100円のルアーは日本経済から何を奪っているのか

魚釣り業界の未来はどこに向いている

100均にルアーが並んでいることを「不景気」に繋げたアングラーがいるらしい。

……ちょっと何いってるかわかんないですね。

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プチ炎上したダイワの顔

件のツイートはこちら。

ルアーが100円で売れることに驚いたのか、こんな物でも100円で売れることに驚いたのか。リプライのどれも「何言ってんの?」という意味合い。

100均にルアーが並ぶことを不景気に繋げるのは強引すぎる考え。むしろ「どうやって100円で儲けがでるの?」と驚くほうが業界人ぽい。そして「なぜ日本メーカーのルアーはクソ高いの?」と疑問を抱くのが一般アングラーの思考でしょう。

続く補足が非常に苦しいのですが、まあ言いたいことはわかる

……ダイワにブーメランが刺さっとーと?

今の釣具メーカーで国産の量産製品なんてほぼないです。機械がしてくれる単純作業をクソ高い人件費で回すとコストが上がるだけ。「じゃあ日本企業は何をやってんの?」、その答えは、ルアー設計とテストなどゼロからイチを創造する業務に、マーケティングなど販売管理が主になります。

世界から「あいつらクレイジー」と創造力が認められている国内企業は、誰でも出来る作業をアジアに移しているわけで、これは先進国として当然の潮流でもあります。

こっちの雇用を潰す意味合いなら、”100円のルアーで不景気が加速!?”の視点は概ね正しい。けれど、低賃金の雇用機会を奪うのは上昇する最低賃金です。そもそもの犯人は、政府と賃金UPを願ってやまない労働者の問題です。

それで経営側が目を着けたのが「外国人実習生」。日本語を話せなくても料理を運ぶことは出来る、おまけに日本人より低賃金で雇える。だから100均ルアーと同じことを自国でやっているんですよね。

純国産の釣具を安く売るには低賃金を合法にするしかない

業界人ぽい争点なら、ダイソーに出来て釣具メーカーはなぜこの値段で販売出来ないのかになるはず。

まあ安くないと売れないと考えるのは無能の考えることで、高価でも中身が伴い評価が高ければ売れます。国内の釣具大手はそれが出来ているから問題ないのでは? 現状の釣り業界で生き残れているのは、経営が上手い所しかないでしょうね。

そういえば、最近破産した釣具メーカーがありましたね。

フィッシング用品専門ブランド「アングラーズデザイン」経営会社が破産申請へ(東京商工リサーチ) - Yahoo!ニュース
アングラーズデザイン(株)(TSR企業コード:298340500、法人番号:9011801023262、台東区千束1-18-14、設立2010(平成22)年3月、資本金500万円、上田光昭社長)は1 - Yahoo!ニュース(東京商工リサーチ)

アングラーデザインが破産に至ったのは、後に出てくる「業界の市場調査」を見れば理由がわかります。扱っている製品の分野が下火傾向だったんです。

最近口酸っぱく「個人の生産性」を追求するのは、最低賃金に見合う労働価値を合法にするには、そうするしか道がないから。生産性を上げた所で、市場が縮小しているから在庫を抱えすぎてパンクする悪循環。

なので賢く経済を維持するなら、企業合併して市場規模に見合った競争数にすればいい。近年M&Aが多いのも、複業した方が一点がダメになっても生き残りやすいし、弱い所が自然に淘汰されていくからですね。

日本の人件費上昇と作業内容に釣り合いがない状態

仮に国産で100円ルアーを製造販売するなら、どのような体制にすればいいでしょうか。

原価3割として、残りコストの内「純利益(または人件費)」を1割に設定した場合、最低賃金の平均ライン「900円」に到達するには、1時間に130個弱は製造して販売しなければいけません。それを8時間こなすと、1人が1日に1100個製造して販売する必要があります。

……そんなに製造して全て売れるか?

それは極端な例ですが、日本メーカーのルアーが高いのは、材料費に輸送費や人件費などのコストが高いのが要因であり、技術と性能に誇りを持っているせいでもあります。

コスト削減でてっとり早い方法が「人件費削減」ですから、人件費が安い国に製造を依頼して、逆輸入する形の「オフショア生産」が常態化しています。iPhoneが10万を超えたことで話題にもなりましたが、メイン製造をApple本社で全て行えば20万以上するでしょうね。

これも近年は請負から「いい加減にしろ」と賃上げを要求されるため、色々な物価が上がっているのはその影響が大きいです。

不景気のネガティブキャンペーンに洗脳されすぎ

んで今は世界中の工業製品は、大抵アジアで作られています。釣具の製造国を見ればそれもわかるでしょう。

知識を持つ先進国はそれを法律で守り、製造側はただ作らされるだけ。これは別に不思議なことではなく、企業内の役割と照らせば大した違いはありません。労組が春闘でベースアップを掲げるように、現在はアジア諸国で「いい加減にしねぇと俺ら辞めるぞ!」と抗いだして、人件費が上昇して全体の物価上昇に繋がっています。

日銀がよく「物価上昇」を施策にしていますが、物価が上がるのは経済的にはいいことです。

だって人件費が上がることは、物の価値自体が上がっているわけで、全体の平均賃金は上昇している現れであります。すると業界の関係者は、みんなホクホクになりますよね。「富の分配」としては正しい流れなんです。

経済だけ見れば、今は(全体では)好景気です。散々ネガティブキャンペーンがされていますが、世界の経済は良い方向に向かっています。

株価は上がってるのにその実感がないのは至極当前の話。株は企業と投資家の間で行き交う金だから、労働者への還元は経営者でも権限がないからです。給料を貯金するよりも、自社株への投資に回して、「自分が頑張ることで株価を上げよう!」の方がやる気は上がるでしょう。

