最近とあるウェブ記事がアップされ、トレンドにも浮上し、”綺麗すぎる海は魚が住めない”とはじめて知った人が増えました。
綺麗にするだけが環境問題の解決じゃないことを、瀬戸内海が教えてくれるかも。
「海の砂漠」を知ってるかい?
海の砂漠とは、プランクトンもごく少量しか存在しない、海の栄養素がほぼ存在しない海域のこと。
そこは地上の砂漠みたいに、エサが無さすぎて、生物が住みにくい地域です。海の砂漠は世界で数箇所確認されており、主に沿岸部や冷たい海に多く見られます。
海に栄養を送るのは川と雨水。
地上を流れる水は、土壌に含まれる有機物を溶かし出して包み、川に流れこみます。それがプランクトンのエサとなり、小魚がそれを食べて育ち、大型魚が──というように、海中の生態系はそのようにして成り立っています。
なぜ河川流入が多い瀬戸内海で貧栄養化が進むのか?
中国地方の瀬戸内側は、河川の流入がそこそこ多い地域。
河川が多いなら、なぜ海に送る栄養が少なくなるのだろう? その理由は都市化が進む地上部にあります。
河川は護岸整備でむき出しの土が少なくなり、居住地は舗装が進んで上下水道がしっかり管理されています。河川はダムの整備で水量が調節され、海への流入量が減りました。
何より瀬戸内海の貧栄養化を加速しているのは、生活排水を無菌にして放水しているからといわれています。
ようするに人間が悪いわけ。でもそうするしかなかった。
その理由は、かつて工業排水と生活排水による公害が、社会問題化したから。瀬戸内海でも水質が悪化し、養殖の牡蠣が食べられない時期もありました。
しかし現在は、人々の努力で再び綺麗な海に戻したわけです。
……が、「やりすぎちゃった」んだよなぁ。
ならば人間がコントロールして栄養を送ればいいのでは?
日本沿岸では全地域で貧栄養化が進んでいます。
沿岸の貧栄養化は、特に内湾で行う養殖業にとって重要な問題。エサとなる栄養がないから、養殖する魚介類の品質悪化や生産能力の低下などが指摘され、収益にかかわる問題となっています。
そこに気づいた漁業は、「綺麗な排水が貧栄養化を進めるなら、人為的に栄養素を送ればいいのでは?」と考えました。
しかし、物事はそう単純ではありません。
海に栄養を送るにも、加減をどうすればいいかが未知数です。護岸を外せば水害を守れないし、下水を処理せず流せば悪臭が問題になります。
その問題を解決するため、大学研究機関と協力したいくつかのプロジェクトがスタートしました。
貧しい海を救うかもしれない厄介物を使った取り組み
アサリの水揚げ減少に悩む有明海では、鶏糞ブロックを使った栄養供給を試験しています。
なぜ鶏糞が選ばれたのかは、有機肥料として海への栄養供給の効果が最も高いと見込まれたから。この試みが成功すれば、養鶏業者は糞を売れるようになり、サイドビジネスできる可能性があります。
技術が確立すれば、同じ悩みを抱える他国を救えるかもしれない。
困りごとを解決するのはビジネスの根幹にあります。
終わりに──先の未来へ
有明海の取り組みが正しいかどうかは、来年再来年で結果が出るわけじゃないし、10年先の未来を見据える必要があります。
瀬戸内海は「排水規制を見直す」ことを議論中。
これらの取り組みで助かるのは、漁業だけではなく、豊かな海で遊ぶレジャーにも影響します。
釣りやダイビングをするなら、綺麗な海でも魚が多いほうがいいでしょ?