ロッドガイドに使われる『トルザイトリング』は、様々なメリットが語られている。
軽量化、飛距離UP、感度向上で即アワセ! ……などなど。
聞くからにスゴイと思わされるのは、販売側のセールスコピーが優秀なだけで、効果は”劇的”ほど変わりません。
「SiC」と「トルザイト」の違いをちょっと教えておきたい。
この記事のまとめ
ロッドガイドに使われるトルザイトリングのメリットとして、軽量化、飛距離の向上、感度の向上などが挙げられます。しかし、これらの効果は劇的ではなく、実際にはそこまで大きな違いはありません。トルザイトリングの最大の特徴は「軽いこと」ですが、ガイドフレーム全体の重量を考慮すると、その差はわずかです。
トルザイトリングは、SiCリングよりも薄く、内径が広いため、糸抜けが良くなり、ラインに優しいです。これにより摩擦抵抗が減り、大型魚との長時間のファイト時にラインが切れにくくなります。しかし、劇的な変化はないため、トルザイトリングが「軽い」「振りやすい」と言う人は注意が必要です。
トルザイトリングの利点としては、軽量化、糸抜けの向上、ラインへの優しさがありますが、薄いため割れやすいというデメリットもあります。また、糸鳴りがしやすい点もあります。
トルザイトリングの利点は「軽いこと」──くらい
ロッドガイドはかつて「SiCリング」が主流でした。現在はそれより薄く軽量化に富んだ「トルザイトリング」がよく使われています。その効果は(単体で)最大約40%!
……らしい。数値だけで見るとすごいですね!
さわりの説明はこのくらいにして、もう少し詳しくいきましょう。
SiCとトルザイトを実際に比べてみよう
トルザイトリングは「軽量!」「今までもよりも軽い!」など、軽いことを推していますね。それは嘘偽りないです。セコイのは、ガイドフレームを含めた総重量で明記していないところ。
ガイドセットで重くなりやすいのは、スチールやチタン製のガイドフレーム。なぜかといえば、ガイドリングを包んでロッドに固定する大きさが必要だからです。総重量に対しての質量が多めになりやすい、わけです。
実はSiCとトルザイトのリングの外径は変わりません。内径が変化しているだけです。そしてその重量差は1グラム以下です。
「ロッドガイドといえばここ!」な企業HPに性能比較表があったので拝借しました。
数値を見て察すると思いますが、ガイドリングだけで20%の軽量化! ……といっても、1個あたり「0.1g」程度の違いでしかないから、ガイド6個で1グラム変わるか変わらないか程度なんです。もちろんガイド総数が増えるほど軽くなるので、磯竿は軽量化に役立ちますね。
なのでロッドガイド全体の軽量化は、リングよりフレームの素材を気にするほうが効果的。スチールならチタンにするほうが、軽さは実感しやすいでしょう。それでも1セットあたり10g変わればいいほう……。
だからトルザイトリングのロッドだからって、「軽い!」「振りやすい!」だけ言う人は、あまり信用できません。
トルザイトリング自体の利点はあります
リング比較で「軽量化」に劇的な変化はないとわかりました。でもトルザイトリングの利点はそれだけじゃありません。我々が気にするのは「釣りをするに便利なのか?」でしょう。
トルザイトリングの利点は、「糸抜け向上で飛距離UP!」「ラインに優しい」「強度UP」などがあります。軽さでちょっと騙された感があるので、こちらも問いたくなる効能ばかり。
これらはちゃんと、理由(裏付け)があります。
糸抜けが良いといわれる理由
トルザイトリングはSiCリングより薄くなります。
同サイズだと外径は変化しませんが、内径はSiCに比べて広く大きくなります。これが「糸抜けがいい」といわれる理由。通り道が太くなっただけの単純な効果ですが、単順だからこそ確かな効果が期待できます。
ラインに優しい理由
先の画像にある断面図を見てもらうと、トルザイトはSiCよりも、ラインが触れる曲線がなだらかです。これにより摩擦抵抗が軽減されます。だからラインに優しい(確信)。
この違いを実感するには、ガイドにラインを通して「ギコギコ」と摩擦で切ろうとしてみてください。真円に近いSiCリングは摩擦が強いため、トルザイトよりも先にラインが切れてしまい。
摩擦抵抗が少なく、そこでラインが切れにくい利点はなんでしょう?
それは大型魚と長時間の限界ファイトをする時。負荷がかかった状態でのライン保護に一役買っています。
メリットとデメリットは”気持ち程度”の感覚でしかない
トルザイトリングのメリットとデメリットをまとめると、こんな感じになります。
- +(わずかでも)軽量化
- + 糸抜けが良い
- − いうほど劇的な効果じゃない
- − 薄いから割れやすい
他のデメリットで目立つのは、「糸鳴り」がしやすい点かな。
これはラインの接地面積が多くなるため仕方がないこと。ガイド径が薄くなることで、振り抜き時の空力抵抗が減少するため、キャストフィールが向上する──のは、気づく人居るんですかね?
”割れやすい”に関しては、取扱い上の問題です。SiCの時点でダイアモンド並の硬い素材なので、トルザイトも傷には滅法強いです。ただし衝撃には弱く、岩にぶつけたり地面に落とすと割れることもあります。
なのでガイドリングにフックを通したところで傷はつきにくく、それが割れる原因になることはまずありません。
散々こきおろしてもトルザイトリングは悪物じゃあない
トルザイトリング自体が悪いわけじゃなく、セールスコピーほど変化はしないだけ。
釣具の中で数グラムが左右される世界はオモリ関係。4gのジグヘッドと10gのジグヘッドじゃレンジがかわるし、ガン玉でいえばBと6Bの違いがある。もともと100g超の物を数g変えたところで、変化は気付きにくいですよね。
「本当に違う!」を体験したいのなら、ステンフレームからチタンフレームに変えてみるといい。数グラムは確実に軽くなるので、同じロッドでも振り抜く感触は変わるはず。
ルアーロッドは自分でガイドセットを交換できるのも強みですね。ただし大きさが違いすぎると、ロッドバランスが崩れて、負荷がかかった時に折れやすいため、互換表を参考にしましょう。
交換してくれるショップもあるので、依頼するのも手です。