり合う「汽水」に生息するスズキやヒメツバメウオなどは人によって淡水、海水扱いになります。
ちなみに汽水は英語で「ブラキッシュウォーター」と表記されるので筆者は汽水魚は淡水魚として紹介しています。
マリンアクアリウムは小さなイソガニやヤドカリから始まり、極めていけばタツノオトシゴやサンゴ、クエ、ヒラメ、サメなども飼育する事ができるため、最初は鮮度を保つためだけのハズだったのに気付いたらドップリハマっていたという事もあります。
マリンアクアリウムでは水槽立ち上げ時に「パイロットフィッシュ」と呼ばれる魚を最初に導入して環境をテストします。
この種類には主にスズメダイの仲間が選ばれており、問題なく飼育できれば他の魚も飼育できる環境という事になります。
そんなマリンアクアリウムですが、飼育のコツが分かってくると死にやすいアサリやバイ貝の他、ガザミやマゴチなども飼育できるようになるため魚釣りや磯遊びがキッカケで実際に始めた方も多いです。
筆者の場合は最初はカクレクマノミやチョウチョウウオを飼育していたのですが、気付いたらイヌザメやオニオコゼ、ウツボも飼っていたという時期があります。
何だか興味が湧いてきた方は、是非この記事を参考にマリンアクアリウムを初めてみてください。
2,マリンアクアリウムに必要なアイテム:水槽・フィルターなど
魚であれ爬虫類であれ、生き物の飼育には必ずそれに見合ったアイテムが必要です。
特に海に生息している生き物は水質悪化や酸欠に弱く、熱帯魚や川魚より気を遣う部分があります。
ここではそんな彼らを飼育するためのアイテムについてご紹介させていただきます。
①水槽
魚達を飼育するために必要な容器です。後述するフィルターによっては30〜45cm水槽でも飼育できる種類もいますが、基本的に海の生き物の方が淡水の生き物よりも大きくなるので基本的には60〜90cm水槽がマリンアクアリウムのメジャーな水槽となります。
アジやカワハギのように遊泳力が強い種類やサンゴのように水質に敏感な種類、大型化する種類はより広い水槽の方が良い場合もあります。
また、マリンアクアリウムに使われる水槽は主に「ガラス製」と「アクリル製」に分けられており、飼育する種類や好みによって使い分ける事も珍しくありません。
ここではそれぞれのメリット・デメリットについてもご紹介させていただきます。
〜⭕アクリル製のメリット⭕〜
- 透明度が高く、魚やレイアウトがよく見える。
- 割れにくいため水量が多い大型水槽に向いている。
- ガラス製より軽いので設置がしやすい。
〜❌アクリル製のデメリット❌〜
- 傷が付きやすいので日々の管理などで細かい傷が付く事がある。
- 熱による変色や変形をしやすい。
- 値段がガラス製より高価。
〜⭕ガラス製のメリット⭕〜
- 透明度が高く、レイアウトや魚がよく見える。
- 傷付きにくく、熱による変色や変形もない。
- 様々なサイズが販売されており、値段も安価。
〜❌ガラス製のデメリット❌〜
- 割れやすいため、大型レイアウト水槽に向かない。
- アクリル製より重いため設置が大変。
- ガラスを接着しているシリコン部分が劣化しやすい。
②フタ
海水魚は遊泳力が強い種類が多く、興奮して水しぶきを上げてしまったり飛び出す事も多いので必ずフタをするようにしましょう。
フタは「水槽セット」に含まれているので、1つ1つアイテムにこだわりたいとお考えではないのなら、セットを購入した方が安全安心です。
大型魚やレイアウトに凝って大型水槽を使う場合は水槽に合うサイズのフタが無い事もあります。
その場合はアクリル板などを加工してフタを作り、飛び出しを防ぐ必要があります。また、フレームがある水槽の場合はボルトやナットなどを組み合わせ、フタを固定する事も珍しくありません。
スズキやハタなどの大型魚を飼育したい方は是非ご検討してみてください。
③シート(マット)
水槽は滑りやすいため、滑り止め付きのシートを敷いてから設置します。
このシートも単品で販売されていますが、セット内容に含まれている事もあるので、セットで購入した場合はシートが劣化するまでは安心です。
④ヒーター
自然下では多少の温度変化は当たり前ですが、急激に水温が下がったり上がったりしてしまうと魚やエビ達に大ダメージを与えてしまいます。
水温の急変は食べるにしても飼育するにしても良い状態ではないので「サーモスタット付きヒーター」を入れて水温を一定に保ってあげてください。
⑤フィルター
投げ込み式、外掛け式、スポンジ、パワー、上部式、底面式、外部式フィルターが主に使われている物です。
物理濾過、生物濾過によって水質を浄化・維持したり、酸素を供給する働きがあります。
