昨今のAI(人工知能)に関するニュースは多く、どの業界もRPA導入を模索しているため、会議で耳タコな方が多いでしょう。最先端かつ今後重要になるこの議題を、もっとシンプルに理解して欲しい。
それを説明するに、たまたま見かけた「対馬魚類図鑑」がベストっぽいと感じたので紹介します。
そもそもAIって何ができるの?
「AIは万能」と思われていますが、それは人間が万能と同じこと。’人工知能’というだけあって、基本は人間の思考や行動を、プログラム(論理言語)でトレースしているだけです。
ただし人間は疲労があります。一方でコンピュータには疲労がありません。なのでAIの利点は、人間より長時間働いてもパフォーマンスが安定するし、過労でダウンすることもありません。だから「代わりに働いてもうらほうがよくね?」と考えるのは自然の流れでしょ?
それが『RPA(Robotic Process Automation)』と呼ばれる、機械による業務の自動化に繋がります。
アインシュタインのAIは作れるが、彼を産み出すことはできない
AIにどうやって物事を覚えさせるのか? それは人間と同じで、教育させる必要があります。
AIの利点は、機械学習により短時間で人の一生を超える知識量を身につけることができること。しかし、教える人以上(言語で説明できるか否か)のことを学ぶことができないのが難点。プログラム外は無知ですし、創造豊かな天才を産み出すことは難しいのです。
なのでアインシュタインと同じ知能を持つAIは実現できますが、相対性理論が発表された当時の数学者、全ての知識や思考パターンをAIに落とし込んだとしても、その理論を自然に思いつくことは不可能でしょう。
ようするにAIとは、「知能の映し鏡」みたいなものなんです。
ディープラーニングは人間がする勉強と変わらない
「深層学習(ディープラーニング)」はよく聞く単語かと思います。
AIの優れたところは、何人、何百、何万の思考パターンを記録して、ある命題から正解に近い答えを瞬時に導く計算能力。これは「国民投票」みたいなもんです。アニメ筋にはエヴァのマギシステム(3つの脳で会議をする)がわかりやすいかと。
選挙は投票率が高いほうが、「なぜその人に決めたのか?」のデータが集まりやすく、最多投票を集めた当選者の結果には、過半数の人が納得したとわかります。そして結果は速報で、開票直後に発表されることもあります。これは統計によるものですが、AIの特徴である決断の速さが表れているかと。
深層学習の手順は学校の勉強と変わりません。効率はどうあれ、何も知らない人に知識を与える行為なことに違いはない。
その過程がわかりやすいのが、とある地域限定の「魚類図鑑」かと思うので紹介します。
対馬魚類図鑑から学ぶAIとディープラーニング
http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/kaiyohogoku/post-2.html
このページにある注意書きにこうあります。
※2 図鑑の内容は、2018年度までに収集・整理した対馬の魚・海に関する情報を掲載しています。今後、市においても対馬の魚・海に関する新たな情報の収集に努めますが、市民皆様からの情報提供もお待ちしています。皆様からご提供いただいた情報等を参考に内容の更新・充実を図っていきます。
http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/kaiyohogoku/post-2.html
意訳すると、「研究員だけじゃ情報集めにキリがないから、みんなのチカラを分けてくれ!」です。
対馬市は洋上の島、魚介類の採取にはことかかない地域ですが、地磯が多く人が簡単に立ち入ることができません。そのため魚の採取自体が、研究者だけでは難しいのです。なら普段から魚を捕る人に聞けばいいじゃないか、と至ります。島を区域にわけて、「ここで何釣れたん?」と聞いて周るなどして、情報を集めることに徹すれば──?
対馬魚類図鑑は常に更新し続ける図鑑になれるわけです。
世界中の魚図鑑を作るより対馬だけの図鑑が難しい理由
確認されている種の数は研究で判明されています。それはとりあえずデータベースにぶちこみ、新種発見のたび追加するだけで済みます。Excelのセルを下に1個増やすだけの作業。
大して対馬限定の魚類図鑑は、外洋の機嫌次第で訪れる魚も変化します。魚は水温の変化で生息域を変えていくし、対馬は海流の影響も受けやすく、遠くの魚が入ってくることもあります。つまり、毎日新しい情報が入ってくる可能性が高いわけ。だから完璧に把握するのは到底ムリですね。
そこで役立つのは、毎日のように魚を採取する人々から、情報を提供してもらうこと。つまり漁師や釣人ですね。
記録するデータ量が多いほどセンス(選択肢)が光る!
センスは才能で、それを持つかは生まれながらに決められている……そう思っていませんか?
センスはクリエイティビティよりも、経験と知識量で決まり、応用力がないと発揮できません。ただ真似るだけなら複製。経験はアレンジ(応用)すればセンスになります。膨大なデータからひとつを選ぶ、引き出しを探すのが早い能力がセンスといえます。
そこから何か連想できませんか? ……そう、AIと深層学習は「人工的なセンス」みたいな存在です。
5G時代でようやく実現しそうなAI最強時代
通信事業で話題の「5G」は、現在の光ケーブル通信よりも速度が速くなります。データ転送量が従来よりも格段にはやくなり、通信ロスも最小限になるため、ネットワーク上のやりとりが全世界でリニアになります。その恩恵を受けるのがクラウドサービスかな。
いい例ではGoogleの提案する、ネットワークを介したゲームサービスの「Stadia」。これを皮切りに、Appleなど他の大手もネット配信ゲームサービスをリリースしてきました。
これらの特徴は、ゲームをクラウド上で動かしているため、手元のデバイスに負荷がかからないこと。最新のゲームPCは数十万クラスも当たり前ですが、別のマシンで動かしているなら、手元には通信と映像だけしかCPUは使われません。だから環境を整えるコストを減らすことができます。
自分の能力が高いと思うならデータにして売れる時代に
今はPCでできる仕事をリモート(テレワーク)で行う働き方も一般化されました。いずれ遠隔ロボが作業ラインに立ち、自分の組んだ最適な作業プログラムで代わりに働く──なんてことも実用化するでしょう。
どんな時代になろうとも、個人の能力に「向き・不向き」は存在し続けるし、無理にそこへ進む必要もない。でもあえてAIの分野に進みたいのなら、「文系AI人材になる──」の本が面白い内容と感じるでしょう。かなり簡単に説明してくれているので、「そろそろAIを知らないとヤバくね?」と危機感を抱いている方に刺さる内容と思います。