土用丑が来るたび、ウナギの代用品についての話題が浮上します。
今年は斜め上の案を見つけたので、この記事を書こうと思いたちました。土用丑は鰻を食べて英気を養う日だったはずなのに、いつから「蒲焼を食べる日」にすり替わったのだろう……。
年々増える鰻の蒲焼の代用品たち
ウナギが絶滅危惧種に入って以来、年間で最も大量消費される「土用丑」が来るたびに、価格の高騰による消費減と、専門店の悲鳴が聞こえてきます。2019年現在、スーパーに並ぶウナギ1本の価格は高止まりしているらしい──。ということは、ウナギの価格は今より上がる見込みは少ないし、ここが「買ってもいい」と思うボーダーラインといえます。
でも今は所得もロクに上がらず、物価だけが高くなっているため、消費者層は食費のコストカットに余念がありません。年に1回のイベントでも、食べなきゃ非国民になるわけじゃない。「わざわざウナギを食べる理由がどこにあるんだい?」が総意でしょう。
市場は土用丑だからこそウナギを売りたい。でも高額になりすぎて、消費者の手から離れてしまっている……。
そこで打ち出したマーケ案が、絶滅の恐れがあるウナギではなく、代用品で土用丑を乗り切ること。
「鰻の蒲焼きはタレが本体ではないか?」といわんばかりに、露骨な「蒲焼商法」が恒例になってきました。今年のネタもなかなか粒揃いで、新たな境地を切り開いた感じもします。でも「ウナギに代わるのはウナギしかいない!」と、業者みずから答えを出しているようなもんだなと、まとめている最中に気づきます。
それではどうぞ。
ウナギの代用品の代表格「アナゴ」「ナマズ」
ウナギの代用品として、真っ先に名前があがるのが「アナゴ」。次点が「ナマズ」です。
ナマズは泥臭いイメージが強いでしょうけど、綺麗な水で育てたり、泥抜きをして下処理をしっかりすれば、上品な白身で刺身もいけるくらい美味な魚です。外来のナマズは食用に輸入された経緯もありますし、開いた姿は”ウナギの蒲焼”とクリソツ。近年は養殖業でも注目されています。
似た長物なら「クロアナゴ」と「ウツボ」も推しておきたい。クロアナゴは”デカイうなぎ”そのままなので、見た目そっくりに作るのは向いています。ウツボは和歌山と高知なら普通に蒲焼がありそうですね。どちらも白身で味もいいですが、小骨が多いのが難点。
最も手に入りやすいのがアナゴですね。土用丑に見かけるのも珍しくなくなりました。ウナギに比べれば半額以下でも買えるし、たらふく食べたい時にもおすすめ。
もともと蒲焼がある「サンマ」「イワシ」
サンマとイワシの蒲焼きは普通にウマイ。
スーパーの惣菜でも売っているし、缶詰もあるため、年中手に入りやすいのが魅力。そして栄養化も高い。鮮魚を使う「蒲焼レシピ」も多くあるため、家庭料理でも人気です。「蒲焼きのタレを使えば、なんでも蒲焼きでは?」という考えは、発案者がキレてしまうから要注意だ!
ウナギの代用品開発といえばイオンの風潮
土用丑商戦で必ず話題にあがるのが、イオンが開発した「ウナギの代用品」でしょう。商品開発部が有能なのか、それとも柔軟な発想を受け入れる上層部が有能なのか──。まずはこちらの記事を読んでいただきたい。
「パンガシウス」は冷凍品で見かけることが多いですが、イオンは切り身の鮮魚で売っていることも。その姿は誰も知らず、謎の魚とされ一時的にバズりやすい。外国の魚は業務スーパーやコストコで販売されているため、大衆に根付きはじめたニューカマーです。
ちなみにこんな見た目です。
有能なイオンの方々が、今年出してきた代用品は……! 鮭のハラス蒲焼ッ!!
……塩焼きでいいよ。
ガチの代用品「うな次郎」「ほぼうなぎ」
ここまでおよそウナギの代用品とは呼べず、ただ蒲焼にしただけじゃないかとツッコミたい品々でした。しかしこの2品は違います。マジで似せにきています。
まぁどっちも「すり身」で「かまぼこ」なんですけどね。──でも食事は「目で食べる」ともいいますし、うな重な見た目を表現するに、これほどベターな選択肢はないと思います。
なにより安いしね。ウナギ白焼き1本でうな次郎4パック買えるで!
とん豚ひつまぶし(?)
名古屋メシといえばひつまぶし。ウナギを使っているのに、ひつまぶしが土用丑で話題になることは少ない。名古屋だからかな。
赤羽に「とん豚ひつまぶし」なる商品があるらしい。
ひつまぶしのウナギ部分を豚の角煮にしているとのこと。これはもう実質「豚丼」では?
蒲焼のタレで黄金色にすれば……蒲焼になるでしょ
ここまで書いてふと気づいたのは、「蒲焼のタレを使う料理を出せばOK!」みたいな風潮になっていること。
ウナギの蒲焼きの味を決めるのは、やはりタレであることは間違いない。職人の腕も大事だが、長年漬け込んだ歴史ある蒲焼のタレは、各店で味が違うため、自分が一番だと感じるのを探すのも、消費者の楽しみです。
土用丑は「なんでもいいから蒲焼を食べる!」に流れが変わっている気がする。これはこれで、ウナギの消費を抑えられるし、新たな食が生まれる可能性もあるため、いい流れだと思います。
土用丑の日の概念が壊れるぅ
土用丑は年間でもっともウナギが消費される日。この日が訪れるたび、平賀源内の江戸マーケティングが賞賛されつつ、現代まで続く文化になったことが語られます。
ウナギの旬は冬で、土用にあたる夏はやせ細りやすく、味は年間で最も悪かったりします。
「助けて! 夏にウナギが売れないの!」と源内に相談した結果、暑気払いとしてウナギを食べる習慣を”土用丑”に根付かせました。いわばキャッチコピーですね。もともと栄養化は高いから、暑気払いとしてもってこいの魚だったのです。
現在は年中温度を一定にできる養殖がメインのため、旬も何もないんですけどね……。
なんにせよ、おうな様を育てて運んできてくれた関係者各位と、海の恵みと神秘に感謝して、土用丑を迎えたい。……といいつつ、21日におうな様食べたマンが書きました。
ヤマサの蒲焼きのタレは、1.8Lの大容量で1年間活躍してくれました。
希釈タイプじゃないけど、そのまま使うと少し辛め。ウナギだけじゃなく、生姜焼きに使う豚肉だったり、イワシやサンマの切り身だったり、かけるだけで蒲焼きにできるから簡単で楽です。そしてオイシイ!(重要)