投げ込み式、パワー、外掛け式、スポンジフィルターは飼育する数を絞れば小型水槽のメインフィルターとして使えますが、マリンアクアリウムでは補助として使われる事が多いです。
上部式、外部式、底面式フィルターは濾過力も高いのでメインフィルターとして使われますが、底砂の種類によっては底面式フィルターが使えない事もあるので注意が必要です。
オーバーフロー式フィルターは主にマリンアクアリウムで使われており、それ以外ではアジアアロワナやピラルク、アカメなどの大型魚水槽に用いられている方式です。
モーターの力で水槽から水を汲み上げ、「キャビネット」の中に内蔵してある幾つもの水槽に落とし濾過します。
少なくとも小型水槽サイズが濾過槽として機能するため浄化できる水量が圧倒的に多く、非常に優秀な濾過方法です。
しかし、取り付けにはそこそこDIYの技術が必要なので自信がない方はアクアショップに依頼しておくと確実に取り付けてもらえます。
湖や沼地に生息する魚に比べて海水魚は酸欠に弱いという特徴があります。
彼らが生息している海には常に豊富な酸素が溶け込んでいるため、酸欠に陥るという事がほとんどないからです。
そのため彼らは淡水魚のように「鼻上げ」という事もできず、水槽内の酸素が少なくなると動けなくなって死んでしまいます。
これを防ぐためにもフィルターやエアレーションを設置して対策するようにしましょう。
⑥人工海水の素
海に近く、いつでも海水を汲みに行ける距離であれば必要はないかも知れません。
しかし、海も状態によっては汲む事すら大変な事もあるので、そう言った意味でも人工海水の素は必要不可欠です。
様々な種類の人工海水が開発・販売されていますが、使い方はカルキ抜きをした水に溶かして使う事は変わりません。
「テトラ マリンソルトプロ」や「インスタントオーシャン」「マリンテック シーライフ」などがあり、量によってはバケツ売りをしている事もあります。
⑦海水比重計
マリンアクアリウムのマストアイテムです。「ハイドロメーター」とも呼ばれており、アナログタイプとデジタルタイプが主流です。
人工海水の素をカルキ抜きした水に溶かした後、比重計を使って計測します。
比重は1.020〜1.023であれば適正値です。
病気の予防のために低めの比重で飼育する方法もありますが、最初の内はこの比重で飼育しましょう。
⑧水槽台(キャビネット)
水槽を置くために作られた水平で丈夫な台です。下の部分は収納スペースになっており、飼育道具や餌を保管したり、オーバーフローを設置する事ができます。
また、キャビネットを使う事で水槽が見やすくなり、高級感も出ます。
⑨底砂・ライブロック
底砂は必ず必要という訳ではありませんが、レイアウトの見映えが良くなったりライブロックの固定や底面式フィルターの設置に役立ちます。
特に砂の中に潜る性質があるヒラメやカレイ、ガザミなどの飼育には必要なアイテムです。
マリンアクアリウムでは主に「サンゴ砂」が使われており、サンゴの骨格がゴロゴロ残っている粗めからパウダー状の物まで様々あるので飼育する種類に合わせて選ぶようにしましょう。
ライブロックは石の表面に微生物やゴカイの仲間、石灰藻などが付着した物で、水槽に入れる事で自然な雰囲気を出す他、付着している微生物や水生生物によって飼育環境を整える働きがあります。
ライブロックの組み方によってフィルターからの水流をある程度変化させる事ができ、慣れてくるとハナダイやアマダイ、ハタなどが好む水流と隠れ家を作れるようになります。
ライブロックは様々な形があり、ペットショップやアクアショップではkg売りされています。
これらを上手く組み合わせて設置する事で岩陰を作り、ウツボや伊勢エビ、ゴシキエビ、セミエビなどが好む環境を作る事ができます。
これらの隠れる系の生き物にとって、岩陰などの隠れ家の有無はとても大事な事です。
もし隠れる系を飼育したい場合はライブロックも幾つか用意するようにしましょう。
前述した生き物の他にも砂があると落ち着く生き物はたくさんいます。
トラフグやマフグの仲間やナマコの仲間も底砂があると潜る事ができ、ストレスを緩和させる事ができます。
また、イソガニやヤドカリの場合は粗めの底砂を敷く事で足場になり、転んでしまってもすぐに起き上がれるようになります。
サラサラとしたきめ細かい底砂は美しく、尖った部分がないためシタビラメやチンアナゴの飼育にも向いています。
しかし、底砂を濾過材にする底面式フィルターとは相性が悪く、すぐに詰まって機能しなくなってしまうので注意が必要です。
⑩ライト
昼夜のメリハリをつけたり、一部のサンゴの成長に欠かせない光の波長を出してくれるアイテムです。
