海上保安庁の『秋季における人身海難の傾向と対策』を読んで、思ったことがある。
やっぱり”釣れる時期”にアングラーは集まるんだなぁ……(当たり前)。
海難の事例から察するに、欲望に眩んで安全意識が欠如してるバカが目立つ結果。秋の釣りシーズンはピークを迎えるので、ここらでビッと気を引き締めましょう。
秋季における人身海難の傾向と対策
この資料の存在を知ったのは、台風24号が上陸してガクブルしている最中。停電のさなか、舞阪灯台の風速を見ようと「MICS」を覗こうとした時だった。
説明するより読んだほうが早いので、まずは一通り目を通してください。
名目は「人身海難」とありますが、ほとんど釣り人に対しての注意喚起となっております。
行政からは、勝手に行って事故る面倒なヤツら、と認識されてそう。
春と秋はアウトドアで「○○狩り」が多い時期。
海では遭難、山でも遭難。よく採れる時期は新規参入も多く事故例も多くなります。慣れた人でも油断で遭難もあるから、共通するのは「油断からの事故」ですね。
2018年は雷雨が多く、キノコの成長もむきむきだったようで、山間部の遭難事故は過去最高に増えたらしい。
「食べ物が無料で捕れる!」のバカな考えはよしたほうがいい
魚釣りも山菜採りも、100%安全に楽しめる場所はありえない、と断言してもいい。
どちらも食べれない種が存在するし、キノコは専門家でも見分けが難しい種がいるので、図鑑片手の素人が自爆するのはフグ毒よりも事故例が多い。
山間部は天候予測が難しく、それは発生地点に立っているからです。木々が邪魔で空の変化を見ることも難しいから、なおさら気候変化には気づきにくいです。
海のほうが視界が開けているし、雨雲は山から降りてくるので気づきやすい。
でも遠くに台風がある時や、前線通過での風向変化で、短時間で高波に襲われる可能性はないこともない。それを知ってか知らずか、釣り中の海難事故は「落水」が8割を占める。
発生場所は港内が7割で磯場は2割っていうんだから、「油断しすぎにもほどがある」といえるでしょう。
釣り中の海難事故は5・10・11月が特に多いのはなぜ?
釣りをある程度やる人なら、このグラフを見て、あることに気づくと思います。
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/2018_autumn_fishing.pdf海難事故の事例数と釣りシーズンは連動してますね。
人が多くなるほどトラブルは避けられない問題です。それは「渋谷ハロウィン」でよくわかるかと思います。
魚釣りを「危険な場所でやる遊び」と認識している人がいる一方で、「俺が安全だから大丈夫理論」な人もいます。
事故りやすいのは後者で、油断からくる気の緩みは事故を導いてしまうものです。
いわずもがな10・11月は、年間でもっとも対象魚種が多い時期であり、旬も多く美味しい季節です。
行かないほうがバカな時期のため、釣具の量販店は売上のために煽るし、レジャー関係もとにかく来いやで集客に走るタイミングです。
それでわざわざ事故るんだから、「もういい加減勘弁してくれませんかね……」とレスキュー隊は泣いてそう。
資料の文はとてもやさしく書かれています。
釣り人の私からすれば、「なんでお前らこんなことも守れないの?」とか、「なんでわざわざ危険な場所に行って事故るの? バカなの?」と行間から感じ取れてしまいます。
行政もその辺は、ハッキリいってもいいと思います。
落水するのも何かしら理由があるやろ?