まあそうすると値が吊り上がるから、市場からノーセンキューになって死に体になる恐れもあります。株価扇動でお縄チャンスが発生する恐れも……。

──まあここまでは、どうでもいい前座(は?)。

日本の釣具が高くなっているのは別の背景もあります。そもそも釣具を買っている消費者たちって誰でしょう? 人口が減っている世の中なのに、売上を伸ばし続けるにはどうすればいいのでしょうか。

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それではここで「釣用品の国内需要動向調査報告書」をご覧頂きましょう

一般社団法人「日本釣り用品工業会(JAFTMA)」は、毎年1回、業界の市場調査を行っており、それを一般公開しています。これを見れば、釣り業界のどこが成長株で低調なのかが一目瞭然です。

ではご覧頂きましょう。

第 22 回「釣用品の国内需要動向調査報告書」
http://www.jaftma.or.jp/standard/pdf/20190201_22kjdch.pdf
一般社団法人 日本釣用品工業会
釣用品工業に関する調査研究、情報の収集及...
  • 2017年は前年比(16年)102.5%の成長
  • 2018年は前年比101.0%の成長見込
  • 右肩上がりなのは「疑似餌」「クーラー」
  • 右肩下がりなのは「生餌」「ボート・カヌー」

業界全体は(一応)プラス成長であるものの、足を引っ張っている種目も多い。これだけ見ると、エサ釣りは業界から見放される恐れがあり、疑似餌部門はどんどん投資していくべき流れであるのは一目瞭然。それは世にある釣り情報誌にも反映されています。

そして釣り人口は減少が止まんねぇぞ状態。

1995-2012釣り人口の推移
http://www.jafit.jp/thesis/pdf/14_09.pdf

消費者が少ないなら、販売戦略はどうすればいいのか。

その方法はいくつかあります。壊れやすくして消費サイクルを定期にするメリケンスタイルか、市場を独占するスゲェ物を造るリンゴスタイルか、認知度を100%に近づけていく──全部アメリカじゃねぇか! の方法があります。

まとめれば、消費低迷の現代は「ブランドの価値向上」がカギになります。

現代のブランディングを考える。 | ウェブ電通報
企業の価値創造の指針となる「ブランディング」。これ自体は長きにわたり語られてきた言葉ですが、デジタル化やグローバル化により、生活環境や消費行動が大きく変化する中で、ブランデ

もしここで「薄利多売」を挙げると即死です。嫌気がさした従業員が独立して対抗企業になり、市場を互いに食いつぶす地獄絵図になります。今のアニメ業界かな?

釣り業界のブランド価値はどこにあるのか?

釣り業界がかろうじて生き残れるのは、日本が島国であり、水源が豊富であり、そこら中に釣りが出来る環境が整っているおかげでもあります。アングラーにとって三大欲求の一つは、釣り欲ですからね。

今は釣りが禁止された漁港も数多いですが、一方で観光型釣り公園は好調なんです。

熱海港海釣り施設入場者数
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafit/22/0/22_145/_pdf

特に熱海の海釣り施設は代表的なモデルケースになっており、関東からのアクセスが容易で、釣りが目的じゃない人も気軽に出来る環境が整っています。ここで注目して欲しいのは、一人あたりの消費額ですね。

海釣り公園施設の比較
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafit/22/0/22_145/_pdf

熱海の海釣り施設は、大人個人の消費が7,000円を超えています。これにはビビル管理釣り場の経営者も多いのでは?

釣りだけで個人単価7,000円以上もぎとるのは難しいので、”提携施設で泊まった場合”も計上する魔法をかけているかもしれません。でも県外利用が7割を超えているから、それだけ熱海に魅力があるのでしょう。ここの海釣り施設は、全国の中でも管理が行き届きすぎているくらいですしね。

報道発表資料:既存の港湾施設を活用した日本の釣り文化の振興~(公財)日本釣振興会と連携し、港湾において観光の取組みを進めます~ - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

最近は政府主導で、漁港をマリンレジャーパークとして活用する施策が活発です。静岡県内だと清水港で話がありますね。

釣り文化の振興と聞こえはいいが、裏を返せば、それだけアングラーが地域の経済に貢献していないとも受け取れる。釣具を買うことで、製造元が潤い消費が加速する可能性もあるけど、釣りポイント自体は消費されるだけなんです。これが問題であり解決すべき課題です。

釣具の値上げは「環境投資にするから」と言えば誰も文句言わないのでは?

近年は釣具の値上げが目立ちますが、その名目は材料費と人件費です。

世界の経済事情からそれは致し方ないですが、お前らの懐事情なんて知ったことねぇと思う方が大半でしょう。でも釣りを続けるためには、環境への投資も必要だと、うすうす感じている方も多いと思います。

ならいっそのこと、釣具メーカーが販売価格に環境投資を上乗せすりゃいいじゃないかと。

用途不明になりやすい店頭募金より、釣り振興会がそれを管理して正しく使えばええやんと考えるわけです。利権ずっぽしな腐った団体でない限り、基金の正当性を公表してそのくらいは出来ると思われます。今の時代はSDGsを掲げれば大抵なんとかなります。

SDGsの項目には「海洋資源を守ろう」があります。適切な消費と保護なら誰でもすぐ出来ることかと思います。

参考資料

釣りを活用したブルー・ツーリズムの可能性~釣り人の消費と思想に着目して~

海釣り公園を事例とした温泉地域の観光資源の考察

2019年 第22回釣り用品の国内需要動向調査報告書

ニュース
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