血抜きと神経締めはどちらの効果が上か?【魚を〆る美学】

釣りをしていると、魚を締めている姿をよく見かけます。

「締めた刺身はうまいなぁ(チラ」「やっぱり神経締めは違うなぁ(チラ」とか……、はいはいそうですねーと空返事でいなしたい。

「せっかく釣れたのだから、より美味しく食べたい!」の気持ちはわかる。でもその行為に根拠はあるのだろうか。

 

釣り人の多くは、魚の鮮度を保つための知識は、ハッキリいってかなりザル

魚をより美味しく食べたいのなら、〆よりも保冷を見直すべき

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釣り人の締め方は答えとして△

魚を締めることで鮮度にどのような影響が出ますか?

釣り人に聞くと、「そうすると美味しくなるって聞いたから」と答えるのが大半かと思う。

……一流の板さんがうなだれそう。

 

今記事は「血抜きvs神経締め」の”どっちが美味いか論争”に注目。

「それは基本であって、それよりも大事なことがありますよ?」を書いていきたい。

市場に流通する魚に鮮度を問うのはナンセンス

スーパーに並ぶ魚は日本全国から輸送されています。

生鮮食品の輸送は半世紀前に比べ、高速化も衛生面もはるかに向上! でも水揚げされてから店に届くまでは、最低1日以上はかかります。

 

 

魚を締めるほうが美味しいことは確実──ですが、流通させる過程でそれは手間がかかりますし、その時間と手間ぶん金額が上昇します。

薄利多売のご時世なので、それを実行しても「誰が買うんだ?」って話。

 

でも本当に良い物って、売れるんですよ。

業者が面倒がるその手間をあえて実行し、全国に轟くブランドに成功した例があります。

神経〆を全国区に広めた『関サバ』のブランド

『関サバ』とは、大分県大分市の佐賀関で水揚げされるサバです。

関が冠につく魚のブランドはサバ・アジなど、日本一新鮮! 刺し身で食べれることで有名です。

 

 

関サバは水揚げ後に、活きた状態で「手当(活け締め)」を行い、船上から輸送まで、鮮度をなるべく落とさない努力をしている。

輸送技術の発達に神経締めの合わせ技で、全国に美味しいサバを届けれるようになった一例。

やればどの地域でもできることですけど、サバはまき網で大量捕獲がメインなため、いちいち処置をしていられない地域が多い背景があります。

 

釣りで丁寧に水揚げされたサバだからこそ、極上の状態で客に届けたい気概があるし、その仕事ぶんだけありがたみを感じます。

その努力がブランドの価値を引き上げ、関さばが全国の高級魚となったわけですね。

鮮度を保つ「締め」を正しく理解しよう

ようやく「締め」の話に移るわけですが、その前に──

魚の鮮度を化学する - 九州釣り情報
魚の鮮度を化学する

今回いいたいことは全てこちらの記事に集約されているので、一通り読んで目からウロコしてください(他力本願)。

他にも某釣り情報誌に「〆研」というコラムがあります。こちらは釣り人が実践した活き締めについての見解と、鮮度の違いについて言及した内容。

 

どちらも着地点は同じ。……記事全文を読むのも面倒な人もいるだろうので、先の記事をベースに、要点を絞ってまとめることにする。

血抜きと神経締めの違い

血抜きと神経締めはどちらも「活き締め」です。

神経締めは血抜きに1工程加えただけだし、血抜きは最も簡単な締めといえる。

 

──まずは「神経締めをする理由」から。

その理由として正しいのは、死後硬直を遅らせる(ほぼ無くす)こと。

 神経絞めは、業者さんが魚を絞めてからトラックに乗せ、刺身になって食卓に並ぶまでの、やや長い時間の鮮度保持を目的とした処理技術です。脳が死んだあと、まだ生きている脊髄がATPを消化しますが、この消費を抑えることで、死後硬直の始まりが遅くなり、新鮮さを長持ちさせる効果があります。

血抜きは延髄と太い血管を切って血を抜き、臭みの元凶である血液を排除するため。

保冷をするのは、細胞の壊死を遅らせるための手段です。

その結果により、鮮度を保持できる期間が長くなるのが本当の理由。

 