釣りで起こる海難の約8割は海中転落(落水)です。
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/2018_autumn_fishing.pdfこのうち7割は港内で発生しています。
釣りをするため堤防に居るってことは、貴方は岸壁に立っているんですよ? その感覚が麻痺しているんじゃないかと思えるほどの数値。
港内で落水する原因は「転倒やバランスを崩したことで──」が7割。
夜間にライト無しで足を踏み外したバカとか、立ち入り禁止の柵を乗り越えようとして落ちたバカとか、酒を飲みながら釣りをしていて立ちくらみで落ちたバカなど、間抜けな事故事例を紹介してくれています。
救命胴衣の着用も港内は2割以下で、より危険な磯場ですら5割。
実際この目で見ている限り、その数値に間違いはないでしょう。個人が着用していても全体からは少数派だから、ぶっちゃけ浮いているように見えるんですよね。あいつガチ過ぎやしないか、とか。
落ちる可能性が「ゼロ」なら着る必要もないでしょう。
でも「俺は絶対に落ちない!」という人ほど落水するもんです。フラグかな?
救命胴衣の着用で死亡率は変化する
個人の考えですが、救命胴衣の有無で生存率があがるのは「時と場合による」と思います。
人間は身長も体重もバラバラだし、その救命胴衣で私は本当に浮くんですかね? それを実際に確かめた人は、どれほどいるのでしょう。
釣りメーカーが扱う救命胴衣は、「何kgまで浮く」の表記を義務化して欲しいところですね。
では着用の有無で死亡率は変化するのでしょうか?
多くの釣りインフルエンサーの言い分だと、「救命胴衣を着用していれば死ぬことはない!」と断言しているほどですけど……。
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/2018_autumn_fishing.pdf若干マシな程度やん?
でもこれは、状況により着用で9割越えもあるでしょう。船上とかね。
港内や磯場だと、落水前に何かしら体をぶつけたり、それなりの高さから落ちると水面に体を打ちつけて打撲や骨折もザラです。先に沈み根やらテトラに衝突すれば、落水以前の問題ですよね。
まずは落ちないように釣りをする意識を持ちましょう。
だから私は、流されても浮かんでいればなんとかなるサーフを選びました。……最近全然いってないけど。
わざわざ怪我するため釣りにでかけるヤツはいない
誰だって事故るため釣りに出かけるわけはない。
ちょっとした偶然に不運が重なり、それが海難事故になったケースが非常に多いかと思います。
中には台風の高波が襲う中、釣りをして波にさらわれるバカもいます。でも全体からすればごく少数。しかし未だその数は毎年数例ある。
言っても聞かない人たちでも、「いのちだいじに」と伝え続ける他ありません。
釣具を用意する前に、まずは法令と安全の知識を!
毎年定年で退社する人が居れば、入社してくる人も居ます。
それは学校もそうだし、社会のどこでもどの分野でも、新旧の循環は起きています。
新規ユーザーが一気に増えるのはいいことに思えますが、それが衰退に繋がる事例もあります。それは、法令やマナーを知らない人が場を踏み荒らしていくからです。
アニメ「ゆるキャン△」でも、登場したキャンプ場ににわかキャンパーが押し寄せ、規約変更を余儀なくされ、従来の楽しみ方をしていた人たちが肩身の狭い思いをしています。
……なんか理不尽じゃね? そんな理不尽は魚釣りでも起きています。
他所が閉鎖して、別の場所に人が集まってきたら、もともとマナーが悪い連中だからその場も閉鎖されてしまう悪循環。これが全国の港で起きているわけですが、駿河湾の港は特にヒドイですね(褒め言葉)。
今後も釣りを続けられるかどうかは、業界の塩梅ではなく、実際に釣りをする人の振る舞いにかかっているのですよ。
パチンコ台を開発したからギャンブル中毒の原因を作ったから悪──というわけでもないでしょう。
釣具メーカーもそんなもんです。
「環境にエコな道具は作ってやる。作ってやるが、ポイ捨てでゴミが残るのはお前らの責任だから俺らは関係ないで」とパッケージでいってるじゃないですか。
海難事故だってこれ以上増えて減少する希望がなければ、水辺すべてが立入禁止だってありうるんですよ。
だから釣り人ひとりひとりが、ごく当たり前の安全確保と常識内の行動をする!
……それだけでいいはず、なんですけどねぇ。
このシマノのベストみたいに”桜マーク(安全マーク)”がついているのを確認して購入してくれよな!