アサリの深刻な不漁により、今年も浜名湖の潮干狩りは中止となりました。
そういうニュースは地方新聞が真っ先に取り上げるわけで、私の耳にも入ってきたのですが──アオサの異常繁殖からの腐敗、クロダイが食べちゃう云々……散々聞いてきた内容ばかり。
そして締めに「原因はよくわからない」という。
自然資源の減少は、過去から現在まで、自然を言い訳にした記事が多い。
それも原因の1つですが、根本的な要因は「人間」にあります。
メディアじゃいえないが、フリーでこそ論理で切り込めることができる。
自然が原因と論ずるならそれらの被害を明確にして欲しいが──
「そもそも原因が解らない」と、面白いジョークをかますことが多い水産資源減少の原因。
本当にワカラナイのか、私にはそれがワカラナイ。
ただ1人が1時間くらいかけてググッた結果、それらを論ずるに値する材料が集まった。
「感情に訴えかける作戦」だけでは、解決しないし未来もないことに気づいてほしい。
浜名湖のアサリ不漁の原因として挙げられるのは──
- アオサの大繁殖と腐敗による水質悪化
- ツメタガイ&クロダイによる食害
が、因果関係や被害総額は明確にされていない。
今記事はそれらの「予想されている自然被害の因果関係」を追って説明していきます。
アオサの大量繁殖からの腐敗による被害
これは本当。
アオサが溜まりやすい場所は、砂浜や潮溜まりに干潟で、そこにはアサリも生息しやすい。
全国各地どこの湾内でもアオサは繁殖する。
これが潮溜まりに集まって、熱で腐ると硫化物を含むガスを出し、水中は低酸素やら嫌なニオイで海底生物(主に底物)へ深刻な被害をもたらします。
──ここまでは判明していますが、漁場への明確な被害量は判明していないらしい。
よろしい、ならば論文だ。
これは博多湾でも人気の潮干狩りスポット「和白干潟」で行われた実験結果。
「アオサ堆積によるアサリ資源量の変化」を試算したものです。
忙しい人向けにざっくり要約すると──
- アオサが溜まって腐るとその区域のアサリは滅亡する
- アオサが砂底部にかからないよう人為的に保護すると生存率が高まる
浜名湖でアオサが溜まりやすい箇所は存在し、アオサによる被害を受けていると推測できます。
それからアサリを守りたければ、「草を回収すればいいじゃん?」となります。
でも量が尋常じゃないし、船を使わないと行けないところもある。
自治体の草刈りとはワケが違うので、カネがかかるわけですよ。
そもそもアオサは食用にできるんですけどね。天然健康食品として注目もされたそうですし。
九州の干潟では、陸上にあげて乾燥させて燃やし、対策をしているよう。
燃やすにしても、消防に許可とったり煙でなんだりと、色々うるさいから難しいですね。
ツメタガイ&クロダイが食べすぎた結果?
ツメタガイは本当だが、クロダイは因果関係が証明しきれてない。
この疑問をなんとなく釣り人に投げたら、「クロダイがアサリを食うわけないだろ。掘るの?(笑)」といわれた。
論文 魚類によるアサリ食害-野外標本に基づく食害魚種リスト-
論文によると、2003年に広島湾大野瀬戸の干潟で、クロダイがアサリ親貝を食害するところを発見されているらしい。
30cmくらいのクロダイが、口で砂をくわえて左右に吐き出し、直径約10cm深さ3~5cmの採食痕を残したと記録されている。
浜名湖では、潮干狩り場の養生のため、干潟にアサリを撒いています。
それはクロダイによって、「食べてください」といわんばかり。
定期的にエサが撒かれるのだから、それを記憶されて、なおさら被害が大きくなったと推測できる。
キチヌ(キビレ)も同様に食害が確認されているが、クロダイほどじゃないみたい。
他にもベラやキスにハゼなどもリストにあり、干潟に生息する生物は、アサリの稚貝や親貝のおかげで生きていることもわかってくる。
ツメタガイは貝の殻に小さな穴を開け、中身を食べる極悪なヤツ。
「アサリ保護」の研究は主に九州での実験が多く、全国事例でも浜名湖はロクに出てこない。
この地域が過去の豊漁を追い求め続け、停滞した考えで水産物の保護に乗り気じゃないってことがわかる。
実験内容は「受け身なアサリと肉食系のツメタガイがルームシェアしてみました」という内容。
結果として、肉食系と同居したアサリはほぼ壊滅し、限定された寮で暮らすアサリは生存率が飛躍的に伸びた(温室育ち的な意味で)。
ツメタガイはエサがなくなると、移動して探し続けるらしく、まるでストーカーのよう。
それを駆除するにあたって、努力を続ける漁業関係者。
日々の糧を得る一方で、同時に掃除を行うのは難しい。
「一般もできるだけ協力して!」と呼びかけているが、第一声に「それ食べれるの?」と聞かれそうなのであらかじめいっておく。
日中の浜名湖でウェーディングでもしていれば、ツメタガイの卵である「砂茶碗」を当たり前のように見る。
しかし夜行性のアングラーのほうが水に入るので、最も駆除の助力に近い人が、砂茶碗を破壊してアサリに有害な生物の繁殖を手助けする可能性も捨てきれない。
砂茶碗は卵なので、陸上にあげて乾燥させることで駆除になります。
ここまでは「自然被害の観点」、ここからは「人的被害の切り口」
浜名湖の潮干狩りが開催されている時期は、毎日毎週たくさんの人出で賑わいます。
傍から見れば「またアサリの奪いあいしてる(ニコニコ)」と、たいへん微笑ましいですが……不思議に思いません?
「生涯ほぼ移動しない生物が、毎週のように取り尽くされても、なぜまた干潟で採れるのだろう」って。
それに関しては後編の【人的被害編】で詳しく解説していきます。