神経締めが血抜きに勝るのは、活きた魚を即動かさないようにできるため、体温の上昇を防ぎ身焼けを防げるのがひとつ。もうひとつは、締めたあとでも脊髄が消費する栄養を阻止できるところ。

なので、絶対的な鮮度の保持では神経締めに軍配があがります

 

神経締めに軍配があがる

旨味を引き出すため冷蔵庫で寝かせる方法は知られています。でもそれが進行するのは死後硬直が解けてから。

釣った魚を即神経締めして、その日のうちに頂く場合、旨味が出る前に食べていることを、釣り人はあまり知らない。(西日本ではこっちが好まれる)

 

神経締めをする最大のメリットは、長距離輸送の時間を、旨味を引き出す工程(寝かせる)にあてれること

そのため輸送時間が増えても、客先に届くタイミングに熟成期間を合わせれば、極上の食品を意図的に届けることが可能になるわけです。

輸送の時間があってこそ神経締めは効果を発揮する

「締めれば魚は美味くなる」のは確か。

──でも「旨味を引き出す」となれば、話が違ってくる。

 

 

釣った当日に食べるなら、魚を活け締めする必要はありません。即食べたいなら、エラと内臓を抜くだけで十分です。

活造りはひと目で鮮度が高いとわかる効果があります。でもその刺し身を口にしたら、ゴリゴリの身で旨味が全然ないと思った人もいるのでは?

「いうほど美味しくないじゃないか」と感じたのは、旨味成分が出る前だからです

活け締めしてからは保冷に気を使い熟成を促す

魚を保冷するに、凍らせる必要はありません。ましてや氷水に浸けるのは愚策。

それについて解説してくれるのがこの一文。

 魚は死ぬと、筋肉中のグリコーゲンが乳酸に分解する過程で発熱し、そのままにしておくとわずか数分間で肉質が落ちてしまいます。これを防ぐため、神経抜きすると同時に海水氷に入れるのですが、あまり急激に冷やすとこんどは筋肉が収縮して死後硬直が早まり、せっかくの神経絞めが無駄になってしまいます。
 魚の体温と氷水の温度差が大きいほど硬直が速く進むので、神経抜きの後、キンキンに冷えた海水氷に長時間漬けることは避けてください。

魚を熟成させる最適な温度は5~10度。これは生息する水温より低いくらい

つまり、熟成するには冷蔵庫がちょうどいい温度と湿度なわけです。

冷蔵庫に保管するだけで熟成が進む! と考えれば、簡単に感じるでしょ?

 

保冷で注意するのは、保冷剤や氷に直接魚を触れさせると氷焼けをしてしまうこと。

防ぐには新聞紙かキッチンペーパーで魚か保冷剤を包むかして、直接触れないようにするだけです。

 

次で最終段階になります。

最も美味しく魚を食べるためにする努力とはなんなのか?」を、不意にデカイ魚が釣れちゃった場合でまとめてみよう。

科学的にも実践的にも、最も美味しくなる正しい活き締めの方法

例えば偶然にもブリが釣れちゃったとしましょう。

こいつを最も美味しく頂くため、2つの選択肢が強いられます。

 

  1. 当日に食べたい!
  2. 数日後にパーティしたい!

 

それぞれのタイプに分けて考えましょう。

当日に食べたいのなら血抜きで十分

ブリの締め方は、エラに手を突っ込んで首を折り、水につけて血を抜く方法があります。

力こそ必要ですが、特別な道具がいらないのですぐできる利点がある。

青物系はアニサキスを予防するため、その処置をした後、内臓も取るようにしましょう。これもエラを引き抜けばいいので素手でもできます。

 

活け締めが終わったら、新聞かなにかに包んでクーラーBOXに入れておきましょう。

すぐ冷蔵庫に入れるほうが無難ですが、「やっべ、こんなの釣れると思わなかった」と保冷容器を準備していない場合は、その足でコンビニへ向かいゴミ袋とカチ割り氷を買って、氷を入れたゴミ袋で保存する方法もあります。

朝に釣れた魚を冷蔵庫にすぐ入れれたら、夜には丁度食べごろです。

 

より丁寧に臭み抜きをするならば、塩をふって10分ほど置き、にじみ出た水分や脂を拭き取り、キッチンペーパーで包んで冷蔵庫に保存しましょう。

旨味を最大限に引き出して数日後に食べるなら神経締めが鉄板!