白や青、紫などの光があり、レイアウトを美しく彩ります。
「メタルハライドランプ(メタハラ)」や「LED」などの種類があり、メタルハライドランプは高価ですが太陽光に最も近い波長の光を放つため人気があります。
⑪カルキ抜き
マリンアクアリウムでもアクアリウムでも必要不可欠なアイテムです。
水道水に含まれる、水生生物にとって有害な塩素(カルキ)を抜いて無毒化するためのアイテムで、固形タイプ(ハイポ)と液体タイプがあります。
⑫バクテリア
飼育環境を整えるために必要な存在で、淡水用ではなく海水用の物を添加します。
バクテリアが繁殖した水槽は食べ残しやフンなどを分解し、アンモニアなどの有害物質を毒性の低い物にしてくれる働きがあります。
市販されている物として「スーパーバイコム スターターキット」や「マメバクテリア」「ベルテックジャパン Bioスコール」などがあります。
ちなみに匂いはなかなかの破壊力があるので使う時は直接嗅がないように注意しましょう。
⑬プロテインスキマー
水中に溶け込んだタンパク質などの有機物を除去する効果があるアイテムです。
エアレーション機器に取り付けて使用するタイプやコンセントを差し込むだけで使えるタイプがあります。
大きさや種類によって値段が大きく変わる商品ではありますが、取り付けると水質がキレイになるため魚達もイキイキと過ごす事ができるので、環境や見映えにもこだわりたい方は是非使った方が良いです。
3,マリンアクアリウムにオプション追加したいアイテム
マリンアクアリウムを飾る物は、何もサンゴやライブロックだけではありません。
ここでは使う事によって水景により変化と面白味を持たせてくれるアイテムについてご紹介させていただきます。
①サンゴの骨格
骨格を持つサンゴの仲間は使うライトやフィルターなどもこだわらないと育成はかなり難しいです。
しかし、サンゴの骨格であれば育てる必要もなく、白い骨格を生かしたレイアウトを作る事ができます。
ショップでは主に枝サンゴやアワサンゴの骨格を販売しており、運が良ければテーブルサンゴの骨格も手に入ります。
サンゴの骨格が手に入れば、小型水槽も簡単にレイアウトする事ができます。
特にプロテインスキマーなども付けて環境を整えられた水槽であれば「タツノオトシゴ」や「ヨウジウオ」なども飼育が可能です。
彼らは長い尾や体を枝部分に這わせたり巻き付けて休むため、非常に良く合います。
スズメダイやハゼの仲間の中にはサンゴの骨格に卵を産み付ける種類がおり、上手く飼育できていれば水槽内でもその様子を観察する事ができます。
また、骨格を持たないサンゴ、通称「ソフトコーラル」は近くにサンゴの骨格があるとどんどん増殖して覆い尽くすようになります。
「スターポリプ」や「ツツウミヅタ」「ウミアザミ」などは比較的育てやすいためオススメのソフトコーラルです。
②フジツボの骨格
パッと見は貝類にしか見えませんが、本当は甲殻類の仲間であるフジツボの骨格も良いレイアウトアイテムになります。
以前「日淡といっしょ」で「ゴマハゼ」という極小のハゼをご紹介した際にもレイアウトアイテムとして登場しています。
内部が空洞になっており、ハゼや小型ギンポなどの隠れ家になります。
③貝殻
巻き貝や二枚貝の殻も海中の雰囲気を出す良いアイテムです。
ヤドカリやナベカの飼育には巻き貝に貝殻は必要不可欠ですし、二枚貝の殻はイイダコやタコの幼体を飼育する時の隠れ家になります。
また、「日淡といっしょ」にて危険生物として紹介している「シャコ」の仲間も巣穴の飾り付けとして使う事があります。
④ウニの殻
高級食材でお馴染みのウニの殻もレイアウトに使えば面白いアイテムになります。
中が空洞なのでカエルギンポやハゼの隠れ家になり、彼らがヒョコッと顔を出す様子はとてもキュートです。
また、ヒメウツボのような小型肉食魚も隠れ家として使う事があります。
⑤ハゼ土管
ハゼを飼育するために作られた試験管のような形のアイテムで、底砂に差したり水底に設置する事で彼らの隠れ家になります。
マリンアクアリウムに目覚めた方の中には「ネジリンボウ」や「ニチリンダテハゼ」などのテッポウエビと共生するタイプのハゼを飼育するのに使っています。
まとめ
今回はマリンアクアリウムに必要なアイテムについて皆様にご紹介させていただきました。
生き物と触れあっていると意外とハマりやすい世界ですが、飼育に使うアイテムが分からないと始める事もできないため、まずはアイテムについて知っていただこうと思って執筆に至りました。
今後は少しずつ飼育方法や餌などについてもご紹介していこうと思ってますので、マリンアクアリウムを始めたい方、釣った魚を生きたまま長持ちさせたい方は是非目を通していただければ幸いです。