サンマの水揚げ減少は深刻。
苦肉の策として、「通年操業」が始まったのは2019年3月のこと。
……誰も止めなかったのか、それとも”漁師の言い分”を守ったせいか。
やっぱりサンマは減ったらしい。
魚は獲ると減ることをまだ学ばない
通年操業が今年3月に許可されて、春先に”秋刀魚の初漁”をしたことが話題になりました。季節感がガバガバよ。
でも商売としては、正解かもしれない。
春に秋の旬が登場すれば、レア感はあるから高値で売れる可能性が高まります。反面、質は落ちる傾向にあります。
経営者としては、安定した質を確保できる旬に操業したいと思うでしょう。現在はそれで赤字が確実なほどサンマがいません。だからみんな困っている。
「このままだとサンマが居なくなっちゃう!」
──と、ようやく気づきだした日本。水産庁が漁獲枠を設けることを提案しそうな運び。いったい誰が悪いのだろうか。
サンマの不漁は漁場を見直すか輸入に頼るかにかかっている
そもそもサンマはどこから来て、どこで捕れているのだろう?
それを知るために、「サンマ 北太平洋 平成29年度資源評価結果」を参考に、簡単にまとめてみました。
サンマの分布は太平洋と北太平洋に広いけれど、日本の漁場は青で塗りつぶされた近海のごく一部。全体からすると数%程度ですね。
つまり、その範囲に”サンマが来なければ捕れない”わけです。
なぜ漁獲量が減っているかは、いくつかの要素が考えられます。
- 世界からサンマが減っている
- 温暖化でサンマの回遊ルートが漁場と時期から外れている
- 他国による乱獲
政府の言い分は(1)と(3)がメイン。でも完全に証明はしきれません。
(2)は漁師の意見で多い傾向。日本近海の海水温が上昇しているのは周知の事実ですが、冷やすには50年単位で活動しないといけないでしょう。
不漁の原因は、どれかひとつが悪ではないと思います。
それぞれが絡み合って「サンマが居ない」状況を作り出しています。
他国も捕るようになってから減っているのは確か
不漁の話題に必ず絡むのは「他国の乱獲」です。
よく指摘こそされてますが、密猟で拿捕されまくっているわけじゃないし、乱獲分の水揚げ量を認知しているわけでもない。
あるデータを見ると、乱獲や密猟っていうより、他国が遠洋漁業をガッツリやれる地力がついたからじゃないかと思えます。
このグラフを見ると、2000年以降に他国がガンガン操業をはじめて、2015年には日本と台湾の漁獲量がほぼ同等になっています。
そこに中国とロシアも追加されるんだから、サンマ絶滅もまったなし──。
グラフだけ見ると不漁の原因はそう捉えやすいですが、日本だけの水揚げ量も目立ちます。
もし反省点をあげるなら、各国の介入前に”どれだけ捕っていいか?”の目安を決めれなかったのがひとつ。他国と漁獲枠などの協定を結べなかったのもひとつ。イワシ・アジと同様に、大衆魚はいくらでも増えるし当たり前に捕れる! ……と思い込んでいたのがひとつ。
簡潔にまとめると、誰も管理しようとしなかったツケが訪れているだけです。
サンマも絶滅危惧入りしかねない
……サンマ全体の漁獲量から考えるに、”総水揚げ量”は一定のラインだから、日本は輸入に頼ればいいだけの話。
資源管理の問題は至極単純。100%から50%を捕った場合、残った50%が80%まで回復させるなら、増えた分の30%を捕り続ければいいだけの話。
総資源量に関しては、その学術的根拠を定めるのが難しく、研究も重要視されないため、対策が後手後手になりすぎて取り返しがつかなくなっているのが今の現状。「○が食べれなくなる?」と注意喚起をしていますけど、減った原因と解決策をロクに報道しないのも、歯止めが効かなくなっている要因なのでは?
サンマ1匹の産卵数は約2000個で、これは数万個クラスのサバやイワシに比べると遥かに少ない。そのサバとイワシですら減少傾向なのに、回復見込みが低いサンマがすぐ増えるわけもありません。
農業は土壌を用意して種をまいて実った分だけ収穫しています。漁業は養殖以外でその方法をとれないため、資源を”与えられている”意識を持たない限り、ずっと「○が食べられなくなる! タスケテ!」と間抜けな意見を繰り返していそう。
※参考資料
H30【国資】サンマTAC意見交換会「 サンマ 北太平洋 平成29年度資源評価結果 」
不漁続くサンマ漁 通年操業を許可|NHK政治マガジン