偶然釣れたブリで後日パーリィしたいのなら、ヘッドロックをして内臓を抜き、神経締めをしたあと冷蔵保存しておけばOK。

1本そのまま寝かせるのもいいですが、冷蔵庫のサイズ的に無理なら、切り身で保管するほうが無難です。丸々だとどうしても内部に血の臭いが残るからね。

 

神経締めをしてから熟成がはじまるのは早くて翌日以降

天然のブリで最適なタイミングを探るとなれば、家庭用冷蔵庫で5日以内に一旦身の柔らかさを確認しつつ、7日以内で美味しいタイミングを探す感じ。

養殖だと脂が多く身質も柔らかくなるので、天然より早い段階で十分。

 

ちなみに熟成させたブリは、温かい時期なら刺し身でいいし、寒い時期なら「ブリしゃぶ」がおすすめですね。

神経締めをしたほうがいい魚、しなくていい魚

ブリのように赤身を持つ魚は、運動量が豊富になので体温も高めになる。

そういう魚を一発で黙らせるには神経締めが最適。でも道具に細い鉄製のワイヤーが必要になってしまう。

神経締めは2種類あり、ワイヤーを背骨に添って通して神経を切る方法と、骨の内部に通して髄液を取り除く方法がある。大型魚は前者、中小型は後者がオススメ。

魚のシメ方・活締めと神経抜き
生きた魚を〆る方法を画像で解説。神経を抜く方法も説明します。

上の記事中で言及されていますが、中小型の魚に神経締めをするメリットはありません

ヒラメなどはこの神経破壊をしない方が良いです。脊椎骨にある神経穴に針金を通して神経を潰すのは、脊髄だけを切断しても死んだ後に脊髄神経が暴れて身が痙攣する現象をおさえるためです。
この現象が起きるのはマグロなどの大型魚であると分かっています。したがってヒラメやタイ等、中・小型魚にこれをやる意味はありません。経験的に身持ちが良くなるどころか、逆に身がゆるくなるのを早める結果になると思っています。

要約すると、「白身の魚は神経締めをする必要がない」とのこと。その理由は筋肉の質が違うから。

 

ヒラメに神経締めをほどこしてドヤる釣り人は多い。

でもそれは魚を扱うプロからすれば、「そう、よかったねぇ(温かい目)」と思われているかもしれません。

【まとめ】活き締めの効果は意味を考えるだけで変わる

これらを抑えれば、一流に引けを取らない魚が召し上がれることに。

 

  • 魚は休ませてから締めること
  • 保冷は5~10度が望ましい
  • 当日食べたいなら血抜き、翌日以降なら神経締め

 

私の試行錯誤した範囲内でいうなら、加熱調理なら血抜きだけでいいし、生食前提なら内臓は抜ておくべき──なことがわかりました。

早い話、「とっとと三枚におろして熟成モードにしよ?」が最善の手法かなと。

 

魚が嫌いな人は、「臭い」「骨があるから」という理由が多いです。でも「刺し身は食べれる」ってパターンが多いんですよ。

それって、「手当が悪い魚を食べてしまったせい」と思いませんか?

魚が臭いのであれば、その原因を取り除けばなんとでもなる。

骨は1本1本ピンセットで抜けばいいし、高級志向はそこに気を配るのは当たり前のこと。

 

本当にマズイ魚って……、存在するほうが稀ですよ?

限界の旨味を引き出した刺し身を作りたいならば、活き締めから保冷、そして熟成から提供するまで、どれも気の抜けない”仕込み”があり、時間がかかります。

自分でそれをやって苦労を知れば、回らない寿司が何故高いのか、そして美味しいのか、理解できると思う。

 

本当に美味しい魚を食べたければ、苦労してみるべきだし、知るべきです。

そうすることで、「水産業は結構損しているんだな」とか、「消費者層は何もわかってないんだな」と、当事者なりの苦労を感じるかもしれない。

同じ苦労を味わうことで、心遣いを学べるはずです。

料理
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海釣りがメインで、たまに淡水もやります。2018年は身近な浜名湖で、ポイントを転々と釣り歩いてマッピングしたい所存。

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